童話コメディシリーズ(4)『表島太郎の物語 (前編)』
「われぇ!ここはわしら鬼我死魔の縄張りやぞ!さっさ金出していねや!」
ある日、表島太郎が学校の帰り道に釣りをしようと浜辺に行くと、同級生の亀田くんが喧嘩の強そうな中学生たちに絡まれているのを見つけました。
亀田くんは中学生に土下座をして許してくれと謝っていました。
正義感の強い太郎は亀田くんを助けてあげることにしました。
「君たち、彼を見逃してやってくれないか。お金は僕が代わりに払うから。」
太郎がお金を渡すと、中学生たちは「今夜は酒盛りじゃのぅ」といいながら立ち去っていきました。
「太郎くん、ありがとう。もう少しでボコボコにされるところだったよ。」
海亀の母親が産卵するときさながら涙を流しながら亀田くんはそういいました。
「同級生を助けるのは当然だろう。それにしてもどうしてあんな中学生たちに絡まれていたんだい?」
「それが、今日の体育の授業中、関根くんに僕は足が遅くてのろまだって馬鹿にされてむしゃくしゃしてたんだ。それで、偶然目に入った生意気そうな中学生をぶん殴ってうさばらしでもしようかって思ったら、逆に返り討ちにあっちゃったんだよ。ハハハ。」
太郎は、こんなやつ助けるんじゃなかったと内心後悔しました。
お礼にご馳走したいと亀田くんがいうので、太郎は彼の家に遊びにいくことにしました。
亀田くんの家は、まるでお城と見違えるほど大きく、きらびやかでした
「うわあ、すごいなあ。君の家はすごい立派だねえ。知らなかったよ。」
太郎たちを出迎えてくれたのはたいそう美しい女性でした。
「おかえりなさい。あらお友達?」
「そうだよママ。表島太郎くんって言うんだ。今日僕が不良に絡まれているところを助けてくれたんだよ。」
「まあ、なんてお優しい方なの。うちの息子を助けて下さってありがとうございます。さあ、ごゆっくりしていってください。」
太郎は客間に案内されると、そこには豪華な食事が用意されていました。和洋中あらゆる料理がそろい、その味はどれもが格別でした。
「亀田くん、君のお母さんはとても綺麗だし、料理も上手だしうらやましいなあ。」
太郎が食事を終え、そろそろ家に帰ることにするよ、というと亀田くんはそれを引き止めました。
「せっかく僕の家に遊びに来たんだから、僕の部屋にもおいでよ。」
「だけど、もう遅いし今日は帰るよ。」
「まあ太郎くんったら遠慮しなくてもいいのよ。おうちには私から連絡しておいてあげますよ。もうすぐ卒業でしょ。もうなかなか会えなくなるかもしれませんし、息子と遊んでやってください。」
「お母さんがいうなら是非。」
太郎は亀田くんの部屋にいきました。
部屋にはいるとそこではミラーボウルが回り、ネオンにきらめいていました。
「すごいなあ、君の部屋は。高校生の部屋とは思えないや。」
「こんな雰囲気の中で、一発きめると最高なんだよ。君もやるかい、太郎くん。」
そういって亀田くんが、太郎にさしだしたのは、乾燥した草を薄い紙で包んだものでした。
「お・・・おい、亀田くん、君これはまさか。こんなものよくないよ。」
「少しなら大丈夫だよ。それにこれはちゃんとした“草”だから、体には悪くないんだよ。国によっては治療薬にだって使われてる、そこらのまがいものとは違うんだ。」
「ほ・・・本当かい君?そ・・・それなら、ちょ・・ちょっとやってみようかな・・・」
太郎は興味本位で、亀田くんに手渡された“乾燥した草”に火をつけ、その紫煙を肺いっぱいに吸い込みました。
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「あれ、亀田くん、吸ったって何も起こらないじゃないか」
「そりゃあ、そうさ。吸ってすぐじゃあだめだよ。2、3分もたてば、あっという間に君も“新しい世界”に“旅”ができるよ。ハハ。」
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突然、太郎の目の前の景色が回転しはじめた。ミラーボウルから伸びたカラフルな光の筋の中で煙が踊る。
まるで宇宙にいるかのような、映画の世界の中にいるかのような浮遊感。
鼓動が速くなっていくのが自分でもわかる。それと同時に時の刻みがスローモーションになっていく。
亀田くんの口から吐き出された煙がゆっくりと部屋を包んでいく。
煙たい景色の中で、太郎はさっきまで自分が何をしていたのかも忘れてしまい、そしてただ理由もないのに笑いだけがこみあげてきた。
ハハハハ、ハハハハ。ハハハハ、ハハハハ、アハハハハハハハ。
亀田くんはニヤッと微笑をうかべて、つぶやいた。
「ウェルカメ トゥ ザ ニュー ワールド」と・・・・・・・・・・・・
読んでいただきありがとうございます!
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今後の作品にいかしていこうと思います!!