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イケメン男子は人による  作者: 日影瑠射
第三章 「誰か説明して下さい」
8/14

八話■「人によるにもほどがある」

・各キーワードに間違いはありません。

・もう一度言います、間違いありません。


・とりあえずトリップファンタジーがベースです。

・剣と魔法が主体です。

・主役は女の子です、一応。

・イケメンが一杯でます。



  イケメンは人間ではありませんでした(げふ)

 今から二百年前、最も劣勢を強いられていた時代に『乙女』を召喚すべく様々な儀式が執り行われた。結果誰も降りてこなかったのだが、当時の魔術士長は降りてきた時を考え、持てうる限りの力を使い練り上げた魔術を魔石に刻み、最高級の原材料と最高の職人に作らせた腕輪を土台として一つの魔導具を作り上げた。

 それがレイの使用する翻訳魔導具である。

 本来の役目を果たせられぬまま幾年も宝物庫にしまわれていた腕輪だったが、ある年、当時の王女が何らかの理由で(おそらく、たまたま目にした腕輪を使いたいと王にごねたのだろうが)腕輪をつけて成人の儀を迎えた。

 芸術品として遜色無いレベルに仕上げていた腕輪はこの時から王国で爆発的な人気を生み、以来翻訳機能を省いた腕輪が模倣し続けられ、貴族・平民問わず娘の成人祝いに必ず贈られる風習を生む。


 しかしこれが『仇となった』。


 いくら各地域の『乙女』達がほぼ同じ時代から来たとしても、召喚した国の技術が遅れているとしても、何れ文明とは発展する物だ。

 何が言いたいかというと、この魔導具の性能は現行の物より型遅れなのである。 (控えめな表現)

 普通の翻訳魔導具は輝石・宝石など魔力と干渉する性質の鉱石に特殊な術式を施し、対象者の考えたイメージを周囲に転写する。基礎の設定さえ間違っていなければ登録した言語圏内なら意志疎通が容易であり、他方面の人物と顔を見合わせる機会の多い商人や外交官は元より、王侯貴族にいたっては日常品として着用している。

 これの難点は二つ。一つはイメージ転写装置である以上、使用者の言葉は『音』として認識されないので、空間魔術による遠距離通信では本来の言語で相手に伝わってしまう。そして二つ目が設定言語圏内から離れる程に翻訳の正確さが失われ、疎通が難しくなる。なので相手によって魔導具を取り換えたり、一度に複数の魔導具を装着するのが定番だ。


 しかし『今回の問題はそれではない』。


『乙女』とは【ニホン】という国の出身者が大多数を占める。この国は不思議な事に、【ニホン語】という母国語に【ギリシャ語】とか【サンスクリット語】などの複数の国の言語を交ぜて話しているという複雑な言語をとっていた。



例 シノビなれどパーーリナーーイ



 召還時に言語適応のある乙女ならまだしも、大抵の乙女は適応が無い。とある学者の研究では、発見できなかった『乙女』の大半が言語不適応者ではないのかと言われている。

 そこで使用されるのが、今回のタイプの魔導具だ。

『乙女』の国の言葉を研究するには『乙女』を通してのみしか研究できない。言語適正のある『乙女』では文字で覚えられても肝心な発音を知る事はできない。発音を知る為には言語適正の無い『乙女』の発音が必要となる。

 言語適応の無い『乙女』の保護に成功した国は自国の危機を回避するのと平行して【ニホン語】の語彙習得を行う。

 各国が長い時間をかけて積み重ね、ようやく誕生したのが、対『乙女』専用翻訳魔導具『ブレイグシリーズ』である。この魔導具は使用者の舌に影響が出るになっている。使用者が言葉を出そうとした際にこちらの言語に聞こえるよう、空気の振動が変化するのだ。

 作るにはかなり高度な術式が必要で、値段も倍以上かかる。しかし『乙女』を確実にゲットするには有効な方法で、ある国では国が危機的状況に陥った時、国中の女性にこれを使用したら最後の一人で見つかったという逸話がある。

 そしてお約束にも重大な欠点というか改善点がある。記録されている【ニホン語】の収録は現在進行形で、二百年以上たっても終わらない。時代が経つにつれ滑らかになっていくものの、解消するにはまだまだ時間が必要だ。


