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50、フォモール族滅亡後日談

 フォモール族侵攻によって、ライアナ北部は相当の被害に遭った。

 建物に関してはほぼ建て直しの必要があり、瓦礫撤去も含めて短期での復旧は見込めそうもなかった。


 また人的被害は更に大きく、ライアナ軍三十五万のうち残ったのは三万未満であり、住民の被害も死傷者五万人を越えた。フォモール族侵攻前は百五十万に届きそうだった人口が百二十万程度までおよそ二週間弱で減少したのである。孤児の数も一万人近くに上り、今回の件で生じた被害の大きさをうかがわせる。


 サロモン王国がちょうどフラキアおよびカリネリアの児童教育と児童福祉に力を注ごうとしていた時期でもあり、サロモン王国、フラキア、カリネリアの出資で、ライアナの孤児を受け入れ可能な規模の入寮施設を伴った大規模な学校がフラキアに建設されることになった。人間、亜人、魔族関係なく読み書きと計算を教える。

 ちなみに、この学校の校長にはフラキア自治領主三女カエラが若くして就任する予定であり、現在サロモン王国教育関係担当ブリジッタの下で研修中である。


 ”当分結婚はいいわ。それよりサラ様のような格好いい女性になりたい”とカエラは勉強中である。ファアルド領主と母のアリアにはカエラの将来に多少の心配はあったが、前向きで元気なカエラの様子を微笑ましく見守っている。


 これによりライアナの福祉関係への支出が減り、ライアナ北部地区と軍備の再建に力を注ぐことができた。


 ライアナ国王オレジノは長女カリンをゼギアスの側室にどうだろうとフラキア領主ファアルドに相談したが、ミズラからゼギアスの様子を聞いて”今は多分受け入れられないだろう”と返答された。だが、サロモン王国およびその友好国とのパイプを深めたいオレジノは、先に長男ケネスを勉強目的でサロモン王国へ送り出した。


 ”こき使って下さい”と言われ預かったものの、さすがにそうはいかないので、どこで勉強させようかと悩んでいたところ、オルダーンのクラウディオから”オルダーンも人口が五万人近くになり財務関係で人が足りない”と言われていたことを思い出す。


 シモーナをオルダーンに戻すのが最も良いのだが、シモーナに離れられるとサロモン王国が困る。現在のように複数の地区で復興を行ってるとラニエロの負担がとても大きく、建国当初から財務だけでなく経済関係の事務も手伝って、ラニエロの負担を減らしているシモーナは他には代えられない人材だ。


 そこでケネスをクラウディオに預け、一時的にクラウディオの負担を軽くしつつ、他の人材を育成しようと計画した。商業国のライアナで育ったケネスは数字に強く、クラウディオの助けになると考えたのだ。ゼギアスの目論見はうまく行き、クラウディオの負担は軽くなり、現場の人間から事務に向きそうな者・・・・・・狐人族のアルクーニ・・・・・・をケネスに預け教育もしてもらっている。


 オルダーンでケネスは、警備担当のアンヌに一目惚れする。

 アンヌの方が三歳ほど年上だが、その程度は問題ないのである。

 だが、アンヌはゼギアス一筋で来た女性で、ケネスの誘いになかなか頷いてはくれない。でもケネスって賢くて良い奴なのよ。特に素直で根性があるところが俺は気に入っている。


 実際のところ、アンヌはケネスのことを落ち着いて見られないほどとても忙しかった。


 ジラールの復興作業で人の往来が増え、更に、オルダーンの特産物・・・・・・年々取扱種類も数も増えている・・・・・・取り引きのため商人の出入りや商品の配送も頻繁であり、以前のサロモン王国の入り口役のオルダーンと異なり、オルダーン単独の用件での人の出入りが増えたのでアンヌの仕事も相当増えたのである。


