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イケメン男子は人による  作者: 日影瑠射
第二章 「ロマンスは定番に」
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四話■「不敬罪?何それ美味しいの??」

・とりあえずトリップファンタジーがベースです。

・剣と魔法が主体です。

・主役は女の子です、一応。

・イケメンが一杯でます。

・各キーワードに間違いはありません。

・もう一度言います、間違いありません。

 はるか彼方まで見渡す程、惜しげもなく使われた白亜の大理石。弓を手にした四体の乙女像は信義の黄金・調和の白銀・勇猛の鋼鉄・救命の青銅を意味する鉱石の矢を番え、配置されたホールの四方で人々を見守っていた。

 ゴルドゥーラ王都ラジェンド。王家の始祖たる三人の少年が、異国の神であった軍神ルターワがこの地へ訪れた際に祝福を与えられ、山の頂で建国宣言をしたのが始まりとされる。

 黄金郷と称えられる程、鉱山資源に恵まれた国は輸出・加工によって大陸屈指の財を成し、最近では海貿易にも手を広げている。

 ただし、防衛としての軍事力はあるが領土その物を増やす事は無く、戦争目的での進出はジェルディアガ以外、国内外全ての歴史書からでも確認出来されていない。大陸の重要な交易国家で、黙っていれば戦争の必要のない国が隣国とのみ長きに渡り続けた戦争。建国以前の、種族間による意識の相違が原因とは言え、今や互いは立派な国。幾度か和平を申し込もうとするが、手ごたえがあったかと思えば破棄される事が何度も続く。

 当代にそれまで保っていたバランスが崩れ、両国の関係はさらに悪化。王都で王子の暗殺未遂騒動が起きた事で女王を中心とした和平派の意見も一蹴され、戦争へ突入した所に『乙女』が現れた。

 関係悪化の理由は呪いの元凶を手にした混血の白竜によって人間への憎しみを増長させられた結果だと判明。呪いの消滅も叶い、もはや現代において戦争する理由が無くなった両国は過去の過ちを教訓とし、長きに渡る戦争の終結を宣言した。

 敵として生まれる前から憎しみ合っていた隣人達。薬・武具・建造物の良い材料となるケダモノ、罪のない者達の命を奪う残虐非道な人間。知性ある存在として認識を改めては対等の、分かりあえる事のない憎しみを抱く敵対国家として認識し数世紀。

 たった数年で和平が成り、今や武装を解除して談笑しあう間柄。

 全ては『乙女』の存在あってこそ、女王の口癖が流行語となりかけているのは暗黙の了解であった。





「あいつか、あれか、どれだ…」

 会場を一望出来る二階テラスの柱の影。ご丁寧に身を屈め、態々移動して来た大型の花瓶で下から確認し辛い位置を作ってこっそり顔を出しているのは黄色い肩飾りに髪・鎧と同じ藍色のマントを付けた一人の青年。

 宝石のついたサークレットで軽く纏め、黄土色のラインが所々に入った式典用の鎧を身に纏う。胸元には交差した剣の根本に赤い宝石を置く紋章が刻まれ、王位継承者が代々受け継ぐ剣を腰から下げていた。

 ゴルドゥーラ第一王子、グレン・ゴルドゥーラ。次期国王がその恰好で床の上に屈んでいるのだから、通りかかった将軍はとりあえず頭をぱしーんと叩いてみた。

「痛いな」

 即答で抗議するグレン。将軍は小馬鹿にしたため息でぐりぐりと後頭部を踏んだ。

「この馬鹿王子、とっとと席に戻れ。先程からアドヴェンが目を回してジェルジュとスタンがエスコートで忙しい、この私を使いにする程にな」

「仕方がないだろ、下にだと身動きが取れないのだ」

「どんなイベントだろうが適齢期の第一王子を狙うは何時もの事。予定調和だ諦めろ」

「私は彼女を愛している」

「既にお前以外が獲得している。あと、ストーカーもどきも止めろ、第一王子うんぬん以前に身内として恥ずかしい」

「人の恋路を邪魔するな!」

 今日、同盟を結び丁度一年。戦後復興を祝い、二国を跨いだ記念式典が行われる事となり、本日が第一日目。軍事・政治を担う家臣団から王国内の有力貴族まで、数年前まで続いた戦争の功労者達が王都・地方から集まり、同盟国ジェルディアガから来た客人達を持て成し、女王の名の下で今日を盛大に祝う。そして『乙女』が考案した廃砦による記念街道を客人達と共に進み、ジェルディアガ王都ベルタナで行う式典で、今度はゴルドゥーラを客人とした宴が執り行われるのだ。

 二つの国に跨って行う記念式典。街道には既に将来を見越した新たな村が作られ、各地から商人や武器屋が集まりつつある。

 両国の将来を祝う重要な国家事業でさっきからこそこそしているのは他でもない、ここの第一王子。

 彼の『乙女』への熱愛ぶりは周囲も察して、というかダダモレ。初めは緊張していた『乙女』との接触も次第に打ち解け、単独で侵入したと知った時は生きた心地がせずに単騎救出へと向かった。

