九話■「ここまではよかった、まだよかった」
・主役は女の子ですが変態です。
・イケメンが一杯でますが、必ずしも人間であるとは限りません。
・剣と魔法が主体ですが肉弾戦が多いかもしれません。
・もしかすると主人公以外が目立つかもしれません。
色々な意味で無事に終わらない予感がする本日の記念式典。ゴルドゥーラの誇る『乙女』の唐突なカミングアウトは彼女を嫁なり軍にと勝手に予定を立てていた連中の思惑を黎明の彼方に投げ捨てた。
すぐさま彼女を説得しようと周りを囲む。ドラゴン婚約者殿は懸命にガードするが、それでも負けない周囲の連中。
曰く 人間の方が見目が良い
曰く、人と竜人はそもそもの常識が違う。
曰く、両国の常識がわからない
どこの国や世界でも通用するテンプレな言い分である。これに『乙女』、零はにっこり言った。
「やだなぁ、よくある国際結婚だよ」
普通、国際結婚は同族間でやる物だ。
時々エルフやドワーフなど二足歩行で外見が比較的類似する相手と恋に落ち、結婚する事例もある。その場合ハーフエルフ・ダークエルフといったどちらの種族にも当てはまらない存在として礼遇されたりクーデター起こして国家作ったり、場合によっては四人の少年が敵国の兵器を強奪、唯一残った一つを主人公が使い無双するといった展開になったりする。
しかし、だがしかし、いくら二本足とは言え見た目にも、おそらく生物的にもアンバランスなカプの婚姻は例が無い。あるかもしれないけどそれでも相手が人化の術を使ったりするのがオーソドックスなのであって。
一体何処をどうすれば恋愛感情が発生するのか、ゴルドゥーラの至極一般常識愛好家の理解の範疇を大いに外している。
それはジェルディアガ側でも同様だったので、婚約発表直後のデッカードは同僚から今の零と似た目にあっていた。
のちに両国は零とデッカード、二人はそれぞれの国の主観において『人外マニアのある意味変態』であるという結論に至るのであった。
南無。
■
豪奢なシャンデリアが魔法で灯された蝋燭の灯を幾多も反射する。その数、大小合わせて数十個。まるで謎のバリトンが今にでも落としてしまいそうなそのシャンデリアは、ゴルドゥーラの誇る鉱石産業によって発掘された何百カラットものダイアモンドで出来ている。
シャンデリア用に加工されたダイアモンドは美しく輝き、そして本来の役目である照明の光を室内全てに行きわたらせる。
四方から照らされる、優しい光を浴びて踊る貴族達。共にこのよき日を思い出に連ねるべくダンスを楽しむ、のが常なのだが、今夜は別の、あらゆる意味で明後日の方向で忘れぬ夜になるだろう。
いや、なる。なるしかない。
とりあえず倒れてうなされている女王の名代としてレオナ=カイゼルが周囲を談笑している。
第一王子はどうしたかって?まだ幼い第二王子(弟)の様子を見に行くと言って現実逃避中だよ。
ゴルドゥーラとジェルディアガ、両国の男女が踊るダンス。時にパートナーを変え、両国の男女が共に踊る。身長の関係でジェルディアガの女性陣はゴルドゥーラと踊れないが、白夜のようにまだ成長途中の女子は身長が低く、名のある貴公子からダンスに誘われていた。
本国で陽狼に代わり風竜家を守る父・シャドーが見たら複雑な気持ちになっていただろうと、リーフはお嬢様方から全力で可愛がられる愛息子を眺めつつ、完全に怯えてしまった空影を抱き上げていた。
曲も終盤に差し掛かり、それぞれの舞も佳境を迎えていく。緊張以前に歩幅が違うので、エスコートの余裕すらなく、互いに足を踏みかけたり、踏んだりと散々たる物。しかし、長く因縁続く両国の新たな門出であり、いずれ国交が進めばこの舞も洗練されよう。
むしろ、この滑稽な踊りを舞えた事こそ、子々孫々まで語り継がれる誉であると、両国共に胸へと刻んでいる。
その中で、唯一と言っていい程完璧に踊る一組がいた。
ジェルディアガの地竜爵デッカード・トゥーモ・ジェローダ。そしてゴルドゥーラ改めマインガードの『乙女』梁音零。
