第一話 告白してみた!
勢いで投稿しました。
拙い文章ですが読んで頂けると幸いです。
よろしくお願いします。
気がつくと今まで見ていた景色が一変していた。
周りを見ると、クラスのみんなが尻もちをついて後ろに倒れていた。
今まで座っていた椅子が急になくなったのだから当たり前だ。
そう言う僕もお尻が痛かった。
座ったつもりで椅子を引かれるよりは勢いがなかったから痛みはそれほどでもないが、恥ずかしさは一緒だ。
だが集団でそれが起こった場合は、恥ずかしさよりも戸惑いが大きいらしい、クラス全員がどよめいていた。
僕は冷静になって、これまでの経緯を思い出していた。
あれは確か2限目の現国の授業中で、昼メシの購買のパン何買おうかな~と考えながらぼんやり黒板を見ていたはずだ。
「今からこのクラスを異世界転移します。強力なスキルをあげるから頑張って魔王を倒してね!」
急にスピーカーからそう流れたかと思うと、床に魔法陣が現れて眩い光に包まれた。
その間わずか5秒位だった。
理解出来るか!
僕はスマホで『小説家を目指そう』を愛読しているから異世界転移のことはよく知っているが、あまりにも唐突すぎる。
あのスピーカーの声もたぶん神様の声なんだろうけど、普通ある程度やりとりがあったりするのではないだろうか?
ほとんど一方的に言い切って終わっちゃったよ…
そんなこんなで改めて周りを見てみるとそこはお城の広間っぽい場所だった。お城何て行ったこと無いんだけどね。
僕たちの周りには全身鎧の騎士のような人達が取り囲んでいた。
クラスのみんなはすでに立ちあがっており、なるべく身を寄せあって警戒していた。
そして玉座にはこの世のものとは思えないほどに美しい女性が座っていた。
するとその女性は立ち上り口を開いた。
「ようこそ勇者様方!我がフォンブルグ王国へ、皆様を召喚致しました女王のリーサティシアと申します。戸惑うのも重々ご理解出来ますが、何卒この世界のために魔王を討伐して頂きたいのです」
その女王の言葉には逆らいがたい圧力があるのか解らないが、クラスメイトは全員黙って話を聞いていた。
「そうだな!俺たちがやるしかないよな!」
「皆が困っているんだもん頑張ろう!」
話が終わったかと思うと、周りからはそんな言葉が飛び交っている。
いや、いや、いや!おかしいだろう!
見れば、学年で一番の不良とされている佐伯くんですら、「じゃあ、俺がやるしかねぇか」などとのたまっている。
正義感溢れる不良…それはもう不良とは呼ばない。
僕だけが普通なのか?なんとかみんなを正気に戻せないかと考えて止めた。
それよりもこの先どうなるかわからない、もしかしたら死んでしまうかもしれない。それなら悔いを残さないようにしたい。
僕は覚悟を決めて大声で叫んだ!
「遠藤澪さん!ずっと前から大好きでした。僕と付き合ってください!」
やった!言えたぞ!
すると僕の周りの一部の人が割れていき、遠藤さんを正面に捉えた。
遠藤さんはクラスの中で所謂ギャルと呼ばれるグループに属しており、髪も茶髪でピアスもしている。制服も着崩しており、化粧もばっちりのコテコテのギャルだ。別にリーダー的な人物でもないし、美人というわけでもない。だけど僕はとある理由で入学してからすぐに彼女に一目惚れをした。それから2年間片想いだった。
「えっ、私!」
遠藤さんは指で自分を指差し驚いている。
「入学して一目惚れしてからずっと好きでした!僕の彼女になって下さい!」
遠藤さんに近付き頭を下げ、手を差し出す。
「えっと~、私あんまりお前のこと知らないんだけど…」
「付き合ってから知っていくのも良いと思います!」
僕も必死だ。ここで繋がりを持っておかないとこの先どうなるかわからないのだから。
「そ、それじゃあ最初は試験期間だからな!よ、よろしく」
僕の必死さが伝わったのか、少し間が空いたあと遠藤さんは僕の手を取って、そう言ってはにかんでくれた。
その瞬間周りから大きな歓声が上がった。
「うおーアイツやりやがった!」
「私、ちゃんとした告白見るの初めてかも」
「あの仲村が…」
「ひゅーひゅー」
と茶化した声も聞こえる。
そして、「あれ、私達教室にいなかったっけ?」と誰かがそう言った途端、みんなが騒ぎだした。
そんな中、僕は隣の遠藤さんを見ながら顔がニヤつくのを止められなかった。
もちろん、女王様とその周りのお偉いさん?方は驚いた表情で固まっていた。
その後は、通常の異世界転移さながらに女王が話始めるも反論の声が上がったり、魔王を討伐すれば元の世界に帰れると説得されたり、みんなのスキルを確認する作業があったりと慌ただしく時間が過ぎていった。
ちなみに僕のスキルが『解放』で、
遠藤さんのは『支配』『覚醒』『大魔導』『神眼』『再生』だった。
なんか多くね!
