シェルターDワーカーズ
国連はTaKiRoとの対峙に備え電力や鉄や食料や医療品を各国の首都だけに集中させる事を決めた。
首都にはTaKiRoと対峙できる能力を持つと国が判断した者達だけが居住を許され、シェルターAワーカーズと呼ばた。
首都に住めない者はシェルターDワーカーズと呼ばれ、食料の生産に当てさせられた。電気や車の消えた土地は牧場や畑に成り代わった。
アファリカ人はそれまでの生活を続ければよかった。北朝邨でもほとんど何も変わらなかった。
テロ組織の人々はアルマゲドンと言い、コメリカを中心に各国の首都でテロを起こした。
ジパングのほとんどの人は首都に入る為に国に対し従順な犬のように行儀良くなった。国の指定する能力判断として提示される試験に合格し資格を手に入れるために全ての時間と力を注いだ。首都に住めない、ということに対して異常なまでの恐怖をいだいていた。
水も綺麗だし、空気も綺麗だ、肉体労働の後の酒は美味いし、マリファナ吸ったって誰も文句を言わない。星や月は最高のエンターテイメントだ。何故ジパング人はシェルターDを嫌うのだろう。排気ガスはマリファナじゃ無いぜ、オーストラリス人は言った。
ノブナガはシェルターDワーカーとしてオーストラリスのエレアーでメロンピッキングをしていた。
広大なメロン畑で、巨大な果実収穫マシンが左右に細長い溝を広げる。溝の中にはベルトがあって果実をマシン本体に運ぶ。マシン本体に送られてきたメロンは女達が選別する。細長い溝の前後に人が並び少しずつ前進するマシンに合わせて歩きながらメロンを収穫していく。
強烈な日差しの中メロンが緑にまぶしい。潰れたメロンが甘い匂いを放つ。遠くオウムが飛んでる。白い巨大なオウムとカラフルで小さいオウム。どっちかがメスらしい。大きなポリネシア人のオジサンが教えてくれた。
前回オーストラリスに月の階段を見に行ったときよりは英語が出来る。勉強していたからだ。
肉体労働で疲れてくると頭の中で作曲をして楽しむ。
白人の男達は疲れてるときほど陽気に話して気力を保っていた。
ポリネシアの大男は疲れてるときほど他人に気を遣ったり励ましたりして気力を保っていた。
アジアの男は寡黙に働いた。
アジアの女は男に甘えたり、笑ったりして気力を保っていた。
白人の女は疲れてくると働かなかった。
シェルターDワーカーズの昼間は肉体労働だ。
「ジキジキ帝王。GogoHoUseに行こうぜ」
ガジャスターはノブナガに言った。
イェーア、と広げた左手に握った右手をばしばし打ちつけている。
電気の殆どを首都に奪われた農場は闇に包まれる。赤や青や黄色や白の電球でシンプルに飾っただけの野外飲み屋でノブナガは飲んでいる。 ガジャスターはオーストラリス人の青年だ。
ノブナガとガジャスターはゴーゴーハウスへ向かった。シンプルな電球で飾った飲み屋を離れると地上には闇が、空には星が広がった。耳鳴りのようにカエルが鳴き、山と木の輪郭が黒く盛り上がっている。