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ロード オブ フロンティア ―― 次元最強の転生者  作者: 湯煙
第二部 原初の竜編 第一章 攻の章
85/99

85、遺跡の謎

 アーニャの事情を聞いて判ったことは、ザンフレッディアにもアラードのような心ある者は居るということ。

 ティアーラ達から聞いて、コーネストによる暴政が何十年と続けられてきたから、権力側に居る者に、より良い政治より良い国を目指す気持ちに乏しいことは判っていた。アーニャからの情報で、教会組織の横暴な態度は麻薬を広めることで得られた特権によるもので、メサイア教の教義に拠るものではないことも判った。そしてコーネストはそのような状況をただそうとはしていない。


 フランダノン大陸への侵攻は、多分だが、コーネストの意思というよりメサイア教組織の意思だろう。

 コーネストは国を広げたり、富を手に入れることにはさほど関心はないと見える。

 例の竜の肉体を復活させ、不老不死の存在になることのみ関心を持ってるのだろう。


 「ダヤン、ヴァイス等と話し合って、テンダールの周囲の占領を始めようということになった。北のエルドラド方面へ進もうと思うが、南側はどうだ?そっちからテンダールへの動きは見られるか?」


 「いえ、今まで一度も南側から向かってくる様子はありません。地方都市に駐在してる兵の数は少なく、魔獣等への警戒のため兵をこちらへ送る余裕はないのでしょう。」


 「じゃあ、現有戦力だけでもテンダールの守備は十分だな?」


 「はい。」


 「もうじき増援が到着する。カリネリアから五千名が空と海から送られてくる。その兵で侵攻しようと思うが、どうだ、どこまで行けると思う。エルドラドまで行けそうか?」


 「エルドラドまではどうでしょう?攻め込めないとは思いませんが、そこまでの間に通過する村を占領しないという条件付きになります。」


 その場合、エルドラドで苦戦するようなら背後が気になると付け加えて、


 「そこまで無理することはないのではないですか?ザンフレッディアを倒すだけでなく、もう少しまともな国を作らせようというなら、後に手を引くとしても一旦は占領しなくてはなりません。兵数も支援の頭数も足りないのですから、ザンフレッディアを倒したあとの混乱を収拾することも考えますと・・・・・・。」


 「うーん、ダヤン。ヴァイスかズールに入れ知恵されてないか?言ってることは全く一緒なんだが。」


 「いえ、ごく普通に考えると答えは一緒になるだけではありませんか?」


 クソッ。

 言い返せない。


 だいたいうちの奴らは、俺の気持ちを判ってるくせにわざわざこういう言い方をするんだ。

 子供を諭すような雰囲気で、生温かく見守ってる様子が何か悔しい。

 馬鹿にするでなく、でもちょっと上から温かく手を差し伸べる・・・・・・そんな雰囲気。

 

 うちの連中は皆サラ化してるのか?

 いや、サラならもっとストレートに俺の弱みを突いてくる。

 だが、そっちの方が俺は慣れてるから気にならない。

 なんていうかな・・・・・・うんうん、判ってる、判ってるよ~でもね?・・・・・・みたいな流れで諭してくるタイプは苦手だ。

 他の人にとってはどうか知らないけど、俺にとっては居心地悪いぞ?

 

 ヴァイスハイトはあれが素だから仕方ないけど、他の連中はヴァイスを見習って俺の接し方を変えたんだ。


 うーん、学習能力の優秀さを対俺用に活かさなくてもいいと思うんだがな。

 悔しいが、ダヤンの言うことは正論だ。

 コーネストを倒したはいいが、その後の混乱で大勢のザンフレッディア国民に迷惑かけるのは俺の望むところではないからな。


 俺のやろうとしてることはある意味俺の好みの問題で、ザンフレッディア国民に俺の主義主張を押しつけるならせめてキリの良いところまでは面倒みる責任がある。ダヤンが言ってるのは占領して体制を再構築できないならやるなと言うことだ。

  