大体みんなのスキルは1、2個だったので遠藤さんの時に大騒ぎになったが、当の本人がよくわかってなかったのでそのままお開きになった。
その後は、大広間で食事をして今晩は城に泊まることになった。
良い待遇だなぁ~と思いながら自分に与えられた部屋で横になっていると、ふいにトイレに行きたくなった。
部屋の前で立っていた警備兵らしき人にトイレの場所を聞き歩いていると、早速迷ってしまった。
だってこの城広すぎるんだもん。
尿意を我慢しながら慎重に歩いていると、階段を見つけた。
もう思考も定まらない状況だったので急いで階下に降りる。
そのまま一本道の通路に出たのでそのままダッシュ!時間との勝負だ。
通路の途中で何か柔らかい壁のような物にぶつかった気がしたが、今はそれどころではない!
通路の突き当たりの部屋は薄暗く、牢屋みたいになっていたがその先に目的のものが見付かった。
『しばらくお待ちください』
「ふ~、危なかった。明日はみんなに近い所を聞いておこう」
帰りは警備の人に聞きながらなんとか部屋にたどり着き、ベッドに横になるとそのまま寝てしまった。
「知らない天井だ…」
と、冗談はそれぐらいにして、昨日のことを思い出す。
遠藤さんと恋人同士かぁ~、でも試験期間って言ってたから遠藤さんに認めてもらえるよう頑張らねば!
「よし!」っと気合いを入れて部屋を出る。警備の人が居なかったので、廊下を歩いている他のクラスメイトに声をかけると、みんなは昨日の召喚された広間に行っているみたいだ。僕も一緒についていく。その間も鎧を着た人がバタバタと行ったり来たりしており、何か慌ただしかった。
広間につくと昨日と同じようにクラスメイトは一ヶ所に集まっており、女王は玉座に座っていたが周りにいろいろ指示を出しているようだった。クラスメイトの方をみるとその中に遠藤さんの姿を発見し、少し顔が赤くなるのを自覚しつつも声をかけた。
「遠藤さん!おはよう!!」
「おはよ。つーか、テンション高くね!」
遠藤さんは僕のあまりの笑顔っぷりに若干引いていた。
「すごく慌ただしいけど何かあったのかな」
「さあ?知らねー」
こんなときでも冷静な遠藤さん、カッコいいなぁ。
しばらくすると、女王様からお言葉があった。
「おはようございます、勇者様方。早速で申し訳ないのですが、こちらにいろいろな武器と旅の資金をご用意しております。武器は各自選んでいただき、魔王討伐に出立して頂きたく存じます」
展開早いな~。
クラスメイト全員で集められた武器や道具をわいわいやりながら選んでいた。僕も何かないかなと探していると、淡い緑色の綺麗な扇が置いてあった。そうだ!あれを遠藤さんにプレゼントしよう!僕はそこら辺の武器屋探して買えばいいや。ということでその扇を手に取るとあら不思議、扇が光ったかと思うと30㎝位だった扇が1m50㎝位に大きくなった。しかも色が7色になり見る角度によって色が変わる仕様になった。うーん意味がわからん…
まあ更に綺麗になったのには変わりがないので、それを遠藤さんの所に持っていった。
「遠藤さん!これプレゼント、綺麗だったから持ってきた!」
それを見た遠藤さんは、「マジうける~」と笑いながら受け取ってくれた。
ひとしきり笑ったあと、「あ、ありがと…」とお礼を言ってくれた。遠藤さん可愛い!
「遠藤さんは何か選んだの?」
「それがさぁ、これジョークではめたら取れなくなってさ」
遠藤さんの腕にはおどろおどろしい見た目の腕輪があった。
「僕が引っ張ってみるね」と言いながらその腕輪に触れた途端、また不思議、腕輪が光ったかと思うと、シンプルなデザインの竜をモチーフにしたような腕輪に変わっていた。
「おお!すげえ!タクミやるじゃん!」
えっ!名前呼び?これはもしかして…
「遠藤さん!僕も名前で呼んで良いかな?」
「?、一応恋人同士なんだし、聞かなくてもいいよ」
よっしゃー!僕は心の中で叫んだ。
巷のカップルどうしの名前呼びがこうも早く実現するとは、
異世界転移!ありがとう!!