 だが、ケネスがアンヌに一目惚れしたのも、その噂を聞いたゼギアスにはよく判る。

 もともとエキゾチックな野性味を感じさせる美女のアンヌは、サロモン王国で統一した制服を纏ってるのだが、これが抜群に似合うのだ。ちなみにデザインはゼギアスが地球から複製してきたコスプレ画像からエロ格好いいタイプのモノをゼギアスが強権発動して選んだ。黒が基調の中世騎士風で、ゼギアス曰く、”男はどうでもいいが、女はこれじゃなきゃダメ”と、誰からの反対も聞かずに女性用軍服と制服は決まった。うん、やっぱエロくなきゃダメだよね。


 男の方も”光沢のないシルバーのロングジャケットに似合えば中はさほど拘らない”というゼギアスの我儘に合わせた黒の軍服が決まったがマフィアにしか見えない。だが世間では・・・・・・サロモン王国だけかもしれないが・・・・・・意外と好評なので、こちらは反対意見は少ない。

 

 繰り返すが、このエロ格好いい制服が、アンヌにはとにかく似合うのだ。

 あの制服着たアンヌのブラウンの瞳に見つめられたらドキッとするよね。

 だからアンヌに惚れたケネスの気持ちもよく判るんだ。

 

 今のところ、アンヌ脈なしなんだがケネスを俺は応援する。

 アンヌの仕事量も減らしてやる!


 押せ押せケネス!

 頑張れケネス!


 俺は君の味方だ!!


 ・・・・・・ただ今後も仕事はきっちりやってくれ。





◇◇◇◇◇◇



 

 奴隷の使役は今後認めないと国王オレジノが宣言したライアナは相当荒れた。

 フォモール族滅亡を俺達が知らせた日、貴族を含む大勢の国民の前で、俺の横でオレジノが奴隷の使役は辞めると約束した。その場では文句の一つも言えなかったのに、喉元過ぎればという奴であろう、やはり無理だと騒ぐ者が大勢出てきたのである。


 その話を聞いた俺は、オレジノの様子を見守ることにして一切動かずにいた。

 オレジノ国王の覚悟と意思を確かめたかったのだ。

 

 オレジノはかなり頑張ってる様子。


 「ゼギアス国王との約束を反故にすると言うのなら、先日のフォモール族討伐にかかった戦費をお前達が払ってこい。あと約束を反故にするのだから違約金も払ってこい。国庫は北部再建でほぼ空だから払えん。」


 「約束を反故にしたと怒ってサロモン王国が攻めてきた場合、私は奴隷解放賛成派と一緒に逃げるぞ。フォモール族に手も足も出なかったのに、奴らを簡単に討伐したサロモン軍に勝てる見込みがあるのか?」


 「フラキアもカンドラも、もちろんサロモン王国友好国の全てが奴隷を使役せずに、国を運営している。それなのにライアナではできませんとはどういうことだ?いいか?それらの国は我が国よりも、収益をあげてるのだぞ?」


 などと言って、オレジノ国王は奴隷解放反対派を突っぱねている。


 奴隷解放反対派貴族の多くは奴隷商人から賄賂を貰っていて、賄賂という利益が無くなると領地収入だけでは苦しい。新たなことにチャレンジして失敗する可能性を増やすよりも従前の体制のままで居たいのだ。


 オレジノはフラキアへ訪問した際に、カンドラの領主が感じたことと同じことを感じ、時代の流れに取り残されることを怖れていた。現状のままでは、近い将来オレジノを利用する客が居なくなると。フラキアのように生まれ変わるためには、サロモン王国の協力が必要不可欠。


 特に、同じ者でも、奴隷でいたときより一般の労働者として生活させたほうが生産性があがったし、街も明るくなったという・・・・・・今まさに国内から奴隷を無くそうとしてるカンドラ国王フリーゼンの感想は、オレジノの奴隷の使役を認めないという姿勢を強く後押しした。


