91、源龍ラゼハード
「お母様もお父様と一緒じゃない。自分の命を守るために他の人の命を数え切れないほど捧げてきたんですもの。私はお母様達のようにはならないわ。あんなことを続けてまで生きていたくない。」
フレデットは娘のゾーエから責められていた。
自身の命を守りコーネストの指示に従うことで息子スタキーレと娘のゾーエを守る気持ちがフレデットにはあり、ゾーエの非難に対して反論したい点もあった。だが、本当は自分の命惜しさに子供達を守るという理由に逃げていただけではないかと思わないでもない。
だから今、ゾーエから責められても反論できずにいる。
どうして今になって責められているか。
竜の身体に変化が生じたのだ。
身体から伝わる振動は強くなり、そして淡く光り、今にもただ事ならない事態が生じる予感がしている。
この事態をどうしたらいいかフレデットには判るはずもない。
状況を理解できる可能性があるのはコーネストだけだ。
エルドラドに行ったコーネストに状況が変化したと連絡していたところを娘のゾーエに見られた。
状況を丁寧に報告するフレデットの様子は、娘のゾーエにはコーネストに協力的に接していると見られて責められていたのだ。
娘からの非難を黙って聞いているフレデットの様子は、ゾーエには無視されていると映ったらしく非難は強まった。
こんなところをコーネストに見られてはゾーエの命も危ないと考えたフレデットは、神殿の壁に寄りかかり、二人の様子をじっと見守っているスタキーレに命じてゾーエを神殿の外へ連れ出させた。
神殿に竜の身体と共に残ったフレデットはゾーエから投げつけられた言葉を考えていた。
自分の命惜しさに他人の命を奪ってきたのか?
それは違う。
自分の命を捨てる覚悟をしコーネストの非道な行為を止めようとしたことはあったか?
それは・・・・・・無い。
では結局、コーネストの行為を消極的ながらも認めてきたと言えるのではないか?
・・・・・・そうかもしれない。
だが、誰もが自分の命が大切で、自分の命を守ろうとして何が悪いのか?
他人の命と自分や家族の命を同じように考えなければ非難されるべきものなのか?
しかし、だからと言って数え切れないほどの命をコーネスト唯一人のために失わせる手伝いをして良いはずはない。
それは判る。
ではどうしたら・・・・・・・。
長い年月考えていたつもりだったが、この時ほど真剣に悩みはしなかった。
竜の身体の異変はフレデットを自分の罪と向き合わせた。
・・・・・・
・・・
・
神殿に飛び込んできたコーネストは竜の身体の光りを見て、時が来たのだと感じていた。
竜を見つめながら立つフレデットには見向きもせずに、竜に近寄り憑依を試みた。
・・・・・・だが、コーネストは竜に憑依することはできなかった。
竜の身体に憑依するために意識を向けた途端拒絶された。
その理由はコーネストにはすぐ判った。
竜の身体からは強い気が発せられていたのだ。
何故だ?
意識を持たず、魂の抜け殻である竜の身体が何故これほど強い気を発している?
では、私の不老不死は?
これからも強い者に怯えながら憑依を繰り返して生きるしかないというのか?