『乙女』をゲットしそこねて悔しがる目線を向けるゴルドゥーラ男性陣。よくぞあいつをどうにかしてくれたと尊敬の念を向けるジェルディアガ男性陣。
王侯貴族の競争相手で無くなったので、今まで密かにライバル視していたのが一気になくなり親しみを覚えたゴルドゥーラ女性陣。友人知人では良いが結婚相手としては難があり、大丈夫なのかと心配していたジェルディアガ女性陣。
様々な思惑の視線を浴びて踊る二人は、まさしくジェルディアガ・ゴルドゥーラの新たな未来を担う舞であった。
身長・歩幅・以下何もかもが異なりながらも、ゴルドゥーラに伝わる曲を優雅に舞う姿は、次第に舞に苦労していた者達が真似を始め、終盤頃にはなんとか形が整うまでに上達する。
最後の伴奏が終わり、それぞれがパートナーに一礼する。
一曲踊れば、次は別の者と踊る。それがダンスの礼儀。ゴルドゥーラの若者はジェルディアガの令嬢に声をかけ、ジェルディアガの騎士はゴルドゥーラの令嬢に声をかけ…るが人によっては泣かれたので右往左往し、懸命に宥める様子があちらこちらで。
「やー、去年までは想像つかねー光景だわ」
ダンは四苦八苦している貴族達+悔しがっている文官・武人達を見ながら、若鳥のローストを食べていた。ジェルディアガ人的分量なのでやや心もとないが、その分味が濃縮している。
ワインも同じく、どうやら味の文化ではゴルドゥーラの方が優るらしい。
「ま、俺ら鳥捕って丸焼きってのがベースだからな」
昔の名残で、一口が大きいので素の味を好むからだと隣のカイン。二人仲良くダンスを放棄し、料理を楽しんでいる。
カップル?いいえ友人です。
体調不良を理由に逃げていた王子は従姉に引きずられて談笑の場に放り込まれ、女王は開き直ってジェルディアガの高官と談話と言う名の交渉の場に入る。
影狼はさっそく海軍と風読みについて情報交換。破矢は最高司祭と談話…せずに飲み比べを開始。こちらの聖職者もかなり破天荒である様子、互いの従者が溜息をついていた。
リーフだけが、空影をあやしながら壁の華を決め込んでいる。しかしその様子をゴルドゥーラの令嬢たちが遠巻きに、しかし熱の籠った目で見つめていた。どの国も、男装の麗人には特別な思いがあるようだ。
人も、竜人も根本的な差などは無い。ただ単に、翼や鱗があるか無いかの違いだけだと『乙女』は、零は国民の前で言った。
語彙の少なさで口調が堅かった零。その為非常に大人しい性格だと思われていたが、ジェルディアガの民を思う彼女の熱意は熱く、皆の心を動かした。
しかし、新たな魔導具によってレイの思考をほぼ翻訳できるようになり、唖然とする者大多数。
腕輪型魔導具はあの大静寂隊大爆発の後、急ぎの追加が決定した。今から思えば代々の段階で更新しとけばいいものの、これは行政の怠慢と見ていいだろう。
一体ジェルディアガはどうなるのか。自分達混血達の今後を含め、文字通り何が起こるかわからない。
「ま、明日の事は明日考えようや。今日はこのまま、楽しく過ごそうぜ」
カインはテーブルからカルパッチョを盛り付け、ダンに渡す。
「これけっこう美味いぜ」
「お、ありがと」
ダンは礼を言うと、別のテーブルからグラスを一杯。
「ちったぁ甘いが、これも中々だぜ」
「へー」
二人並び、魚と酒を口に運ぶ。
「やー、楽しいなー」
「何処がだー」
会場の隅でやけ食いをするアドウェン。シロエが笑いながら、零がこの日の為にと国から持ってきた《ニホンシュのレイシュ》を飲みながら、文字通り予測不可能な両国の今後を考えていた。
その考えが現実の物になるまで、あと十数時間………
お久しぶりですー
パソコン変えました。ビスタ駄目だなこりゃ(汗)
次回からようやく本編開始します。新キャラも出てくる予定です。
詳しくは元ネタ参照!!
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