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ロード オブ フロンティア ―― 次元最強の転生者  作者: 湯煙
第一部 グランダノン大陸編 第一章 序章
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2、サラの気苦労


 朝起きて顔を洗ったら、サロモンのお墓まで走り、墓を掃除する。

 サラと朝食を食べたら、山で薬草探ししつつ体術や魔法と龍気の鍛錬。

 昼はサラが作ってくれた弁当を食べ、日が落ちる前には家に戻る。


 朝と夕の水汲みは俺の役割。

 

 風呂を沸かすため、夕方の水汲みは結構な量が必要になるのでサラには任せられない。

 サラにできないということじゃない。

 力仕事は極力男がする仕事だと思うからだ。


 夕食後、取ってきた薬草をサラに渡す。

 サラはそれを持って里へ行き、お金に替える。

 ついでに繕い物や子守りなどの仕事を貰って、生活費を稼いでる。

 仕事が早く丁寧でセンスもいいからサラの繕い物は人気がある。

 また明るく優しい上に気配りもうまいから子守りの仕事も頻繁に頼まれている。

 サラは俺より忙しい。

 生活は十分楽に暮らしている。



 もうじき冬が来る。


 冬には冬でしか取れない薬草があるし、高値がつくものも多い。

 だが雪があって歩ける距離は短くなりがちだから多くの量は取れない。


 できれば冬前に二人分の旅費をと頑張ってきた結果、既に予定していた金額はとうに貯まっている。もう少し貯めたら、二人なら旅行中に稼がなくても三年程度旅行できるほどだ。


 うん、今の俺とサラは小金持ちになっている。


 これも全てサラの監督のおかげだ。


 俺だけだったら、いくら高額の薬草をたくさん取ってきても、里で使ってここまで貯まっては居ないだろう。猫人のお姉さんに貢いでいたかもしれないし、狐人の未亡人と酒浸りになっていたかもしれない。女性に溺れて旅に出ようなどと思わなくなって居たかもしれない。 


 自慢の妹よ、ありがとう。


 「お兄ちゃん、お金はいくらあっても困らないんだからね。二人で頑張ろうね」


 俺よりも多くの人生を経験してきたかのような妹の言葉に、数々の転生経験を生かせない自分に涙する。やっぱ、場数をいくら踏んでも教訓を生かせないんじゃ無駄なんだろうね。 


 うちが相当お金を貯めてると知って襲ってきた山賊をいくら追い払っても……。

 罠にかかった獣の量が多すぎてうちだけじゃ捌けない時に、獲物ゼロだった猟師さんへ渡して泣いて感謝されても……。

 崖崩れで道が塞がれた時、魔法と龍気を使って邪魔な岩を壊し、崩れた岩を吹き飛ばし、行商人さんや里の皆に感謝されても……。


 歩く女難への妹の視線は変わらない。

 俺への評価はまったく不動。


 でもね?


 女の人と話すこともないままじゃいつまでたっても見る目なんて養われないと思うんですよ。


 「ねえ、サラ。女の人を見る目ってどうしたら養うことできるのかな? 」


 勇気を出して聞いてみました。

 蔑むような目で見られるかもしれないけど言いました。

 呆れた声で答えられると思うけど頑張りました。


 だが、違った。


 「気になる人ができたら私に相談しなさい。そして私の指示に従いなさい」


 冷静かつきっぱりと言われました。

 新人と上司の関係です。


 「それって……サラの好みのタイプじゃないとダメってこと? 」


 俺は知ってる。

 女性が褒める女性は、男性の好みから外れがちだ。

 女性が自分より美しい女性、色っぽい女性を褒めることなんか無い!


 絶対にだ!


 偏見と非難されようとも、今のところ俺の経験がそう言っている。


 「いいえ、私の好みに合わない女性だとしても、先の猫人さんや狐人さんのような極端な問題がある女性じゃないなら、一応意見は言うでしょうけど反対しませんよ」

 

 「ホント? ……ホントにホント? 」


 「お兄ちゃんの好みの女性に何でもケチはつけないわよ。だから私に隠れて女性と関係作るのはやめてくださいね。さあ、明日も早いんですからそろそろ寝てください」


 そっか、妹の検問さえ抜けられればいいのか。

 ま、今のところ検問抜けさせたい女性はいないから考えなくていいんだけどね。


 俺の”絶対にだ! ”はサラ相手には通じない。

 俺はそれを今日学んだ。





 ◇◇◇◇◇◇





 「雪が降る前に、前からアタリを付けていたちょっと遠いところまで行くつもりだから、帰りは少し遅くなるよ」


 山を一つ越えたところに、この辺りの者なら遠くて行かない森がある。

 そこはゼギアスも足を踏み入れたことはないから、薬草もまだたくさん残ってるのではと期待している場所だ。


 冬になり雪が降ってきたら、日帰りでは行けそうもない。

 だけど今なら……ゼギアスの足ならまだ日帰りできる。


 「うん、判った。気をつけてね。お兄ちゃん」


 サラの見送りに手を降って応え俺は走り出す。

 家はすぐに見えなくなり、周囲は樹木だけになる。

 しばらく駆けると山の中腹に到着したので、少し休憩をとる。


 魔法が使えるんだから転移魔法とか使えないものかな?

