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十一話 一変していく関係性

 ディエルが仲間(?)になってから数日が経った。アルヴと共にいるドラゴンは、三人も背中に乗せて飛ぶことが出来ない為、また、ユナの強い申し出により歩いて旅を続ける彼らは大きな問題に直面しつつあった。


 それは、『ディエル信用ならない問題』である。


 原因は至ってシンプルで、彼女が時折嘘をつくからだった。


「ユナの故郷はあっちだ!」


 道案内を任されたディエルは、こうして自信満々にアルヴとユナを誘導する時があるのだが……。


「おい、方角は分かってるって言っただろ。そっちは逆だぞ?」

「ムッ! そっ、そうか。流石はアルヴ様。下僕の嘘を見抜くとは、大したご主人様だ! これはもう、私のことが好きだから見抜いたまであるな!」

「……いや、方角は分かってるって言ったんだけど」

「ふっ、アルヴ様は素直じゃないな? なるほど、だから下僕である私も、ついつい素直になれず嘘をついてしまうわけか……。ということはつまり、私とアルヴ様は一心同体ということか。また、ご主人様との仲を深めてしまったようだ」

「深まってるのはお前との溝だろぉぉ! 一体何度同じ嘘をつけば学習するんだよ! あぁ? そろそろ殺すぞ」

「あぁぁ! 殺すなんてイヤだぁぁぁ! そんなことされたらオカシクなっちゃうぅぅぅ!」

「オカシイから殺すんだろ……順序が逆だぞ、それ」

「なっ、何を! 私をオカシクしたのはアルヴ様だぞ! 履き違えてもらっては困る! これはもう、責任を取って私と共に国に攻め込むまであるな! 攻めて攻めて攻めて! ……あん、そんなにして私受けきれるかしら? せめて殺すのはやめて欲しいな?」

「上目遣いで俺を見てんじゃねぇよぉぉ! 途中からお前との攻めぎあいになってんだろ! その気色の悪い妄想をやめろ!」

「……妄想の何が悪い? 念ずれば花開くというではないか。まぁ、アルヴ様が念ずとも、私の花はいつでも開い――」

「顔を赤らめて言うなぁぁ!」


 こういった具合で、ここ数日ディエルはことあるごとに嘘をついていた。

 もちろん悪気があるわけではない。ディエルにとって、一番恐れているのは、仲間がユナの故郷を滅ぼした事実がアルヴにバレてしまうこと。それを阻止するため、何とか邪魔をしているわけだが……彼女の阿呆さと、アルヴに罵られる度に体を突き抜ける快感により、とてつもなくわざとらしい嘘になってしまっていたのである。


 アルヴとユナにとって、これは由々しき問題ではあったものの、ディエルにとってもまた、これは由々しき問題だったのである。


「あはは……ディアルさん、今日も絶好調だな」


 そんな二人を遠巻きに見ながら呟くユナ。彼女ふ、ディエルが仲間になってから、こうして一人離れて歩くことが多くなった。


「……仲良いなぁ」


 ポツリと洩れた言葉。それはあまりにも無意識だった為に、言ったことさえも気づかなかった。


『嫉妬か?』


 不意に頭の中に流れてくる言葉、それはドラゴンの声だった。


「違いますよ……ただの感想です」

『……そうか』


 ディエルが仲間になってからのもう一つの変化。それは、ユナがドラゴンと心の対話が出来るようになったことだ。ドラゴンは、そういった会話の方法を普通の者にはしない。だが、ディエルが仲間になってからというもの、ユナがあまりにも孤立していることが多くなった為にドラゴンはそうやって彼女と話すようになった。

 最初、ユナはその事に驚いた。ドラゴンは普段上空を飛び、近くにはいないため声が聞こえたことに戸惑った。だが、それも初めの頃までで、今では平然と会話をしてしまっている。


「あなたは良いんですか? このままだと、アルヴさんをディエルさんに取られちゃいますよ?」

『ふっ、そもそも私とアルヴは主従関係にはない。比べるのは間違っている』

「そうでしたね」


 ドラゴンと話すようになってから、ユナは彼からアルヴの多くを知るようになった。それらは、アルヴ本人からは決して聞くことが出来なかったであろうこと。彼が決して、自分の口からは語らないであろうことだった。


 だから、結果的に見ればディエルが仲間になったことで、ユナは今まで以上にアルヴを知ることになる。しかし、彼の過酷な過去を知り、今まで以上にアルヴとの間に壁を感じてしまった。


 そして、だからこそ彼はディエルとは仲良く出来るのだと思った。同じ、過酷な過去を共有する者同士だから……と。


 そこには、別に嫉妬とかいう感情はない。そのはずなのに、やはり二人を見ていると疎外感にも似たような感覚に陥る。そして、それの何倍もの疎外感を、アルヴやディエルは人から感じてきたのだろうとも思った。


 私なんて……。


 だから、そうやって込み上がってくる感情を切り捨てる。それは、ユナが他の子供と比べてはるかに理性の効く者だったからかもしれない。


 そして。


「アルヴ様! 喉が渇きました!」

「なんだよ、もう水を飲み干したのか……大事に飲めって言っただろ」

「はい! アルヴ様と居ると妙に汗をかくのと、夜にアルヴ様との事を妄想して余分に水分を噴射してしまうため、私は多くの水を必要とします!」

「全然大事にしてねぇじゃねーか……あと、サラリと卑猥な発言をするなよ。お前が百パーセント悪い。水場があるところまで我慢しろ」

「あれ……聞き間違いですか? 悪いのは百パーセントアルヴ様だと言ってるんですが? あと、アルヴ様のせいで、私は何度もイッてるんですが?」

「ついでに余計な報告してんじゃねーよ。水も噴射するのも我慢しろ。これは、命令だ」

「めっ、命令! なるほど、これはドエスプレイという奴ですね?」

「……もう何でも良い」


 ディエルは、とてつもなく理性の効かない者だった。 


 だからかもしれない。『ディエル信用ならない問題』は、それよりも強烈な彼女の性格により、やがて問題視されなくなっていった……。

なんかノリノリで書きましたが、なにこの話……。

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