二話■「ドラゴンサピエンス」
・とりあえずトリップファンタジーがベースです。
・剣と魔法が主体です。
・主役は女の子です、一応。
・イケメンが一杯でます。
・各キーワードに間違いはありません。
・もう一度言います、間違いありません。
人の国、その隣に在りし竜人の国『ジェルディアガ』
人からの迫害を防ぐ為、離れて暮らしていた竜人達が寄り集まったのをはじまりとする。
集まった竜人は四種
地竜
風竜
水竜
火竜
やがて寄り添う内に若者達は愛し合い、新種が生まれる。
風が大地を覆い隠して闇いずる、地竜と風竜の子・闇竜
水が炎を反射して光りが生ずる、水竜と火竜の子・光竜
この頃、度重なる人の迫害で混迷していた竜族達を新たな竜種は彼らの間に立ち、種族間の連携を取り持って結束を固め、文化を築き上げる。
そして寄り添っていた竜達の集落が『国』の形を作りだした時、それを治める種が誕生した。
光と影が一つとなった唯一無二の存在、白竜である。
以降、竜人の里は竜人の国と呼ばれ、長い歴史を紡ぐと共に宿敵たる人の国と長い戦いを続けてきた。
■■
時に現代。当代の王バルディスは王妃を迎えず、一人の側室を持たぬまま人に討ち取られた。
王が世継ぎを定めぬまま崩御した事により、後裔を決めるべく有力貴族【六竜家】によって選ばれた六人の候補達によって継承戦争が発生する。
それぞれの後ろに立つ家が、自ら推す者を次の王とならんべく暗躍する。これを好機と見た人の国は宿願を果たすべく過去最大規模の侵攻作戦を進めていた。
そこに、『乙女』が現れる。
軍師の考えつかない奇抜な作戦を、兵士の兵糧を劇的に改善する食料法を、長く停滞した戦時下特有の文化遅滞にセンセーショナルな改革を与え続け、波乗効果で国は潤い、次々にジェルディアガ軍を退かせ続けた。
連戦連勝、彼らは『乙女』を母神ラシャンラの娘と称え、戦神ルターワの寵愛を受けし者と尊意の眼差しを向ける。
だが、『乙女』はジェルディアガを滅ぼす事を嫌がった。人が人で呼ばれるならば、竜『人』もまた人であるのだからと説いた彼女は最低限の供を連れて潜入した。そこで『乙女』は竜人達の事実を知る。
『乙女』と心通わせた竜人は語る、ジェルディアガの本当の姿を。
竜の里が竜の国となった時、始祖たる四竜は闇・光・白を尊敬すると同時に個体数の制限を開始した。巨大なる力を有する白竜、その力を持つ者を国外へ逃がさない為に婚姻相手を限定する。
即ち、同族或いは白竜が生まれる闇竜か光竜のみに。
そして闇竜・光竜が生まれる組み合わせを維持する為、火竜・水竜・風竜・地竜は同族内でのみ婚姻を許可する。それぞれの竜族が同族内で婚姻を続け、各分野で力を付け続け、武官・文官問わず貴族階級と認められた場合のみ、闇竜・光竜の生まれる他竜族と婚姻を結ぶ事が出来る。
必然的に王族は白竜家が、司法の上層部を王家と繋がりのある闇竜家・光竜家、軍事・民事など多岐方面に渡る統制を火竜家・水竜家・風竜家・地竜家が統治する構図が出来上がる。
しかし、それは【歪み】だと竜人は言う。
白竜が他の竜を伴侶と選んだ場合、王位は剥奪される。これは血の循環の為、もっともらしい理由で古い血を減らし新たな血を混ぜる為。
闇・光・火・土・水・風が組み合わせでは無い竜の卵を産んだ場合、その卵は【還される】。
(この還されるとは各家事に方法が異なる為、手順は非公開とされる)
国民全てを記録し、血統の維持に努める王国。それでも混血の竜人は各地に存在する。だが彼らは二級無いし三級市民として扱われ、ある程度までの地位を得る事が出来ない。例外はハイブリッドによる特殊能力が認められた場合は亜種として認識され、高い地位を得る代わりに交配パターンを解析され、次世代を得るに相応しかか否かを決定する…一種のモルモット扱いを覚悟の上で王国に士官される。
それもまた、一握りの混血のみ。特に三等の混血達は戦いの前線に立たされ、幾らでも替えの効く存在として消耗され続けていた。
王家は他竜との混血によって生まれた。ならば何故、それ以外の混血は認められぬのか?