コーネストはへたり込み、長年費やしてきた労力が無駄になり、不老不死の身体を手に入れる夢が破れたことに絶望している。
その様子を見ていたフレデットは竜の身体がコーネストの野望に利用されずに済んだことに安心すると共に、コーネストを今日滅ぼすしかないと決意した。
へたり込み呆然としているコーネストの背後から近寄り、自身の赤い髪を一本引き抜く。
引き抜いた髪を手に、ある呪文を唱えてから髪をコーネストの首筋に当てた。
痛みがあるわけではないから、コーネストは何の反応も示さない。
フレデットは自分にできることはやったと、何故もっと早くこうすることを決心できなかったのかと満足と後悔の両方を感じていた。
淡く光る竜の漆黒の身体をフレデットは再び眺めた。
この竜がこれからどうなろうとも、もう自分にはできることはない。
残った者達には苦労をかけるとフレデットは心の中で謝っている。
呆然としていたコーネストが我に返り、今のままではサロモン王国軍に捕らえられ処刑されてしまうことを思い出した。
「フレデット。逃げるぞ。」
コーネストは立ち上がりフレデットに顔を向けている。
その顔には恐れと焦りがあり、コーネストにその表情を初めて見たフレデットは何故かおかしさを感じている。
コーネストにそんな表情があると初めて知った。
生け贄にした人達に見られた恐怖の表情。
コーネストに疑われた者達に見られた焦りの表情。
頻繁に見た表情のはずなのに、コーネストにもあるとは思っていなかった。
そんな自分におかしさを感じている。
「逃げるとはどこへでしょうか?」
「どこへでもいい。とにかくここにはもう用事は無い。サロモン王国の奴らが来る前に逃げるのだ。」
「無駄でしょう。どこに逃げてもいずれ捕まります。潔く諦めて下さい。」
コーネストにはいつも怯えていたフレデットが心の強さを示しながら忠告している。
その態度に違和感を感じてコーネストは聞く。
「我には憑依がある。逃げ切れないはずはない。」
確かに憑依が使えるのなら、コーネストだけは逃げ切れるかもしれない。
そしてこんな時でもコーネストの自分のことしか考えていないことにフレデットは哀れみを感じていた。
「もう憑依は使えません。」
「・・・・・・何を言ってる。確かに竜には使えなかったが・・・・・・フレデット・・・・・・何かしたのか?」
「はい。あなたが憑依を使おうとしたらその時発動する呪いをかけました。万が一憑依できてもあなたの魂は滅するでしょう。」
「呪いだと?そんなことしたら・・・・・・・。」
「ええ、あなたが死ぬ時私の命も奪われるでしょう。そしてあなたは私を殺すこともできない。私が死んだらその時呪いは憑依を使おうとしなくても発動しあなたも死ぬ。」
「・・・・・・何と言うことを・・・・・・。」
次の言葉を出せず固まったままのコーネストを無視してフレデットは神殿の外へ向かい歩き出す。
◇◇◇◇◇◇
龍王ディグレスは、これまでに感じたことのないはっきりとした異変を感じた。
「これは何が起きているのだ。」
龍王の身体と心に刻まれた何かが懐かしさと畏れを感じている。
フェンニーカ大陸のある場所で、龍王ディグレスにその感覚を感じさせる何かが目覚めた。
ディグレスは護龍の一頭ナザレスに命じた。
「我が伝える場所へ行き、何が起きているのか確かめるのだ。急げ。」
異変を感じた場所を伝えてナザレスをディグレスは送り出す。
ディグレスのただ事ではない焦りを感じたナザレスは黙って頷き、急ぎ指示された場所へ向かう。
人化などせず水龍の姿のまま可能な限りの速度でエイスクトル大陸から飛び出し海中を泳いだ。
ディグレスの中で嫌な予感だけが大きく膨れ上がっていた。
◇◇◇◇◇◇
さあこれからエルドラド侵攻作戦を始めようと、作戦開始前に情報を確認しようとしたところ、ダヤンへ驚くべき情報が入ってきた。
サロモン王国諜報部モルドラの部下は、コーネストの動きとエルドラドの様子をダヤンに伝えた。
コーネストはエルドラドへ一度は来て、住民を人質にして人質の家族を足りない兵の代わりにサロモン王国軍にぶつけようとしていたこと。
