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羽ははばたくもの

 羽のチカラって能力の高さです。

 私なんて底上げされまくりで対応できる強さなだけです。

 でも

 技が、戦う術があれば劣る者は強者に勝てる。

 村長だった祖父の言葉を思い出します。


 シュバルツさんは本物の達人でした。

 羽が3枚あったって避けきれそうもない。

 しかも私は眷属だ、本物の勇者にも後天勇者にも劣る。 


 剣先が迫ってきます。

 足掻きようのない死が迫る。

 このまま死ぬ?ーー思わず手の甲を握り締めます。

 ご主人様の羽はもう判別できない位ズタズタだけど…繋がりを感じます。


 いやだ!死にたくない。ご主人様に!ご主人様!ーー無駄かもしれないけどチカラを高める。

 死の刃を睨みつけ、死ななければ体のドコを犠牲にしてもいいように身構えます。 

 生き延びる!

 

 ?

 急に奇妙な感覚がーー今まで知らなかった感覚が何かを知らせます。

 唐突にソレははじまりました。


 右手が光り出し3枚の・・眷属ではない勇者の羽が浮かびます。 

 思考が追いつきません、何故の嵐です。


 私の体が変わってゆきます。

 体中を通る骨・・筋肉、神経の形が浮き上がってくるような、わかる感覚。

 骨のカタチ、筋肉の緊張、筋肉の長さ・・向きがチカラを物凄い勢いで循環させる。

 神経は皮膚を突き抜け周囲を知る見えないモノを感じる。

 大気中のチカラの流れが見えます、それだけじゃなく魔力の流れもーーそれがどんどん私に入ってくる。

 高揚感が湧く、チカラが体の外から中から湧いてくる。

 

 眷属の羽が現れた時には感じなかった、私が変わる感覚。

 私は本物の勇者になった?


 無数の剣筋が色あせ、たった一本の道がハッキリ見えます。

 その剣の腹をソっと撫でると、私は剣ごとシュバルツさんの横を通り抜けることができました。


 シュバルツさんの驚愕の顔ーー無口無表情な印象でしたけど、そんな顔もできるんですね。

 「何をした?」


 「……たぶん、私、今14歳になりまし?た。」

 おそらくそう。今思い出しましたーー正確な誕生日なんて知らなかったんです。

 私が旅先で生まれてスグ両親は不慮の事故で亡くなったそうです。そのせいで育ててくれた祖父に正確な情報が伝わっていなかったのだと思います。

 でも、本当かな?自分自身が驚きと疑問の嵐です。


 シュバルツさんの口が歪み、笑みがこぼれます。

 先程より強い気迫に強烈な連撃ーー袈裟、薙、斬り降ろし。

 でも、もう今の私には見切れます。


 「ならば!今一度問おう。」

 力任せではない、本当の必殺の気迫、構え。

 これはちょっと避けきれそうにない。

 焦る、迷う。


 「オレを切れ!さもなくば切る!」

 シュバルツさんが顎を動かし促すーー固まっている村人の腰に下がった剣を取れと。


 「迷うな!見せよ!お前の意思を、主の意思を」

 戦うことが意思?

 殺さないことが願いなのに?


 迷っているとシュバルツさんが技を放ってきました。

 「もう、おまえにはそれがあるはずだ。先程見せたではないか?」

 

 牽制でも先程とは違います、剣圧だけで体がフラつきます。

 何を見せたかな?

 考えます

 ……

 …

 私は剣をお借りします。    


 「生きます」

 シュバルツさんには左右どちらから降り下ろされるのかわからない剣技を放ちます。

 お互い同じ村の出身者、村に伝わる剣技なら熟知し合っていますーーもっとも私はご主人様に習ったのですが。


 風が吹き抜けるように私はシュバルツさんに詰め寄ります

 剣は鳥が羽ばたくような軌跡ーー剣を振る残像は翼に見えることでしょう。

 ご主人様のお好きな技ーー「羽ばたく鳥のツルギ!」

 シュバルツさんは剣を振り上げソレを受けようとします。


 外れですーーシュバルツさんの剣が、私の剣の残像を受けます。

 「そうだ、それでいい。主の意思を示せ、それが主の事を皆に知らしめるべきお前の仕事だ」

 「ありがとうございます」

 私達は剣を鞘に収めました。


 村の人達に剣を返しながら言います。

 「ご主人様はみなさんから恨まれるような方ではありません。」

  