 そしたら今見える山の頂上に登るのも簡単なのに……。


 と考えたら、フッと身体が軽くなり、あれ?と周りを見渡すと先程見上げていた山頂に居ることに気づいた。


 え?

 練習もしていないのに転移魔法が使えたってこと?


 いやいやいやいや……。

 使えたにしても偶然でしょ?

 たまたまでしょ?

 何せ念じても居ないしな。

 

 サロモンから教えられた魔法はどれもすぐに使えることなんかなかったよ。

 原理を知って、その原理に合わせた精神集中が必要で、モノによっては詠唱も必要だった。


 でも……



 山を降りたところに泉が見える。

 

 よし、あそこまで転移してみよう。


 すると先程と同じように身体が軽くなり、目の前には泉があった。


 

 おおおお……転移できた。


 ん?

 

 魔法を使うと使った魔法に応じて魔法力が減少するんだけど、その気配がない。


 何で?

 

 転移に魔法使ってない?


 でも疲労感は感じる。

 体力はそれなりに使ったってことだな。

  

 んー、よくわからないからサラに相談してみよう。

 サラなら何か判るかもしれない。

 でも”転移しよう”と考えただけで転移しちゃうんだから、転移に関しては考えないようにしなきゃな。


 まあいいや。これで早く薬草探しができる。

 家にも予定より早く帰れるだろう。


 目的地はこの泉から先の森。

 予定より3時間も早く到着したのは良かった。


 ゼギアスは森の探索を始める。





 ◇◇◇◇◇◇◇





 思った通りだった。

 安い薬草も高値で売れる薬草もかなり見つかった。

 明日も来て、今日回れなかったところを回れば、いつもの十倍以上は収穫できそうだ。持って帰るのに苦労しそうなくらいなんだから、サラもきっと喜んでくれるだろう。


 さて、今日はこの辺にして帰るか……アレで帰れると思ったから少し遅くまで頑張りすぎた。急がないと風呂の用意も遅れてしまう。


 ゼギアスが薬草をカバンに詰めていると、少し離れたところから物音が聞こえる。


 人の声?

 獣の声?

 それらに混じって別の何か……そう木が折れるような音も聞こえる。


 誰か獣に襲われてるのかもしれない。


 ゼギアスは助けに走る。

 森の中、木々で影ができ薄暗い所も多いし、日が沈みかけてるけどまだ明るい。

 見つけるのに苦労することはなさそうだ。


 大きな音がする方へ走り続けていると、獣に襲われ、戦っている人の姿があった。

 戦っているのはどうやら女性で、魔法を使いながら獣から逃げているようだ。


 その女性と獣達の間に素早く入り、女性の方を振り向かずに「こいつらは俺が相手します。下がってください」と声をかける。


 返事を待たずに獣達の動きを確認する。


 うん、こいつらなら楽勝だ。

 小型の豹フォレストバンサー、森で集団生活をおくる肉食獣。

 森で仕事しているとしばしば出会う。

 素早い動きで獲物を取り囲み、集団で襲ってくる。


 フォレストパンサーは群れのリーダーの指示で動く。

 そいつさえ叩けばあとは逃げる。

 そして群れのリーダーは必ず奴らの後ろあたりにいる。

 

 奴らの動きを追ってみると……居た! あいつだ。

 他のより一回り身体は大きい。

 あまり動かず吠えて指示を出している。

 ゼギアスとその後ろに居る女性を引き離そうとする動きに釣られず、一番後ろで吠えてるフォレストバンサーを見つけた。


 ふむ、なかなか賢い指示を出す奴だ。

 群れを二つに分け、片方は俺を牽制し、弱そうな女性を取り囲もうとしてる。


 新米の猟師なら勝てるだろうが、相手が俺じゃ運が悪かった。

 

 俺は右手に龍気を集めつつ、女性を取り囲もうとする群れを蹴りで蹴散らす。

 俺の蹴りを避けようと隊列が崩れ、女性を取り囲もうとしていた集団も俺と奴らのリーダーの間に逃げる。


 よし!


