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48、ヴァンレギオス


 カリネリア総督リアトスは、この日もカリネリアの開発状況が記された報告書に目を通してから、本国への進捗報告書を総督用執務室として割り当てられた部屋で作成していた。

 

 本国のヴァイスハイトやラニエロから進捗状況の目安を教えられており、その目安に従って追加の手を打つかどうかを判断している。今まで軍事に関係することばかりに時間を費やしてきたリアトスには判らないことも多かったが、本国の担当者に問い合わせるとアドヴァイスがすぐ返ってくるので、最近は仕事にもだいぶ慣れてきた。


 デスクワークよりも訓練で部下を鍛えるほうが性には合ってると思うのだが、ゼギアスから、今にも土下座しそうなほど頭を下げて”リアトス頼む!この通りだ!”と頼まれてしまうと断れなかった。今の仕事に就いてから、考えてみると、魔族のデーモンにはこの手の管理という概念が全くと言っていいほど欠けていたと気づいた。


 今思うと、ゼギアスの下で働く機会がなければ、ずっと無駄の多い非効率な生活を送らせ、結果として一族に苦労をかけていたのだろう。この機会に学んで、一族の中からもこの手の仕事を得意とするものを育てなければ・・・・・・と、バルバ族の仲間のことを思い出す。


 報告書を書き終え、一息ついていたリアトスの部屋に部下が入ってきた。


 「リアトス様、お客様です。」


 ヴァンレギオスのレーティヒという者だが至急話を聞いてくれと言う。

 部下が身体を調べた所、自身で伝えた通りの魔族で特に怪しいところは無いのでどうしましょうかということだった。

 ゼギアスからは、面会を求める者にはできるだけ直接会って話を聞くようにと言われていたリアトスは早速会うことにした。


 応接間の椅子には、黒い長髪、銀の瞳を持つ細身の女性の姿があった。

 リアトスは自己紹介を済ませ、レーティヒの前に座る。


 「ゼギアス様と急ぎお会いすることはできませんか?」

 

 レーティヒの様子には焦りが見える。表情と口調に、いかにも急いでるという空気が感じられる。


 「用件は何かな?ゼギアス様は多分お会いになってくださるだろうが、用件も伝えずに会ってくれとは私は言えないのだが。」


 「ヴァンレギオスの女王陛下と急いで会って頂きたいのです。私どもには時間がございません。何卒、どうかお願い致します。」


 リアトスの見る所では、嘘はついていないように感じる。

 それに一国の王が急ぎ会いたいと言うのだ。確かにゼギアスに報告すべき話だろう。


 「判った。すぐ連絡を取るから待っていてくれ。」


 リアトスは、預かっている思念伝達用ネックレスを使い、ゼギアスに報告する。

 ゼギアスはすぐに向かうと返事して思念が切れた。


 「これからこちらへ来て下さる。もうしばらく待ってくれ。」


 リアトスの言葉を聞いてレーティヒの表情が少し和らいだ。

 目の前に出されたお茶にもやっと手を出す気持ちになれた。

 カップを持って初めてそのお茶の香りの良さに気づき、その香りの甘さに心が少しだけ温かさを感じた。


 するとリアトスが座っている椅子の背後にゼギアスが転移してきた。

 大きな男だ。


 「待たせてすまない。俺がゼギアスだけど、女王陛下が急いでるんだろ?早速行こうか?・・・・・・えーと・・・・・・場所はヴァンレギオスだったな。ちょっと悪いが、女王陛下のいる場所を思い起こしてくれないか?・・・・・・・そうそう・・・・・・それでいい・・・・・・うん、判った。・・・・・・ああ、お茶を飲んでくれ。自慢のお茶なんだ。あとで感想を教えてくれると有り難いな。・・・・・・あ、リアトスすまん。決して無視していたわけじゃないんだ。急いでると聞いて気が焦っちゃってさ?それと報告書はさっき読んだ。このまま進めてくれ。」


 なんか気ぜわしい男だが、悪い男には見えないとレーティヒは感じた。


 ゼギアスの勧めるままにお茶を飲み干すと、ゼギアスがちょっとすまないと言ってレーティヒの手を握る。リアトスというデーモンに”じゃあ、行ってくる”と軽く言葉をかけて、ゼギアスとレーティヒは転移した。



