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62、平和の裏で

 リエンム神聖皇国の弱体化は誰の目からも明らかだった。

 元戦闘神官第二位のアンドレイがコムネス自治領の独立を宣言したものの、送る戦力はなく、放置しておくことしかできなかったことを見ても、リエンム神聖皇国がまだ国の体裁を保っている方が驚きといえるかもしれない。


 リエンム神聖皇国にとって幸運だったことは、ジャムヒドゥンも国内の再整備に力を注ぐしかない状態であり、南側からサロモン王国が侵攻してくる気配が無かったことだろう。外敵に動きがなかったことが、リエンム神聖皇国を何とか生きながらえさせている。


 ケレブレア教の枢機卿達と戦闘神官達は、体制の再整備に集中していられた。

 教義や支配体制の変更には強引な手段・・・・・・武力による脅しも使われたが、リエンム神聖皇国に残る貴族等には抗うすべもなく、またアンドレイのように独立手段も持たなかったため、不満ながらも貴族等は従い、リエンム神聖皇国の再編は何とか進めることができた。再び、国力を取り戻す日を夢見て、今は我慢の時期という共通認識が生まれていたことも崩壊せずにいられた要因として大きい。


 グランダノン大陸に仮初の平和が訪れていた。この平和がいつまで続くかは判らないが・・・・・・。




◇◇◇◇◇◇



 平和になったグランダノン大陸でも、サロモン王国は特に平和だった。

 人口の急激な増加に伴う仕事も落ち着き、友好国への支援も、ゼギアスの気分任せではなく計画的に行われるようになりラニエロ達やドワーフ達も休みをとれるようになった。


 ただ、ラニエロは休みが増えたのにやつれているので理由を聞こうかと声をかけると、ラニエロの妻ドリスが満足げにエロい顔をして笑っていたので、ゼギアスは詳しい事情を聞くのを止めた。あの顔は、目一杯愛し合った翌日にマリオンが見せる表情そっくりだ。決して、やつれてもイケメンのラニエロが悔しかったから事情を聞かなかったわけではない。聞いちゃいけないことだと思ったから聞かなかったのだ。その辺は間違えないでいただきたい。


 そうだ、ラウィーアも懐妊したんだ。ラウィーアの野望もこれで一つ実現したわけだが、何人産むつもりかは知らないが、懐妊したと聞いて俺に向かって人差し指を立てて”まず、ひと~~つ!”とやってたから一人では満足しないのは確かなようだ。


 そして奥様達が全員子持ちになったものだから、俺は街の女性達から完全に”子宝の神”扱いされるようになった。陰でこっそり言うくらいならいいが、家の前でとか俺を見かけては拝むのは止めていただきたい。拝んだってご利益なんか無いからね。


 我が家は平和で、奥様達も子供達も皆、元気過ぎるくらい元気で良いことだ。


 平和だからといって、家でのんびりしていて良いわけではない。本当は奥様達はイチャつき、子供達とはデレていたいのだけれど、そうもいかない。




・・・・・・

・・・


  

 今となっては、ベアトリーチェと知り合う機会を作ってくれて、個人的には感謝すらしているオーガ達をそろそろどうにかしなくてはいけない状況になった。

 エルフやドワーフ等の協力を得て以降、厳魔やアマソナスの集落へ訪問し仲間を増やしてきたのだが、その際、エルフの集落の近くに住んでいたオーガ達は、集落近辺の森ごと結界の中に閉じ込められていた。正確に言えば、オーガの生息域周辺を結界で囲っていた。


 結界の壁の外から見れば、オーガが放し飼いにされてるサファリパーク状態であった。他の魔獣同様に仲間に加えようとした考えたこともあり、その時はオーガの族長とも会った。だが、こちらの条件には頷かなかったんだよね。


 食料を提供する代わりに労働力を提供してくれと、厳魔やアマソナスに出したのと同じ条件出したのだけど嫌だというので、下手に動き回られると邪魔なものだからサファリパーク状態でこの十年放置していた。


 忙しくて忘れていたわけじゃないよ?