 だが、奴隷解放反対派もそうそう引き下がれない。理屈で勝てないなら実力でと、奴隷商人達から金を借りて傭兵を募りクーデターを起こそうと画策した。


 国王と長女カリンを殺し、奴隷解放反対派から次の国王をたてようと考えた。

 国内の複数箇所で騒乱を起こすと、警備員が向かって鎮圧するだろう。その時宮殿が手薄になる。そこを襲おうと策を弄した。


 金で雇われた者たちが、奴隷解放などすれば食べていけなくなるなどとデマを流し、サクラ役が住民を煽り、各地で騒乱は起きた。民の動揺を抑えるため、警備員達はデマを正していくのだが、時間がかかっている。奴隷解放反対派の目論見通りの流れが出来、あとは国王と長女を拉致するか、殺害するだけという段階となった。


 だが、宮殿に押し入った者達は、自分達がフォモール族と同じ目に遭うかもしれないとは判らなかった。宮殿の門番にはコカトリスを引き連れたゴルゴンが二名居て、騒いで門を破ろうとした者は問答無用で石化された。


 宮殿の周りを囲む壁を乗り越えようとした者は、上空で巡回監視しているグリフォンに咥えられて門番のゴルゴンのところで落とされやはり石化される。軍を常駐させるのは無理でもグリフォン二頭とゴルゴン四名、コカトリス四頭、そして石化解除役のエルフ一名を常駐させるくらいは人手不足のサロモン王国でも可能だ。


 フォモール族に対してのように石化後に破壊などしないが、サロモン軍がフォモール族にした情景を大勢が見て知っていたため、石化されたら終わりという恐怖がそこにはあった。石化された者は後に一人づつ石化解除され、警備員の尋問を受けることになる。そしてクーデターに関わった貴族たちは捕まり領地没収の上処刑されていった。没収した領地は、奴隷から解放された者達に安く貸されるようになる。




 この頃からゼギアスはライアナの主力産業としてトウモロコシを推奨し、栽培支援を行うようになった。ちなみにカンドラには米を主力産業に推奨した。これによりザールートの小麦と合わせて、二十一世紀の地球での三大穀物の産地を分けて揃えることになる。種や籾はサロモン王国の提供・・・・・・もちろんゼギアスが地球から持ってきたものだ。ライアナ、カンドラ、ザールートの三国で穀物市場を握ってしまえというゼギアスの目論見である。そして・・・・・・ライアナのトウモロコシのおよそ三割はバイオマスとしてバイオエタノールを生産する予定。


 フフフ・・・・・・蒸気機関は既にあるから、鉄道を走らせる必要も見えてきた。

 転送魔法や飛竜やグリフォン等による空輸だけだと輸送量に限界があるので、鉄道は何とか敷設したいのだ。


 原料生産は各国に任せ、製造をサロモン王国が一手に引き受けるというか、ここだけは他に一切渡さん。例外はフラキアの紅茶・・・・・・これからは各種緑茶も・・・・・・くらいなものだ。あそこだって関係者以外には製造法は伝わらないように工夫している。そして商品は各国にのみ卸すから、一般の方への販売益は各国に入るようにする。


 サロモン王国友好関係国以外では、同じ作物を栽培しようとしても困難な理由がいくつかある。一に肥料、ニに土壌改良、三に害虫駆除と病害防除である。肥料を大量に生産できるようになり、土地面積辺りの生産量が大きく向上してる。要は、友好関係国にしか肥料を売らなければ、同じ作物を栽培してもコストが高くなるので競争力に欠ける。しかも友好国の場合、販売先でサロモン王国という大口がある。


 土壌改良や害虫駆除等のお手伝いもサロモン王国では友好関係国には安く提供している。地球で手に入れた知識を土台として、この世界でも数年に渡って実験研究してきたのだ。真似しようとしてもまず無理でしょう。


