97、支配
俺は先ほどまでのラゼハードへの同情を忘れないまま、だが、俺を支えてくれるベアトリーチェ達のおかげで寂しさを感じずにラゼハードの記憶を辿っていった。
ベアトリーチェ達は俺のそばにしっかりと居ると感じさせてくれる。
俺を愛していると・・・・・・。
俺から離れないと・・・・・・。
俺を一人にはしないと・・・・・・。
そして俺に愛してくれと・・・・・・。
そばに居てくれと・・・・・・。
その想いを伝え続けて、俺の気持ちが強くあるよう支えてくれている。
そうなんだよ。
俺にはこうして支えてくれる者が居る。
みんなの気持ちが俺の心を温めてくれる。
俺を強くしてくれる。
同じラゼハードの身体に居るせいなのかもしれないが、今はみんなのことがいつも以上に身近に感じる。
ああ、俺は一人じゃない。
過去も現在も未来も共有してくれようとする皆の気持ちがはっきりと感じられる。
あまりの嬉しさにちょっと泣きそうだよ。
身体があったら我慢しても泣いてるね。
俺はみんなに支えられて過去の記憶へ、もっと過去の記憶へと潜っていった。
いつ最後に辿り着けるのか判らない膨大な量の本を読み、ページをひたすらめくっているような感覚。
ラゼハードの記憶にラゼハード以外の存在が感じられなくなってかなりの時間が過ぎた。ページにはラゼハードが感じたものがそのまま記されている。
ラゼハードの記憶で数千年分経った。
数千年分のページに俺は触れた。
・・・・・・そして俺は見つけた。
まだ真っ白で、目に見えるものも鼻に感じる香りも耳に聞こえる音も何もかもがまったく判らない状態の記憶。ラゼハード自身も強く意識しなければその記憶に触れることはできないだろうほど真っ白な記憶。
見たり聞こえたりしていることすら理解していない時の記憶。
(エルザーク。最初の記憶を見つけたぞ。これから俺はどうしたらいいんだ?)
(その記憶をお前の所有物にするんじゃ。具体的には、お前の意識をその記憶に重ねろ。その記憶にならお前が取り込まれる心配はない。)
エルザークの指示に従って意識を重ねようとしたが、どうも上手くいってる気がしない。ラゼハードの記憶が自分の記憶ではなく、本を読んでるかのような感覚のままだった。
(どうなったら俺の所有物になったと判るんだ?)
(ふむ。そういうことを言うということはまだダメなようじゃな。)
(ダメって?)
(記憶の核を所有できたなら、その他の膨大な記憶がお前に従うはずなんじゃ。それは何もしなくとも感じてしまうほどの衝撃のはず。)
(そんな衝撃は感じてないから確かに上手くいっていないようだ。)
(ではこうしよう。我がお前の意識に同調して手助けしてやろう。)
(いつもいつもすまないな。デキの悪い弟子を持った気分だろう?)
何かしら新たなことに挑戦するとき、エルザークがいつも助けてくれた。
エルザークの手助けなしに俺一人でできたことなどそう多くない。
俺が身につける必要のあったことにはエルザークの希望も含まれてたとはいえ、それを思い返すと申し訳ない気持ちになる。
(構わんよ。本来なら我が何とかできれば良かったのじゃ。だがお前の力を借りねばならんのじゃから、この程度のことは当然のことじゃよ。)
(そう言ってくれると助かる。それじゃ頼む。始めてくれ。)
俺の意識を包むような・・・・・・強い力を持つ暖かな意識・・・・・・エルザークの意識が俺の意識を抱え込んだ。
その状態のまま記憶の核に触れる。
俺の手が記憶の核に触れた途端、ズンッという衝撃を感じた。
何だろう・・・・・・俺の記憶に俺のそれまでの記憶の幾千倍もの情報が増え、それが俺の新たに所持した記憶の重さを感じさせてる。
(うむ。今、記憶の所有者が切り替わったな。これでラゼハードの記憶にお前が取り込まれることもない。)
(ああ、判るよ。先ほどまでのプレッシャーをまったく感じなくなった。)
エルザークの意識が俺から離れたのを感じた。
また俺の障壁を押しつぶそうとしていた膨大な力も消えたのが判った。
俺はもう安全だと確信をもって障壁を外す。
・・・・・・すると
そこには広い空間があった。
いや、見知らぬ世界があった。
とてつもなく広い草原があり、青い空がある。
(エルザーク。見ているんだろ?これはどういうことだ?)