 うん、覚えてた、覚えてた。


 でも面倒で・・・・・・いや、他にやることが多かったので後回しにしていたのは事実。

 だってあいつら話を聞かないんだもの。


 だが、オーガの生息域が首都、エルフの元居住地、厳魔の元居住地に囲まれてる場所にあって、いろいろな作業を進める際とても良い立地になってしまってね。そろそろ本気で邪魔だから、再度、交渉した方が良いだろうと、ヴァイスハイトからも言われて・・・・・・しょうがないからオーガの居住地までやってきた。


 俺の態度のどこにオーガへの感謝があるんだって話なんだけど、立地が良い場所にある居住地に今まで手をつけなかった点に感謝を感じて欲しい。


 うん、集落の様子は、以前来たときと全く変わっていない。

 変わっていたのは、オーガの態度。


 今年は森の恵が少なく、食料が足りないようで大人しくなっていた。

 どんなに飢えていても、俺の顔を見て襲ってくるオーガは居ない。

 今だに俺との戦いは悪夢として語られているようで、襲うどころかビビっている。

 

 「さて、十年ぶりだが、元気なさそうだな。」


 俺を取り囲む浅黒い肌のオーガ達。

 だいたいは百七十くらいの身長でがっちりした体格なんだけど、その中に一回り大きな体格のオーガが居て、それが族長。族長とも十年ぶりに会うが、以前と何も変わらない外見。オーガの寿命だとか生態とか詳しく判らないが、十年程度では外見で違いは判らない。


 「何をしに来た。」


 おお、族長は一人だけ険悪な表情してる。

 歯をむき出して威嚇するような表情。

 だが、そんな顔するといい話持ってきたのに後悔するぞ。


 「前と同じ話さ。食料を提供するから、オーガは俺達の仕事を手伝ってくれ。」


 オーガにどんな仕事をさせるか?

 

 さほど知性も高くなく、腕力だけが取り柄で、オーガが我が国で働ける場所は限られている。うちで提供できる仕事は、山か森での狩猟である。俺達が指定した場所で獣を狩ってくれればいい。これならオーガの日常生活と変わらない。


 今は、獣人にやってもらってる狩猟だが、知性の高い獣人にさせておくのは勿体ない。土木建築作業はいつでも手が足りないのだから、獣人にはそっちで働いて貰いたいのだ。


 「その話なら以前断ったはずだ。」


 「ああ、だが、今のままなら状況を変えるつもりはないぞ?他の種族が生活してる所にはお前達を立ち入らせない。食料が足りないようだが、それでいいのか?」


 ちなみに、オーガの生息域として囲った地域は、通常なら十分食料を確保できる広さがある。オーガの数はそう多くなく、せいぜい数百体。今年は苦労しているようだが、例年なら生活に困ることはないくらい広く囲ったのだ。


 「何をしろと言うのだ?」


 「俺達が指定した場所で狩りをしてくれればいい。毎日やってることだろ?獲った獣はオーガが食べていい。そして足りない食料は提供しよう。いい話だろ?」


 そう、俺達が指定した場所で狩りをするなら、指定した場所に獣が少なくても彼らは飢えない。彼らの住居は用意するから、狩猟に出ないオーガはそこで暮せばいい。


 何でこんなことを要求するかというと、牧畜が盛んになって飼ってる家畜を襲う獣が多発する地域がかなりあるので、その周辺で狩りをしてもらえば助かるのだ。魔法を使える者の需要が多いので、結界張って守るということはしたくない。俺が全て張って回ることもしたくないしね。


 どのみち周辺の獣を掃討するのだし、俺達は口にしない獣でもオーガは食料にするのだし、一応獣の皮は残して貰えれば良いくらいがこちらの要求だからお互いに損はないはずなんだ。オーガは食料さえ十分あれば、他の種族を襲うことはないし、俺達はしっかりと食料提供するし提供できる体制ができあがってる。


