彼女とfirstcontact
伊集院グループ本社、超高層ビルの社長室と書かれた最上階の部屋で、その商談は行われていた。
広いその部屋には、美術品や骨董品が置いてあり、煌びやかな装飾が施されていて、来るものを圧倒させようという意図があるようにも感じさせる。
その真ん中で大きな木製の机、黒い革製の椅子に深く腰をかけたスーツ姿の初老の男とその前に立つ白衣を着た茶髪のショートカットの女性、二人が話をしていた。
男の名は「伊集院平蔵」。現伊集院グループの社長だ。歳は六十を超えているが、精力的で鋭い眼つきから威厳が溢れている。
伊集院グループとは、過去から遡れば江戸の時代から続いている。政府と癒着し、着実に勢力を伸ばし、今では知らないもののいない超有名企業だ。
平蔵はタバコに火をつけながら女を鋭いその眼光でみる。
「いきなりだが、理沙さんや。娘達ののボディーガードの件はどうなっているかな?」
平蔵の前に立つ彼女の名前は「大空理沙」。ボサボサな茶髪の髪を面倒くさいから縛ったとしか思えないポニーテルに白衣を着ている。確実に美人の部類に入るのだがまったく化粧っ気がない。
理沙は平蔵を真っ直ぐに見ながら答える。
「ええ、それならお任せください。最強のボディーガードを用意しましたから」
「ほう、最強とは...断言できるのか?」
理沙は微かに笑いながら、書類を渡す。
「そうですね。最強というよりは負けないと言った方が正しいかもしれませんが...負けるということを死ぬと定義したらですがね」
平蔵はタバコをゆっくり味わって吸いながら、その書類を確認する。そこには、男の子の写真と経歴が書かれている。
「最強か。いいことを思いついた。まずはその最強君をテストしようじゃないか。大切な娘達だ。信頼できる人間でないとね」
子供じみた笑顔を浮かべる。平蔵はなかなか面白いことを考えた、スリリングなショーを始めようと妄想にはいりこんだ。
さあ、どうしようか。最強か。こんな少年が。面白いじゃないか。
「もちろん、いいですよ。どの世界でも信用が無くては生きていけませんからね。私たちはだだ組織に資金援助してもらえればいいのですから」
理沙も平蔵に合わしたようにくつくつと笑う。
この日の取り決めが僕と彼女達の人生、結果的には世界の運命を変えることになるとは知る由もなかった。