 ハッと息を吐き、右手をリーダーに向かって突き出す。

 魔法ではなく気を放つ。

 軽く込めた程度の気だからリーダーも死にはしないだろう。

 リーダーが死ぬと、残った奴らは死に物狂いで襲ってくる。

 それが面倒だ。


 俺の気を受けたリーダーが吹き飛んで木にぶつかった。

 ガッ・・ハッ・・ガッと苦しそうな吐き声を出し、ヨロヨロと立ち上がる。


 「どうする。まだやるというなら次は手加減してやらんぞ? 」


 俺はリーダーを睨みながらゆっくりと近づく。

 リーダーからの指示を失った群れは、俺とリーダーの顔を見比べるようにキョロキョロしている。だが、たいしたものだ。そいつらは指示さえあれば俺にすぐにでも飛びかかれるよう足に力をためている。


 狩りに慣れた集団だ。

 リーダーからの指示に常時対応できる体制を保っている。


 俺をじっと見ていたリーダーは、俺には勝てないと理解したのか、一声あげて去っていく。群れもリーダーの後を追うように去っていった。


 「悪いな。晩飯は他で探してくれ」




 灯りが無いとそろそろ足元も見えなくなりつつある。

 早く家へ戻りたいと思いつつも、女性一人をこの暗い森に置き去りにできるような俺ではない。


 「大丈夫ですか? 怪我はないですか? 」


 背中のカバンを地面に下ろし、中から松明を取り出し、魔法で火をつけ後ろの女性に声をかける。


 「助かりました。ありがとうございます。あのぉ……?」


 「それはよかった。ん? 」


 大きな木に支えられて立つ女性は片足をかばってる。


 「怪我してるようですね。ちょっといいですか? 」


 女性に近づき、松明を手渡して足元にかがむ。

 血は出ていないようだ。

 骨折か捻挫か・・・・・・足首に軽く触っただけではそう痛そうな反応はしないから、多分捻挫だろう。


 と言っても、医療の知識は乏しいから下手なことはできない。

 一度くらい医者に転生しておけば良かったな。


 俺は回復魔法は使えるけど治癒魔法は使えない。

 サラは得意だけどね。


 外気功のように龍気を使って患部の腫れだけは抑えておこう。

 俺は龍気を練り、患部に手を当てる。当てた手がやや光り、龍気が患部を覆っている。


 龍気を使用するときに気をつけなければならないことは属性の付与だ。

 治癒や回復魔法のような形で龍気を使う時は基本的に”聖”の属性か、”無属性”で使う。だが、この世界には魔族や魔族の血をひく亜人が居る。相手が魔族系なら、”聖”の属性は宜しくない。その際は、治療や回復のときでも”闇”か”無属性”の属性を付与する。


 目の前の相手がどのような属性の種族かは判らないから無難な”無属性”の龍気を使った。


 無属性にした理由には他にもある。

 デュラン族が使用する龍気には様々な属性を付与出来るけど、聖と闇、そして初代しか使えなかったという”特殊な属性”を付与できる者は滅多に居ない。デュラン族のほとんどは無属性か四大属性しか付与できない。


 俺は聖と闇の属性も付与できるし、サラは聖の属性なら付与できる。でもサロモンから”聖と闇の属性はできるだけ他人に見せるな”と言われてる。


 治癒や回復系で使うなら相手の属性に合わせて聖か闇の属性を付与した方が効果は高いのだけど、軽い怪我なら無属性でも十分に効果はある。骨折や捻挫程度なら無属性でも問題ないだろう。


 「どうですか? 少しは楽になりましたか? 」


 手は離したが患部から目を離さず聞くと、彼女は怪我をした足に力を入れて地面に立とうとしている。


 「ええ、随分楽になりましたわ」


 「それは良かった。でも治癒したわけじゃないから、帰ったら医者に見せて治療してくださいね」


 そう言って立ち上がる。

 彼女はまだ足元を見ている。

 

 ふむ、どうやらエルフの女性のようだ。

 少し尖った耳、透き通るような白い肌に松明の灯りが映えて綺麗だ。

 身長はサラと同じくらいだな。多分、百六十センチから百七十センチの間。

 ちなみに俺は百九十センチくらいある。転生史上最大身長だ。

 強く大きくと願った後転生した傭兵時代でもここまででかくなかった。


 「あの……貴方はサロモンさんですか? 」 


 意外な名が出てきた。

 いや、意外でもないのか。

 サロモンは時々見回りと称して俺達の生活圏やその周囲を見て回っていた。

 ここまで足を伸ばしたというのは十分考えられる。


 「俺はサロモンじゃないよ。君は何故サロモンのことを知ってるの? 」


 「失礼しました。私はこの辺り……泉の森に住むエルフを治めるアルフォンソの次女ベアトリーチェと申します。サロモンさんには以前お会いしたことがあり、このたびお願いがあってサロモンさんを探しているのです」


 んー、ベアトリーチェさんね、ヤバイくらい美人だ。

 白い肌に緑の瞳、ブラウンの長髪が風で軽くたなびいて……スタイルも良いな……サラと同じくらいの年齢に見えるけど、実際は判らないな。種族に拠って見た目よりかなり年上とかよくあるし……。

 あ、見とれてちゃダメだな。


 「そうなんだ。俺はサロモンの養子でゼギアス。えっと……サロモンは今年の春に病気で亡くなったんだ。残念だけどサロモンには会えないよ」


 彼女は口に両手をあてショックを受けた様子だ。

 瞳に驚きと悲しみが混じったような色が伺える。


 「サロモンさんが亡くなった……あ、それはお気の毒に……では私達はこれからどうすれば……すみません。動揺してしまって……」


 確かにかなり動揺してる。

 でもサロモンが死んで俺達がショックを受けるのは判るけど、エルフの女性がショックを受けるってどういうことだ?


