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メイドの事情

 謀反を起こしたご領主様の領地と住人は、国の管理下に置かれていました。

 『収容所』と呼ばれるようになった村。

 男達は戦場に送られ

 女は14歳で選別されていました。

 戦場に送られる勇者か、慰み物になるか・・に。


 しかもただの慰み物ではなく。

 勇者を生むかもしれない道具という価値がありました。

 もともとの村民に後天勇者が多かったから・・多くの勇者が生まれてきたから・・らしいです。

 そこら辺は定かではないので、ハッキリと話すことはできません。


 強き者達の血が勇者を生む・・。

 迷惑な話です。 

 

 私の一日は農作業、戦闘訓練、大人の女達の世話の繰り返しとなっていました。


 朝の農作業の時間、この時間が一番平和でした。

 まだ薄暗い時間ですが空気も美味しく、体を動かして無心になれます。

 周囲には村の子供達もいるしなごやかだ。

 たまに笑い声も起こる、スグに監視に怒られるけれども・・、めったに酷いことは起こらない。

 

 「ふぅ・・」

 そろそろお昼寝、今日は特に暑いわ。

 一段落し顔を上げると、少し離れた所で作業をしているおじさんが見えた。

 農作業に慣れてないのでしょう、物凄くツラそうにヒィハァと息を乱しています。

 元々の村人ではない、罪人と呼ばれる人。

 彼らはおそらく元貴族?なんとなく品が良いという言葉が似合う出で立ち。

 そういえば誰か言っていた、物腰や言葉から貴族だとわかると。


 ・・あまりヒドイ事をするように見えないその人は、フラフラ力無く農作業をさせられていた。

 熱中症になりかけてるんじゃないかしら? 


 カーンカーンという鐘が鳴る、作業休憩の合図。

 

 気になってそのおじさんに近づく。

 おじさんは土の上で大の字になり、ゼーハーゼーハー・・ヒィーハーと荒い息、ぐったりしていました。

 「大丈夫ですか?」

 顔を振られる。

 うーん・・キツそうですね。私は水筒を差し出す。

 ゾンビみたい。おじさんは起き上がると水筒を奪い取り豪快にあおった。

 

 ・・・・

 ・・

 「すまない、ようやく一息つけた、感謝する。君の分の水は、あるのかな?」

 急に水を飲んだからむせ、のたうち回るおじさんが落ち着くのにそれから数分過ぎた。

 それでも一言一言をゆっくり吐き出すように・・位ですけどね(^^;

 「気にしないで下さい。村人には水なんていくらでもありますから」

 「そうですか、それはよかった。我々罪人側には配給された水しかないので安心しました。」

 

 罪人達と私達では境遇が違った。

 私達は衣食住はキチンと与えられ、ノルマもそれなりです。

 罪人達は配給制、ノルマもキツく・・、さらに足枷も付けられています。

 おそらく・・将来道具になる私達は大事にされ、罪人は死んでもかまわないのでしょう。


 このジョンとはその後よく会話をするようになりました。

 政治犯らしく、ワイルドなコトをよく仰っていました(苦笑

  

 昼過ぎからは戦闘訓練の時間。

 10歳以上の村の子供は男3、女は私達姉妹の2人です。

 その5人で訓練を行います。

 訓練教官のおっさんが、私にベタベタ触ってきます。

 キモチ悪いだけではないということを年々わかってきました。 

 

 夕方は食事の準備です。

 子供5人、戦闘訓練の時とメンバーは同じ、が中心となって作ります。

 お手伝いには村のお年寄りが20人弱、みんな足枷を付けられています。

 

 私だけ食事の前に別の仕事があります。

 村の女性のお世話です。お年寄り達にも手伝って頂いてます。


 妊婦さん達は様々です。

 誰の子かもわからない自分のお腹の中の赤ちゃんに怯える人。

 もうすぐ生まれてくる望まない赤ちゃんに自殺を繰り返す人。

 平然と「サッサと産んで、また豪勢な妾になるのよ」という人もいる。

 長居をせずに次に行きます。 


 精神を病んだ人もいます。

 ベッドに腰掛けた女性の口の中にスプーンを運ぶ。

 半ば半開きの入り口、味覚を刺激されたのか微妙に開いたり閉じたりする。

 口の中に滑り込ますと、作業のように咀嚼がはじまる。

 「美味しいですか?」 

 返事が来ないのはわかってますが、食べさせるのにも間が必要です。そのため一応聞くことにしている。

 虚ろな眼差し・・この人美人で優しい人だったのにな・・

 昔の笑顔が思い出されます。

 スプーンを運び、待つ。時にこぼれた食物を拭き取る。

 自力で食事できなくなった物言わぬ彼女。

 彼女らの体を動かす度に、軋んだ人形を思い浮かぶ。

 これをあと3人・・おむつの世話も勿論あります。

  

 このお世話の時間が一番怖いです。

 明日は我が身かもしれない・・身震いが止まりません。

 私達に他の選択肢はないのでしょうか?

 戦争、慰み物・・

 正確にはもうひとつありました。

 幽閉された勇者に送られるメイドです。


 精神を病んでしまいタダの種馬にされてしまった勇者・・ご領主様のご子息。  

 狂った種馬とも呼ばれています。

 メイドを何人も殺してしまったとも聞きますし、世話をする女性の中にもいます。

 それでも希少な種馬なのでしょう、メイドがあてがわれます。

 しかも・・

 勇者が邪魔な思考を取り戻さないようなメイドを作り上げ・・。

 何人も見てきました。

 魔法や薬で『思考』を破壊されメイドとなった・・村の女達を。

   

 勇者と交流し、信頼され、メイドが眷属勇者にならないように。

 眷属勇者には勇者と意思伝達ができるという。

 余計なことをされないように、メイドは人形にされる。

 勇者もメイドも子供を作るための道具にされる。

 

 村の日々は続きます。このように続きました。

 時は流れます。時が流れました。

 14歳になりました。私は勇者にはなれませんでした。


 14歳になった次の日の夜。

 自分の将来を不安に思い眠れない私のベッドに、訓練教官が・・

 

 無駄な抵抗をしていると貞操の危機は免れました。

 眠っていたら間に合わなかったかもしれません。


 別の人間・・研究者と呼ばれる者に研究所に連行されました。

 私は縛り付けられ、無理矢理薬を飲まされ、呪文を聞きながら、一度死にました。 

 

 

最初そんなに重い子じゃなかったんだけどね

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