・・・・・・

・・・



 レーティヒの視界がはっきりするとそこは見慣れた宮殿の前だった。

 レーティヒが半月以上かけた道のりを一瞬で転移してきたのか。

 ゼギアスの魔法力に素直に感動していた。

 レーティヒはゼギアスを先導して宮殿の奥へ進んでいく。


 様子こそ宮殿だが、こじんまりとした、そして質素な宮殿だった。

 ゼギアスは、エルザークの神殿もこのくらいのサイズなら邪魔にならないのにと、エルザークが知ったら特訓の時間増やされそうなことを考えていた。


 まっすぐ奥に進むと少し開けた部屋に出る。いわゆる謁見の間のような様子だからきっとここで女王陛下を待つのだろう。しかし、ここまでの間に誰とも会わなかったが、女王陛下が居るのにいいのかななどともゼギアスは考えてる。

 

 女王の座る椅子の前で周囲を見渡しながら待っていると、女王らしき女性とお付きの者と思われる女性が二人付き添って椅子まで歩いてくる。


 女王らしい女性が椅子に座ると、レーティヒは跪いて


 「ゼギアス様をお連れいたしました。」


 「レーティヒ、ご苦労様でした。こんなに早く戻ってこれるとは思ってもいませんでした。お疲れ様、ゆっくり休んでください。」


 女王の言葉を聞いて、レーティヒは礼をして立ち去っていった。


 「よく来てくれました。ゼギアス・デュラン。私はヴァンレギオス女王ラウィーア・デュランです。」


 は?デュランって言ったか?

 それじゃ同族か・・・・・・サラ以外の同族には初めて会うな。


 「初めまして。俺は妹以外のデュラン族に初めて会いました。」


 「そうでしょうね。その辺りの事情はいずれ話すとして、今はどうしてもお願いを聞いていただきたいことがあってここまで来て頂いたのです。」


 なるほどね。

 確かに龍気の光が見えるからデュラン族という言葉に嘘はないのだろう。

 龍気の光はサラ以外から見たことない。


 「お聞きします。」


 「まず・・・・・・ヴァンレギオスの民をサロモン王国へ移住させていただきたいのです。」


 ほう、サロモン王国のことを知ってるのか・・・・・・そういや俺のことも知ってるのだから当たり前か・・・・・。

 

 ヴァンレギオスはこれまでデュラン族が幾種類かの魔族とともに隣国のフォモールと戦ってきた。だが、フォモール族は強く、デュラン族も国民も年々減り、とうとうヴァンレギオスのデュラン族の生き残りはラウィーアだけになり、国民も五千名を超える程度になってしまった。フォモール族へも相当被害を出しているのだが、まだ十万程度は残っていて、次に攻撃してきたら耐えられそうもない。


 最近だけでなく百年ほど前から居住もしくは協力できそうな国を探していたのだが、どこも亜人や魔族をまともに受け入れてくれそうな国はなく絶望しかかっていた。そこに亜人や魔族の奴隷からの解放を掲げるサロモン王国が出てきた。ここ数年観察してきたが、どうやら信頼しても良いと考えてる。


 「それは全然構わないし、仲間が増えるのは嬉しいんだけど、この国は捨てるのかい?」


 「それは悩みましたが、サロモン王国でもここを守るほどの戦力を常駐させるのは無理でしょう。フォモール族は甘い相手ではありません。」


 「なるほどね。うちの国力知った上での決断ってわけか。」


 「はい、私達の今後を預ける相手のことですので可能な限り調べさせていただきました。」


 「うん、判った。いいよ。同族の頼みだし、断るつもりはないよ。」


 ラウィーアはホッと一息ついた。

 これで話は終わりかなと俺も気楽な気持ちになったとき、ラウィーアの口調が変わった。女王としてと言うより一人の女性として言葉を発してる。そんな感じだった。


 「・・・・・・それと・・・・・・ゼギアス、私をそなたの妻にしていただきたい。」


 「は?」


 俺は国民の移住に条件なんかつけなかったのだから政治的結婚って奴もいらないだろう。


 「そなたには既に六人の王妃がおるのだろう?そこに一人増えても構わないのではないか?」


 「・・・・・・えーと・・・・・・。」


 うん、それはそうなんだけどね。


 「率直に言おう。デュラン族の純血種を残しておきたいのだ。この世界にはデュラン族はもう私ともう一人とそなたの家族だけになったのだ。そしてもう一人とは・・・・・・リエンム神聖皇国の筆頭戦闘神官カリウスなのだが、彼の者とは繋がりを持とうとは思えぬ。つまり・・・・・・そなたしかおらぬのだ。」


 何その、あなたと●体したい・・・・・・みたいな台詞。

 俺は機械天使じゃないぞ?

