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イケメン男子は人による  作者: 日影瑠射
第二章 「ロマンスは定番に」
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三話■「がんばれへたれ王子様」

・とりあえずトリップファンタジーがベースです。

・剣と魔法が主体です。

・主役は女の子です、一応。

・イケメンが一杯でます。

・各キーワードに間違いはありません。

・もう一度言います、間違いありません。

 古来、竜の血はあらゆる病に効く霊薬として、鱗や骨は武具の極みとして重宝される歴史があった。

 故に竜狩りの集団が巣の近くに居を構え、根絶やしにする歴史もまた存在する。

 ジェルディアガは竜『人』の国である。故に生物学的にはリザードマンに近いのだが、概念や知識の無い時代にそれらを区別する事は不可能であった。

 竜狩りから幼い子らを守る為、複数の部族が寄り集まったのがジェルディアガの始まりである。

 対し、彼らを狩る為に集まった人間の集団が竜人からの攻撃に備え出したのが国の礎とされる。

 


 双方の国はほぼ同時期に建国し、以降何世紀にも渡って敵対関係が続けられた。今や文明が進み、竜と共に暮らすある国がその国の『乙女』の力を借りて絶滅の危機に見舞われた竜の保護を訴え、無双して大陸全土に浸透させても、両者の憎しみは途絶えなかった。

 竜でありながら『人』と呼ばれる彼ら。『人』であるが故の類似する価値観と、『竜』として人と違う身が隔たりを生む。

 いっそ、エルフであったりリザードマンであれば、ここまで話は拗れ無かったのかもしれない。

 それが同族嫌悪である事を理解しても、あるいは戦争のむなしさを互いが感じても戦いは続いた。

 何時まで続くかわからぬ泥沼の争いに人々は救いを願った。それぞれが信じる神へ、だが奇跡は起こらない。

 奇跡の中の奇跡、『異次元からの美少女』すらも…



 そして奇跡が起きた。

 ある日、ミスリルを求めた炭坑夫が奇妙な光景を目にした。地質調査の為に洞窟を爆破していた所、壁が崩れ中から遺跡が現れたのだ。見た事の無い材質で作られた遺跡は縦長の構造物であり、中から奇妙な音がする。炭坑夫は不審に思い、近くの役所へと駆け込んだ。

 そして一時間後、駆けつけた騎士達は異様な建造物を前に武器を構え、魔術師達は壁の一部を爆破すべく詠唱を開始する。

 その時だった。

「あれ?」

 遺跡の一部が開閉した。緊迫する騎士達の目の前に現れたのは、奇妙な服を纏い、袋を持った一人の『乙女』。

 騎士達は早馬を飛ばして王城へ向かい、連絡を受けた王は会議中にも関わらず大声で叫んだ。


「この国に、鎮魂の乙女が現れたぞ!」


 かくして王は『乙女』を賓客として招き、宮廷魔術師達は「いつか異世界からの乙女が現れた時、これを…」と代々の魔術師長から伝えられていた翻訳機能付き腕輪を感激と共に王へ献上した。

 なお、各国に伝わる乙女の言葉に、


「ピアス?嫌よアレルギーだもん」

「首飾り?服のバリエーションが限定されるから好きじゃ無いなー」

「指輪!?冗談じゃ無いわ、成長してサイズ変わったらどうすんの!」

「髪飾り?ショートヘアに喧嘩売ってんの?」

 

 と、様々な言葉が各文献に記載されているので、それらを研究した当時の魔術師長は受けいられやすい用にと腕輪型にしたそうだ。涙ぐましい努力である。



 かくして、無事に『乙女』と認定された少女は軍師としてその腕を披露し、戦いの合間に作る未知の料理は宮廷料理人の舌を唸らせ、唇から囀る歌は万人を魅了する。

 その中に、王子が入っているのは必然だった。



□□□



 そわそわ そわそわ

 そわそわ そわそわ


 執務室で彼は落ち着き無く歩いた。


 そわそわ そわそわ

 そわそわ そわそわ

 痛っ!


「何をしている、グレン」


 報告書を持ってきた長官は、それを束に丸めて頭を殴った。

 第一王子の頭をで、ある。





 ここは人の国、ゴルドゥーラ。大陸の中央に位置し、竜狩り人の集落が祖とされる武人(たけびと)の国。

 当代の女王は憎しみ会う両国を憂い、和平の道を歩もうとした。だが、和議を進めるべく幾度が接触を持っても、そのどれもがジェルディアガの方から破棄され続け、とうとう開戦やむなしと議会で評決が取られ、実行に至る。後に混血の白竜・王孫ゴーデによって呪いを意図的に強化されてしまった為だと明らかとなるまで。



 もうじき両国との友好が結ばれて一年がたつ。戦後処理や両国に根付いた感情の払拭に費やした一年だったが、その分大いなる実りを得る事が出来た。

 現王の在位から二十数年、それ以外なら千年単位。

 あっさり一年で片付いてしまった。


「………こんなに早く解決するなら、どうしてもっと早く乙女は来なかったのか」


 気持ちは解るが、来てくれるだけでもありがたいんですよと宰相はこの一年、何度も慰めた。


 本日は国境に設けられた砦の撤去……という建前で解体した煉瓦を用いた街道工事がひと段落ついた事の報告会である。

 街道に建てられた要塞ならばそのまま兵の詰め所にしたり、ギルドに貸し出す・売却してギルド会館にする、民間に売る等様々な使い道があるが、敵国への威嚇・監視意外に使い道が無いと解ると廃砦として打ち捨てられ、後は風化を待つばかり。