 サロモンのことだから愛人という線は無さそうだし、でももしかしたら俺やサラが知らないところで……いや、無いな。無い無い。


 「何か事情がああるようだけど、サロモンが亡くなったのは事実だから。えーと、君の仲間達のところまでは送るから行こう。俺も帰りが遅くなると困るんだ」


 「あ、大丈夫です。仲間は呼びますから」


 「そっか、んじゃ早く呼びなよ。仲間が来るまでは待ってるからさ」


 ベアトリーチェは空に向けて片手を挙げた。

 その手から白い光が上空に上がり、木の頂上よりかなり高いところまで上がると、フワっと広がった。


 なるほど、合図か。

 

 五分もしないうちに、二人のエルフがベアトリーチェの前まで駆けてきた。

 一人は女性、もう一人は男性のエルフ。

 

 ベアトリーチェの前に跪き、男性のエルフが顔をあげる。


 「姫様、ご無事ですか? 」


 「ええ、私はこの方に助けていただいて、足を挫いたけれど大丈夫です」


 足を挫いたと聞くやいなや、女性のエルフがベアトリーチェの足元まで近づきベアトリーチェの怪我の様子を確かめている。


 「そうですね。この程度ならすぐに治せるでしょう」


 そう言って治癒魔法をかけている様子。


 「お迎えも来たようだし、それじゃ俺は帰るね」


 「あ! お待ち下さい! 」


 俺の上着の端をベアトリーチェは捕まえる。


 「ん? ゴメン。俺急いでるんだ。離してくれるかなぁ? 」


 必死な表情だから話を聞いてあげたいんだけど、これ以上遅くなったらサラは心配するだろうし……。


 「あ、ですが、何とかお話を聞いてはいただけないでしょうか? 」


 うーん、時間があるなら美人のお話を聞かないなんてことしないんだけども、どうしようかな。


 「んじゃ一緒に家まで来てくれる? 妹が心配するから早く帰らないと……」


 「お宅はどこでしょうか? 」


 家のある方角の山を指差し


 「あの山越えた先だよ。ねえ、お願いだから早く帰してくれないかな? 」


 サラに怒られるのは勘弁して欲しい。

 少しイライラしてきたけど、表情には出さない。

 見た目と違い、俺は数多くの転生で経験だけは積んでいる。

 フフフ、商人や王族、公務員で鍛えた対人スキルが生きる。

 笑顔にもいろいろあるが、こういう時は柔らかな笑顔を心がけつつ目には力を込めるのですよ。


 眼力が大事。


 ”いい加減にして帰れよ”とか”いくら粘っても無理だぞ”とか、そういった本心を目できっちり伝えるのだ。


 この間、表情筋は動かさない。

 笑いの能面状態を維持するのだ。


 ククク、完璧だ。


 あとでサラに教えて褒めてもらおう。

 この俺の完璧な対応を!


 「山向うなら、今から帰っても深夜になるのでは……? 」


 うん、空気読めない人には通じなかったです。


 転移使える俺なら帰れるんだよ!

 だから大丈夫なの、判る?


 「俺ならさほど時間かけずに帰れるから大丈夫なんだよ。だからさ、お願いだから……一緒に来るのか、来ないのか早く決めてよ」


 ベアトリーチェは少し考えて


 「マルティナ、悪いけど私と一緒にゼギアスさんのお宅まで来てくれる? ラニエロ、貴方は父に状況を説明してください。できれば今夜中、遅くても明日の昼には戻ります」


 そんな! 姫様。危のうございますと、ラニエロと呼ばれたエルフがベアトリーチェを抑えようと近づいてきた。


 「ラニエロ、私がこの身に変えても姫様は守ります。姫様のご意向を尊重するのも我ら傍使えの者の役目ではありませんか」


 「心配は要らないでしょう。今もフォレストバンサーから助けていただいたばかりですし、私の安全のために貴方方を呼び到着するまで待っていただいたのです。もし私を攫ったり害するつもりなら、貴方方を呼ぶようなことを仰らないでしょう。私はこの方を信じます。それに私達には時間がないことは貴方にも判るでしょう? 」