 

 「だが、俺の祖母は魔族で、俺が純血種ではないよ?」


 「判っておる。だが、デュラン族の血は強く、子供になら影響も出るが、孫にまでデュラン族以外の血の影響は出ない。だからそなたで構わないのだ。それとも私では不満か?」


 なるほどね。

 俺の子供たちでもダメなわけか。


 「うーん、一応確認したいんだけどさ。第七王妃ってことになるんだけど、いいの?今は女王さまだよね?」


 「本来は兄が王を継ぐはずだったのだ。だが三年前のフォモール族との戦いで命を落としてな・・・・・・。私は仕方なく急遽女王になったのだ。女王の地位などに拘りはない。」


 いや、将来のハーレムライフのために、ラウィーアのような可愛らしい女性も居てくれるのはとても嬉しいんだけどね。うちの奥様達はエロ・・・・・・じゃない色気が強い方が多いし、やっぱりバリエーションは多い方がいい気もするし・・・・・・。


 「安心しろ。性技はレーティヒから十分教わっておる。そなたに不満など抱かせん。」


 いや、そういうんじゃないんだけどさ。

 つか、レーティヒって堅そうな女性に見えたけど、そういう指導もするんだ・・・・・・ふーん、スィールやリエッサが食いつきそうな話だ。


 しかし、この流れで”いや結婚はちょっと・・・・・・”とか言ったら、またサラやベアトリーチェから白い目が向けられそうだ。


 「判った。俺も覚悟を決めた。みんなまとめて面倒見る!!」


 「そうか、これから宜しくな。あ・な・た~。」


 ・・・・・・。


 ノリがいいんだか、とにかく気が早いラウィーアと国民のサロモン王国移住計画について話す。


 ヴァンレギオスにはラウィーアの他には魔族しか居ないが、全員人化できるので人化したままフラキア経由カリネリアに入る。ここまでは急ぐ。そしてカリネリアからはジラールを経由してザールート、そしてオルダーンまでうちのグリフォン達と共に各自のペースで移動してもらう。移動途中の食料などはサロモン王国から転送する。

 

 ざっくりと決めたことを、ラウィーアはレーティヒを呼んで指示した。


 「・・・・・・以上のように、私の配偶者の国まで移動する。皆には急ぎ移動を始めるよう伝えてくれ。私はゼギアス様と共に先に行っているから、皆には心配しないでくれとも伝えてくれ。」


 レーティヒは頷き、再びどこかへ去っていった。

 いろいろと忙しい方で、うちのラニエロと良い勝負だな。


 こうして俺はまた一人の嫁と仲間を五千名手に入れた。


◇◇◇◇◇◇



 「今日から宜しくお願いします。お姉さま達にはゼギアス様の嗜好をいろいろ教えていただきたいと思います。是非、ご指導ご鞭撻をお願いいたします。」


 ラウィーアが体育会系部活の新人部員のような挨拶をペコリと頭を下げてして、笑顔の奥様達から熱烈な抱擁を受けている。第七王妃公認の瞬間である。

 サラは俺の顔を見て”一人で決めたのは褒めてあげるわ”とかなり上から、でも満足げに言ってた。

 

 うん、間違いじゃなかったんだな。


 ・・・・・・・・・・・だが、本当にこれでいいのか?


 サラが言うには、アンヌやマルティナにエルザまで控えてると言う。その三人まで貰ったら・・・・・・俺・・・・・・十人も嫁さん持つことになるのかね?

 

 まあ、徳川家康は妻が二十人ほど、側室は二百人居たというからなあ。

 俺ってば征夷大将軍レベルに近づいてるんだ。

 

 サラは”お兄ちゃんの馬鹿げた体力はそのためでしょ”と言うが、いや違うだろう?と言いたい気持ちをぐっと堪えて、兄貴の威厳のかけらもない俺は”そうかもしれないなあ”と遠い目をするに留めておく。


 ただ家が賑やかなのは大歓迎なので、まあいいかと。



・・・・・・

・・・



 その夜、食事や風呂に大満足のラウィーアが俺のベッドに入ってきて、デュラン族についていろいろ教えてくれた。


 デュラン族は呪われてると見られ遠ざけられた。だが、どこの世界にも捨てる神あれば拾う神ありで、子孫を細々とだが繋ぐことができた。そして六百年程前には数百人にまで増えたという。