(・・・・・・ちょっと待て・・・・・・ふむ・・・・・・なるほど・・・・・・そこはラゼハードが自身の中に作った時空じゃな。)
(つまり?)
(そこは一つの世界なんじゃ。そうだな・・・・・・お前はラゼハードの身体の所有者として認められたんじゃ。その世界も今はお前のものだ。その世界に意識を置いておけばその中ではお前は今までのお前として生きられる。ラゼハードとしての意識を持ってみろ。お前にはもうできるはずだ。)
ラゼハードの身体に入った時と同じく意識をラゼハードの外へ向けようとすると、俺はラゼハードとしての目で俺を見るエルザークやティアーラ達の姿が見えた。
身体を起こそうとすると、この身体は自分の身体のように・・・・・・もう自分の身体なんだが・・・・・・何の違和感もなく動かせた。
エルザークを除いたティアーラ達が俺を見て後ずさっている。
そうか、巨大な竜が動き出したとビビったのか。
「ああ、俺だ。ゼギアスだ。」
俺は心配しなくていいと伝えたかった。
だが、俺の言葉がわからないのか、エルザークの他には伝わっていないようだ。
「思い出せ。我と最初に会った時をな。竜の言葉は思念解析を使える者以外には伝わらん。」
ああ、そうだったな。
目の前にいるティアーラ達に思念解析の魔法を使う。
・・・・・・ヤバイ。
ティアーラ達だけに魔法をかけるつもりだったのに、俺から放たれた魔法の光がグワァッと広がっていった。これどこまで魔法の影響下になったんだ?
「馬鹿者!まだ使いこなせない身体で魔法など使うな!ラゼハードの身体とその力に慣れるまで大人しくしておれ。」
エルザークに怒られた。
ま、怒るよね。
思念解析の魔法だったからいいけど、ちょっとした火を灯そうとして火属性の魔法なんか使った日にはどんな災害を起こしていたか判らん。
でも、とりあえずこれでティアーラ達にも言葉は通じるだろう。
「・・・・・・ああ、ティアーラ。俺だ。ゼギアスだ。怖がる必要はないよ。」
俺の言葉が通じたようで、ティアーラ達の表情が和らいだ。
これでよし・・・・・・そう思って安心したら、俺の中で異変が生じてるのを感じた。
やけに気持ちがいいのだ。
はて?なんか馴染んだ感覚だが・・・・・・と、意識をラゼハード内の時空にある俺の身体に移すと、奥様達が抱きつき、触れ、口づけしている。
どうりで気持ちがいいと思った・・・・・・じゃなくて、何をしてるんだ!!
「嬉しいんだけど、今はまだそんなことしてる状況じゃないと思うんだけど?」
俺は奥様達に身体を自由にされながら話す。
「あら?だってもう私達が支えなくても大丈夫なのでしょう?」
俺の頭を膝に乗せ、髪をなでてるベアトリーチェが穏やかな表情で言う。
「そうよ。ここには私達しかいないのよん?これはもうダーリンと情欲に溺れろと言ってるようなものだと思わない?」
俺の顔に舌を這わせてマリオンが妖しく危ない表情で言う。
「しかし、皆裸なんだな・・・・・・これはどうにかしないと・・・・・・。」
そうここに居る者は俺も含めて全裸だ。
艶めかしい全裸の女性が十人・・・・・・ん?十人?
一人多いよな?
俺は一人一人確認していくと、アルステーデを見つけた。
他の奥様達のようにスリスリしている。
俺の腕に頬ずりしているんだ。
「あ・・・・・・アルステーデ!!何をしてるんだ!・・・・・・じゃなくてどうしてここに?」
「ああ、アルステーデさんはあなたそばにずっと居たいというので私達と一緒に来たのですよ。」
俺の顔を撫でながらミズラが説明した。
「んー、ずっと一緒に居たいと言ってくれるのは有り難いんだけど、もう戻れないんだよ?いいの?」
外に居るティアーラ達に申し訳ない気がしている。
「ええ、ゼギアス様のおそばに居られるなら・・・・・・。」
俺の腕に顔をあてながらアルステーデは言う。
「うーん・・・・・・しかし、これは・・・・・。」
草原しかないからみんなは暇なのかもしれない。
しかしだな。
ここには俺達以外誰も居ないと言っても、意識を切り替えるとそこにはラゼハードの身体・・・・・・あ、もう俺の身体か・・・・・・を見守っているティアーラ達が居るわけで、その状況で全裸でイチャついてるというのは俺の感覚的に思い切り恥ずかしい。
これってある意味羞恥プレイ?
