34、あれから三年後
リエンム神聖皇国が亜人と魔族の奴隷を解放した年から三年。
いろんなことが変わった。
俺自身のことから言えば、王妃五名全員が子供を持ち、ベアトリーチェは二人目の子を産んだ。現在、子育て絶賛開催中である。乳母だの侍女だの侍従だのが我が家に増え、家も建て直すことになった。
サキュバスのサエラ、ゴルゴンのスィール、二人の子は、フフフ、俺の血の勝利で二人とも男の子であった。
問題は、サエラもスィールも種族初の男子出産ということで、俺の相手より子供の相手ばかりしている。これはもう俺のモテナイ男子メンタルをチクチクと刺激する状況で、はっきり言えば、子供相手にそれも息子相手にヤキモチをたびたび妬いている。
だってね?
サエラはまだいい。
種族初の男の子出産に大喜びしてるが、今までとそう大きくは変わらない。
ライラもサエラの様子見てとても嬉しそうだし。
あ、ちなみにライラもセイラン・ファラディスと結婚し、今はライラ・ファラディスになってる。まだ子供は居ない。
話を戻すと、スィールなんか、表情に変化が乏しかったんだよ?
まあ、ゴルゴンにしては表情はあったんだけど、それは俺に気に入られたいとか、俺と一緒に居る際に他の人の目から見て冷たい王妃と思われるが嫌でスィールが努力した賜物だったんだが。
それが・・・・・・貴女は誰?と言いたくなるほど、子供を抱いて見つめると表情が思い切り変わるようになった。まあ、パアァっと明るくなるような笑顔を見せてくれるのは嬉しいんだけど、相手が俺じゃないってところがちと引っかかる。
子供はとても可愛いさ。
そりゃ可愛い。
でもやっぱねえ・・・・・・。
リエッサとの子は女の子で、将来はこの子がアマソナスの族長だと今から騒いでる。アマソナス達も同様で、誰が鍛えるか今から決めるそうだが、族長のヘラが優勢とか、俺にとってはどうでもいいとは言わないまでも、もっと大事なことがあるような気がしてならないことで盛り上がっている。だけど、肌が白いアマソナスの族長ってのは違和感ある気がするよな。薄いとは言え、アマソナスの肌は青いからなぁ。
それに血しぶき浴びて、それを舌で舐めながら楽しげに笑うアマソナスになってしまったらお父さん怖いよ。アマソナスに鍛えさせるのは良いとしても、この子の教育は少し考えなきゃならない。
ベアトリーチェは上が男の子で下が女の子。
ベアトリーチェが最初の男の子を産んだ時に、俺の後釜はこの子と決め、公にも宣言した。こういうのは親が元気なうちにはっきりしておいたほうが良い。家督だの遺産だのという相続関係は争いのもとだ。王妃達全員賛成してくれたしね。
ただし、王になっても宰相や兄弟の意見をよく聞き、物事を進めるべしという文言は付け加えた。あくまでも予定だけど、厳魔の寿命はデュラン族より長い。デュラン族が二百年で、厳魔はその倍は生きるらしい。だから俺が亡き後もヴァイスハイトは生きてる予定。ヴァイスに任せておけば心配はない。いざとなったらヴァイスを国王にしたっていいんだ。この三年を大きな問題もなく越えられたのは、皆の努力もあるけどやはりヴァイスがいつも先手を打ってくれたのが大きいと思ってる。
二人目の女の子は、ベアトリーチェに似た顔立ちで、ベアトリーチェを特に可愛がっていたという兄ランベルトは”この子の婿は俺が責任をもって探す!!”とまだ赤子なのに息巻いている。監視が厳しい叔父を持って苦労しそうだなと俺は思ってるが、まあ、サラのようなしっかり者に育ってくれるかもしれないし、そうなったら泣くのはランベルトだろう。将来が楽しみだ。
マリオンは男の子。
マリオンに会った時から感じていたことだけど、マリオンって愛することにも愛されることにもとても飢えてたと思う。家族や周囲と上手くやれずに育ったのが原因なのかなと思っていたのだが、子供ができてそれがはっきりとした。
自分の子には当然だけど、他の王妃から生まれた子にもメロメロ。
「あら、ダーリンの子ですもの、誰の子だって可愛いに決まってわん。」
そう言ってるけど、俺は違うと思う。
自分の弱いところというか可愛らしいところを誰かに見せるのが恥ずかしいんだ。
毎朝、子供達全員の顔を見るまでは落ち着かない様子。
暇さえあれば、自分の子を抱きながら他の子の様子も見て回る。
持ち合わせている全ての愛情を分け与えながら生活してる感じ。
王妃は全員、懐妊以降仕事持たなくなったので、マリオンは時間の全てを俺と子供達のために使ってる。ちょっと驚くほどのなのだが、エロい表情よりも母親の柔らかい笑顔を多く見せるようになり、その様子を見ると、ああ、マリオン良かったなと言いたくなる。
男の子四名、女の子二名の子供を俺は授かった。
サロモン王国は、とても強い国になったと思う。