 うん、判ったよ。


 ダヤンの青い瞳に余裕があるような気がしてちょっとしゃくさわるがここは黙って引き下がっておく。

 いつか、ちょっとした仕返しできればいいな。


 「判ったよ。じゃあ、北側を丁寧に進んでいこう。補充が増えたらその都度予定を見直す・・・・・・それでいいだろう?」


 「ええ、それと守備は補充員から担当を決め、現在のメンバーは侵攻に組み入れた方が良いと思いますが?」


 テンダールの村人達と親交があるメンバーを残した方が良いのではとダヤンに理由を聞くと、その長所よりもこの地の人々の感覚を理解している者が占領に関わった方が混乱を収拾する際に有効だろうということだ。


 一理ある。

 

 同じ庶民でも、国が違えば感覚が異なっていても不思議じゃ無い。

 サロモン王国の住民とここザンフレッディアの住民との間に感覚の差異があってもおかしくはない。

 いや、統治体制が大きく違うのだから違って当然だろう。


 「それならダヤンの言う通りにしよう。現守備隊に補充して占領作戦に就く。その編成はダヤンに任せるけどいいか?あ、それとノルスタインが関心を持ってる遺跡の調査な。あれ、本格的にフェンニーカ大陸全土でやって貰えるようできないか?ヴァイスハイトが気にしていたんだ。ノルスタインに数人加えた調査部隊も頼む。」


 細かい話も含めてダヤンに指示をする。

 指示なんて偉そうに言っても、ヴァイスハイトからの伝言を伝えただけのような感じもするが・・・・・・まあいい。


 テンダール占領数日後に、ルミーヌがサラのところへ帰っている。

 クルーグ率いる長距離狙撃のメンバーから補充員は来る。

 それまでの間、エルザが長距離狙撃が必要な時受け持つこととした。

 どうせ俺も滞在するのだから要らないとは思う。


 だけど、この機会にイオニアス達空戦部隊の状態も見ておきたいし、エルザは飛竜の扱いも慣れてるので、ルミーヌの替わりを務めつつイオニアス達の状態への意見も貰おうと考えた。


 そのことをイオニアスに伝えると、恐縮したような、でもエルザに見て貰えると喜びつつお願いしますと言っていた。

 エルザはクルーグと共に単独で敵司令官や将帥クラスを狙撃していたから、集団戦が得意なわけでもないし経験も少ない。

 だから、エルザに見て貰うのは、エルザに敵側の視点で見て貰い、イオニアスやマルク等が敵に狙われやすい部隊運用していないかだ。

 

 問題は、建国当時からのメンバーは概ね新人に甘いという点だ。

 例えば、地上部隊の訓練は、現在はヘラが見ているが、元はマリオンとリエッサが見ていたのだが、比較するとヘラのほうがとても厳しい。

 気を抜くと訓練に付き合うヘラ等アマソナスに容赦なく叩きのめされる。

 見ていて気の毒になるほど徹底して叩きのめす。大けがさせたり、もちろん命を落とさせるようなことはないのだけど、プライドは持ちようが無いほどやるし、多少なら怪我させても気にもしない。

 マリオンやリエッサはそういうことはしない。適当なところで手を抜いて、次回気をつけるポイントとして指摘して終わる。

 個人的には、うちのメンバーには誰も命を落として欲しくないので訓練はとことん厳しくて良いと思うのだが、考えてみると俺自身訓練から逃げたい輩だから強く言えない。


 ”厳しく見てやってくれよ?”とエルザには一応言うのだが、”大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても。”と微笑んで返ってくる。


 うーん、実際のところ、うちの空戦部隊の練度ってどうなんだろうな。

 俺は敵に苦労したことないし、空戦のことはさっぱり判らない。

 

 「イオニアス、そんな喜んでていいのか?エルザは狙撃銃持つと優しくないぞ?」


 「大丈夫です。エルザ様がどれほどのお方かはヘラ様から聞いてます。それにお妃様達のお相手はは、ゼギアス様に相手していただくより全然マシだとヘラ様が言ってましたよ?」


 ヘラ曰く”ゼギアス様の相手はするもんじゃない。無力感しか残らないぞ。”だそうな。

 なんと。そんなことを・・・・・・まあ、いいけど。


 イオニアスの空戦部隊だけ相手にしても実践的ではないから、マルクの部隊と一緒に俺を攻めさせるか。


 無力感を味あわせてやる!!