その後、急ぎどこかへ向かいエルドラドから姿を消したこと。
エルドラドに残された兵達は住民に暴行を加えたりと無法状態であること。
次に、竜の神殿があるヴァレッド村に潜入している諜報部員からも報告が来ている。
二日前に出て行ったコーネストが戻ってきて竜の神殿に入って出てこないこと。
・・・・・・そして・・・・・・
突然、竜が数頭神殿の外に出現して暴れていること。
村人達が竜を相手に戦っているが被害が大きくなっていること。
二カ所からの情報を受け取ったダヤンは急ぎ俺に確認を求めてきた。
「判った。俺はヴァレッド村へ向かう。ダヤン、エルドラドの方は任せた。」
あとイオニアスの隊を住民避難のためヴァレッド村へ送ってくれと伝えて、俺はヴァレッド村へ転移した。
・・・・・・
・・・
・
・・・・・・うわぁ・・・・・・五頭の竜が大暴れしてる。
転移して村の様子を見た俺は驚いた。
外見から言えば地竜が五頭暴れているのだ。
龍王は何やってるんだ。
こうならないための龍王じゃないのか。
そんなこと考えながら竜に近づいていく。
竜と戦っている村人達に叫ぶ。
「下がれ!こいつらの相手は俺がする!」
俺が放つ気迫に押されたのか、村人達は竜から足早に離れていく。
とりあえず動けないようにしとくか。
俺は五頭の竜を一体ずつ結界に閉じ込めることにした。
俺の手に光が輝くとそれを竜に放つ。
相手は竜だからいつもの十倍増し強度のぼっち結界に捕らえる。
さすがにこの強度の結界を作るとなると無詠唱では作れないから、ブツブツと詠唱している俺の様子を村人達は目撃しただろう。
竜が暴れても結界が壊されていないことを確認して、俺は次々と結界に閉じ込めていった。
五頭全部の閉じ込めを終えた後、俺は村人達が集まってるところへ近づき
「どうしてこうなった?誰か判る者は居ないか?」
周囲を見回しながら聞いていると、一人の女性デーモンが近づいてきた。
「私はあの神殿で巫女を務めております。フレデットと申します。村の危機を救っていただき有り難うございます。神殿の外に竜が何故出現したのかは判りません。ですが、神殿の中にある竜の身体が原因なのは間違いないと思います。」
「フレデット・・・・・・あんたティアーラの母親か?」
俺の口からティアーラの名を聞いたフレデットは目を大きく開いて驚いている。
もしかするとこの村を出て、どこかで死んだとでも思ってたかもしれないな。
ああ、確かに顔はティアーラとどことなく似ている。
赤い髪に緑の瞳ってのは、ここのデーモン達の特徴みたいだけどね。
でもフレデットって確か二百歳に近いはずなんだが、三十歳そこそこくらいにしか見えん。
エルフもそうだが、長命の種族って若い期間が長いらしいから不思議じゃないと言えば不思議じゃないんだが。
・・・・・・しかし、二百歳に近いとはまったく思えん。
独身時代に誘われてたらお付き合いを・・・・・・こちらからお願いしたいくらいの若い美人だしなぁ。
魔族のリエッサやスィール、サエラもきっとずっと若いままなんだろうな。
そういや二十代後半にしか見えないスィールは百歳近いはずだったな。
本当の年齢なんか忘れたと本人が言ってるし、俺も気にしたことないからなぁ。
「ティアーラを・・・・・・娘を・・・・・・ご存じなのですか?」
「ああ、この大陸とは違う大陸にある俺の国で預かってるよ。心配は無い。安全に暮らしてるからさ。あとアルステーデとライナールも一緒だ。二人はこの大陸で俺の仕事を手伝ってくれている。」
ティアーラ達の説明をする俺の顔を見ながら、フレデットの瞳に涙が溜まってきてるのが判る。
「・・・・・・そうですか・・・・・・娘達は無事で生きてるんですね?」
「ああ、元気に暮らしてるよ。それでコーネストはどこに居る。確かここに戻ってきてるはずだが。」
フレデットがコーネストの状況を説明した。
呪いをかけたことも・・・・・・。
「母さん、なんでそんなことを・・・・・・。」