いや、そんな馬鹿なこと考えてる時じゃない。
意識を外に戻して
「なあ、エルザーク。俺って人化できる?」
「ああ、できるとも。お前にできないことを探す方が難しいんじゃないか?」
「ああ、それと・・・・・・アルステーデのことなんだが・・・・・・俺の新たな妃にしようと思うんだけど・・・・・・?」
エルザークに確認してからティアーラに聞く。
「ありがとうございます。竜の巫女としてラゼハード様の新たな持ち主となったゼギアス様の妃になれるなど娘はもちろん私どもも望外の喜びです。」
満面の笑みを浮かべてティアーラは答えて跪く。
「まあ、成り行きとはいえ・・・・・・俺もこの先もずっと一緒に居てくれる人が増えて嬉しいよ。これから宜しく頼むな。」
この場は簡単な挨拶に留めて、俺は再びラゼハード時空に意識を戻す。
「なあ、みんな。これから人化するつもりなんだけど、その前にその格好をどうにかしなくちゃいけない。」
俺の身体でどんどん激しい状況を作り出してる奥様達に言う。
ベアトリーチェでさえ、俺の頭にキスし始めていた。
これは一旦止めないといけない。
もちろん状況が落ち着いたら奥様達と思う存分イチャつく予定だが、今はまだマズイ。
「ああ、その前にアルステーデ。今日から俺の妃の一人になったとティアーラに伝えてきた。それでいいかな?」
「まあ、まあ・・・・・・こんなに早く・・・・・・嬉しいですわ。幸せですわ。ゼギアス様、永遠の愛と忠誠をここに誓います。どうか末永く宜しくお願いいたします。」
俺の腕を放してアルステーデは、ティアーラ同様跪いた。
アルステーデの様子に俺は安心した。
「それでだ。まず皆にはその魅力的な身体を外の者に見られないようにしなくちゃいけない。そう服だ。」
俺は意識を集中して一人一人の日頃着ている服を思い浮かべた。
ベアトリーチェには白いワンピース。
マリオンには赤いドレス風。
サエラには緑の・・・・・・といったように全員の服を思い浮かべた。
すると、外に出ても問題ないよう皆が衣服を身につけた。
「あら、凄いですわ。・・・・・・でも、ちょっと残念。ま、続きは夜ですわね。」
妖しい光が瞳から消えたマリオンが言う。
そして俺自身もいつも着ているようなシャツとスラックスを身につける。
「よし。じゃあこれから人化する。」
俺はそう言ってから
(エルザーク。最初だけ手伝ってくれ。俺と妃達全員を意識のある者ごとに分けて人化したい。)
(判った。)
エルザークの返事を聞いて、俺は俺達が人化した姿を思い浮かべ、身体から力を引き出す。
エルザークの意識が俺達に届いた途端、目の前に跪くティアーラ達の姿が見えた。
自分の身体を確認すると、元通りの人型の俺に変わっていた。
周りを見ると、ベアトリーチェ達も自分の身体を確認している様子が見える。
「竜に戻る時は、ゼギアスの意思で戻れるはずだ。」
俺の前に近寄ってきたエルザークが微笑みながら言う。
「リーチェ達が戻りたくなくても?」
「ああ、お前の意思次第だ。ベアトリーチェ達はあくまでもお前の一部分に過ぎん。彼女達の意思だけでは竜に戻ることも人化したままでいることもできん。」
ふむ、でも隠そうとしなければ俺達はお互いの意識が判る。
緊急時じゃなければ話し合ってから竜体に戻ればいい。
そもそも竜体で居ないほうが日常生活には都合がいいはずだよな。
妃になったばかりのアルステーデにティアーラ達家族が近寄りお祝いを言ってる様子が見える。先ほどは竜の姿での挨拶で簡単に済ませたが、ここはきちんとしなくてはとティアーラの前に進む。
「改めて挨拶しよう。アルステーデを妃として迎えることとなった。ティアーラ、あなた達は俺の家族ということになる。これから宜しく頼む。」
ティアーラとライナールが恭しく礼をする。
俺も軽く頭を下げたあと、横のアルステーデに”これから宜しくな”と微笑んだ。
「孤児院のこと、フレデット頼むよ?それとコーネストとあなたがやってきた生贄についてなんだが・・・・・・この身体を手に入れて判ったことがあるから、そのうち話そう。この件については、フレデットあなたは知っておかなきゃならない。」
この場では話せないことなのだろうとフレデットとスタキーレとゾーエの二人の子供達も理解したようだ。俺の言葉に黙って礼を返してきた。
「さてと・・・・・・とりあえずこれでこの件はひとまず落ち着いたということになるのかな?」
エルザークの顔を見て、苦笑しながら俺は聞く。
だが、エルザークの表情には笑みはない。
あらま?