 マルティナと呼ばれたエルフがラニエロの肩に手を置き信用してくれと言い、ベアトリーチェも笑顔で大丈夫だからと伝えている。


 「それじゃ話はまとまったということで、ベアトリーチェさんにマルティナさん、俺の手をつかんでください。決して手を離さないように……」


 二人は俺の手を掴む。


 「マルティナさんはベアトリーチェさんの身体をしっかりと掴まえてくださいね」

 

 ベアトリーチェの腰にマルティナさんが手を回したのを確認したところで


 「じゃ行きますよ」

 

 そう言って俺は来たときの逆の順で山の頂上まで転移した。

 一気に家まで転移すればいいじゃないかとも思ったが、転移すると疲れを感じた点が気になっている。魔法での転移には思えないので、自分で転移を使用しておきながらその力の源が判らないのでビビってるのだ。


 俺一人だけなら家まで一気にという手段をとったかもしれないが、今回は俺を含めて三人での転移。一応慎重になってる。


 転移を終えて確認するとやはり疲労感を感じる。

 この分だと次の転移で家に戻るのは大丈夫だろうが、かなり疲れていそうだ。

 荷物や人を同時に転移するには体力と相談の上で使わないとダメみたいだ。


 「なんと、転移した。転移魔法を使える者など高位の魔法を修めた魔術師くらいしか知りません。この方は高等魔術師なのでしょうか? 」


 マルティナはかなり驚いた様子で、ベアトリーチェに質問している。


 「いえ、転移で魔法は使われていないと思います。別の力によるものですね」


 ベアトリーチェはマルティナの質問に答えながら、難しい顔で何か考えているようだ。俺自身も何で使えるのか判らないのだから、質問されたら困る。


 質問される前に家まで戻って、あとはサラに任せよう。

 と言ってもサラも判らないんじゃないかな。


 まあいい、今は家に戻るのが最優先。


 「それじゃさっきと同じように掴まってください。行きますよ」


 二人が先程と同じように掴まっているのを確認して俺は転移した。


・・・・・・

・・・


 ゼェ……ゼェ……ゼェ……ゼェ……


 やっぱあれだな……。

 基礎体力鍛えなきゃな……。

 もうちっと体力つくまで同行者連れた転移は控えた方がいいな……。


 でもとりあえず家にはついた。


 「ハァハァ……妹に紹介します。ついてきてください」


 マルティナとベアトリーチェは黙って頷いた。

 俺は二人を連れて家に向かう。


 「ただいまぁ。サラ、遅くなってごめんよ~」


 おかえりなさいと言いつつこちらを振り向かず、サラは夕飯を机の上に並べてる。

 

 「サラァ、ちょっと話を聞きたい人を連れてきてるんだ。サロモンの知り合いらしいから聞いてあげて。俺は先に風呂に水張ってくるからさ」


 俺の言葉に驚いたのか、サラはこちらを振り向く。

 俺の後ろに立つエルフ二人にサラは気づき手を止める。

 

 「あら、二人も……これじゃ夕飯足りないわね。急ぎ用意するから待っててくださいね」


 足早に台所へサラは向かう。


 いやいやいやいや、まず挨拶交換するとか、座って待ってもらう場所を伝えるとか、先にすることあるでしょう。


 うん、これはあれだな。

 今のサラはお客様に出す夕飯のことで頭がいっぱいで他のことは考えられない。

 サラには珍しく状況が見えていないってことだ。

 ここは年長者が落ち着けと言うべきところではないだろうか。

 

 でも、そんなことを下手に指摘したら、お兄ちゃんが連れてきたんだからお兄ちゃんがやることでしょと怒られそう。


 それとも、何で上から語ってるの?と言われるかもしれない。


 いや、エルフ達への妹の態度は後で何とでも言えばいい。

 大事なことは、サラの俺への評価を今よりも下げるわけにはいかないってことだ。

 

 「んっと、適当にそこらに座って待っててください。俺も水汲みが終わったら戻りますので……」


 結局、いろいろ考えた割に大したことは言えなかったけど、まあいいよね。


 とにかく俺は水汲みを早く終わらせて、夕飯を美味しくいただき、サラの料理の腕を褒めるんだ。


 しかし、女性を二人サラの前へ連れて行っただけでどうしてこんなにいろいろと考えてるんだ。いつもならこんなにごちゃごちゃ考えることはないだろう。


 転生繰り返しいろいろ経験したけれど、妹に頭が上がらない兄なんて今回が初めての経験だもんな。

 そうか俺はサラのような有能な妹を持ったことがないんだ。

  