 ちなみに十年前は、土木作業でもやってもらおうと考えて条件に出したが断られた。今回はオーガにとって、以前の条件より良い条件だと思ってる。


 「判った。一族を飢えさせたままではいられない。」


 族長が折れてくれたので、俺はヴァイスに思念を送り当面の食料を送ってもらう。だいたい一月分の食料だ。オーガ達の新たな住居が完成するまではサファリパーク状態は続けるけど、住居が完成したらそちらに移住して貰う。


 「あと他の種族は絶対に襲うなよ?それだけは守れ。そしたらオーガが飢える心配はなくなる。」


 「ああ、約束しよう。」


 長年、面倒で・・・・・・いや、忙しくて放置していた案件がやっと片付いた。

 うちの建築作業チームにかかれば、数百体のオーガ用住宅など二月もあれば建ててしまうだろう。

 

・・・・・・

・・・・



 我が家の客室には、セリーナがずっと宿泊している。

 ここに来て暫くの間は俺に対する言葉もきつく、態度も素っ気なかった。

 まあ、この世界に転生して忘れていたが、前世では慣れた態度だったので、気にはならなかった。こういうところで経験を活かせるというのは悪くない。傷つかなくて済むからなあ。


 一月もすると、言葉も柔らかくなったし、態度にも気になるようなことは無くなっていた。彼女の中でどんな変化があったかは判らないが、素っ気ない態度をとられるよりは俺も気持ちが良いし、変わった理由などを下手に聞いて彼女の気に障るといけないので黙っていた。


 最近はサエラと共に温室に入って樹木を世話したり、マリオンやミズラと街を散歩したり、他の奥様達とも何やら付き合いを深めているようだ。そうした生活の中からセリーナにとっての楽しみを増やしてると感じるので良い傾向だと思う。


 最近は、バックギャモンの相手をしてくれる。

 この世界には娯楽が少ないので、俺はオセロ、バックギャモン、チェスを作ってみた。子供でも簡単にルールを覚えられるモノに限定し、麻雀や囲碁は作っていない。ヴァイスハイトやズールはやはり上手で、チェスなどルールを覚えた途端、俺は勝てなくなった。まあ、もともと下手だしね。


 子供達とはオセロで遊ぶし、奥様達とはバックギャモンでも遊ぶ。天気の良い日などは公園でボードゲームを楽しむ者も多く見られるようになっている。バックギャモンとオセロは各家庭で自作して楽しんでいるようだ。チェスはというと、駒を着色したガラスで作り、盤は様々な種類の木のモノを売り出している。利益は全額学校運営予算につぎ込んでる。


 奥様達の手が空いていない時は、セリーナが俺のバックギャモンの相手をしてくれているのだ。


 まあ・・・・・・だいたい俺が負ける。

 勝敗は二の次、楽しければ俺はそれでいい・・・・・・。


 ・・・・・・勝負に弱いヤツはだいたいそう言うよね!

