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4  作者: RYO YOC
8/30

GOGO HOUSE

赤い照明の中で女の髪が振り乱れる。心音の変わりに爆音で掛かっているLOU REEDのVICIOUSが体内を充たす。

長いまつげの影の黒が、赤い頬に貼り付く髪が、水着の上のへその影が、ビートと重なり思考を吹き飛ばしていく。

上下する水着の腰が、背中の曲線が、活発な大腿が、性欲を刺激する。


夜のシェルターDワーカーは刺激一杯だ。ノブナガは思った。ゴーゴーハウスとは肉体労働の嫌いなDワーカーの女がステージ上で踊り、男達相手に売春する場所だ。

金額はお互いの交渉によって決まる。一緒に飲むだけなら無料、ただし飲みもの代は払ってあげるのが常識。持ち出し金がいくら、セックス一回ならいくら、一晩中でいくら、というふうに。

電力は違法で入手しているらしかった。


 「オレはこういう場所が本当に好きだ。掘っ立て小屋みたいなとこでのFucKとかさ」

 ガジャスターは言った。ゴーゴーハウスの中央に舞台があり、ノブナガ達は舞台の周りに立って女達が踊るのを眺めている。

ノブナガと目のあった長身のブロンドがすらっと長い指で銃を作って、ばん、と打つ。

 「シンプルな演出が一番、ぐっ、と来るってのはあるよ」

 ノブナガは胸を押さえて言った。

 「赤い電球で照らされただけの、女達、美しい」

 美しい君、このビール瓶入るかい?ガジャスターは女の側まで行って叫んだ。


ノブナガはビールを一口飲み、弱い電光のためにぼやけている自分たちの輪郭を見た。原住民の穴蔵生活もこんなだったろうか、と想像した。


曲がI'M SO FREEに変わる。こんな所でシャイになるのは最高に下品な事だ、とガジャスターが叫ぶ。

あ、また長身のブロンドがオレを打った。ばん。オレは大げさに腹を押さえる。今夜はあの子にしよっと。

 

 「本っ当に最低な事よ」

 ノブナガはメロンを採りながら説教を受けている。酒が残っていてメロンの甘い匂いに吐きそうだ、とノブナガは思った。

 「男は馬鹿ばかり」

 ノブナガは、あ、と思ったが、かまわずピッキングを続けた。

どどどどど、と足音が後ろから近づいてきて、見てみろ見てみろ、これはまだ駄目だ、まだ青いんだ、と監督のポニーテールの白人の男が言った。

ごめんなさーい、ノブナガは謝った。

 「あなた最低よ」

 「ごめんなさーい」

 ノブナガは隣でさっきから説教している女にも謝った。女の名はマリ。ジパング人だ。ノブナガがゴーゴーハウスへ行ったことをうっかり話した為に軽蔑され説教を受けている。

女を買ったりしたことは絶対に女には言ってはいけない、ということをノブナガは嫌なくらい覚えた。

マリとは食料を分け合って夕食を一緒に作っている。主にマリが料理しノブナガはジャガイモを剥いたりしていた。たまには手抜きでもさっさと食べたい、と面倒くさい時もあるが、料理が完成し食べてみるといつも美味しく満足するのだった。


 「地平線が見えるって良いよね」

 昼の休憩中マリが言った。車の荷台の幌の下でベンチに座りおにぎりを食べている。

 「良いけど、今は見えてないよね」

 ノブナガが言うとマリは遠くを指さした。

 「地平線っていうのはもう完全に線になってるのを言うんだよ。あれは山や丘でぼこぼこしてるから地平線では無いよ」

 「細かいことにこだわるよね」

 「地平波線だ」


 巨大な収穫マシンの下の影ではポニーテールの監督の白人が太った黒人の女と抱き合っていた。

隣ではポリネシア人の夫婦が食事中にトイレの話をしたアジアの女に、うせろ、と怒鳴っていた。

ガジャスターは黒人のスリムな女と、お気に入りなんだ、と言ってマリファナ巻いている。


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