 ふむ、年下の家族が自分よりも有能なのって結構大変なんだな。

 王家に転生した際、弟や妹の顔色見たり相談してから判断下す他国の王見て情けないとか思ってたけどゴメンね。俺反省したよ。






◇◇◇◇◇◇






 「では、オーガが大軍連れて泉の森を襲撃しようとしていて、エルフだけでは戦力が足りないからサロモンに助力してもらおうと考えていた。だけどサロモンは亡くなっていたと知って困ったが、フォレストバンサーを退治したお兄ちゃんの戦闘力見てサロモンの代わりに助けて貰えないか? ということですね」


 サラがベアトリーチェの話をまとめ確認している。

 

 「はい、他の土地のエルフにも助力を頼んでいるのですが、どこの土地のエルフも自分の生活圏を守るのに精一杯で当てにできないんです。どうかお力を貸していただけないでしょうか? 」


 ベアトリーチェは真剣な顔でサラに頼んでいる。

 ベアトリーチェの横に座るマルティナもお願いしますと頼んでいる。


 うん、俺の話なのに俺の意見を聞こうとする人はここに居ないね。

 ちょっと寂しいよ。

 

 ベアトリーチェとマルティナはこの家の要所はサラだと理解しているようだ。


 ――うん、正しい。

 実に正しい。

 でもちょっと寂しいんだ。


 「お兄ちゃんのことだから、ベアトリーチェさんやマルティナさんに頼まれたら喜んで手伝うでしょう」


 確かに俺は美人に頼まれて断るような男じゃないね。

 というか、俺の長い転生経験を思い出しても美人の頼みを断ったことはない。

 いや、あったかもしれないけど、かなりな理由がそこにはあったはずだ。


 罠があると判っていようと、騙されてると判っていようと、断ったことはない……はずだ。

 罠などをうまく切り抜けられなかったこともないから変な自信を持ってるのかもしれないが、美人の頼みを断って後悔するより、美人の頼みを受けて苦労するほうがいいと今も思ってる。


 まあ、俺がこんなだから転生経験を生かせないことも多いのだろうし、サラからの評価も低いんだろう。


 今回の人生ではサラのおかげで多少は矯正されるかもしれないが。 


 「私の頼みででもですか? 」


 マルティナさんも少し驚いている。

 姫のベアトリーチェからの頼みならまだしも、侍女の自分の頼みで大軍を相手に戦ってもらえるとは思って居なかったようだ。


 サラは正しい。

 ベアトリーチェさんほどではないけど、マルティナさんも相当な美人だ。

 ベアトリーチェさんの可憐さが、お姉さん系の色気に変わるとマルティナさんになる。

 マルティナさんはもっと自分に自信を持っていい。


 しかしエルフってのは皆目の前の二人のように綺麗なんだろうか。

 仲間のところへ戻ったラニエロという男性もイケメンだったしな。

 ちくしょう。


 俺なんか愛嬌ある顔で可愛いと言われたことは十年近く前に言われたことはあっても、このガタイの良さを逞しいわねと褒められたことはあっても、イケメンを褒めるようなことは言われたことはない。


 そう言えば、イケメンに転生したこともないな。

 一度くらいは経験しておけば良かった……。


 いやいやいやいや、過去のことはどうでもいい。


 もしエルフの仲間のところへ行ったら、不細工評価されるんじゃないだろうか?

 そうだったらちょっと悲しいな……。


 「ええ、マルティナさんからでもです。確実です」


 俺がくだらないこと心配している目の前で、俺の性格を知り尽くしてるかのようにサラがマルティナさんに断言している。

 

 「では……」


 マルティナさんが話を続けようと口を開いたが、その言葉を遮るように


 「だからお兄ちゃんの意見は無視します。私が判断いたします」


 サラが俺の意見は聞きませんときっぱりと言う。


 「お兄ちゃんもそれでいいよね? 」


 「……はい」


 情けない!

 情けないぞ、俺。


 でも、目の前の高嶺の花二人からも情けない男と思われようとも、妹の俺への評価が間違っていない以上、妹に反抗する根性は俺にはない。

 

 「ではサラさん。ゼギアスさんのお力を借りるにはどうしたら良いのでしょうか? 」


 ベアトリーチェがサラに聞く。

 サラは話を聞きながら既に決めていたのだろう。

 すぐに返答した。


 「いくつか条件があります」


 「はい。それは当然ですね」


 「一つ目は、その戦いには私も加わることを許していただきます」


 「それは構いません。ですがお判りでしょうが、危ないですよ? 」

 

 「危ないからです。体術や武術はお兄ちゃんほどではありませんが私も使えますし、何より、お兄ちゃんが苦手な治癒・回復系の技術が得意ですからサポートや後方支援は任せてください」


 ベアトリーチェが俺の方を見た。

 俺は黙って頷く。

 サラが居れば心強いのは間違いない。

 首が飛んだとか、腕や足がちぎれでもしない限り、腹部に穴が空いた程度ならサラは完璧に治癒させるだろう。それも短い時間で。


 「判りました。そういうことでしたらこちらとしては願ってもありません」


 「二つ目の条件は、対価をいただきたいということです」


 「ええ、もちろん私達に払えるものならば可能な限りいたします。私だけで判断できないものでしたら、一旦仲間と相談することになりますが……」


 「私が欲しい対価は、ベアトリーチェさんとマルティナさんにはお兄ちゃんのお友達になって欲しいということです」


 「は? 」


 俺は間抜けな声を出した。

 何その条件。

 旅費の足しにするお金とかそういったものじゃないの?