 フフフ・・・・・・我がチームは圧倒的優位にあるのだ。



 とにかくオレジノが奴隷の使役を止め、現在可能な範囲で公平な社会を目指す姿勢は判ったので、ライアナの再建に少しづつ協力することにした。





◇◇◇◇◇◇


 

 フォモール族討伐の少し前に、めでたいことがあった。

 ミズラが懐妊したのだ。


 この世界では十五歳から結婚できるが、通常は十七歳から二十歳の間に結婚する。だいたい二十歳から二十四歳までに一人目の子を産むのが一般的。

 ミズラは十七歳で最初の結婚し、二十四歳でゼギアスと二度目の結婚したが今まで子供ができずにいた。現在二十七歳のミズラはこの世界では子供ができないのではないかと勘ぐられる年齢だ。

 サロモン王国ではそのようなことはどうでもいいのだが、フラキア領主夫婦としてはミズラが養女とは言え心配していたようだった。


 ミズラも相当嬉しいらしく、医師から懐妊と知らされた次の瞬間には俺に思念で伝えてきた。その夜の我が家はミズラへの祝福でいっぱいだった。正直、俺は照れるだけなんだけども・・・・・・。


 次は私の番とラウィーアは決意を新たにしてるし、他の奥様達ももう一人を狙うみたいな空気だ。これで七人も子供がいるのだから、もういいんじゃねぇ?と俺は思うのだがそうではないらしい。


 特に魔族三名、サエラ、スィール、リエッサは種族として子供ができにくいらしく、産めるなら何人でもと気合が入っている。あと数人子供ができても経済的に問題があるわけではないからいいんだけど、奥様達の気合の入れようを見てると少しビビる。


 「出産が済むまでフラキアへ戻ってもいいですか?」


 ミズラが俺に聞いてきた。

 うーん、前世での話になるが、知人の奥さんが同じことを言って実家に戻ったら、そのまま帰ってこなかったらしい。戻ってきてもらうまでいろいろと苦労があったらしいが、詳しくは聞いてない、というか聞けなかった。


 俺はミズラのその言葉を聞いて、その知人のことを思い出し、


 「産まれたら、ちゃんと戻ってきてくれる?」


 ミズラの不思議そうな表情。

 この人何を言ってるんだろうという感じだったので、知人の話をすると今度は笑いを必死に堪えてる様子。


 「・・・・・・本当にあなったって・・・・・・。」


 「・・・・・・何かおかしいかな?」


 笑いを堪えてるミズラに俺は真剣に聞いた。


 「・・・・・・戻ってくるに決まってるじゃありませんか。私の家はここですよ?・・・・・・ただ、まだ手のかかる子供たちが居るのに、私が居たら迷惑になるだろうし、この機会にフラキアが変化している様子をのんびりと見守りたかっただけなのです。」


 そう言い切ると、ついに我慢できなくなったようで吹き出している。

 腹を抱えて笑うとは、今目の前でミズラがやってることなのだろうな。

 ・・・・・・ほんとに腹抱えてるんだもの。

 ひとしきり笑ったあと、涙をハンカチで拭いて


 「だいたい、出産が済んで体調が戻ったら・・・・・・私が実家にずっと居られるわけないじゃないですか。逆に父や母から怒られますよ。」

 

 そうかなあ?

 孫って自分の子供と違っていろいろと責任が無いから可愛いって聞くから、ファアルド夫婦も手放したくないと思うのではないかと考えたが、また大笑いされるのもちょっと悔しいので黙っていた。


 そういうことで、ミズラは今フラキアに居る。


 ミズラは街を散歩して、昔と変わった家並みをみている。

 石畳の道はコンクリートの舗装に変わり、家々もただ木を立てて組み立てただけでなく計算された家になり、どの家の窓も板ガラスで採光にも優れたものに変わっている。昔の家並みは古いなりに嫌いではなかったけれど、寒さや暑さをしのげるようなものではなく、ミズラの生家も貧乏で家族で身体を寄せ合って寒さをしのぐような家だった。もう実の両親は流行病で亡くなってしまったし、生家も既に無い。この街でも上下水道が整備され、衛生的になり流行り病も起こりにくくなった。