 そのまま軽めのダンジョンと化したり野党の住居になるのが目に見えるので、地元の人間は近寄らず、たとえ近道でも辻馬車は迂回する。あと、解体するにしても金が掛かる。

 ここで『乙女』がアドバイス。砦その物を資材置き場と考え、解体しながら街道を作る。各地域の砦を基点にゴルドゥーラ・ジェルディアガへの道を作れば瓦礫の処理費が無くなる。中途半端な場所から作り、材質が異なるのは必須だが、逆にそれを復興記念場所として将来的な観光名所&巡礼路とすれば長期的視点において経済が潤う『カゼガフケバフロヤガモウカルシステム』だとか。

 財務省から是非来てくれと懇願された。



 だがしかし

『乙女』と仲の良い公爵令嬢が午後のアフタネーンティーを楽しんでいた時の会話を偶然聞いた侍従がとんでもない話を聞く。

「そうか?私の彼はその点は律儀だ」



 うちの彼だと!  Σ(`・д´・ ;)



 これには周囲が驚愕した。

 なぜなら乙女を思う男は数知れず、妻帯者だろうが操をたてていようが恋人がいようが一度は心を惹かれたからだ。

 とりあえずこの国の第一王子がその一人。しかも地下神殿から出て来た乙女を最初に目撃した時からである。

 しかし、相手は『乙女』。下手に手を出して機嫌を損ねれば戦争に影響が出る。

 故に戦いが済むまでは手を出さないと影の同盟が築かれる。

 で、戦いは終わった。これでアプローチオッケイ!

 この一年、あらゆる男達が乙女を口説こうとするが良い実りは無い。

 その状況でまさかのコレ。

 相手が一体誰なのか、状況を知る事は出来ない。解るのはそれが自分では無い事。

 誰が彼女を射止めたのか、男と言う男は疑心暗鬼に駆られた。

 おかげで同性と会話が出来ない、必然と異性ばかり会話する。

 宮殿内のイケメンが女の子達と会話を始めた。

 そのまま女の子と恋中になる奴が続出する。

 おかげで宮中はちょっとしたコイバナタイフーン発生中。



 にも関わらず、一人イジイジしていたのがここの王子。

 女王メデュリカ・ゴルドゥーラ第一子にして第一王位後継者、グレン・ゴルドゥーラ。

 戦場で立てた武勲は数知れず、極限まで研ぎ澄まされた剣はあらゆる物を一刀両断し、鍛え抜かれた体躯で王家に伝わる巨大な弓を射れば、その一本で十以上の獣を射抜く。

 お忍びで牧場に赴いては酪農家の手伝いをし、搾りたての牛乳で作ったプリンが大好物。趣味は彫金で、鉄などありふれた素材で作った指輪をこっそり露店で売ったら瞬く間に売り切れてカリスマ扱いにつき弟子希望が殺到する。

 第一王子として大丈夫なのか?と側近共々心配しているが、中身と実績が一致しないのは遺伝らしいと宰相は無理矢理自分を納得させた。

 ちなみに特技はと言うと(剣と弓は特技じゃなかったのか?)

「あ゛ー」

 近くのベッドで手をわきわきさせ、ガラガラを楽しげにガラガラしている第二王子コーン・ゴルドゥーラ(0歳)。グレンは弟の頬をプニプニしながら諜報長官をきっと睨む。

「痛いじゃないか、シロエ」

「即言って欲しかったなその台詞」

 うろうろ歩いてるんで頭を殴ったら、タイミング良く泣き始めた弟をあやして泣きやませてから抗議する第一皇子。

 相変わらずと余裕たっぷりな態度でシロエ・ソンブラはソファに座った。

「明後日の記念式典、大丈夫だろうな」

「問題無い、スピーチから来客の把握までばっちりだ」

 敵を屠る筈の火炎魔法で哺乳瓶を温め、抱っこしながらミルクを飲ませる。

 始祖の少年その一曰く、「日常生活レベルで覚えられる物は何でも覚える」。

 家庭的すぎる草食系王子は跡取りとして問題ありそーなんですがどうしましょう。王位破棄しても家政夫として食っていけるって、それ王族の仕事じゃ無い。

 まあ、ジェルディアガじゃ後継者候補の一人が変装して幼稚園の先生やってたと言うから、たまにはそう言う王族いても良いんだろうけど。

 とりあえずこの王子、独身の上恋人皆無なんですが…

「滅ぶか、祖国」

「ん、何か言ったかい?」

「気にするな」

 シロエは懐から箱を取り出すと、小さな飴を放り込んだ。

 明日から長きに渡る戦争終結の日として両国間で式典が執り行われる。初めは人の国ゴルドゥーラで、次に竜人の国ジェルディアガ。最後に国境のまん中で盛大な宴を執り行うという手筈。

 式典の第一日目がゴルドゥーラなのは『乙女』がいるからであろう。

 …心無い者が見れば、まるでゴルドゥーラがジェルディアガを支配したかの様に見えかねない。

 双方の立場は公平である。上も下も無く、全てが対等。もっとも向うは暫く王が不在の為、此方から手を貸す事も多いだろう。

 近い隣人の手、利用出来るならして使ってもらおう。

 王族の末席の家に生まれながら、登城し僅か数年で地位の薄い家を伯爵家まで引き上げた稀代の若手諜報長官は、既に飛びかっているであろう各国暗部の工作に対応しつつ、このどうしようもない幼馴染にどうやって嫁を持ってこようか静かに、楽しく考えていた。


 難しいかもしれないが(ひでぇ)


やっと乙女が次に登場します。

彼女の秘密とはイカに、タコに、スルメのマツタケェェ!

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