 ・・・・・・うん、俺って人間ちっちゃいね。ほんの少し反省したよ。

 

 仲間相手に大人げないことしてもしょうがないから、ヘラルドの部隊相手に模擬戦やらせるか。

 テンダールの南側に少し開けた地区があるから、エルザに見て貰いながらそこでやらせよう。


 俺はテンダールの近所を見て回ろう。

 イオニアスに相手にして貰えそうにないから拗ねてるわけじゃないのでそこは間違えないで欲しい。

 今後の作戦行動に必要な情報収集だからね。 


 

・・・・・・

・・・


 イオニアス達の相手はエルザに任せて、俺はテンダールの街をまず見回ることにする。

 今までは用事だけ済ませてすぐ首都エルへ戻っていたので、今回はいい機会だからね。 


 テンダールには何度か来ているから、徐々に整備されつつある街の様子を微笑ましく感じる。

 グランダノン大陸でもそうだが、衛生的な環境が整備されていくと、やっと人の住む街になったと感じる。

 海や森などの自然の匂いがかすかに感じられる街になって初めて安心する。


 ペストや赤痢などの病をあまり心配せずに済む環境。

 これが人が住む街の最低限だと思うんだ。

 

 テンダールもやっと最低限の環境になった。

 

 下水道と汚物の処理施設はまだだけど、排泄物とゴミの処理を徹底させるだけでも大きく変わる。

 この辺は住民に理解されるのを待つのではなく、占領という状況を利用し強制している。

 

 サロモン王国でもそうだったが、衛生という概念がない世界で理解を求めてからなんてことやってたら、時間がいくらあっても足りない。

 だから、最低限の必要なことは強制する。

 サロモン王国建国後数年は、排泄物を決まった場所で行うだけでなく、入浴や手洗いも強制したしね。

 詳しい理由など判らずとも、快適な住環境になったと判って今ではみんな自発的にやるようになった。

 病の発生が減り、子供の死亡率が低くなったと判って、周囲にも衛生的であるよう注意するようになった。


 読み書きと簡単な計算しか教えられなかった教育現場も、地球の日本で言えば高校一年生レベル程度までの教育可能な教師が生まれ始めた。

 地球の図書館と比較しても最大規模の蔵書数を誇る我が国の図書館で学ぶ者が年々増えているから、いずれもっと高度な教育が可能になるだろう。

 そしていつかはこの世界ならではの学問が生まれ、様々な発見も生まれるだろう。


 ここテンダールもいずれはサロモン王国並の村にしたい。


 だいぶ衛生的になった街の様子を眺め歩きながら、俺は将来への期待を思い描いていた。


 「ゼギアス様、お久しぶりです。」


 背後から呼ばれ振り向くと、ノルスタインが荷物を抱えて立っていた。

 

 「おう、久しぶり。」


 ノルスタインに向かい直して片手をあげて挨拶する。

 

 「遺跡調査の件、ありがとうございます。本格的に調査できるよう取り計らっていただいて・・・・・・。」


 「いや、あれはヴァイスハイトが進言したんだ。どうも気になるみたいでな。だから俺は何もしてないんで礼を言われる筋合いのことではないよ。」


 軽く頭を下げたノルスタインに言う。

 だって俺は本当に何もしてないのに礼を言われるのは気持ちが悪いじゃないか。


 「まだ報告はあげていないのですが、あれから気づいたことがあります。」


 荷物を両手に持ってるノルスタインの姿がどうも落ち着かない。


 「そんじゃ、そこらで座って話しを聞こう。誰かに聞かれて不味い話ならどこかへ転移してもいいが。」


 「いえ、どこでも構いません。まだ懸念というだけで証拠も何もありませんから。」


 ノルスタインがそう言うから、座るにはちょうどいい大きさの岩が通りの外れに目に入ったので、そこを指さして歩き出した。  

 ノルスタインと岩に座り、話を聞く。


 「実は、遺跡は円状なことは報告にあげましたし、遺跡の中心には長方体の石が置かれてることもご存じだと思います。」


 「ああ、報告書は読んだよ。それで?」


 「ええ、円状な点はフリナムと同じなのですが、フリナムの石が球状なのに長方体だった点が気になりまして、形に意味があるとすればと。それに材質も違いますし。」


 「意味があるとしても、それを知る方法があるのか?」


 「これは、ヴァイスハイト様から教えていただいたことですが、ゼギアス様はモノの本質を知る術を持ってらっしゃるので相談したらどうかということで・・・・・・。できれば一度ご一緒してお力を貸していただけたらと。」