軍事面では兵数が増え、二十万名の軍を二箇所同時に出すことも可能になった。
人材も増えて、指揮面でも不安はない。アロンがいるからもともと心配はしてないのだけど、各種族の族長も自分の種族だけで構成された隊じゃなくても組織だった戦闘が可能になっている。リエンム神聖皇国でもジャムヒドゥンでもかかってこいやあぁ!という感じである。
それ以上に、経済面での充実が素晴らしい。
俺が夏は各国へ食料の買い付け、冬は捕鯨に勤しんでいた三年間に、地球で言えば近代的な設備が揃い、これはもう他国と勝負する前から我が国の商品の勝利は決まってる。また生活面でも水力と火力発電設備が揃い、各種処理施設も充実したものだから、これでインターネットがあれば文句なしと言いたくなるほど快適な生活環境が揃ってる。
まあ、家は木造、四階建てまでと決めてるし、移動は歩きかグリフォン、使用可能な者は転移魔法と限定してる。またテレビなどの娯楽は無いし、他にも二十一世紀の日本と比較すると足りないものは多いから、言うほどには凄くないんだけど。
でも、この世界では、サロモン王国だけ別世界と表現するしかない状態になっている。大事なことは、この状態なら俺やサラの力なしでも同じ状態を再現できるということ。
ドワーフ、マジすげぇ。
まあ、ドワーフの呼ばれし者バーラムがその特異な力を発揮し始めたというのが大きいとは思う。俺が地球から持ってきた知識や情報のうち、工業関係ならば、この世界で実現可能な手段を見つける才能持ってる。彼が試作品を作り、他の者がそれを真似て生産する流れができてる。
俺の刀作ってるような暇無いんだわ。最初に打ってもらった大太刀と小太刀は俺の部屋の壁に飾ってるが、それ以降は頼みたくても頼めない状況にある。
今以上のモノを開発できるかは判らない。少なくとも短期的には不可能だろう。だが、これから教育のレベルをあげていき、遠い将来は可能になって欲しいと思ってる。
一部の特異な力の持ち主抜きでも発展させられる国になって欲しい。
エルフが主導して食料生産関係は進んでる。オルダーンでの養殖を手伝いながら実験情報を我が国にフィードバックし、それをもとに様々な種類の養殖に手を付けている。貝類の養殖は既に商業ベースに乗せられるレベルではないかと思う。まあ、外に売らずに国内で消費してる。穀類に野菜に果物と栽培可能な植物はどんどん試してる。果物を除いて、国内の食料はほぼ賄える。果物に関しては幾つかの種類で上手くいってないものもあるが、それは試行錯誤していく中でこれから解決するんじゃないかと考えてる。だって、地球でできたことがこちらできないことは無いはず。何かしらが欠けていて、それを補えていないだけで、そのうち欠けてるモノを見つけ出し、成功させてくれると信じてる。
教育も成果が出始めている。
読み書きと計算に限って言えば、子供達はほぼできるし、大人でもできるものが増えている。情報伝達にしろ、自主的に学習するにしろできることが増えているのだ。印刷技術の開発をしてるところだが、それが完成したら面白いことになるんじゃないか。蛮族と蔑まれた我が国民が、この大陸でもっとも文明的で文化的にも優れた民になる日が待ち遠しい。
建国当初から蒔いてきた種が少しづつ芽を出してきた。
そんな状態。
オルダーンとザールートについても少し。
我が国の玄関口といえるオルダーン。
我が国の商品目当てに訪れるだけでなく、オルダーンの特産品フルーツトマトやナマズやアワビやウニの生産地として発展してる。今ではメロンも特産品の仲間入りしていて、もうじきマンゴーもそこに加わる予定だ。
呪われた街と言われた寂れた昔の面影などない活気ある街になっている。
人口はもうじき一万人に届きそうなのだが、住宅地の確保に困ってる状況。
もともと小さな漁村から始まった地域で、平野部が少ない場所にある。
上下水のことなど無視して建てるならいいのだが、うちの国に倣って衛生面を重視しているオルダーンとしてはそれはしたくない。そこでザールートとの間の山道を整備して、そこに線路を引きユニコーン馬車を走らせ移動時間を短縮することで、ザールートをベッドタウン化しようと計画中である。
ザールートは、オリーブオイル、バラとジャスミン、スズランの生産地であるとともに、化粧用石鹸、殺菌用石鹸、シャンプー、香水を特産品として今や、ザールートの名を知らない人はグランダノン大陸には居ないのではないか。この三年間で飛躍的に知名度をあげた。
人口も十三万人にまで増え、まだまだ勢い良く増えている。
街は衛生的で清潔になったし、治安も良い。
領主のカレイズと次期領主エルスがどれほど頑張ったのか・・・・・・頭が下がる。