『乙女』の対話を聞いていた他の竜人達も口々に言う。
我が妹は地と水との間に生まれた。故に父は周りから母を捨てろと言われ、ならば共に生きようと一族を出た。
我が弟妹は一つの卵から二人生まれた。正しい血脈を維持する為、その様な変異種に神聖なる血の連鎖へ加える訳にはいかないと幼き命を奪おうとした。故に逃げてきた。
我は我の事情がある。たとえ他者から見ればふざけた内容だとしても、我にとっては重要な事。己が信念なり。
王国の現状、表面上の情報だけでは知り得なかった内乱の中の内乱。腐敗とは言わぬが血統主義による身分構造に異を唱える者達によって王国の新たな活性化を促さんとするレジスタンスの活動を知った『乙女』は自らを保護する人の国へ切に訴えた。
彼らは『人』であるのだと。
憎しみ合った事実は変わらない。だがそれを未来へ続ける理由にはならないと。
やがて人の王子は心動かされレジスタンスと同盟を組み、様々な軋轢・障害を乗り越えて、ついにジェルディアガへの武力討伐は王国の解放へと矛先を変え、各地に潜んでいたレジスタンス、そして密かにレジスタンスへ援助を行っていた闇竜家と後継者候補のバックアップによって王都ベルタナへ進行した。
事実上王家を傀儡とする、王家に連なる最高位の六竜家。闇竜家が抜けた事で連携が乱れて統率は狂い、やがて王国の在り様に疑いを持ちながらも声に出せなかった者達によって王都は陥落する。
だが、戦いはそこで終わらなかった。
何故、人は竜人を迫害したのか。
敗北し、王の間に連れ出される当主達。
王家と呼ばれながらも事実上軟禁され、意志にそぐわぬ婚姻をされ続けて来た白竜達は『乙女』へ表しきれぬ感謝を捧げ、王家として人の国との友好を結ぶのと同時、軟禁を受け入れ六竜家の暴走を見逃し続けて来た事を深く謝罪し、今日に至るまでの腐敗を取り除く事を【王家の者として】必ず成し遂げると誓約した。
最初の責として当主達へ罪状を告げようとした時、異変が起きた。
突如苦しみ出す光竜家当主。周囲が戸惑う中、長は翼を鋭き刃に変えて戒めを解き放ち、拘束された水竜家の長をその手にかけた。
ざわめく周囲、武器を構えるレジスタンス。
立会人として呼ばれた者達の中から一人の老人竜が狂った様に笑いだす。光竜家の家臣だと言う彼は血に濡れた主君に向かいこう言った。
【レジスタンスの言った事は間違いではない。所詮純潔など何れ衰退する、ならば次の王となるは【混血の王子】たる我ぞ!】
するとどうか、老人であった姿は若い男の姿となる。
【我こそは先々王が王弟の子、ゴーデ・サイランド!我が父、我が母を捨てし国よ、一度滅び再生せよ!!】
王弟の子と叫んだ白竜は変貌した光竜の長を周囲にけしかけた。魔術か、理性を奪われた光竜の長は拘束された当主達をその手にかけ、返り血を浴びる度に変貌する。
立役者として拘束されていなかった闇竜家の長へ爪が振われた時、『乙女』が間に入った。爪がその軟肌に触れると同時、熱の無い光が発して長の腕が肘まで消失する。
苦しむ光竜の長。閃光によって出来た影は、竜の形をしていなかった。
何者かが長を乗っ取っている。『乙女』は剣を振りかざし、長の『影』を切り裂く。
影の中から現れたのは、深い黒。無数の黒が融合した深淵の闇……