まだ何かあるって言うのか?
「ラゼハードの身体が引き起こしたようなことはもう無いな。だが・・・・・・。」
「ん?何か問題が残ってるようだが・・・・・・話してくれよ。」
「うむ。竜でありながら竜の理から外れたお前をどうしたらいいのかと思ってな・・・・・・。」
ああ、それか。
神龍を頂点とした竜の世界の体制に俺の居場所が無いということね。
「んー・・・・・・エルザークの弟子ということじゃダメか?」
「我が生きている間、もしくは次の神龍が生まれるまではそれでも構わん。だが、神龍に寿命があるかは我にも判らんし、龍王には確実に寿命はある。まあ、ディグレスの寿命はあと千年以上はあるじゃろうが・・・・・・。」
ああ、エルザークとディグレスが存命の間はエルザークの弟子という形で神龍の意思に俺が従う体制で問題はないけど、その後が問題だということか・・・・・・。
エルザークとは親しくなったしウマも合う関係だからいいけど、次の神龍と仲良くやれるかは判らないからなぁ。
「じゃあ、どうする?」
「正直に言うとな。お前は中身こそゼギアスだが、身体とその力はラゼハードのもので、ラゼハードは我ら龍にとって逆らうことのできぬ畏れ多い存在なのじゃ。中身がお前だと知ってるから我も普通にしていられるが、気を抜くとお前の身体から感じるオーラの前にひれ伏しそうになる。我ですらそうなのだ。他の竜が龍王とお前のどちらに従うかなど考えるまでもない。ラゼハードの身体に魂が宿るとこうなるとは我も予想していなかった。」
うーん、俺の存在は竜の理という体制を壊してしまうということね。
「その辺は相談に乗るからさ?エルザークとディグレスで良い案を考えてよ。」
「・・・・・・そうじゃな。お前を滅ぼすことももはやできぬし・・・・・・。」
なんか物騒なこと言ってるけど、聞かなかったことにしてあげよう。
「そのことは置いておいて、お前達は自分の力をしっかりと把握し使えるようになっておかねばならんぞ?」
思い出したようにエルザークが俺達に言う。
「ああ、確かにそうだな。さっきもちょっとだけ魔法を使おうとしただけなのに、かなり効果範囲の広い魔法になってしまった・・・・・・。」
「うむ、お前達は周囲千キロは人の居ない場所へ行き、結界を張ってその中で自分の力を把握するんじゃ。いいか?ラゼハードの力をゼギアスお前は全て使える。そして妃達もどの程度かは判らんが全員が使えるようになっていることを忘れるなよ。特に、今まで魔法を使えなかった者もおるじゃろ?その者達には特に練習させておけ。」
ふむ、ミズラとセリーナ、そしてリエッサには特に練習が必要だと。
「魔法だけではないぞ?龍気もだ。それも・・・・・・我やお前も知らぬ龍気をラゼハードは身に纏っていたことを忘れるな?他にもまだ判らない力があるのは確かなんじゃ。創造と破壊に関する力は確実にいろいろとあるはずじゃからな。」
ああ、確かに。
デュラン族以外には人型種族で龍気を使える者は居ないんだ。
「念を押しておくが・・・・・・妃達ですら・・・・・・龍王を凌ぐ力を持ってしまったことを絶対に忘れるなよ?」
なんと・・・・・・龍王より強いのは俺とカリウスだけだったのに、急に十人も増えたのか・・・・・・人型決戦兵器と呼ばれた当時の俺より強い妃が十人・・・・・・。
・・・・・・ということは・・・・・・全員サロモン王国所属だし・・・・・・これマジでヤバイよな。
まあ多分暴走することはないだろうが、妃達が暴走したら俺が竜体になって強制的に戻せばいいか。
最大の問題は俺か・・・・・・俺を止めることができる者が居ない。
でも俺は奥様達の意見は必ず聞くし、力を使う時は今まで以上に慎重になれば大丈夫だろ。
「そうだな。十分気をつけるよ。」
エルザークの忠告を肝に銘じて、俺は気を引き締める。
