魔王討伐始めました
あぁ、俺死んだな
目の前に迫るトラックを見てふとそんな事を思った。
我ながら呑気だなって思ってしまうがそれしか思いつかなかった。
そんな事を考えているうちにトラックに跳ねられ俺の身体は宙を舞った。結構高く飛んだから落ちたら痛いだろうなぁなんて思っていたが、その痛みが訪れる前に、ぶっつりと意識が途切れた。
あぁ、俺死んだな
気が付いたら見知らぬ人が目の前にいた。いやこの場合見知らぬが目の前にいたかな?どっちにしろ奇跡的に俺は生きてたみたいだし、良かった。
「すみませんがどちら様ですか?」
見た感じ白衣は着ていないので医者では無いだろう。トラックの運転手かその関係者辺りかな?
「私はまぁ簡単に言うと神様だな。もっとも人間が考えている様な崇高な生き物では無いが……」
「神様?って事はやっぱり俺死んでんだな。よくよく考えればあの事故で死なない方がおかしいし、万が一生きててもこの身体な訳無いか」
少し冷静になった頭で考えれば直ぐに答えが出た。この人が本当に神様かどうかは置いといて、痛みもなにも無いのはおかしいし。夢か死後の世界と考えるのが無難だろう。もっとも夢なら今頃俺は手術代で寝てるんだろうけど、夢を見るほど浅い眠りなら手術の痛みで起きそうだけど、どうなんだろ?
「……はなしていいかな?」
「おっと、忘れてた。で、俺は天国ですか?それとも地獄ですか?それほど悪さしてないつもりだから出来れば天国がいいんですけど」
「あぁ、私は閻魔殿じゃ無いからそっちは決められ無いんだ。それに君はまだギリギリ死んで無いしな」
「ん?俺まだいきてるんですか!?いやー特に未練とかも無いけど、まだまだやりたい事いっぱいあったし、生きてるんなら良かった。あれ?じゃあなんで神様が居るんですか?というかもとの世界に戻して欲しいんですが」
「うん、まぁ色々あるんだがこことは違う世界で魔王がそろそろ復活しそうでな、君に魔王を討伐して来て欲しいんだよ」
「いや、そんなよその国……よその世界なんかに行かずに元の世界に戻りたいんですけど?」
魔王を倒せって、なに言っちゃってんの?この超平和な日本国民が魔王を倒せと?そもそもなんで俺?それこそアメリカとかイタリアみたいなとこの軍人の方がいいだろ。
「ではこうしよう。君が魔王を倒せば元の世界に戻そう。魔王が死んで私もハッピー、元の世界に戻れて君もハッピー……どうかな?」
「どうかな?じゃないだろ!両方得だね!みたいに言ってるけど結局魔王倒すまで元に戻さないからって言ってるのと同じだからな?そもそもなんの技能も無い俺が魔王に勝てるわけねーだろ!」
……ハッ!いかんいかん、神様相手に叫んでしまった。平常心平常心。スーー…ハーー…よし
「ゴホン、って事なので他を当たって大人しく俺を元に戻せクソッタレ」
あれ?おかしいな…落ち着いたと思ったのに全然言葉遣いが直ってない。心なしか神様の眉間に血管が浮いている様な?
「……適当に力をあげるからそれで頑張ってくれ。魔王倒すまで元に戻さないからそのつもりで」
その言葉を聞き終える頃には意識が薄れていった