【あれだ…あれこそが、わが従兄バルディスを、否、この国を呪いし災いの根源!】
闇竜家が五王家と袂を分けた理由。若き日のバルディスが遠征を終えて帰還した時、軍事に追われていた筈の父王が謎の影に蝕われ苦しんでいた。駆けつけた当時の闇竜家当主に病状を見せるも時遅く。だが、王の亡骸から何か異質な影が現れバルディスへ向かう。
闇竜の長がすぐさまバルディスへ神聖呪文をかけた事で呪いの一部は封印される。
抵抗力を身に付けバルディスは理解した。これはかつてジェルディアガと隣国一帯を支配した旧文明によって保存された古代人の意志だと。それが何らかの手によって始祖の竜人達に憑依し、血を紡ぎながら電波していった事を。
そして大本の呪いを火竜か水竜が受け継ぎ、水・火・光の竜族が中心となって王国を操っていた事。
やがて光竜に呪いの伝承が伝わり祖母が後継者であった事。
そして自分へ継承される日が来た事を…
世代が遠くなるにつれて呪への抵抗力を持つ者が生まれて来る。現に光竜と交わる事の無い闇竜と地竜・風竜は呪いの影響の薄い者が生まれ出し、特に混血竜達は謙虚となりレジスタンスの大多数を務めた。
即位したバルディスは治世の間、闇竜家と共に呪いの消滅に奔放した。彼には幼き頃より約束を交わす美しい婚約者がいたが、このまま自分が子を儲け、その子が王位を捨て火・地・水・風と婚姻した場合、再び呪いが全竜族に拡散してしまう。
父の代になって隣国との戦争が突如活発化したのが、呪いの根源となる『何か』を誰かが所有し呪いを強めたのでは無いかと推測した結果、より強い呪いの効果が上掛けされ、今回の大規模戦争に繋がった事をつき止めるとバルティスは全面戦争を回避する為、『何か』を持つ者を誘き出すべく『何か』へ呪いを送り返す為、そして婚約を破棄して血の継承を途絶えさせ、戦争を内乱を変える為にわざと討たれ、命を断った。
最後まで愛する婚約者に永久の愛を誓いながら、呪いの消滅を闇竜家の当主と後継者候補として選ばれる従弟に託して。
光竜家の当主を討てば罪の無い次世代に呪いが移動してしまう。『何か』は何処なのか、人の国とレジスタンスが戦う最中、『乙女』は推測した。
王位を破棄した王弟からゴーデに伝わった物、王家の所有物では無い物、母であり光竜である先々王妃から受け継いだ物。
【解った!光竜である母親の所有物だ!】
叫びに人の王子は柄に力を込める。竜人は拳を握り、長の足に嵌められていた女物のアンクレット、もしくは片方だけ違うイヤリングに剣と拳を炸裂させた。
■■■
かくして、『乙女』の導きにより深層意識の中から王国を操っていた古き民の残留思念は人の王子とジェルディアガの騎士によって消滅される。竜人達にかけられた呪いは解かれ、親しき隣人として新たな道を進むのであった。
あれだけ苦労した戦争が僅か一年であっさり解決してしまった。
まあ、解決するまで怒濤の展開が嵐の用に押し寄せるから周りが疲労困憊でたまった物では無いんだが。
事のあらましを知った人の国の王はぽつりと呟いたそうだ。
「………こんなに早く解決するなら、どうしてもっと早く『乙女』は来なかったのか」
気持ちは解らなくはないが、『乙女』はそうたやすく来る物ではありませんよと参謀はフォローした。
これで一冊書けそーだ(笑)