 その際知り合った風竜に悟られ、彼女が竜人のレジスタンス達と打ち解けたのを知る。そして王都決戦の日、人の王子として最前戦に立ち、王族としての勤めと共に男として一番彼女を守ったのは自分だと自負していた。

 なのに…彼女が選んだのは別の男、自分以外の誰か。

 一体それが誰なのか、どうしても確かめずにはいられなかった。

「人はそれをストーカーと呼ぶ」

 備えの侍女にワインを頼み、堂々とテラスに立つ。対してグレンは跪いていた。構図はとても宜しくないが、下から見えないのでまあ良しとしよう。

「君こそ戻らなくて良いのかい、レオナ。下には君の求婚者も来ているだろ?」

「は、大将軍(グランド・ジェネラル)でありカイゼル公爵家令嬢兼時期公爵の、王位継承第四位の私を娶ろうとする度胸馬鹿が居たら見たいわ」

「怖くて近寄りたくないね」

「何だ、それは彼女の言う『セクハラ』と言う奴か?」

「君は良いよ、私なんて何の面白味も無い普通の男だよ。家事育児が得意な、趣味が彫金作りの何処にでもいる平凡な男さ」

「第一王子という生き物は一つの国に一人しかおらんぞ」

 非常に明るい橙色の髪を惜しげもなく広げ、王族に許された宝石と弓の紋章を縫い取った髪と同じ色の軍服で身を包んだ女性。ゴルドゥーラ軍の最高将軍にしてカイゼル公爵家令嬢、女王リジェリアの妹の娘…女王の姪にして王子の従姉弟、母と従姉弟のコーエンに続く王位継承保持者第四位、レオナ・カイゼル。

 女王の義弟である父が長く病に伏せており、事実上の家長を務めて四年になる。一応グレンの妃候補なのだが二人にその気は一切無い。理由は至極単純、友達なら良いが恋愛対象としては一切興味が無いから。

「ここに居たか馬鹿王子ッ!」

 この国で王族への不敬罪は存在しないらしい。

「とっとと戻れこのヘタレ、ファイニーの口説き文句も底が付くぞっ!」

 通路の奥から全速力で走り、背中に跳び蹴りを入れたのは青い短髪の若い男。

 青い髪と同じ色の式典用の服を来た、王国騎士を意味する銀の馬上槍・銀の剣・銀の斧・銀の弓と緑の宝石で描かれた紋章を鎧に刻むのは騎馬隊副隊長スタン・シェル。彼はグレンの襟首を掴み、そのまま元来た道に足を向けた。

「ま、待ってくれ、私にはやるべき事が」

「てめーの仕事は客の相手をする事だ!」

 ずーるずーると通路の奥に消えていくグレンとスタン。侍女が恭しく、何時もの様に行ってらっしゃいませと頭を下げた。

「やれやれ」

 レオナは空になったワインを侍女に持たせると、一階から自分に向けられる視線へ向かい手を振った。

「あ、あの、レオナ様」

 新しい酒を飲んでいた時、通路から名を呼ばれ振り向く。

 ウェーブのかかった若草色の生地の裾にレースを縫い付けたドレスを纏う若い娘。頬を薔薇色に染め、緊張の顔を精一杯冷静に保ちながら会釈をする。

「お初にお目にかかります。わたくし、シュヴァンシュ侯爵家の娘でルギアと申します。その、たまたま通りかかりました所、お一人でおられる様子。何方か待ち合わせを?」

「いやいや、私一人ですよ」

 さっきまで一緒に居ましたが出て行きました。とは言いません。

「まあ、そうでしたの。わたくしも一人でして、その、宜しければ……」

 もじもじと、言葉の濁る侯爵令嬢。たまたま通りかかり、と言うのは半分嘘だろう。スタンが飛び蹴りしている(或いはレオナが後頭部をぐりぐりしている)のを行儀よく待っていて、やっと王子が消えたのでやって来たと言うのがきっと正しい。

 この国に不敬罪は無いが、空気を読むのはとても大事だ。

「ルギア嬢」

 レオナは笑みと共に彼女の前で軽く膝を折る。

「宜しければ、私と一曲踊って頂けますか?」

 令嬢の姿は下からは見えない。だが、膝を折った姿は見える為に先程から女性の声が聞こえる。

 偶然、姿を見つけてから色々考えていたのだろう。運良く障害物が消え、勇気を振り絞り来た所を見ると、この令嬢は社交界に入りまだ日が浅い。

 ならば、ここは素直に相手の望みを聞くとしよう。それ以上の願いを言いだしたならばそれはそれ。


「はっ、はいっ!」

 了解が取れたので、レオナはそっと令嬢の手を取り、甲に口づけた。

 すいません、乙女はまだ出て来ませんでした(土下座)


 新キャラ登場ー。ふふ、ふふふふふふふ!

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