「そういうことだから、魔法でも龍気でも何でも力を使うのはしばらくやめておこう。使っても構わないのはせいぜい転移魔法くらいだな。あれなら他に影響無いだろうからさ。早いうちに皆でどこかで練習しような。」
俺からの注意に妃達も納得してる様子。
さてどうなったか心配してるだろうダヤンのところへ報告に行くか。
俺は一つ実験してみる。
複数人連れて転移魔法を使うとき、今までは連れて行く者と接触していなければならなかった。そうしないと転移魔法の効果を自分以外に及ぼせなかったからだ。
だが、今の俺ならば・・・・・・魔法使用する前に連れて行く者を転移魔法に組み込んで接触しなくても効果を及ぼすことができそうだ。
一応、エルザークにちょっとした実験することを伝えてから俺は転移魔法を発動させ、ダヤン達が待つ遺跡まで移動した。
・・・・・・
・・・
・
ラゼハードの神殿からダヤン達が待つ遺跡まで転移した。
うん、エルザークも妃達もティアーラ達も全員連れて転移できた。
使ってみて感じたが、同行する者に接触する場合より魔法力の使用量が多少増えるけど術式を工夫したらカリウスとサラなら使えそうだ。
今回のことをサラに報告しに行ったら教えてあげよう。
遺跡では、護衛兵はもう通常任務に戻して居なかった。
そこにはダヤンとノルスタイン達精霊師が五名残り、輪のように座って何やら相談しているようだ。
「よう!ダヤン。無事戻ってきたぞ。」
笑顔で近づいていくとダヤンは立ち上がり
「ご無事でしたか・・・・・・その姿ということは・・・・・・ラゼハードを支配することには失敗・・・・・・?」
俺の顔を見て安心したと思ったら、次は元の姿の俺を見て作戦は失敗したかのと心配している。
「いや、成功したよ。この姿は人化した姿で本当はラゼハードの姿、つまり竜の身体なんだ。証拠を実際に見せるからついてきて。」
ちょうど良い機会だから、俺は人化と龍化を繰り返して使用してみる。
俺は遺跡の外にあるちょっとした草原まで歩く。
そこで俺は妃達の顔を見回してから龍化した。
さきほど龍の姿から人化する際にエルザークが手伝ってくれたことを真似た。
龍の人化や獣人の獣化など・・・・・・種族の持つ特性を利用した技術というのは、魔法よりもイメージで使用できると知った。そのイメージを実現するためには、イメージと体内の力をリンクさせる必要がある。そのリンクにちょっとしたコツが必要で、そのコツさえ掴んでしまえば魔法を使用するより楽だ。これは龍気を発動させて使用する際とほぼ同じだから、一度手伝ってもらっただけだが簡単に覚えた。
龍化した俺を見たダヤンは驚いて見ている。
そして再び人化し、俺と妃達が姿を現す。
「な?ラゼハードの身体と力は手に入れた。安心したか?」
「ゼギアス様だけでなく、お妃様達まで・・・・・・。」
「ああ、いろいろとあってな。妃達の力が無ければ俺はラゼハードの記憶に引っ張られてちょっと大変なことになりそうだったんだ。だから竜の姿に戻ると俺達は一つになる。」
「・・・・・・今更なのでしょうが・・・・・・ゼギアス様は本当に何でもありですね。」
「ああ、俺もそう思うよ。アッハッハッハッハ。」
微笑みながら呆れているダヤンを俺は笑い飛ばす。
考えてみると、俺と妃達が合体して龍化すると思えば・・・・・・昔のロボットアニメで流行った合体変身ロボみたいだな。向こうは四~五体で合体だが、こっちは十一名で合体だ。こっちのが強そうだ。
「ノルスタイン。それにノルスタインと一緒に遺跡調査してくれた精霊師達。今回の件が解決したのはみんなのおかげだ。心から感謝する。後ほど正式にフリナムへ報告し、サロモン王国国王ゼギアスの名で精霊師の尽力とその功績を称えて報償を渡すよ。本当にありがとう。」
”エルザークのお供は大変だったんじゃないか?”と小声で伝え、ニヤリと笑う。
ノルスタイン達は跪いていた。
その表情には精霊師の誇りを取り戻せた安堵と喜びがあった。