口に両手を当てて泣きそうな顔をしてる女性のデーモンが居る。
これがティアーラ達から聞いたゾーエだろう。
そしてゾーエの肩を抱きながらやはり悲壮な表情をしている男性デーモンがスタキーレだな。
「どれ。」
俺はフレデットの首筋を確認すると、呪いが成立した証の紋が確かに刻まれている。
「あんたには確かに罪はある。だが、あんな糞野郎の道連れになんかなる必要は無い。あんたには別に罰を与える。だがそれはこんな形じゃない。」
俺はフレデットの首筋にある紋に手を当て、呪いの術式を確認し、闇属性龍気を使ってフレデットの身体から呪いを解いた。
解呪されたことが判ったのか、フレデットは俺の顔を見て”なんてことを”と言う。
フッと笑って”コーネストのことは俺に任せておけ”とフレデットに告げる。
「しばらく神殿に絶対近づくなよ。」
その場の全員にきつく言い渡して俺は一人神殿へ向かった。
神殿の入り口から奥までは細い通路が続いているが、入り口から覗いただけでも見える距離に大きな物体があるのが判った。
あれが竜の身体という奴だろう。
確かにぼんやりと光っている。
俺が中へ入っていくと、一人の男がしゃがみ込んでいた。
こいつがコーネストだろう。
「おい、コーネスト。最後に何か言いたいことがあるか?十数秒くらいなら聞いてやるぞ。」
俺の声に反応したコーネストは立ち上がり、振り向いて言う。
「殺すのか?」
「ああ、殺す。お前は生きていちゃいけない。それだけのことをお前はやってきたんだ。」
覚悟しているからなのか、それとも実感が湧かないだけなのか判らないが、コーネストの表情には焦りの様なものは見えない。
ギロっとした大きな黒い目には力を感じない。
「・・・・・・そうか、好きにするがいい。どうせそのうち私だけでなく皆死ぬのだから。」
「そうだ。皆死ぬさ。俺もお前もな。」
「・・・・・・やれ。」
俺は闇属性龍気を纏わせた火属性魔法を右手に発動させた。
赤い光が右手に灯り、その光をコーネストへ投げる。
正直、コーネストの最後を確認できればそれでよく、俺はコーネストの死自体には何の感傷も持っていない。
炎に包まれてもコーネストはじっと耐えていた。
これから来る死の恐怖と戦う前の練習のように耐えている。
両腕を身体に回し、力を込めて抱きしめ耐えている。
燃え消えていく苦痛に耐える・・・・・・それだけの気概があるなら、死と向き合って、非道な行いなどしなければ良かっただろうに。
コーネストは火に喰われて徐々に消えていった。
両腕、胴体、首から頭と消えていき、両足が最後に残った。
顔が消えるまでの間、コーネストは叫び声どころか苦痛の声も漏らさなかった。
最後に残った足首が消え、この世からコーネストの存在がなくなったことを俺は確認した。
コーネストの最後を確認した俺が淡く光る竜を見ていると、
「おい、ゼギアス。」
エルザークの声が後ろから聞こえる。
振り向くとエルザークが一人近づいてきた。
「・・・・・・これが源龍ラゼハード・・・・・・。」
そうつぶやいて俺の横を通り過ぎ、エルザークはラゼハードと呼んだ龍王より大きな漆黒の龍に触れている。
何かを調べているエルザークを俺は黙って見守っている。
一時間は経ってないだろうが三十分以上は時間は過ぎただろう。
いつもなら飽きてその場を去る俺が、何故かその時はその場から動いてはいけない気がしてエルザークを見守り続けていた。
それに、淡く光り続けている龍から目を離せずに居た。
懐かしいような、自分を見ているような、何か不思議な気持ちを感じている。
そして何より龍から出ている光。
あれは俺やサラが持つ龍気の光と一緒のものだ。
だが、その光の種類は無数で数えられない。
同じ白色でも何十種類もあるように見える。
俺達の龍気は気を見られない者には判らない程度の光だが、目の前の龍が放ってる光は可視化されている。
俺達とは比較にならない強度の気を放っている証拠だ。
しかし、それほどの強度を持つ気を放っているのに、何のプレッシャーも感じない。
これはどういうことなんだ?