 サンプルは俺。


 今日もセリーナ相手にサイコロ転がして遊んでる。


 「ああああ・・・・・・また負けたぁ・・・・・・。」


 セリーナはニヤリと笑って


 「ゼギアス様が広めた遊びなのに、本当に弱いですね。」


 「うん、頭より身体使う派だからなぁ・・・・・・。」


 トホホとつぶやいて、駒を片付け始め、また明日も相手してねとセリーナに頼む。


 「フフフ・・・・・・変わった方ですよね。」


 「本人はそう思っていないんだけど・・・・・・しばしば言われる。」


 「でも皆、ゼギアス様のこと尊敬してますよ。」


 「本当かなあ・・・・・・ズールなんかしょっちゅう俺をからかって遊ぶんだぞ。」


 「マラムは、あのように楽しそうな兄上はみたことがありませんって言ってましたわ。よほど変わったのでしょうね。」


 「俺をからかって明るくなったってんなら、まあ、いいか。」


 駒をしまい終わった俺は、壁際にゲーム盤を置いてくる。

 その際に侍女に紅茶を二人分頼んだ。


 「ゼギアス様。」


 「ん?」


 「やはり私をおそばに置いてくださいませんか?」


 「気持ちが変わらなかった?」


 「いえ、最初とは変わりました。今は自分の気持に従って、ゼギアス様のおそばに居たいと思っています。」


 「・・・・・・そうかあ。うん、判った。その代わり、ずっとそばに居てくれよ?俺は捨てられたらダメージでかいからさ。」


 「フフフ・・・・・・ミズラ様が仰ってた通りですね。」


 「ん?」


 「ご自分に自信が無いって仰ってました。私のような他国に送られた女は、嫁いだ相手から嫌われぬよう尽くすことばかり考えるもので不安になりがちですが、ゼギアス様を見てると自分を見てるようだとミズラ様も仰ってましたが、本当でした。」


 「うーん、性分だからなあ・・・・・・仕方ないよね。」


 「ゼギアス様は今のままでいいと思います。それに私達は皆ずっとゼギアス様のおそばにおりますよ。」


 セリーナが第八王妃になるわけだが、最近、友達百人作るより嫁さん百人作る方が早いのではないかと思う。だって・・・・・・だいたいだが、年に一人の割合で嫁さんが増えてるんだよ?デュラン族の寿命は二百年程だって言うし、このペースだったら百三十歳あたりで嫁さん百人作れちゃう。・・・・・・実際にはそんなこと起こらないと思うが、想像したら怖くなってきた。

  

 そう言えば、オルダーンへ出向中のアンヌは、ライアナの次期国王ケネスの熱意に押されて結婚を承諾したようで喜ばしい。呪いを受けたこともある女性と知って、王族が自ら王妃に望むなどなかなかあるものではない。良い奴だと思っていたけど、ケネスへの評価が俺の中でさらに高まった。


 アンヌも、誰も自分を迎えてくれないと思っていたが、それが良い意味で間違っていたことを喜んでいることだろう。現領主のコリン等も喜んでると思う。だが、コリンはそろそろクラウディオのお相手も探さないと、クラウディオは仕事が楽しそうだから自分では探しそうにもない。あとできればシモーナのお相手も探してあげて欲しい。


 結婚が全てではないという考えは、二十一世紀ではそうかもしれないが、この世界では男は世継ぎを作らなければならないし、女は結婚すべきものと言うのが一般的なのだからなあ。本人が良ければいいとは俺は思うんだけど、この世界の社会は違うから・・・・・・まあ、俺が余計な心配しなくても考えてるだろう。


 俺だけじゃなく、周囲にも幸せがやってきたというのはとても嬉しいことだ。




◇◇◇◇◇◇



 

 サロモン王国は平和でいいのだが、現状を良しと考えない国はリエンム神聖皇国の他にもあった。その一つがエドシルドであり、エドシルド加盟国のフリナムも同様であった。いや、サロモン王国の隆盛をもっとも憎んでいたのがフリナムだった。


 フリナムは西をエドシルド東をレイビスに挟まれた、人口八十万ほどの農業国。

 その歴史は古く、白の種族が建国したと言われている。国内には古の遺跡が幾つか残っており、それらの遺跡は神域として守られていた。


 白の種族の末裔を意識するこの国にとって、神とは白の神であり、また黒の神であった。もちろん白の神が黒の神より上位にあると信じているし、現在の神の地位になる神竜は認めないが、黒の神の存在と権威は少なくとも認めている。しかし、神竜が世代交代して前の神竜が他の世界へ移っていったように、白の神も黒の神も他の世界に移っていったと思われる。その辺りの事情は神竜にも伝えられていないので判らないが、この世界には既に居ないのは確かだ。


