逆賞金首
空戦、いつやるの?
さぁ?
無法なアレッサンドロ海に浮かぶ、大小数百の島嶼の中には、数カ所の中立地帯がある。
ある日、中立地帯一つ、アドリア島の酒場〈グランデ・マンマ〉に、アレッサンドロ海の有名な賊のボス数名が揃って来店した。
普通は絶対に、決して見られない光景である。日頃から常に対立し、事あるごとに決闘している賊のトップが、肩を並べて同じテーブルに仲良く(?)座り、同じ酒を注文し、それぞれのマッチを与えあっていた。この時、店にいた客のほとんどが、明日は空から槍が降って来ると察知した。
ただならぬ緊張感が、店内を覆った。
客達が、人生の唯一の楽しみである酒にも手をつけず、固唾を飲んでボス衆の動向に注意していると、この辺りでは見かけない男達が入店して来、そして、ボス衆が居座るテーブルに近寄って行った。
哀れ、余所者よ、殺されるぞ。
しかし、客達の危惧は外れた。
「おお! 来たか! まぁ、座って、酒でも頼めや」
ボス衆の一人が立ち上がり、寄って来た男達に着席を促した。男達は着席し、各々思い思いの酒を注文した。
続いて、ボス衆の一人、空賊・ライオネル団のボスが、男達の前に一枚の紙を差し出した。
「今日アンタらに来てもらったのは他でもねェ。そいつを叩き墜としてもらいたい」
男達の視線は紙に集まった。そこには、真っ黒に塗装された、空冷式発動機を備えた低翼戦闘機の写真と、その操縦士と思われる、黄色の肌の東方民族の男の写真が貼り付けられていた。
ライオネル団のボスは続けた。
「アンタらも、イッパシの賞金稼ぎなら、〈黒い隼〉の名は聞いた事あるはずだ。評判通り、凄腕のパイロットだ」
男達は黙ったまま、酒を飲んだり、煙草を吹かしたりしていた。それでもライオネル団ボスは力説を続けた。
「だが、俺達はアンタらの腕を見込んで頼みたい。かつてエース・パイロットとして名を馳せた、アンタらだからこそ頼みた……」
「よぉよぉ」
男達の一人、テンガロンハットを被った男が、ライオネル団ボスの力説を途中で止めた。そして煙草に火をつけ、スゥッと吸い込み、吐き出してから曰く、
「能書きはどうでも良い。要はいくら出すんだ? そのエテ公を叩き墜としたら」
突然の問いにも関わらず、唖然とするライオネル団ボス以外のボス衆は、いたって落ち着いて対処した。
「撃墜したら1,000,000アス出そう。殺せばプラス500,000アスだ」
テンガロンハットの男はニタリと笑い、煙草を灰皿に押し付けると、ボス衆に追加提案をした。
「そこに極上の女を足せ。ガバガバのマグロ娼婦じゃねェ、アレッサンドロ海で一番の女をだ」
ボス衆は一瞬顔を見合わせると、再びテンガロンハットの男の方を向いて、首を縦に振った。それを見たテンガロンハットの男をはじめとする男達は、勢い良く立ち上がった。
「良いだろう、この仕事、引き受けた」
ボス衆は歓喜の声をあげ、男達それぞれに握手を求めた。テンガロンハットの男は奇妙なまでに口元を歪め、満面の笑みを見せて握手した。
ここに、第一次対隼包囲網が形成されたのであった。
能書きはどうでも良い
今はこの賞金稼ぎ団の搭乗機を考えるのに精一杯だ
Bf109かスピットか、はたまたF4Uか
どうしよっかなぁ……