さっそく呼んでみる。
「ミオ、その腕輪似合ってるよ」
「キザなセリフ似合わね~」
ミオはまた笑っていた。
武器を選んでお金を渡された僕達クラスメイト一同は、城から追い出されるように出立したあと門の前の広場に集まっていた。
「なんか、地下に幽閉してあった魔王軍の幹部が逃げたらしいな。だからあんなに慌ただしかったみたいだ」
先生がそんなことを言っていた。
そして先生はみんなを集めて言った。
「俺は全員を無事に元の世界に連れて帰るみたいな責任は負いきれん、ただ魔王討伐以外の帰還方法を探すつもりだ。この都市を拠点にしようと思ってるから、何かあったり解ったりしたらここに戻って来てくれ。あとは各自スキルを使って自由行動だ、ちなみに作戦名は『いのちだいじに』だ」
先生、それゲームやってるやつじゃないと、わかりませんよ…
ということで、みんなそれぞれにパーティーを作ったり、単独行動でそそくさと街のほうに行った者など自由にしていた。
もちろん僕はミオに声をかける、
「ミオはどうするの?」
ミオは友達としゃべっており、友達が僕に気づくとあからさまに冷やかされていた。
「いや、なんか目の前でイチャイチャされても困るから、別行動が良いみたいで…って別にイチャイチャなんかしねーよ!」
イチャイチャしないの!?
僕は両手を地面につけ絶望した。
「わかった。一応トーカの『通信』もあるし、いつでも連絡出来るしね」
ミオはそんな僕の姿を華麗にスルーし、そう言ってスマホをトーカさんに渡してすぐ返してもらっていた。
なんと彼女のスキルは自分がスキルを与えた物体同士で念話みたいなことができるらしい。異世界携帯電話や!すげー!
とまあ、いろいろありましたが、な、な。なんと!ミオと2人での冒険になりました!
またまた、異世界転移!ありがとう!!
僕の友達?まあ、あの悪友達はしぶとく生き残るでしょう。
さっきすでに別れを済ましてきました。
「こんな街並みを見ると異世界に来たって実感するなぁ」
ミオと二人で城下町まで歩きながら僕がそう呟くと、
「それよりさ、腹減ったから街でおいしいもの食おうぜ!」
さすがミオ、いつでもマイペース!でも手繋いでくれたから、僕のテンションも急上昇!なぜか二人ダッシュで街まで行きました。
城下町は新宿駅ほどではないがものすごい人で溢れ帰っており、人種もいろいろ、服装も異世界そのもので僕はお上りさんみたいになってた。そんな中、ミオの視線がある一定の場所で固まっている。
「ミオ、どうしたの?屋台かなんか見つけた?」
僕が問うと、ミオは「あれ…」と言って指差した。
指差した方向に顔を向けるとそこには馬車の荷台部分を鉄格子の檻にしたものがあった。
檻の中には子供が三人ほど入っており、二人で近づくと子供の耳やお尻から動物の耳と尻尾みたいなのが生えていた。
しかも人間と比べると少し毛深いみたいだ。
「獣人の奴隷かな?」
「奴隷?」
「いろんな理由で売られた人、所謂人身売買みたいな感じかな」
「買えるの!?」
「たぶん買えると思うけど、聞いてこようか?」
「是非、お願いします!」
ミオの言動が変わっている。
そうなのだ、ミオは犬や猫などの毛がモフモフした動物に弱い。僕がミオを好きになった一因なんだけど。
奴隷商人と思われる少し派手な服を着た人に話しかける。
「すいません、後ろの檻にいる奴隷って買えますか?」
「なんだあ坊主、奴隷が欲しいのか?金はあるのか?」
「お金ならありますよ」
僕は袋に入った金貨を少し見せる。
「おお!お客さんなら話は別だ。だが今連れてるやつは欠損や病気持ちで状態が良くない、店に来たらまともなやつを見てもらえるぜ!」
「ミオ!お店に行ったらもっと良い奴隷が居るって」
「モフモフ!モフモフ!」
ダメだ!最早言語を失っている…
「すいません。この子達だけで良いので売ってもらえますか?」
「別に構わないが、そうだな元々不良品だし全部で金貨10枚でいいいよ」
そんなに安いの!袋には金貨が一杯入ってるんだけど…そういえばこの世界の通貨の基準を知らない。まあいいか、この世界の人身売買事情なんてわかるはずもないし。
僕が金貨10枚を払うとテキパキと奴隷を降ろし、奴隷紋を僕に移し「毎度ありー!」と言って、嬉しそうにその場を去っていった。商店街のおっさんかよ!
「ミオ、終わったよ~」
三人引っ付いて震えている獣人達を見下ろしているミオ。
「この子達怪我してる!病院に連れていかなきゃ!」
気付いてなかったんかい!さすがモフモフフェチ!