 通常なら、その程度の事なら特に問題にはならない。言語翻訳の恩恵がないから仕方がないという暗黙の了解があるせいでもあるだが、意思疎通さえ出来れば問題ないと考えるのが大多数。




 だがしかし!  今回はそれがマジで裏目に出た。

 




「レッレイ?」

 王国騎士団の中でもハンサムで有名な騎士団副団長、スタン・シェルが引きつったひきつった笑いをピクピクさせる。同じく騎士団のファイニー・オルレアンが腰を抜かし、騎士団長のジョルド・ゴードが……

 とにかく、人の男という男が自分の常識を疑う。女性陣は顔を見合わせ、竜人の顔と人の顔を疑問と共に見比べた。

 親達は、うちの娘がああなりませんようにと神に祈る。

 ジェルディアガ側で混乱は、あまり起きていなかった。

「あー…嬢ちゃん」

 ひょいと、デッカードの部下である混血の地竜が勇気ある手をあげる。

「それ、言って後悔しないか?」

「何がだ?」

 口調と違う、花の様な笑み。

「ボスはどうなん?」

「…うん」

 こしこしと目を拭うデッカード。

「僕は彼女が好きだから」

 瞳の裾に涙を残しながらてへ、と笑う。

「そーですかい。じゃあしかたありやせんな」

 デッカードと共に穏やかな笑いを浮かべるダン。見守っていた竜人達も、強い決意を見せた二人に祝福の言葉を贈った。

 人はそれ所でないがな。

「カモン姪っ子!」

「はーい!」

 元気一杯の笑顔でまっていましたと、白夜が持っていた小型バックに手を入れてごそごそ。


ぱんかぱぱーん


「せーしーんほんやくきーーー」  たらったらーーー

 

 破矢の手を握ったまま高々と手をあげて皆に見せる、ティアラとサークレットの中間のような、中央に紫色の宝石がついたそれを白夜は破矢と一緒にリドリアの元へ行くとアデューに持たせ、三人で零の元までやって来て、白夜がアデューを背中から抱っこしたら零が屈んだのでアデューはお手手をぷるぷるしながらサークレットを髪にさした。

「おお…」

 人間側から感嘆の声。普段、零は着飾るという事があまり無い。ドレスも着る事は着るのだが戦時中は他の女性達、レオナやアドウェンの用に実用第一でズボンを履く事が多い。

 零がドレスを着る様になったのは戦後の混乱がある程度落ち着いてからだ。黒髪と黒曜石の瞳、陶器の様にきめ細かい肌に幼い顔立ち。改めて認識した美しさに男達が頬を赤らめる。

「おきれいです、おねーちゃん」

「サンキューあーちゃん、君も可愛いよ」

 ぐっと拳を握る零。人の男が一斉に口にする。

「……え?」

 今、乙女はなんと言った?

「すっごく…綺麗です、レイさん」

「何で泣いてんの?そっち、戦化粧以外の文化無いでしょ、すっぴんの方が良いっていったじゃん」

「化粧は無くても装飾品の文化はあります」

 感極まって泣くデッカード。零はしょうがないなーと言いながら、再びハンカチを取り出した。

「相変わらず涙腺弱いなぁ。ま、そこが可愛いけど」

 優しく拭いながら囁いている。それは先程と同じ光景なのだが、決定的に何か違う。

「レ、レイ?」

 リジェリアが、違和感を五感で感じながら呼んでみる。

「はい?」

 どうしましたかと首をふる。

「貴女は、どうしてその人と結婚したいのかしら?」

 引きつりそうな顔を精一杯動かして笑顔をキープ。

「タイプ。あと可愛い」

 誇らしく胸をはる。

「昔っから私、好きになるタイプがみーんな【ガワ】とか人外ばっかでさー。も、リアル恋愛について考えもしなかった。で、こっちの世界は本気で人外ばっかで……。あ、でも好きになるというより観賞対象として見ていたって方が正しいな。ウハウハするけどトキメキは無いみたいな」