 

 「本当にそんなことで宜しいのでしたら、私には異論などありません。マルティナはどう? 」


 「私ももちろん構いません。今回の事態を解決できるなら愛人も吝かではありません」


 「え? いいの? 」


 こんな美人が俺の愛人に!などと期待に胸を膨らませ、ちっとエロいことを考えてた俺を睨んでサラは続けた。


 「愛人など、お兄ちゃんの気持ちはどうあれ、将来、お兄ちゃんを気に入ってくれたときに考えてくださればいいです。今私が欲しいのは、お兄ちゃんの女性に対する基準というか見方というか……そういうものをしっかりとしたものにするための相手なのです。お二人のお話や態度を見て、こういった方がお兄ちゃんの友達になってくれたらいいなと思いましたので」


 友達くらい自分で選べるのにとブツブツ言ってたら、サラに頭をぶたれた。


 「お兄ちゃん。私だってね? こんなこと言いたくないのよ。でも、お兄ちゃんのことだから、このお二人のような綺麗な方を相手にしたら格好つけたがるでしょ。いいえ、絶対に無駄なまでに格好つけるわ。そして必ず自爆するのよ。墓穴をほって恥をかくのよ。お兄ちゃんは変にプライド高いから、そうなったらお二人と会わなくなるでしょ。私には見える。その後引きこもって、ベッドの上でダンゴムシのように丸くなって、毛布をかぶって涙流して後悔するお兄ちゃんの姿が……。だから先にお友達になって貰うの。お兄ちゃんの失敗を笑って許して貰えるような友達になってもらうの」


 「そこまで言わなくても……」


 でもサラの予想は当たってる気がする。


 「お兄ちゃん。どうせ……友達になったくらいで、お兄ちゃんの失敗許してくれるとは限らないとか考えてるんでしょ。それはそうよ。だから、対価って言ったの。お兄ちゃんがしっかりとエルフのお手伝いができれば、多少のことではお兄ちゃんの友達を辞めるなんて言われないわ。お兄ちゃんは女好きでお馬鹿さんなところがあるから私はとても心配。でも、お兄ちゃんは優しいし、強いし、頼りがいもある。そうそう絶交されるほど嫌われることはないわよ。安心しなさい! 」


 サラにまくし立てられて、黙って俯いている。

 ベアトリーチェとマルティナは苦笑している。

 そりゃそうだよな。


 マジで恥ずかしい。

 今すぐダンゴムシになりたい。


 でもサラは俺のことを思って言ってくれてる。

 わざと二人の前で言うことで、こんな兄ですけどよろしくお願いしますと伝えてる。


 この妹にもっと信用される兄にならなきゃダメだなとしみじみ思った。


 しかし、サラ、お前は本当にまだ十五歳なのか?

 しっかりしすぎだろう……。

 お兄ちゃんちょっと心配だ。






◇◇◇◇◇◇





 明日の早朝、日が昇る直前から泉の森への移動を始めることにして、今夜はエルフのお二人には我が家に泊まっていただくことにした。

 我が家にはサラ用の小さな部屋があり、今夜は俺がそこに寝て、サラとエルフのお二人には居間に寝て貰うこととなった。



 エルフは温かい湯に浸かる習慣がなかったらしく、サラと一緒に入浴したあとかなり感動していた。


 うちにあるのはいわゆる五右衛門風呂。

 だが、身長百九十センチを超える俺が肩まで浸かれるほど大きな浴槽。

 風呂釜の内側と外側には、香りの良い木を張っていて慣れない人でも火傷などしない。まあ、これは釜にもたれてのんびりと浸かれるようにとサロモンが作ってくれた。


 洗い場も俺に不自由が無いほど広く作ってある。

 女性三名で入ると多少狭いかもしれないが、それでも入れないことはない。


 この風呂小屋を作ったとき、我が家で一番金がかかったとサロモンはこぼしてたな。

 感謝してるよ。


 ちなみに俺は覗きなどしない。

 安心してくれ。


 過去に王族に生まれ、後宮を持ったこともある俺だ。

 女性の裸体など多数見てきたのだ。

 今更思春期男子の好奇心を満たす行為などして女性陣から冷たい視線を投げかけられるリスクを犯す必要などない。


 じゃあ、何で女性に弱いんだと思われるかもしれない。


 それはそれ、これはこれだ。


 とにかく、覗きや痴漢行為などの犯罪を犯すことはないと俺は断言できる。


・・・・・・

・・・


 「じゃあお兄ちゃん、明日は寝坊しないでね」


 俺が風呂からあがるとサラが声をかけてきた。


 「あのさ? サラ。実は相談したいことが一つあるんだ。寝る前にそれを話しておきたいんだが、いいか? 」


 首を少し傾げて


 「いいわよ? 何?お兄ちゃん」


 俺はサラの部屋で二人きりになり転移に関することを伝えた。

 