「あ~、たぶん大丈夫。ミオのスキルに『再生』があったでしょ。ちょっと使ってみて」
「使い方習ってない」
「たぶん手をかざして『再生!』とか言えば良いんじゃない?」
ミオは言われた通り手をかざして『再生』と口にする。
獣人達が光ったかと思うと、妙に小綺麗になった三人が口を開いて呆けていた。
そして、「腕が生えてる!」「胸が苦しくない!」「…どこも痛くない!」三人が急に叫びだしその後、急に泣き出した。
三人が泣き止むのを待って話しかける。
「落ち着いた?僕の名前はタクミ、キミ達を買ったんだけどよかったかい?」
三人は首が取れんばかりに頷く。
「そしてこっちが…」
「私の名前はミオ、あなた達の名前を教えてもらえるかしら?」
あなたは誰?人格が変わっている!
「僕はターオ」「私はミリル」「…私はレン」
三人とも素直に答えてくれた。
ちなみに男の子のターオ君がライオンの獣人。
真ん中の女の子ミリルちゃんがキツネの獣人。
最後の女の子レンちゃんがフェレットの獣人。
フェレットの獣人!?そんなの居るの!
「お腹が空いているでしょう?食事にしましょうか?」
なかなか主人格が戻ってこないなぁ。
「そう言えば僕達もお腹減ったね。屋台に何かあるかな」
そう言ってみんなで歩いているとお肉の串焼きの屋台を発見、そこで食事することに。
「やべぇ、やべぇ!」
「はむはむ、はむはむ」
「…おいしい」
「ニコニコ、ニコニコ」
最後のは何だ!…僕の彼女でした…
因みに金貨で払ったらお釣りがないと言われたので、屋台付近に居た通行人に向かって、
「今から肉の串焼き食べ放題だぁー!」
と叫んでやりました。怒られましたが店主はニコニコでした。
お腹がいっぱいになったので今後について話し合うことに。
「もちろん一緒に連れて行く!むしろ連れて行く以外の選択肢はあり得ない!」
ミオが元に戻っている。
ミリルのキツネの尻尾をモフモフしていた。
あの別人格は禁断症状が出ると表に出てくるのだろうか?
「僕達はご主人様達に従います」
ターオが三人の代表かな?
「ああ、三人とももう奴隷じゃなくなってるからご主人様なんて呼ばなくて良いよ、奴隷紋も消えてる筈だから」
「「「えっ!」」」三人がハモった。
「ミオがモフりたかったから買っただけで、奴隷が欲しかった訳じゃないからね。どうして奴隷になったかは知らないけど、やりたいことはない?」
「故郷に帰りたい…」とターオ。
「私は、両親を殺されて行く宛もないのでこの先どうしたらいいかわかりません」とミリル。
「…大金持ちになりたい」とレン。
この子は何を言っているのだろう…
「でも、私は1日1回はモフらないとあいつが出てくるから…それだけは避けたい」
別人格のこと認識してるやん!1日1回って家でペット飼ってたのかな?
「修学旅行の時は?」
「1日目は鹿で、2日目はふれあい広場のモルモットで凌いだ」
急に重要な問題に発展した!
…鹿の毛ってモフれるのか?
「よし!それじゃあ、まずターオを故郷まで送る。そして、ミリルはミオのモフられ隊隊長だ!レンは僕らの旅の手伝いをしてもらって僕らが給料を出す。それで良いかな?」
「ありがとうございます!」
「…給料!」
「私のだけ違うくないですか?」
「さすがタツミ!私の彼氏なだけあるな!」
全然彼氏関係ないよミオさん…
今後の予定が決まり、とりあえず今日泊まる宿を探すこと。
情報収集すると『黒猫亭』という宿が良いらしい、チェーン店なのか!?
僕は2部屋借りるつもりだったけど、ミオが「1部屋でいいよ!勿体無い!」と言う。
それってまさか!!
…さすがに5人で1つのベッドは狭いよミオさん…
…暑い…
寝苦しくてほとんど眠れなかったけど朝方僕は叩き起こされた。
「早く起きろよタクミ!出発しようぜ!」
あまりの理不尽さに「うーん、あと5時間…」と言ってみた。
「タクミ…」すると顔の近くでミオの声がする。
目を瞑ったまま顔を向けると、不意に唇に柔らかい感触がして、すぐに離れた。
こ、これは!
「!!」僕は飛び起きて確認する。
「残念!!レンの肉球でした~!」
「…屈辱」
僕は奇声を上げながら2階の窓から飛び降りた!
因みに足が折れたのでミオに『再生』してもらった…