「ガ、【ガワ】?」

 口調がガラリと変わった零に戸惑いながら、聞いた事の無い言葉に疑問符を作るリジェリア。

「だけど、デッカードは違った。だってこの人【オタク】だし!」

 ガッツポーズ。

「あたしのこの趣味、聞く人知る人みーんな偏見もってさー。引くだけならいいけど、真実の愛だとか普通の愛だとか言ってキザったらしーセリフ言うやつ多くておーくて。面倒だから普段は【対面スキル】で趣味隠して生きてんの。こっちに召喚されてからもそれ続けてたら、人外前にして暴走したけど、翻訳の【キャパ】足りないんで真面目な学者風に訳されてんじゃん。まー、面倒だからそれでもいーかなーと思ってたら彼、あたしの言いたい事に気がついて、翻訳の翻訳してくれてさー。あたしも本当に聞きたい事が聞けるんで、二人して【夜鍋】しながら延々語りまくってたら愛が芽生えたそーゆー事」

 普段の表情でこれを話すレイ。事情を把握していたレオナ含め、完全に目を点にしている。

「…心中、お察しします」

 リドルアはジェルディアガを代表して言った。その声には憂いが帯びている。

「このデッカード。知識欲の高い地竜の中でも飛びぬけた学術馬鹿でして、知識を吸収するなら寝食忘れ、呼びに行くまで延々と研究を続ける有様です。レイとは元々異世界の知識を得るために交流を続けていたのですが、その過程で彼女の翻訳魔道具に【オタク】と呼ばれる言語が欠けているのでは無いかと考え、忙しい時期に渡航して語彙を探し出し、自作の魔道具を作り出してプレゼントをしました。失礼ながら、真なる意味でレイの真意に気づき、精神的支えになったのは間違いなく彼です。そしてレイが数いる人外…この場合我々ですが、自ら選んだ相手でもあります。維持法も無くなり、他種族との婚姻も可能となりました。もはや止める法はこちらにありません。本人が結婚したいと言っているのですから、我々は素直に祝福いたします」

「…何やら正論と投げやりと愚痴が混ざっているようですが?」

 女王としての意地なのか、否定したい言葉をあえて聴きとめ、思考を続ける。

「陛下、我々はレイとデッカードの関係を『両国を救う為に情報交換』する真面目な姿に見えていたのです。新たな竜爵家を祝うパーティー、参加せず何処かに消えた彼は終わり間際に現れ、婚約の発表を告げ、レイを紹介しました」

 当時の様子を思い浮かべたか他の竜爵、そして周囲が苦笑い。

「つまり、二人にとって俺達が聞けば『真面目な学術談話』が『いちゃいちゃラブラブトーク』だった訳で。他の奴らの目の前で正々堂々愛を育んでいたから既に理解されていると思ってたんだが、こっちとしては寝耳に水」

「あん時の大絶叫、今日のにすげぇ似てたよなー」

 従兄弟同士が息子・姪の頭を撫でる。

「ちなみにレイの頭にあるアレ、兄…が心血注いで作った新型で、翻訳不能の言葉はそのままの言語で再現する仕組みになるタイプ。一般・乙女どっちも対応出来るんで、うちの新たな特産品候補」

 カイン、何気に宣伝。

「……………」

「レイがあれを装着してから、『学術談話』の正確な内容を知る事が出来ました。はっきり申し上げます、友人・知人・戦友の類はともかく、人間に伴侶は無理です。我々竜人でも、あの内容についてこれるのはデッカードだけです。無理に結婚させても『異世界美女伝説』の禁句に触れ、互いの国に災いが来るでしょう。陛下、彼女を王子の妃にする事は諦めて下さい」

 リジェリアはそのまま気を失った。

「母上ッ!?」

 流石に母親が倒れたので正気に戻るグレン。周囲の人間も復活し、女王の安否と状況の説明と『真実の愛だとか普通の愛』で零を取り囲む。

 かくして、記念式典は開始早々いろんな意味で記念すべき問題事項を抱えて開始されるのであった。


 ここの主人公、本気で人間に興味ありゃしません(笑)

 当人はいたって普通の人です。ただ、好みの対象が人間でないだけで。

 普通でない主人公が普通でない人外とであってらぶらぶしてもいーじゃん。


 巻き込まれた周囲はたまったものではないがな!!



 ひっさしぶりの投稿ですーーーー!!パソコンの具合が悪くなって本気で泣いた。ウスルスバスターが原因の一つだったとは・・ 

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