表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/51

第30話、グノーム温泉


 リアナが合流した。


 彼女いわく、ユウラは台地の上を移動しているという。この地下から脱出すれば、そのうち合流できるだろう、と狐人の少女は言った。アバウトにもほどがあるが、まあ慧太やアルフォンソが索敵飛ばせば見つけることはそう難しい話ではない。


 アルフォンソがいうには、慧太とグレゴがツヴィクルークに飲み込まれた直後は、大変だったそうだ。セラは取り乱すし、リアナが唐突に現れたり、ツヴィクルークの触手に対応したりと面倒だったらしい。……セラがものすごく恥ずかしそうに顔を赤らめていた。改めて指摘されて羞恥心がこみ上げてきたのだろう。可愛いと思った。心配かけたのが心苦しくはあるが。


 リアナは慧太のいない分を補ってあまる活躍を見せ、慧太たちを助けようと前に出るセラを援護し、その弓矢で触手や花頭を撃ち抜いていたらしい。


 ツヴィクルークを退治した慧太らとグノームの団体は、一度戻り、グノームたちの温泉がある一角へと向かった。ツヴィクルークの体液や消化液を浴びたままというのは身体によくない上に、何より臭かったのだ。


 彼らの温泉は集落とは別のところにあった。お湯が湧き出る場所を掘り広げ、ひとつの休憩所としたのだ。

 化け物植物の体液を温泉そばの洗い場で流した後。


「どわー!」

『どわーっ!』


 変な掛け声を上げながら、グノームの野郎どもが土色に濁った温泉にダイブした。派手な水しぶきを上げてお湯が飛んだが、連中はお構いなしだった。


「小僧ー!!」


 グレゴが温泉に半身を沈め、その岩のような胸板を持つ逞しき肉体を披露しながら手を振ってくる。


「オマエもさっさと入らンカー!」

「お、おう……」


 慧太は、まわりに脱ぎ散らされたグノーム人らの服やら装備やらを見やる。……脱衣所はないらしく、適当に放り出されたそれに戸惑う。


 ――人前では脱ぎたくないんだけどな……。


 普段から全裸だから。服も装備も自分の分身体からできているので、『脱ぐ』というお芝居が面倒くさいのである。


 しかも――慧太はグノームの男どもを眺める。豪快に笑いあい、肩を組んだりしている屈強な体躯の野郎ども。地下暮らしで穴掘っている彼らが筋肉隆々なのは理解できるが、その……その中に混ざるというのはどうも……。


 ――オレもアルフォンソのように来なければ……いや、無理か。


 この場にいない分身体は、温泉自体に近づかなかった。入る理由がなかったからだ。だが慧太は、ツヴィクルークの返り血ならぬ返り液を浴びているので、洗わない理由がなかった。


 さて、そのグノーム人たちだが、身長では慧太が高いのだが、如何せん彼らに比べたら細すぎるのである。しかも股間のあれを隠す気がまるでない。まあ、それが彼らの流儀なのだろう、と慧太は諦めムードである。

 髪も髭もないおっさんたちで賑わう風呂――ああ、どうせなら可愛い女の子たちだったらいいのに。

 慧太は一瞬邪な想像にふける。このままセラやリアナのいる湯へ行けば、ただの覗きないし変態だが、女性に変身シェイプチェンジすれば同性で済むのでは、と。


 ――まあ、アウトだろうけど。 


 セラに対してシェイプシフターである正体を明かす気などない慧太である。仮に化けたとしても、どうやって言い訳するというのか。


 ――リアナは平気そうだけど、セラはなぁ……。


 あれで一国のお姫様だ。ベタな漫画だと烈火のごとく怒られて――いや、漫画でなくても怒られるか。


 ――あの二人、大丈夫だろうか


 不安になる。リアナは無口だから、慣れないとかなり気まずいのではないか。セラは周囲に気を使う性質のようだし。……まあ、気にしても仕方がない。

 慧太は静かに温泉に入った。久しぶりの風呂だが、温泉というだけあって熱かった。だが自然とホッとした吐息を吐き出す。温泉なんて、いつ以来だか。


「小僧、小僧」


 グレゴが近づいてきた。何となく身構えてしまう。


「グノームの温泉へようこそダ。湯加減はどうダ?」

「少し熱い。が、温泉ってのはこんなもんだろう?」

「わかっとるナ、小僧! いや兄弟!」


 ガッハッハ、とさも当たり前のように肩組みするような格好になる。おっさんに抱かれても嬉しくねえっての――


「兄弟」

「兄弟!」


 グノームの男どもが寄ってきた。口々に「兄弟!」と言い、まるで促しているように見える。


「……き、兄弟!」


 慧太が声を張り上げれば、グノームたちは一斉に『兄弟!』と叫んで腕を突き上げた。

 とりあえず、よくわからない儀式が勝手に終わり、慧太はグノームの兄弟に認められた。


「ガッハッハ! 兄弟よ」


 どこから持ってきたのか、鉄の碗を差し出される。中は……おそらくグノームの酒だ。


「オマエさんのおかげで、ワシらは命拾いした。墓場モグラもダガ、ツヴィクルーク……オマエさんがいなけりゃ仲良く奴の胃で溶かされとったに違いない」

「よせよ、旦那」


 命の借りは大きいかもしれないが、だからと言って何か要求したりはしないぜオレは――照れくさくなりながら、慧太は酒の注がれた鉄の碗を受け取る。


「そこで、ダ。兄弟。ワシは、オマエさんらについて行こうと思う」

「へ?」


 つまり――


「ライガネンへ行くってことか?」

「そういうこったナ」


 グレゴは笑った。いやいや、そりゃ来てくれたら頼もしいけどさ――慧太は首を振った。


「いいのか? 言っちゃなんだけど、危険な旅だぜ? 奥さんいるんだろ?」

「あのなぁ兄弟。ワシら地下に住む者にとって危険なんて日常なンダ」


 グビリ、とグレゴは酒を呷る。


「どこにいたって、落盤がありゃ、ぺしゃんこなンダ。いつ何時、頭に岩が当たるかわかンねえ。グノームの民はいつだって命懸けよ……なあ兄弟?」

『兄弟!』と、グノームの男どもは碗を掲げた。

「ワシはな、オマエさんらのためなら命なぞ惜しくナイ……そう思ったンダ」

「グレゴの旦那……」


 慧太は自身の目元が熱くなった。――なに感動してんだよオレは。

 ただ、その気持ちは大事にしたいと思った。


「まあ、旦那がそうしたいって言うんなら、オレは止めないよ。あ、ただセラに一言聞いてからな。彼女が嫌っつーたら、この話はなしだからな……兄弟?」

「兄弟!」


 ガツンと碗がぶつかり音を立てる。鉄なので割れはしなかった。


「力仕事なら任せてくれ! ガッハッハ!」


 そこで飲んだグノームの酒は、からく熱かった。

元版とあまり変化なし。

次回更新は、明後日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

リメイク前作品『シェイプシフター転生記 変幻自在のオレがお姫様を助ける話』
シェイプシフター転生記
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