可視化できない程度でも俺が龍気の強度を高めると周囲は重苦しいプレッシャーを感じて離れる。
うーん、判らん。
あとでエルザークに聞いてみよう。
エルザークなら理由が判るかも知れない。
「・・・・・・これはやっかいなものの活動を復活させてしまったものだな。」
龍から手を離したエルザークがつぶやいている。
「やっかいって?」
俺が声をかけると、エルザークは振り向き険しい顔している。
「うむ、もう少し整理してから説明してやろう。ワシもまだ整理しきれん。」
険しい顔をしたまま俺の横を通り過ぎ神殿の外へエルザークは歩いて行く。
俺はエルザークの後を追った。
太陽が真上近くまで昇った強い日差しに目を細めて神殿から出る。
エルザークは村人が集まってる方へ歩いている。
俺も同じ方へ歩いて行く。
村人達のところまで行ったエルザークはやや大きな声で村人へ話す。
「この村の長は居るか?」
「はい。私です。」
デーモンにしては珍しく顎髭をたくわえた男が前に出る。
「この村を捨てよ。竜はまた生まれてくる。」
その言葉を聞いた村人達がざわめいている。
そりゃそうだろう。突然村を捨てろと言われて、はいそうですかと言う者は滅多に居ない。
「エルザーク。また竜が生まれるって本当か?」
「ああ、神殿の中で横たわる竜は、源龍ラゼハード。創造の力を有したこの世界・・・・・・いや、この次元が生み出した最初の生命だ。」
源龍ラゼハードの身体には意思がない。魂がない。
だから本能に従って命を生み出し続けるだろうという。
そして理由は判らないが地竜を生み出しているから、今後も地竜を生み出すだろうと。
エルザークが見たところ、今も結界内で暴れてる地竜には知能も意思もない。
あれも学習することなどなく本能のままに暴れるだけだという。
あの地竜は竜の理の外の存在で龍王の制御下にはないし、今後も制御下に入るとは思えないという。
ラゼハードに意思も魂もないから、多分、同じような存在を創造しているのだろうとのこと。
「じゃあ、ラゼハードを滅ぼさない限り、あの地竜は生まれ続けるってことなのか?」
「ああ、そうじゃ。そしてやっかいなのはラゼハードを滅ぼす手段など無いということだ。」
「そんな存在があるというのか?」
「ああ、ラゼハードはこの次元が生み出した存在で、有と無が同じ身体を構成している。我らが言う滅ぼすというのは有を無に帰すことだ。だがアレは無ですら存在に変えてしまうのだ。つまり無に帰したところで、無から有を生み出しそして自身を構成し直すのじゃ。不老不死などではなく、有であり無である不変不滅の存在なのじゃ。」
「その意思なき不変不滅の存在があの地竜を生み出し続ける?」
「そうじゃ。だからこの村に居る限り村人達はいつも地竜の脅威に晒されることになるんじゃ。」
こりゃ確かに参ったな。
あの地竜はそう強いものじゃあない。
俺じゃなくても、うちの軍なら多少苦労はするだろうけど倒せるレベルだ。
戦い方を工夫すれば苦労することなく倒せるようにもなるだろう。
だが、いつ生まれてくるか判らない上に、その状態が永遠に続くとなれば大変だ。
当面は俺かカリウスがあの地竜の相手をしていれば、この村の外には影響ないだろう。
だが俺とカリウスのどちらかがずっと居なければならない状態をいつまでも続けたくはない。
ヴァイスハイトに急ぎ地竜対策を考えて貰わなくちゃならないな。
うーん、何か良い方法はないものかな。
ロケットでも作って宇宙に追い出しちゃうか?
今の俺なら地球へ行ってロケット複製してくるくらいできそうな気がするし。
「どうやってアレを神殿から動かせるんだ?」
俺の考えを読んだのだろう。
エルザークがからかう様な笑いを見せて聞く。
「アレ動かせないのか?」
「ああ、触ることはできるが動かせないぞ。言っただろう?有であり無であると。我らはアレの有の部分に触れることはできるが無の部分には触ることはできん。感じることはできるだろうがな。」
「つまり?」
「アレ自身で動かない限り動かすことなどできん。」
「何か良い方法はないのか?」
「今はまだない。だが例の遺跡をいくつか調べて判ったことがある。最後はその手段に頼るしかないかもしれん。それもまだはっきりしないので今は答えられんがな。」
「判った。それじゃエルザークにはすまないが、遺跡の調査を続けて貰いたいが、いいか?」
「頼まれなくても遺跡の調査とラゼハードのことは関わるつもりじゃ。この世の理を変えるかもしれんことだからな。あと、もうじきここにナザレスが来る。龍王と護龍にも地竜退治は手伝わせるがいい。龍王の意思に従わない竜の存在を龍王と護龍も許さないだろう。」