領主の奥様のファラさんは、頻繁に首都エルに遊びに来て、なかなか我が国に来ることができないカレイズとエルスの代りに情報交換役を担ってる。まあ、まだサロモン王国国外では手に入らないモノを探して楽しんでるようだ。セイランの絵を買って自宅に飾り訪れるお客にサロモン王国の宣伝もしてくれてるようなので有り難い方だ。
さてリエンム神聖皇国とジャムヒドゥンだが、人間を奴隷に使うようになったリエンム神聖皇国は、ヴァイスの狙い通りに国力を減らしているようだ。ジャムヒドゥンが背後の国々との間にトラブルを抱え、リエンム神聖皇国への戦争に集中できなくなったため、領土を大きく減らしてるわけではないが、国内に多くの不満勢力を抱え、小さな乱が起きるためにその鎮圧にも気を配らねばならず、勢いはまったくない。
ヴァイス曰く、もうじき我が国本来の目標である奴隷制度の撤廃に動くことも可能になるとのこと。俺はそのことを思うと心がはやるのだが、ジャムヒドゥンもあるので、まだ時間はかかると慎重にならなければならない。
後世エドシルド連邦と呼ばれることになるジャムヒドゥンと接する小国群がある。
この時代ではグランダノン大陸東部のエドシルドという自治体が中心となって連邦のような体制を作っていたため、単にエドシルドと呼ばれている。
モルドラの調べでは、そこがジャムヒドゥンの士族間に不和の種を撒き、その影響で各士族間がギクシャクしてるとのこと。テムル族現ドルダのヨセフスを煽って、次期グラン・ドルダ選出方法を予言者によるものから士族の力で決めるべきと変更を促す、ジャムヒドゥンの体制を揺るがしかねない主張させてるらしい。
ジャムヒドゥンは各士族が協力し団結して国を大きくし維持してきた国だ。その協力関係に、ヒビが入ろうとしている。まだ流れがどう動くかこれから様子を見なければ判らないけれど、完全に元通りになるには時間がかかるだろう。元通りにならないかもしれないし。
ジャムヒドゥンの現状から学んで、俺の息子や子孫が同じような争いしないよう考えなければな。
そのような状態なので、ジャムヒドゥンはリエンム神聖皇国との戦争に集中できない。
我が国が上り調子なのに、他はゴタゴタしているのである。
◇◇◇◇◇◇
ナザレスとの訓練はこの三年間も続けられていた。
今では、ナザレスの攻撃に俺の結界は耐えられるようになったし、多属性の結界を自由自在に使いこなせるようにもなった。
エルザークに拠ると、ケレブレアになら勝てるところまでは成長したという。
だが、ケレブレアと一緒に戦闘神官達も相手にするとなると五分五分で、もっと強くならなくてはならないと言う。
うーん、リエンム神聖皇国は弱ってるのだから、そこまで強くなる必要があるのかな。正直なところ、十分過ぎるほど強くなってると思うんだよ。
だが、エルザークは満足していないようで、ここまでで成長した基礎体力をもとに森羅万象の龍気をさらに鍛えよと言う。現在、森羅万象でできることは、あらゆる対象に触れその情報を知り、知り得た情報で対象を操作すること。今度は、現在という時点で可能な力を過去という時点で可能にすることだという。つまり、過去に起きたことを操作しろと言ってるのか?と聞くとそうだという。
そんなことが可能なのか?と聞くと、少し過去に遡った程度ならゼギアスにも可能だという。少し過去というのはどれくらいなのか?と聞くと、まあ、せいぜい五分じゃなという。まあ、一秒遡るだけでも俺にとっては大変だから、一分が良いところじゃろと笑っている。
いや、一秒でも過去に遡って対象を操作するってだけで、俺はもう自分が人とは別の生き物のように思える。そう言うと、別次元に触り、別次元と接触してる時点で既にこの世の生き物とは別の生き物なんだと。
うーん、俺はもうこの世のものではないらしい。
初めて知った。
そして過去を操作することは次元に触れることよりも、理屈の上では簡単なことらしい。次元じゃなく時間に触れると考えればよく、時間は俺や対象が存在する次元の時間だからだって。ただ、自分が時を遡るだけでなく、対象の時間も同時に遡ることができなければ対象の過去を操作できないので、そこが大変なんだと。
常日頃思うのだが、俺は頭が悪い。
理論派ではなく確実に感覚派だ。
海賊王狙う一味で言えば、ロ●ンではなく●フィだ。
あれえ?わかんねえけど、できちまったあと叫ぶ派なのだ。
言われることは何となく判るのだが、具体的なイメージが掴めない。
エルザークの導きで目指す状態を実際に体感させられ、その状態での感覚で”これかあ”と判るから、今までやれと言われたことはやれたが、何故できるのかと聞かれても答えられない。
せめて五秒過去に遡って対象操作できんと実戦では使えないから、とにかく五秒を目指すのじゃとエルザークに言われた。
この三年で老師役に磨きがかかったエルザーク。
そろそろ黒のサングラスと亀の甲羅背負わすぞ!