 なるほどな。

 森羅万象の龍気については、エルザークと家族の他にはヴァイスハイトとズールしか知らない。

 龍王ディグレスと護龍達も知ってるが、それはここでは無視していいだろう。 


 俺に特異な力があるというのはサロモン王国では周知のことだ。

 だから森羅万象については詳しく教えないまま、ノルスタインに手助けしてやれということなのだろう。

 

 「いいよ。今からでも行くか?俺に暇な時間がいつまであるか判らないんでな。」


 「え?早速・・・・・・宜しいのでしょうか?」


 俺は用事を後回しにするのは嫌いなので、早めに片付けられることは早めに片付けたい。

 まあ、許可が貰えるかどうか判らないまま話してみて、すぐと言われてノルスタインは驚いてるかもしれないが、フットワークは軽い方がいいだろう?

 あのズールだって俺のフットワークの軽さは、ちょっとだけ褒めてくれるし。


 「ああ、その荷物を宿舎へ置いたら行こうじゃないか。」


 ”では早速。”と行ってノルスタインは荷物を再び抱えて立ち上がり、宿舎のある広場側へ歩き出した。


・・・・・・

・・・



 ノルスタインから指示された場所の遺跡に二人で転移してきた。

 ノルスタインが指さす遺跡中央の石は確かに長方体で・・・・・・うん・・・・・・見たこともない石だな。

 黒曜石のようでもあるし、でも、光の当たり具合で金や銀の発色もする。


 俺はその石に触れ、森羅万象でこの石の実態を掴もうと目を閉じて集中した。

 

 ・・・・・・これは・・・・・・。

 ・・・・・・何と形容したらいいのだろう。

 意思の塊なのだ。意思が物質化した塊。


 つい、意思なだけに石か!とか思ってしまったのは誰にも内緒だ。

 思い浮かべた時にちょっとニヤけてしまったかもしれないが、もしノルスタインから指摘されたら誤魔化そう。


 こんな駄洒落を思い浮かべた知られたらノルスタインから白い目で見られるだろうし、世の女性陣からは”オヤジギャグさいってぇ~”と言われてしまう。

 特にズールなんかに知られた日には”いくらオヤジになったからって言っていいことと悪いことがあるんですよ?知ってます?”とか言われるだろう。

 三十路を越えると、ささいな発言一つとっても気遣う場合が増えるのだ。過去に散々痛い目を見たモテナイ男子メンタルの持ち主は特に気にするのだ。


 真面目な話に戻ろう。


 うーん、この意思は・・・・・・何かに向けて何かを送ろうとしている。

 これはエルザークに聞いてみなければ判らないな。


 そもそもこの石を形作ってる意思は、人や亜人、魔族とも違う種族のもののように感じられる。

 意思を込めたものの感覚が、純粋なのだ。

 雑念がまったく感じられないのだ。

 

 そうか、精霊か!


 精霊が意思を込めて形作ったのか・・・・・・。


 ・・・・・・しかし・・・・・・こんなモノを作った目的はなんだ?

 この石をどのように作ったのかはこの際置いておいても、作った目的が判らない。

 

 ・・・・・・こうなるとフリナムの遺跡も調べる必要を感じる。


 フェンニーカ大陸に他にも同様の遺跡があるなら調べて置かなければ・・・・・・。

 占領作戦に必要かどうかはまだ判らないが、情報は少しでも多い方がいいに決まってるからな。


 「ノルスタイン、この石はな・・・・・・。」


 森羅万象を止めて目を開け、この石がどういった物かを俺は説明した。

 ノルスタインの表情がどんどん驚きを帯びてくる。

 

 「・・・・・・なるほど。ただの石じゃないと思っていましたが・・・・・・。」


 「ノルスタイン、それでだな・・・・・・フリナムに遺跡は幾つある?」


 「三カ所です。」


 「そうか。この大陸で他の遺跡を探すのも大事だが、その前にその三カ所を調べたい。それらの情報を持っていたほうがお前も調査する際に参考情報が増えていいだろう?」


 「ええ、お願いできるならば是非!」


 ノルスタインが興奮気味に、茶色の瞳をキラキラさせている。


 俺とノルスタインは、ダヤンやエルザに予定を伝えるために一旦テンダールまで戻る。


 戻る間に、俺はエルザークへ思念を送って状況を説明し、調査に協力して貰えるよう頼んだ。

 新たな知識を得られると知ってエルザークは喜んで協力してくれると返事が来た。

 エルザークが手伝ってくれるなら、俺が調査に行かなくてもいいんじゃね? 