「そいつは助かる。」
「まあ、今の地竜程度を生み出し続けるなら何とでもなりそうだが、もっと強力なのを生み出すかもしれん。その時のことも覚悟しておけよ。」
「そんなこと言うなよ。本当に生まれてきたらどうするんだ?」
・・・・・・何か嫌なフラグが立った気がする。
他にも嫌な考えが浮かんだが、口にするとそれもフラグになる気がするので言葉にしないようにする。
「まあ、あの遺跡の調査はワシでもかなり苦労する代物だ。何せ、例の石に宿る精霊の意思がとにかく古くて弱くそして難解でな。時間がどれほどかかるか今は判らんのじゃ。」
それは判る。
精霊の思いのようなものには俺も触れるには触れたけど、祈りのような感覚を感じただけで具体的なことは何も判らなかったからな。
・・・・・・
・・・
・
エルザークが遺跡の調査に戻り、この村から去った。
俺は結界に閉じ込めていた地竜を消去している。
結界内に何かしらの魔法に闇属性纏わせて放りこむ簡単なお仕事だ。
三頭目を消去した時、見覚えのある護龍ナザレスが姿を現した。
村に到着した時はまだ水龍の姿のままで、俺を確認したのか人化して近寄ってきた。
「よう久しぶり。」
俺が声をかけると怪訝そうな表情で聞いてきた。
「何が起きてるんです?」
俺はラゼハードとラゼハードが起こしてることをエルザークから聞いた説明を含めてナザレスに話した。
「それは困りましたね。このことを知ったら龍王様も大層お困りになることでしょう。」
「でだ。ナザレス達にも協力して貰えとエルザークから言われたんだが・・・・・・。」
「ええ、当然手伝いますよ。竜がしでかしてることです。本来は私達の仕事ですし。」
自然な口調でナザレスは即答してくれた。
「助かるよ。龍王ディグレスのところへ戻って説明してきてくれるかい?」
「はい、早速。必ず我々も動きますから、それまで宜しくお願いします。」
「判った。できるだけ早めに頼むな。」
さて、地竜の始末は終わったし、もうじきイオニアス達が来るから村人達の避難にかかるか。
・・・・・・
・・・
・
村長と話し、とりあえずテンダールまで避難して貰うことにした。
テンダールは輸送船が停泊できるよう護岸工事してある。
先ほど思念でヴァイスハイトとダヤンには状況を説明したから、もしグランダノン大陸への移住が必要となっても輸送関連は任せておける。
それより地竜だ。ラゼハードだ。
だが、エルザークに答えが判らないものを俺に判るわけもなく、どうしたらいいもんかなと悩んでるだけなんだが。
今のところ第二弾は出現していないからいいものの、これが短時間で出現し続けるようになったらどうしようか。
「あの・・・・・・コーネストはどうなったんでしょうか?」
フレデットが子供二人を連れて、イオニアス達が村人達の避難の指示をしてる様子を村の中心で見ていた俺に不安そうに聞いてきた。
「ああ、もう消しちゃったよ。」
「消しちゃった?」
呆気に取られた顔で聞き返してきた。
「うん、この世界のどこにも存在しない。だからフレデットさん、あんたはもうある程度自由だ。だが、あんたがしでかしたことの償いは払って貰う。いいね?」
「ええ、それはもちろん覚悟しています。何をすれば・・・・・・?」
「この大陸にも、俺の国がある大陸にも孤児がたくさん居る。その子達の世話をこれからずっと務めて貰う。親を失い愛情に飢えている子がたくさん居る。その子達を愛して、その子達の将来が幸せになるよう頑張ってくれ。孤児は俺達が作る孤児院に集めるからそこで働いて貰う。」
「・・・・・・そんなことが罰になるのですか?」
「その子達の中にはコーネストに親を生け贄にされた子もいる。そういう子の幸せのために身近に居て頑張ることはあんたにとって辛いことだと思うよ。だがあんたは逃げちゃいけない。その子達に詫びつつも許されるまで愛されるまで頑張らなければならない。大変だよ。」
「お母様。私も手伝います。償っていきましょう。」
「ああ、僕も手伝うよ。」
子供達二人を抱きしめて、
「ええ、そうね。これからどんな思いをしようと、その子達の気持ちに比べたらたいしたことないわね。」
涙声で言葉を口にしている。
「ちなみに、ティアーラさんも孤児院の手伝いしてくれる。親子で力を合わせて、親を失った子供達を幸せにしてくれ。とりあえずは、テンダールへの引っ越しだ。それからのことはテンダールで相談しよう。」
俺は三名に荷物の整理を急ぐよう伝えて、避難の手順などを確認するためにイオニアスのところへ行く。