 ミズラがゼギアスの妻にならなくても、街並みは今のように変わっただろうし、特に自分がこの領地のために出来たことなど無いのだろう。でも、この街並みを生んだのがゼギアスで、その妻であることに喜びを感じている。ミズラの気持ちはとても穏やかだ。


 領地全体が貧乏で、静かではあったけどどこか暗く寂しい感じだった。今は新たな産業の成功で活気がある。道ですれ違う人の表情も明るいし、領主の話も嬉しそうに語られる。自分が母親になるせいか、見かける子供の様子がいつも以上に気になる。


 今度フラキアにできる学校には様々な地域からの子供たちが入る予定だ。その子達が大人になった時、このフラキアのことをきっと覚えていてくれるだろう。そう思うと今目の前にある情景がとても貴重なものに思える。この領地を、他の領地をより良くしてくれるだろう子供たちにとっての財産になるのだ。


 そうだ、そうなんだ・・・・・・私達が作ってる今は子供たちの財産なんだ。


 ゼギアスは自身が思ってること以上の素晴らしいことを成し遂げていることを知らない。知らなくてもいいことなのかもしれないが、いつか教えてあげたい。


 ミズラは街並みを眺めながら、そう教えられた時のゼギアスはきっと頭を掻いて照れるだろうと、その様子を想像して嬉しそうに微笑んだ。


・・・・・・

・・・


 領主宅では、食後に笑いが途絶えない。

 新しい紅茶が完成したこと、学校の建築の進捗状況、サロモン王国で勉強しているカエラやケーダと結婚したティアラからの報告などを皆で笑顔で話している。


 ミズラも・・・・・・ゼギアスが計画している様々なことのうち、話しても良いものを選んで皆に話す。ゼギアスがこの大陸全体をどう変えていこうか考えてることを話すと、良いところへ嫁いだねと家族の誰かしらに言われる。


 そこでミズラが実家で出産が済むまで戻ると伝えた時のことを話すと、皆、ミズラと同じように不思議な顔をしている。


 「おかしいでしょ?あの人が望めば誰だって喜んであの人に嫁ぐわよね?そしてあの人に嫌われないように神経を使うに決まってるのに、それなのにあの人にはまったく自信がないのよ。」


 「・・・・・・そうか、ミズラ幸せそうで良かったよ。」


 朗らかな笑顔でゼギアスのことを話すミズラにしみじみとファアルドは話す。


 「お前を送り出す時、大丈夫だとは思っていたけれど、やはり心配もあった。だがその様子では杞憂だったようだ。うん、良かった。」


 「ええ、お父様が仰った通り、とても大事にされてるわ。他の家では考えられないほどにね。・・・・・・あの人のやることについていくのは大変だけど、面白いし、毎日生活に張りがあるわ。」


 「ああ、それは判るよ。教えられたことをこなすのは私達も大変だ。でもできてみると、かけた労力以上の結果が戻ってくる。だから次に何を頼まれるのか今は楽しみになってるんだ。」


 その後ゼギアスの話題が続き、カエラの話題になった。


 「カエラから報告は来てるでしょうけど、今のところ苦労してるわね。子供ごとに教え方を変えないといけないから・・・・・・。」


 「だが、楽しんでるようだぞ?」


 「ええ、きっと楽しいのでしょう。一度観に行った時、授業が終わるとヘトヘトになってるけど笑顔だったわ。」


 他愛もない話を不安もなく家族でできる、たったこれだけのことができる幸せ。

 昔は誰かしらが領地の経済や生活、外敵からいかに身を守るかを心配し、それらを覆い隠すための明るさだった。明日への希望による明るさ、安心な生活を送れる明るさ、これらの貴重さをこの場の家族は理解している。だからこそ、今この時の幸せを共有できる。ある意味、不幸を知ってるからこその幸せで、手放しで喜んで良いものかは疑問だが、それでも乗り越えた幸せというものもあるのだから、それもいいのではないか。