 「で、どう思う? 十中八九龍気が関係してるだろうけど、転移ができる龍気の使い方なんてサロモンからも教えられていないから、何故使えるのかも判らないまま便利だからと使って良いものか……」


 俺の顔をじっと見ながらサラは腕を組む。


 「不思議なことね。通常は、無属性と四大属性、そして稀に聖と闇。これらの属性で転移が使えるものは無いはず。とすると別の属性ってことになるんだけど、そんなの初代が使ってた龍と会話できる未知の属性しか知られてない。うーん、今までデュラン族が使えなかった属性をお兄ちゃんは使えるのかもしれない」


 「やはりそう考えるよね。俺もそう考えた」


 「体力を使うこと以外で、お兄ちゃんの身体や精神に何も変化は無いんでしょ? 私が見ても、お兄ちゃんの龍気や魔法力に変化があるようには見えないし」


 「ああ、晩飯食べて風呂に入ったら、疲れも取れていつも通りだよ」


 「じゃあ、明日泉の森まで転移を使ったら、その後はできるだけ使わないようにしておきましょう。オーガとの戦いでもどうしても使う必要が出た時以外は使わない。いい? 」


 「ああ、俺もそうしようと思ってた。あと……俺もサラもそろそろ転移魔法覚えたほうがいいんじゃないか? 俺とサラならいずれ使えるとサロモンも言ってたし、何故使えるか判らない俺の転移より、原理も術式も判ってる魔法による転移のほうが安全だよね。要は、あれだろ? 魔力の急激な枯渇が転移魔法で生じるからサロモンはまだ覚えないほうがいいと言ってたんで、転移で消費する魔法力がどの程度なのか判れば、使い時を間違えないようになる」


 「そうね。私も成長とともに魔力の量増えてきたからいいかもしれない。お兄ちゃんのその馬鹿げた量の魔法力なら体力を消費する龍気より転移魔法のほうが使い勝手いいかもしれないわね。判ったわ。サロモンが残してくれた魔法関連の書物から転移魔法使用に必要なことを抜き出しておくわね」


 「お願いするよ。頼んだ。じゃあおやすみ」


 ゼギアスが毛布にくるまる姿を後にして居間へ向かう。

 サラは兄に生じてることが何なのか考えている。



 サロモンが亡くなった後のお兄ちゃんの成長は異常よね。

 魔法力の保有量も強度も既に化物並みだわ。

 あの強かったサロモンの十数倍、里で見た高等魔術師なんかお兄ちゃんと比較したら小石と山ほどの差がある。


 魔力は通常、五歳時の保有量の倍程度が成人の保有量。

 強度は訓練次第で変わるけど、それでも三倍まで強くなる人すら稀だわ。

 ベアトリーチェさんとマルティナさんは、お兄ちゃんの魔法力の保有量も強度もさっぱり把握できないんじゃないかしら。



 それ以上に気になるのは龍気よ。


 龍気の強さは、気の光度でだいたい判るし、その人が使える属性は光が放つ色彩の種類で判る。もちろん気を見ることのできない人には判らないでしょうけど、私達のようなデュラン族ならお兄ちゃんの龍気がどれほど強くていくつの属性が使えるのか気になるに決まってる。


 光度は私より全然強いし、色彩の種類も八種類以上だということくらいしか私にも判らない。

 私の龍気だって、サロモンよりも光度は強い。聖の属性も使えるんだし、デュラン族の中ではかなりなレベルだと思うのよ。


 でも、お兄ちゃんが使える力はとんでもないわ。


 だから変な女の人に騙されないように私が気をつけなきゃいけない。

 

 鼻の下を伸ばして、悪い女の人の言うとおりにお兄ちゃんが動いたら、どんな犯罪を犯すか判らない。お兄ちゃんに悪気はきっとない。犯罪行為だって事前に判っていたらどんな美人の頼みでも断るだろう。でも騙されてから、悪気はなかったとか犯罪だとはわからなかったとか言っても遅い。


 ああもう……良識があって、お兄ちゃんを抑えるだけの気持ちがある女性に早くお兄ちゃんのお嫁さんに来てもらわなきゃ、私の気苦労が絶えないわ……。


 

 フウ……と息を吐き、既に寝ているマルティナの横に横たわり、毛布にくるまりサラは瞳を閉じる。

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