冬
幾つの想いを紡ぎ、書きなぐっただろうか。
渡す事も叶わない手紙を。
その枚数は、あと1枚で50枚に到達しようとしていた。
部屋の寒さを感じ、窓から空を見ると真っ白な雪が音も無く降りしきっていた。
今までの想いの粒の様に。
ここ1か月、あの場所には1度も行ってない。
好きだと言えなかった自分自身の不甲斐なさに息が出来なくなりそうだから。
知りたかった名前も、声も、温度も、想像したらきっと泣いてしまうから。
けど、このままじゃいけない気がした。
もし、もしも、彼女に好きな人が居るのだったら、応援したい。
それが、彼女の幸せになるのなら。
素直に導いた決意と、くしゃくしゃになりながらも書きあげた手紙をポケットにしまい、あの場所へ向かう。
外に出ると、雪は小降りになり道を作ってくれている。
自宅から5分程で学校までたどり着く。
桜の木々は自然のイルミネーションみたいに美しく輝き、どの季節でも見る事の無い不思議な光景を描いている。
そんな、葉を付けてない桜の木の下を1歩1歩踏みしめながら歩く。
分かってはいたことだけれど、彼女は居なかった。
僕は初めて、片想いの切なさを知りました。
そして、多分人生で一番泣きました。
一頻り泣いた後、宛名の無い手紙を木の下にそっと置いて背を向ける。
さよなら、名前も知らない君
さよなら、想いを募らせた季節達
さよなら、僕の初恋
じたばたしても、否応なしに季節は廻って来る。
そうやって、いつの間にか季節は一周しまた春がやって来るのだ。
凍てついた僕の心の秒針は、止まったままで。