 だが、白の種族の末裔を誇るフリナムの王にとっては、白の神は今もこの世のどこかにおり、いずれこの世を統べる神として復権すると考えている。


 白の種族の末裔にとってデュラン族は、今も忌むべき呪われた種族であり、デュラン族の王が統べるサロモン王国は呪われた国であった。そのサロモン王国がグランダノン大陸南部に引きこもっているならまだしも、エドシルト加盟国の幾つかやジャムヒドゥンと友好関係を結んで影響力を増してる状況は認めがたいものであった。


 このままサロモン王国が隆盛し、この世の日陰者であるべきデュラン族が大手を振ってこの世界で生きられる状況の到来は、フリナムの王にとっては我慢ならないものだ。白の種族に黒の種族の血を入れ、白の種族から様々な力を奪ったデュランの子孫の国など、白の種族の末裔であるフリナムの敵と怒りを燃やしていた。

 

 白の種族も黒の種族も長い歴史の中で様々な種族と交わり、いわゆる純血種の白の種族と黒の種族は消えていると見られているし事実そうだったのだが、フリナムは公式には認めていない。過去のある時期から他国人とフリナム国民の婚姻は認められていないし、他国人との間に生まれた子はフリナム国民として認めず奴隷として使役されていた。


 フリナムが、白の種族の末裔を名乗る時、その根拠とするものに精霊師の存在があった。精霊師とは、精霊の力を借りて、人の力の及ばない力を行使できる者達のこと。自然に存在する様々な精霊の力を借りた特殊な現象を起こす。


 ちなみに、ジャムヒドゥンの術師の祖ロカル族は精霊師の血を引いた一族で、フリナムでは術師一族は白の種族の分派と見られている。


 精霊師は、精霊魔法と呼ばれる魔法を使う。だが、四大属性魔法のような使い勝手の良い魔法ではない。


 精霊と契約していなければならないし、魔法を行使する時も、まず精霊を呼び出して、精霊に魔法を使って貰わなければならない。要は、発動させるまでに時間がかかる。


 精霊魔法の力は、精霊師が契約した精霊の種族をどれだけ同時に多く扱えるかで左右される。火の精霊を一体しか扱えなければ一体分だが、数体扱えれば数体分の力を扱える。火の精霊の力は個体によりばらつきはあるけれど、個体差に大きな違いがあるわけではない。だから呼び出して扱える数に比例して精霊魔法の力は変わるし、精霊師の力の差は、呼び出せる精霊の数で決まる。 


 精霊師が呼び出せる精霊の数は、修行したからといって変わるものではない。

 生まれ持った才能やセンスが左右する。これもまたジャムヒドゥンの術師と似ているのだが、精霊一種を一体呼び出す程度なら、フリナム国民の多くができる。問題は精霊一体では使える精霊魔法などたかが知れてる点で、複数体呼び出せて、強力な魔法を使えてこその精霊師である。


 精霊師には他にも、数種類の精霊と契約できる資質を持っているかなどの特徴によって精霊師の格が決まる。

 

 魔法力があればあとは術式を知っていれば使える魔法と異なり、いろいろな条件や制限があるので、精霊魔法は使い勝手が悪い。但し、魔法を使うのは精霊であって精霊師ではないので、どんな強力な魔法を使おうとも精霊師の魔法力にはまったく左右されないし、体力も、精霊を呼び出す際には必要だけれど、一旦呼び出してしまえば、その後は精霊師の体力は消費されないなどの利点もある。 


 精霊師を多く輩出することが白の種族の末裔である証明になるかどうか、本当のところは判らないが、少なくともフリナムの国民は誇りにしているのである。


 フリナムは現在、女王ゼラキアが治めている。前国王メルリウスが早逝し、長男ヴィットリオの身体がとても弱く統治者の座に就けない状態で、次男のマジーリが成人するまでをゼラキアが務めている。


 ゼラキアは美しく年齢より若くも見えた。賢い女性でもあったが、とても好色で、愛人を何人も持ち、愛人との間の子も居る。愛人との子の多くは前国王が亡くなったあとの子だが、ゼラキアが前国王メルリオスに見染められる以前に産んだ子、ノルスタインという成人男子が居る。