 だが、まだヴァンレギオス建国されていない頃、たまたまフォモールに一族は流れ着き、あまりの酷さにフォモール族以外の住民を率いて戦い、ヴァンレギオスを建国した。それ以後はフォモール族とデュラン族の争いが続き数十万居たフォモール族を十万程度まで減らしたが、三年前にはデュラン族もラウィーアを入れて十人も残っていなかったそうで、三年前の戦いでラウィーアを残して他のデュラン族は居なくなった。


 ヴァンレギオスの外へ、フォモール族と戦ってくれそうな者を探しに出た者が幾人か居て、そのうちの一人がゼギアスの父だという。サロモンは、ヴァンレギオスで行き倒れた夫婦が残した子が成長し、やはりヴァンレギオスの外へ仲間を探しに出た人間だとのこと。デュラン族に鍛えられ気を見ることも魔法を使えるようにもなったらしい。


 だからサロモン王国と聞いた時には、あのサロモンがヴァンレギオスを救うために国を作ってくれたのかと期待したのだという。


 サロモンは死の間際に”デュラン族の願い”という言葉を残していた。それが今だに判らないのでラウィーアに聞いてみた。


 「・・・・・・デュラン族の願いとは・・・・・・デュラン族の安息の地を作ることよ。」


 ラウィーアの目は寂しそうだった。

 なるほどな。やっとヴァンレギオスでその地を見つけられたと思ったのにそうはならなかった。ラウィーアは残った国民を逃がすことしかできなかった。それが寂しいのだろう。


 「任せておけ。ここサロモン王国をデュラン族だけでなく亜人や魔族にとっての安息の地にするからな。」


 ラウィーアはフフフと笑って


 「頼りにしてるわ~~~あ・な・た~。」


 俺の首に腕を巻きつけて唇を押し付けてきた。

 口の中にラウィーアの舌と吐息が入ってきて、俺はラウィーアの背中に回した腕に力を入れて抱きしめる。


 「クスッ、肌を触れ合いながら夫と口づけするのは悪くないわ。ええ、とても安心する。・・・・・・あと・・・・・・燃えてくるわ」


 俺の顔を獣の目で見てそう言ってはまた唇を重ねてくる。

 ラウィーアってまだ十七歳のはずだけど、既に雌の顔をしていた。

 ラウィーアの肌の香りと吐息が混じった香りにやられて俺は本気モードに入る。

 彼女を下にして、彼女の身体を手で確かめ始めた・・・・・・。



・・・・・・

・・・



 翌朝、ラウィーアを連れて一部屋づつ子供たちの顔を見ていると、


 「毎年一人子供を産むつもりでいるから、宜しくね。」


 それは貴女大変でしょうにと思ったが、希望通りに子供産めるわけじゃないしなと思い直し黙って微笑むだけにした。


 長男のレオポルドと次男のルドルフはもう五歳でラウィーアの顔を見ると近づいてきて”おはようございます”と言ってペコリと挨拶したので、俺は”偉いな”と二人の頭を撫でた。”そうよ~レオもルディも本当にお利口なんだから~”と目を細めてマリオンが笑ってる。


 朝食前の訓練へ俺はエルザークのもとへラウィーアを連れて行く。こう見えても毎日の訓練は欠かさずに続けている。


 「おはよう、エルザーク。今日は新しい嫁さん紹介しなきゃと思って連れてきた。」


 そう言うと


 「知ってるに決まっておるじゃろ。我を誰だと思ってるんじゃ。」


 「そう言っても、ちゃんと紹介しなければ、何故紹介しないんじゃと拗ねるんだろ?」


 「ワハハハハ、判っておるではないか。」


 「まあ、いいや。今日も宜しく。」


 時間を遡る訓練だが、やっと二秒前まで遡って自分と操作したい対象を操作できるようになった。当面の目標の五秒まではまだ遠い。


 いつもようにエルザークが俺を過去まで連れていく。今日は三秒前だ。

 連れて行かれた時間帯で、その状況を俺は感じ取るよう神経を集中する。


 最初の頃は過去に遡る感覚が判らず苦労していたが、今は別のことで苦労している。一秒遡るごとに変わる周囲の変化に流されてしまうのだ。

 