 森羅万象で万物の本質を知ることができると言っても俺は使いこなせていないし、エルザークなら俺以上の情報を手に入れられるだろう。 


 ”ッ!し・・・・・・神竜エルザーク様とですか?”とノルスタインはビビっていたが、会えばそんなビビるような存在ではないと判るだろう。

 転移してきたエルザークにノルスタインと一緒に調査して貰うよう頼むと、”良いぞ。だが、あとでリエラからデザートを貰うからな?”と子供のようなことを言っていた。まあ、リエラは喜んで作ってくれるだろうから、その要望は聞き入れることにした。



 ノルスタインが調べていた遺跡の予想外の事情が判ったので、、ノルスタインを当分の間は遺跡調査専任にするようダヤン伝え専門チームを組んでもらうことにした。そのチームにはエルザークが付き添うことも付け加えたが、首都エルでエルザークとたびたび接して、自衛の際には周囲も一緒に守ることを知っていたダヤンは”それは万が一の時楽ですね。”と言っていた。


 まあ、調査以外では特に何もしてくれないだろうけど、何者かが攻撃してきた際、エルザークも攻撃対象となればチームメンバーも一緒に守ってくれるだろうな。メンバーにはエルザークをいつも身近に置いておけと言っておこう。


 遺跡調査チームの編成等をダヤンに任せ、俺はエルザークにもう一度”調査の件は頼む。リエラにデザート頼んでおくから。”と言っておいた。


 ダヤン達と別れて、俺はエルザが戻るまで広場で待ってることにして、広場の中央にあるベンチに腰掛ける。


 海が近いから、涼やかに流れる風に磯臭さを感じる。

 今日は暑くないからいいけど、暑かったら汗と潮風で身体がべたつくかもしれないな。

 上下水道整備してからじゃないと、各家庭に風呂を設置できないから先に温泉作るか。

 源泉が無いならボイラー使って湯を沸かせばいいしな。


 今は消毒用石鹸使って手洗いを徹底させてるけど、入浴の習慣つけさせるなら化粧用石鹸が威力を発揮する。

 臭わない身体に慣れたら元のちょっと臭ってしまう身体には戻れないだろう。

 快適などのメリットさえ理解してもらえれば、衛生的であるべき理屈なんか判らなくても清潔にしてくれるのはサロモン王国でも他の国でも実験済みだから確実だ。

 

 イオニアスを初めとして幾人かから聞くフェンニーカ大陸での生活は、グランダノン大陸南部が未開だった状態とさほど変わらない。

 国民が文化的な生活を送れるような対応をコーネストが行わないからだし、目立つような・・・・・・従前と異なる生活を送る行為を皆が自重している側面もあるだろう。

 

 まったく馬鹿らしい。


 国の存在は国民生活に資するものであるべきなのに、一切行われていない。

 

 まあいい。

 近いうちにそんな国は壊してやる。


 テンダールの村人達の生活する様子を眺めながら俺はそんなことを考えていた。



・・・・・・

・・・


 「久しぶりに二人きりですね。今夜は私一人で堪能させて貰いますよ!」


 妙に力が入った言葉を嬉しそうに俺に投げるエルザに俺はベッドに押し倒されてる。

 

 我が家では二人きりの機会はとても少ない。  

 ベッドに二人きりなんていう状況も滅多にない。


 リーチェが先導して奥様達のローテーションは組んであるらしく、毎晩奥様達の誰かが必ず俺の横に居てくれる。

 だが、ほぼ必ずその日の担当(?)以外の奥様も参戦してくるので、エルザと二人きりになったのは結婚した初日くらいかもしれない。


 エルザの舌の感触を確かめながら、熱い肌をまさぐっていく。

 アァッと吐息と共に漏れる声に俺のテンションが上がっていく。


 ・・・・・・・・・・・・


 うちの奥様達は昼と夜の顔が違うのでそのギャップに萌えるのだが・・・・・・あ、マリオンは別ね・・・・・・エルザも同様でベッドの上では昼間見せる顔とは全く違って積極的だ。昼は、配下時代の忠実な軍人っぽいのだけどね。