 ノルスタインは精霊師として才能に恵まれ、また、稀に見る美男子でもありゼラキアは気に入っていた。マジーリが国王に就いた際には、ノルスタインにもそれなりの役職に就かせたいと考えていた。


 だが、ノルスタインには地位が欠けていた。ゼラキアがまだ農家の娘だったころ知り合った鍛冶屋の息子との子なのだから地位が無いのは当たり前だ。だが、戦争で手柄をあげれば地位は貰えるから、ゼラキアはノルスタインに功績をあげさせたかった。どんな小さな勝利でもいい。口実さえできればあとはゼラキアがそれなりの地位を授ければ良い。


 だが、フリナムは西にエドシルドという盟主国、フリナムと同じくエドシルド加盟国のレイビスに挟まれていて、戦争を仕掛けられる相手が居ない。仕掛けるとしたらレイビスだが、加盟国同士で戦を行うと他の加盟国から叩かれる。そこで北の海に浮かぶ島に済む魔獣退治を行わせ、治安維持に功績があったとして中隊規模の軍の指揮官に無理やり昇進させた。


 これで後はマジーリが成人したら、ノルスタインを近衛総監なりに就ければ良いとゼラキアは考えている。まあ、もう一つくらい実績をあげられればなお良い。


 愛人との子ノルスタインに手柄をあげさせたい、そしてサロモン王国の影響力が増すことを快く思わないゼラキアのところへ、エドシルド王ケラヴノスが内々に反サロモン王国への協力を打診してきた。ご丁寧にゼラキア好みの男を、”侍従にでも使ってくだされ”と土産に送ってきた。


 エドシルドとフリナムは水面下で反サロモン王国で手を握る。

 サロモン王国は強いから無理に動くことはできないけれど、機会が生じたときには協力してサロモン王国の影響力を下げるよう動くと両国は約束を交わした。





◇◇◇◇◇◇




 現状のままでは困る国、サロモン王国だろうとどこだろうと構わないが助けてくれる国が欲しいと考えてる国がある。エドシルド加盟国最東の国レイビスである。


 レイビスはグランダノン大陸大陸でも最東にあり、東の海を越えた先にはフェンニーカ大陸がある。西にはフリナムがある・・・・・・農業と漁業そして鉱業の盛んな国である。


 本来なら、エドシルド国よりも発展していてもおかしくない環境の国なのだが、フェンニーカ大陸にある国からの侵攻がたまに生じたり、沿岸を荒らす海賊がいるため、大きな国へと発展できずにいる。


 レイビスもグランダノン大陸でのサロモン王国の情報は掴んでいて、エドシルドやフリナムの思惑とは異なりサロモン王国の支援を必要としていた。そんなレイビスへもエドシルドから反サロモン王国の打診は来ていた。


 レイビス国王クリストファーは、その打診に”レイビスの防衛に力を貸してくれるなら考えてもいい”と返した。だがそれ以降、エドシルドからは何の返信もない。


 将来、サロモン王国との衝突も頭の片隅に入れてるエドシルドには、他国へ兵力を回す余裕が無かった。フリナムもレイビスのために動く気持ちは持っていなかった。エドシルド連邦は、対ジャムヒドゥンのために生まれた繋がりで、その他の脅威にたいしては各国が独自に動くという理由もあった。

 

 どのような理由があれ、レイビスの役に立たないということなので、反サロモン王国で協力する必要はないとクリストファーは考え、そしてサロモン王国の支援を取りつけたいと考えた。


 だが、レイビスは奴隷を使役している。

 奴隷制をやめて体制を変えたくても、戦争と海賊対策に追われて他国のように国内体制を変える余裕がない。サロモン王国は支援の条件に必ず奴隷解放を要求してくるだろうし、それなしではこちらの要望は聞き入れてくれないだろう。どうしたらいいのかクリストファーは悩んでいた。

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