俺はノルスタインが精霊師の有用性を広めたいと考えてた事情をダヤンから聞いていたから、今回の件での精霊師の働きを大々的に広めてやろう。
「さあ、みんなはテンダールに戻ってくれ。俺は今後のことをヴァイスハイト達と相談しなくちゃならないから首都に戻る。フェンニーカ大陸の復興はダヤンが原案を作って首都に送ってくれ。それを元に決めよう。」
ダヤンが頷いたのを見て、俺は後ろを振り返って
「さあ、帰ろう。」
穏やかに微笑んでる妃達に伝えた。
◇◇◇◇◇◇
ゼギアスと妃達、そしてティアーラ達も一旦首都に転移した。
エルザークは今後を相談すると言って龍王のもとへ向かった。
エイスクトル大陸に到着したエルザークは龍王の神殿へ向かった。
白く広い雪原の中に一つだけ巨大な神殿がある。
その神殿の有り様は・・・・・・世界に不自然にポツンとあるようで・・・・・・忌み子だったかもしれない竜族の状況のように思えてエルザークは皮肉な気持ちになっていた。
神殿に入り、入り口からすぐの広い空間まで歩く。
エルザークの姿を見た護龍達は竜の姿のまま頭を垂れ、龍王ディグレスもその大きな頭を動かして礼をする。
「今日は相談に来た。」
エルザークは人型のままディグレスの前まで近づいた。
「エルザーク様が直々にここまでいらっしゃった上で相談となると・・・・・・例のラゼハードの件ですね。」
ディグレスにはエルザークがわざわざ龍王のところまで来た理由は他にはないと判っていた。
「ああ、その通りだ。竜の理の外にある竜、何よりも神龍である我よりも龍王であるディグレスお前よりも竜族に対して影響力ある竜が復活してしまったのだ。対応を考えないわけにはいかない。」
ディグレスなら判って当然とばかりエルザークは話を進める。
「エルザーク様には既にお考えがあるように感じますが?」
龍王の前まで来て、神龍が案もなしに相談するなどということはない。
エルザークの中で既に考えはまとまってるのだろう。
「ああ、ある。だが、それには竜の理に修正というか追加せねばならないことがある。我には理を変える力も権利もあるが、ディグレスの了承を得た上で変えたい。なので本日はここまで来た。」
「龍王は神龍の意思を具体化する存在。エルザーク様がお決めになったことに否ということなどありえませぬ。」
「では・・・・・・。」
エルザークはディグレスに案を説明した。
「構いませぬ。確かにその方法ならば、ゼギアスを加えた理となるでしょう。ですが・・・・・・ゼギアスが了解するでしょうか?」
「あやつは必ず受け入れる。最初は拒むだろうがいずれ必ずだ。」
エルザークの笑顔が悪い顔になっている。
「身近で見守ってきたエルザーク様が仰るのですから大丈夫なのでしょうが・・・・・・ちょっとズルイのでは?」
ディグレスは苦笑していた。
竜の瞳に笑みが浮かび、その大きな口が少し歪んでいる。
「仕方あるまい。アレは不変不滅の存在で、我の力が及ばない存在になってしもうた。アレを竜の理から外れすぎずに、そしてこの世界を破壊する存在にせぬようにするためじゃ。あやつの弱みに付け込むくらいいいじゃろう。」
顎に手を当てて、悪い顔のままエルザークは話す。
「・・・・・・ですが、エルザーク様の案を用いなくても、ゼギアスがこの世界を破壊するとは思えないのですが?」
「うむ。我もそうは思っておる。だがな?今のあいつが命令したら、我ですら逆らえないほどのオーラを持っているのじゃ。万が一に備えて歯止めが・・・・・・保険が必要なのじゃよ。」
「判りました。エルザーク様の御意志に従いましょう。」
エルザークの前に、龍王ディグレスは頭を垂れ、護龍達も再び頭を垂れる。
「しかし・・・・・・あのゼギアスが竜族を恐れさせる存在になるとはな・・・・・・だからこの世は面白い・・・・・・。」
龍王達を見渡しつつ、エルザークはつぶやいた。