まあ、エルザークはエロくないからなあ、エロかったらエロザーク仙人とでも呼んでやるのに。
「誰がエロザーク仙人じゃ?」
また俺の思考読みやがりましたね。
自分の役割は終わったとナザレスは龍王のもとへ帰った。
三年ちょっととは言え、毎日顔を合わせていたナザレスが居なくなるのは少し寂しい。だが、会いたくなったら北のエイスクトル大陸まで来い、その時は護龍三頭で相手してやると言ってたから、俺がナザレスのところまで行けるようになったら会いに行けばいいんだ。護龍三頭と戦うのは怖いし、今はまだケレブレアに察知されると面倒だとエルザークから言われて行けないけれども。
ナザレスの協力で強くなれたのだし、とても感謝している。
ケレブレアとはこの先どうなるのかは俺は判らないけれど、リエンム神聖皇国やジャムヒドゥンと戦う時、俺の力は必ず役立つだろう。うん、とても感謝してる。
ありがとう、ナザレス。
それで、俺はこれから何をしたらいいのかエルザークに聞いた。
「一秒前の自分を把握するんじゃ。」
これがね、”一秒前の自分”と言われても、意識してる俺の時間は刻一刻と過ぎていくので、”一秒前の自分”がどの自分のなのかを掴むのも難しい・・・・・・というかまったく判らん。
そこでいつものようにエルザークが、”一秒前の俺”の状態を意識させてくれるのだが、自分でやろうとしてもさっぱり。
「最初はそうであろうよ。だが感覚を掴めばお前はできるのだからとにかく感覚を掴め、さすれば後は慣れじゃ。」
なんか適当なことを言われてる気がするが、これまでエルザークが言うことで・・・・・・結果を思うと間違ったことはない。さすがは神竜である。だから文句を言わず、疑問も抱かずひたすらやるしかないだろう。
毎日およそ三十分、エルザークの力で”一秒前の俺”を何度も意識させられている。同じ状態など一瞬も無いのだから、毎回違う”一秒前の俺”を体感するので、まだ感覚上でも掴めそうにない。地道に訓練するしかない。
体力的にはナザレスとの訓練よりは全然楽だが、精神的にはストレスがかなり溜まる。
そう、奥様達と子供達の癒やしが俺には必要なのだ。
エルザークとの訓練が終わるとシャワーを浴びて、手が空いてる奥様の誰かか、それとも子供のところに行ってはデレデレする。
これがとても大事。
おかげで訓練で溜まったストレスから解放され、リフレッシュした状態で仕事に勤しめる。
◇◇◇◇◇◇
コムネスでの戦いでサロモン王国の捕虜となったバーミアン・ジャヘルムは、リエンム神聖皇国が奴隷を解放した際に、
「もう戻ってもいいぞ?お前を捕まえておく理由なくなったから。」
ゼギアスからそう言われたが、サロモン王国に留まることを選んだ。
魔法力と体力を奪われる腕輪など着けさせられて、サロモン王国で軟禁と変わらぬ状態で居るより、リエンム神聖皇国に戻った方が良いだろう?とゼギアスに怪訝な顔をされたが、戻ったらどうせ敗戦の責任を取らされて幽閉されるだろうとバーミアンは言う。
幽閉された生活を送るよりも、身体的には不便だが、比較的自由に生活させてくれるサロモン王国のほうがいいと言う。
俺としては、問題起こさなければ好きにしていて構わないし、あの腕輪を着けさせられてる限り、大したことはできない。子供を捕らえて人質になんてことをする男には思えなかったし、実際、魔族の子供達とも仲良く会話してる様子を何度も見た。
それに、たまにはこちらがドキッとすることを言うので、身近に居ると良いこともある。
「この国には音楽や演劇はないのか?」
うん、無い。
歌が無いわけじゃない。
エルフやドワーフは、仕事しながら種族で歌われてきた歌を歌いながら作業するし、魔族でも戦いの前や勝利の後に歌う。