 モデルのような体型の締まった身体をいつまでも俺に密着させてくる様子がとても愛おしいので、俺もつい何度もエルザを求めてしまう。


 まあ、夫婦だし愛し合ってるんだからいいよね。

 

 とまあ、いつも以上に激しいエルザと愛し合った後、ピロートークでひとしきりエルザを褒め、少し落ち着いたところで遺跡に関する話をした。

 日中に、エルザが監督したイオニアス達の模擬戦について聞いた時、遺跡についての報告と今後のことは話した。


 意思の石に触れた時に感じた言葉にできない感覚については、曖昧すぎてダヤンやノルスタインには話していない。

 整理できていないことを話すと下手に不安にさせるのではないかと考えたし、エルザークが調べれば俺よりも詳しく判るはずで、その際にダヤン達が知ればいいことだとも考えたからだ。


 だが、自分の気持ちや考えをそれなりにまとめるために、そうした曖昧な感覚でも奥様達には全て話すようにしている。

 答えなど出てこなくていい。話すことで自分が落ち着きたいだけかもしれないけど。

 

 腕枕のまま俺の胸に手を置いて、


 「不安にさせるような感じがあったのですか?」


 言葉は疑問の形だが、エルザの声には不安を感じてるような空気は無い。


 「いや、そうじゃないんだよ。祈りとか願いとか・・・・・・そういったものに近い感覚を感じてさ。精霊が何に何を祈っていたのか・・・・・・。」


 「私達は判らないことはゼギアス様達にお任せして、その時できることをしっかりやろうと考えます。ゼギアス様もエルザーク様にもっとお任せしていいのでは?」


 「・・・・・・エルザークかあ・・・・・・あまり当てにしちゃいけない気もするが・・・・・・そうだな、ダヤン達より先に俺が知ってる必要はないか・・・・・・。」


 この世界では知られていないことを多く知ってるから、大概のことは先が読めるのが普通になっていて、何でも皆よりも知っていなければならないと思い込んでいたかもしれない。


 当たり前のことに気づかせて貰えるから奥様達との会話は大事だ。

 

 「ええ、そうですよ。ゼギアス様は周囲に預けることを心がけた方がいいですよ。」


 俺の胸に口づけしてエルザがそう言ってくれる。

 

 「でもさ?そうやって皆に甘えてたら、俺は何もしなくなってしまう気がするんだよなあ。」


 「大丈夫ですよ。そんなことにはきっとなりません。それにもしそうなったら私達といつもこうして愛し合えるじゃありませんか。」


 「おいおい、奥様達に溺れて仕事しない王様って、国民から嫌われちゃうじゃないか。」


 「国王の座を引き継いでしまえば問題ありません。ゼギアス様は後見人で居ればいいんです。」


 まあね。

 特定の誰かに依存せずに健全に運営される国が目標だから、それはそうなんだけど、まだ三十五歳にもならないうちに王位を早く相続させること考えてる王ってどうなんだろう?


 長男のレオポルドも来年は十五歳で成人年齢になるし、ヴァイスハイト達が居れば若い王だろうと問題は起きそうにない。

 うん、確かに俺が引退しても特に問題が起きそうに思えないな。


 「そうだな。国王なんて面倒なことは早くレオに譲って、エルザ達といつもイチャつきながら生活したいな。」 

 

 「フフフ・・・・・・リーチェ様達も私と同じこと考えてますよ。」


 「ああ、・・・・・・確かに、マリオンも言っていたな。早く国を安定させて愛と情欲にまみれた生活を送りたいって、そのために頑張るわんとか・・・・・・。」


 「ええ、そうですよ。皆、ゼギアス様と・・・・・・時にはのんびりして、時には愛しあって、一緒に仲良く暮らしたいんですよ。」


 「そうか。何だ、みんな俺と同じようなもんなんだな。」

 

 「ですから、今はできることを頑張って、早く王位を譲ってしまいましょう。」


 「おう!判った。」


 エルザを軽く抱きしめて髪にキスして俺達は眠りについた。

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