 エルザークは”それは時間を意識しすぎてるからじゃ”と言うのだが、意識しないと一秒前も二秒前も判らなくなるし、意識すると周囲の変化に流されちゃうしなあ。


 まあ、これも”慣れるしかないじゃろ”というエルザークの言葉に従って、とにかく毎日続けている。


 「・・・・・・それは・・・・・・森羅万象・・・・・・ですか?」


 ラウィーアが目を丸くして、口に手を当てて驚きながら聞いてきた。

 口も開けないほど集中している俺の代りにエルザークが答える


 「そうじゃよ。さすがにデュラン族だな。判るか?」


 「・・・・・・私が知らない龍気・・・・・・だからそう思っただけで、実際には初めて見ました。」


 ”ゼギアスが使えることは、サラとお前達嫁以外には内緒じゃよ?”とラウィーアにエルザークは釘を刺してた。ラウィーアは黙って頷き、俺の訓練の様子を見守っていた。



・・・・・・

・・・



 「もう少しなんじゃがなぁ・・・・・・まあいい、朝食にしよう。リエラは何を作ってくれるかのぉ。」


 疲れてる俺を放置して、ルンルンと言いそうな様子で俺の家へエルザークは向かう。俺がしゃがんで息を整えていると


 「あなたって、世間が知ってる以上に正真正銘の化物だったんですね。」


 感心してるのか呆れてるのか判らない口調で、でも微笑んでラウィーアが言う。


 「・・・・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・呆れたかい?」


 「・・・・・・あなたって、予想をはるかに大きく上回る好条件物件だったんですねぇ・・・・・・。」


 俺は不動産じゃねぇよ!!

 通勤駅徒歩五分以内で格安新築優良賃貸マンション見つけた新入社員のような輝く瞳で見ないで欲しいものだ。


 でも・・・・・・・、何故か、ウルウルした瞳を向けてくるラウィーアを見ながら、まあ、残念そうではないので結婚して良かったのかなとも思う。


 「あなたは知らないでしょうけど、デュラン族には”再び森羅万象を使える者が産まれたら、その者がデュラン族を新天地へ連れて行ってくれる”という言い伝えがあるんですよ?・・・・・・もうデュラン族にとっては神ですよ?神!!」


 変なスイッチが入ってしまったのか、胸の前で両手を握りしめ”神の妻になってしまった~”だの”新天地ってここなのかも~~だって私デュラン族だし~”とか”神の子を産むんだわ~”だのとラウィーアは浮かれてる。


 数年前までは排泄物の匂いがそこらで香る森だったんですけどね・・・・・・ここ・・・・・・まあ、喜んでるようだから黙っていよう。


 ・・・・・・だいたい、妹の顔色伺いながら嫁さん貰ってる俺が神って何だよ。

 歩く女難と言われてた俺が神って言うなら、女難から難とってくれよと言いたい。

 あ、それじゃ歩く女になってしまう。それもマズイ。こんな身長二メートル近いごっつい女だったら嫁の貰い手探すのも苦労するだろう。


 まあ、ダンゴムシの神ってんなら、何となく納得するけどなぁ。


 「とりあえず、朝食にしよう。エルザークも楽しみにしてたけど、リエラの料理は美味しいからなあ。」


 「ええ、あなた。今まで以上に愛せそうだわ~。」


 って、ラウィーア、昨日会ったばかりでその台詞は軽くないかね?

 ・・・・・・まだ瞳がウルウルしてるから何を言っても聞きそうにないな。



・・・・・・

・・・



 朝食後にもラウィーア爆発中。

 サラを相手に”ゼギアス様って神だったんですよ?もう驚きですよ。”とやってる。

 ラウィーアの話を面白そうにサラは笑顔で聞いている。


 ・・・・・・これはマズイです・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・ネタにされて弄られます。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ベアトリーチェとマリオン、それにミズラが加わって俺を弄りそうな予感がします。


 こういう時はサエラやスィール、リエッサのそばから離れないようにしないと大変です。この三名は、弄り好きの方たちから俺を庇ってくれます。

 