そう、芸術としての音楽がこの国には無いのだ。
楽器らしい楽器も無いしなあ。
板などを叩いてリズム音出す程度だし・・・・・・。
演劇など全く無い。
かけらも無い。
せいぜい祭りの際に踊る程度の踊りがあるくらいだ。
まあ、衣食住に困らない環境作るので忙しかったから、芸術という文化的なモノを育成する余裕がなかったんだ。
でも、文学を楽しむ様子は・・・・・・俺が複製してきた本を読み書きできるようになった者が、思念回析の指輪着けて読んで楽しんでる様子に見られるから、けっして文化的なものを理解し楽しむ感性や気持ちが無いわけじゃないと思うんだ。ただ、知らないだけで。
俺も芸術までは手が回らずにいたので、これからは国外で鑑賞させて我が国にも持ち込みたいと思ってる。理解してくれたなら、地球へ行って楽器を複製するつもりだ。
「服装、地味なものが多いな。」
この野郎、好き勝手言いやがって、こっちはそれどころじゃなかったんだよ!!
と言いたいんだが、バーミアンの言う通り。
これは皆が我慢してくれてるんだ。
エルフにはオシャレ好きが多かった。
服装にしても装飾品にしてもだ。
エルフのオシャレを見て、他の種族も真似をしていたんだ。
うちの国は女性が多いから、華やかな雰囲気も一時期あったんだ。
だが、この三年はひたすら機能重視の服装、それも最低限の服装で皆我慢している。軍の服装も、所属によって揃えて・・・・・・とか考えていた時期もありました。それも取りやめになっていたんだ。
これからよ、これから・・・・・・。
極度に節度ある生活していて、最近忘れていたものをバーミアンは思い出させてくれるから、その点は感謝している。
我が国の・・・・・・この世界では卑怯としか言い様がない技術から生まれた生活やモノに感動し、試作で作った自転車に乗って今の生活を楽しんでいるようで結構なことだが、何かしらは仕事させねばなるまいと最近は仕事もさせてる。
本人も現状を楽しんで遊んでるだけでは不味いと思っていたのか、仕事もしろと言うと素直に従った。戦闘神官という将軍クラスの地位にあったわけだし、それなりの仕事をといろいろと考えた。やはり誇りというものはあるだろうからねえ。
そうは言っても、子供より多少は体力がある程度の状態でできることと言うと選択肢は限られていた。
それで何をして貰ってるかというと、図書館の受付である。
本を管理するには、ヴァイスの仮屋だった家では狭すぎたので、新たに図書館を建てたのだ。
地球から複製して持ってきた本が既に五十万冊を越えた。
これからも増やす予定だ。
いずれは地球でも最大規模の図書館レベルまで蔵書を増やそうと考えてる。
俺が複製してくるだけなんだけどね。
だが、地球で書かれた本をこの世界の住民が読めるわけがない。
そこで図書館内で読めるように、思念回析の指輪を入館時に貸し出す。
思念回析の指輪さえあれば、文字や文章を勝手に翻訳してくれるから、読者は理解できるようになる。
退館時には返却してもらう。
ちなみに本の貸出は今のところはしていない。
住民登録系のシステムがまだ出来てないから当面は館内での閲覧のみで我慢して貰ってる。ヴァイスやドワーフの一部には貸出許可してるけど、基本的にはダメ。
バーミアンはあれでなかなか人当たりがいい。
新刊の紹介や、図書館内の案内なども来館者に丁寧にやってくれてる。
この状況を見たら、リエンム神聖皇国の元将軍だなんて誰も思わないだろう。
上手くやってくれてるようだし、暇な時間は、思念回析の指輪使って自身でも読書してるようで楽しそうだ。
捕虜で居ながらも生活を楽しめるこの国に、バーミアンは将来深く関わっていくのだが、今はまだ図書館の受付けなのであった。