 これらを作るためにミズラはさほど役立てなかったけれど、守るためにできることをやろう、できるだけ長く続くように努めよう、皆との談笑を楽しみながらそう思うのであった。





◇◇◇◇◇◇





 フォモール族滅亡の報はエルザークを複雑な気持ちにさせている。

 フォモール族はやりすぎたと思うが、”この世界は現存する多くの種族が共存するには狭いのか?”とも考えてしまう。

 それともフォモール族が他の種族と共存できるよう導くべきだったのか?とも考える。


 多くの種族を守るために龍の無秩序な暴走を防ぐために、ケレブレアの企みに対抗しうるゼギアスを見守っている。同じようにフォモール族の暴走を防ぐための何らかの対策を見い出しておくべきだったのか。

 だが全ての種族にできるだけあるがままに生き、そして死んでいくことを望むのならば、・・・・・・弱点を見出された、他の種族から恨みを買っていたフォモール族の滅亡は必然だったのかもしれない。


 神竜といえど、いや神竜だからこそこの世界にできることは少ない。

 本当にそうなのか?


 そのことは神竜となってから何度も自問してきたではないか。

 だが、一つの種族が滅んだ今、再びその問いを繰り返し考えてしまう。


 出せない答えと向き合い続けられない龍は神竜にはなれないとはいえ、何千年も続くとさすがに神竜である自分を呪いたくなる時もある。


 ・・・・・・ケレブレアにはこの手の悩みは無いのだろうな。

 そう考えると、はぐれ龍であるケレブレアの立場が羨ましく感じられる気もする。

 だが、だからこそケレブレアははぐれ龍なのだと理解し、隣の芝生は青いと言うやつかなとエルザークは自嘲する。


 ケレブレアが育てているデュラン族の力は既に龍王の域にある。


 だが、それはゼギアスも同じこと。

 そして森羅万象を使えるゼギアスが優位にあり、伸びしろもゼギアスの方が上だろう。訓練に付き合ってみて判ったが、ゼギアスの限界はいまだ見えない。

 見えたと思っても、いつの間にか上限が上がってるのだから、察することができない。


 これも地球の神が恐れたゼギアスの願いの力なのかもしれぬ。


 今まではゼギアスには時間がないと思っていたが、これからは逆だ。

 時間を経るごとに、ゼギアスの能力はケレブレアが育ててるデュラン族よりも大きく伸びるだろう。ケレブレアが龍王と護龍に対し十分勝ちうるよう時間をかけるだけ、ゼギアスが有利になっていく。


 そろそろエルザークがゼギアスの訓練に付き合う必要はなくなってきてる。

 これからは自分だけの力で伸びていけるだろう。


 ・・・・・・しかし・・・・・・ゼギアスはどこまで伸びるのだろう。

 事前の予想を超えて、あ奴はいずれ、過去五秒前どころか一時間だろうと二時間だろうと遡れるようになるのではないか?

 生身を持つものの限界を超えていけるのではないか?

 

 あやつの性格が今のままなら問題はないが、もし変わってしまってこの世界の災厄にならねばいいが・・・・・・まあ、前世の知識や経験に縛られて雌を自分の自由にしようとすらできないのだからその心配は無いだろうが。


 奴の考えや行動に影響されて、弱肉強食のこの世界に、奴が持ち込んだ新たな考えに従って生きる者も増えつつある。これまた時間が経つごとにゼギアスの危険性が減っているということだ。身近に雌を一人増やすごとに危険性が減るのだから、サラをけしかけてもっと多くの雌をゼギアスのそばに置くよう仕向けてみるのも面白いか。


 ククククク・・・・・・もうこれ以上はいいよ~と困るゼギアスの声が聞こえるようじゃ。


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