 「それじゃ、俺はヴァンレギオスのメンバーが来ても大丈夫なようにヴァイスとラニエロのとこ行ってくるわ。」


 三十六計逃げるに如かずなのである。


 「あ、あなたラウィーアさんも紹介しなきゃダメでしょ?」


 ベアトリーチェが背後から声をかけてくる。

 それは別に今日じゃなくてもいいと思うんだけど、確かにその通りだから、舞い上がってるラウィーアを連れて政務館へ向かう。


 政務館までの間に”森羅万象のことは内緒なんだからね?”とラウィーアに釘をさしておく。浮かれていろいろ話されては困るからねぇ。


 政務官の宰相専用部屋へ行くと、ヴァイスハイトが難しい顔をしていた。


 「どうかしたのか?」


 多少のことでは顔色を変えないヴァイスだから心配になった。


 「実は、リエンム神聖皇国とジャムヒドゥンとの戦争で、神聖皇国がキュクロプスを三名戦線に投入したらしいのです。」


 何それ?と思ったが、ヴァイスが問題視してるのだからもうちょっと慎重に言葉を選ばないと怒られる。


 「キュクロプスの投入ってそんなに問題なの?」


 選んでもこの程度である。


 「ギズムル様とかナザレス様に近い戦闘力を持つ巨人が戦線に三名投入されたと説明したら深刻さが判るのではないでしょうか?」


 はぁぁぁぁああああ?

 何それ、そりゃ深刻だよ。


 ジャムヒドゥンとは戦ったことないけど、ナザレスとは戦ったというか訓練で相手して貰ったからよく判る。

 あのクラスは人間が相手にしちゃいけないレベルだ。

 うちだって俺やサラが居なければ勝てるかどうか判らない。

 

 「それでこちらへの影響はあるのか?」


 「いえ、ジャムヒドゥン軍は壊滅状態で撤退したらしいのですが、神聖皇国軍は深追いしなかったようです。こちらへ向かってくる様子も今のところはありません。」


 ふむ、当面は慌てなくていいってことか。

 対策を打つ時間があると考えればいいんじゃないかな。


 「じゃあ、こちらはキュクロプスへの対策打つ時間があるということじゃないの?」

 

 「それはそうですし、うちに対しては魔法を使えないキュクロプスはさほど有効じゃないと思います。ですが、ジャムヒドゥンはどうでしょう?それでなくても国内でゴタゴタしているのに、神聖皇国に大敗を喫したとなれば、国内が更にぐらつく可能性が高まったと思います。つまり大陸の勢力図が大きく変わる可能性が出てきたので、慎重に考えていたのです。」


 なるほどね。キュクロプス自体より、勢力バランスが崩れた後の対応の方が面倒ってことか。


 「判った。そっちは考えまとまったら教えてくれ。こっちは、俺の新しい嫁さん紹介するよ。」


 「ラウィーア・デュランです。宜しくお願いします。」


 「こちらこそ宜しくお願いします。宰相を務めさせていただいてます、ヴァイスハイトです。」


 「ヴァイスは俺の右腕というか、俺の頭脳なんだ。ラウィーア、しっかり覚えておいてくれ。それでヴァイス、昨日話したヴァンレギオスからの移住民のことなんだが。」


 「ああ、そちらはもう調整済みです。いついらしても大丈夫ですよ。家だけ多少お時間頂きますが・・・・・・、入国者一時待機所を一時期たくさん作りましたよね、あれが今は空いて居ますから、生活に困ることはまったくありません。ラニエロやブリジッタなどにも連絡済みですので、皆さんが入国次第、普通に生活できますよ。」


 さすがです。

 頼んで間違い無し、ヴァイスハイトさん。


 「そうか、ありがとう。それと、カリネリアとフラキア、あとジラールの学校なんだけど、そろそろ考えなきゃいけないと思ってるんだが、どうだろう?」


 サロモン王国だけじゃなく、うちが関係してるところでは読み書き、計算できるようにしたいよね。今までは人手が足りずに手が回らない状況が続いてきたけど、ここに来て、ジラールやカリネリアで奴隷以外でも我が国に参加する人増えたからそこから選べば何とかなるんじゃないかと思うんだけど、やはりヴァイスハイトの意見を参考にしないとな。


 「今のところ、ジラールはそこまでできないですね。生活基盤を整備するのにまだ忙しいですし、ただ、ジラールの子はサロモン王国で預かってますから当面大丈夫です。カリネリアとフラキアは逆に、早急に手を打つべきかもしれませんね。あとでブリジッタと相談しておきます。決まりましたら報告あげます。」


 ”宜しく頼むよ”と言い残し、俺はラウィーアを連れて学校や工房などを回った。後は首都以外に顔見せすればいいだろう。それは定期視察のついででいいな。

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