 「小娘、なかなか立派なコト言うようになったではないか?」

 「メイ、だいじょうぶか?」

 「メイちゃん、すごい」

 「メイちゃん、よくがんばったわね」

 グレイ様、ヴァイオレッタさん、ローザさん、アスールさんが一斉に現れました。

 勇者になった時から複数の気配に気づいてましたけど…みなさんだったんですね。

 ほっとした気分になります。 


 「シュバルツ!目にかなったか?」

 「思わぬ拾い物でした。」 

 「賭けに勝ったな、よかろう。オレとっても悪くない賭けだった」

 グレイ様とシュバルツさんが何か会話しています。


 「怪我はもう無いようね?よかったわ」

 アスールさんがギュッと抱きしめてくれます。

 怪我治ってました、私の中に渦巻くチカラと魔力が治癒してしまったようです。


 「6枚の羽かぁ、はじめて見たよ」

 ヴァイオレッタさんがジロジロと見ています。


 「強くなっちゃったんだねぇ、よいこよいこ」

 ローザさんが撫でてくれます。 


 …みなさん、私疲れました。

 気が遠くなります。 


**


 翌日は雨でした。もう私に色々言ってくる人はいなくなりました。

 それもありメイドの仕事がスムーズに終わり過ぎたので自室でノンビリしています。

 昨日の出来事が夢のようです。 

 私だけのチカラじゃないんだろうなーーボーッとアレコレ考えていたら誰かが来ます。


 どうやらグレイ様のようですーー最初はおっかなかったケド、優しい人。

 ドアが開きました。

 「調子はどうだ?」 


 聞かれたコトには答えないと、気持ちが落ち着かないので正直に答えます。

 「ご主人様に会えないのでツライです」


 「ハッ、正直なヤツだな、だがそれでいい。」

 頭に伸ばされる手を避けます…触らせませんよ。

 

 ジロッと睨まれます。

 「何かご用でしょうか?」

 「今日は雨で仕事が少なくてな、小娘のご機嫌伺いに来たのだ」

 「アリガトウゴザイマス」


 グレイ様は鼻で笑い、私に餌をぶら下げる。

 「エルトの話でもしてやろうか?」

 「是非お願いします」


 グレイ様は王家出身の勇者で、ご主人様とは同級生だったそうです。

 悪態をつかれますが仲よかったんじゃないかなぁと思います。

 

 「ご主人様に負けっぱなしだったんですね、ニコニコ」  

 ほら、懐いてませんよ。 


 話もひと通り終わり、機嫌の良いグレイ様。でもスッと真顔になる。

 「おまえ、エルトに会いたいか?」

 「もちろんです」

 当たり前のコトを聞かれました、即答ですよ。

 でもグレイ様は思案顔で中空を見つめています。


 人のところまで来て何故一人で考え事を、正直邪魔。 

 居心地の悪い時間が過ぎます。


 「人間相手に勇者…過ぎた兵器だ。

 盤上の殺し合いなんぞ人間同士でやるのが筋だ、尻拭いの戦いには飽きた、というか辟易だ!」

 そうですよね、こんな小娘な私でも勇者になった途端とてつもなく強くなる、おかしいですよ。

 そんな勇者が敵だなんて相手からしたら、たまったものじゃありません。


 「シュバルツと賭けをしたんだ。お前が主の奥方にふさわしいかどうか、とな。」

 「奥方って私?私なんかがですか?」

 「ああ、ガキだが」

 イラッ

 「お前はイイ女だよ、いや、なるのか?」

 上げて落とすんですか、なんなんですか?


 「まぁ、冗談はともかく。オレは国に叛旗を翻すことにしたんだわ」

 「は?」

 「それでお前の村に罪人として送られた者達を解放したいというのもあってな」

 「待って!待って下さい、急過ぎます」

 いきなりこんな話を私にしていいんですか?

 というか正気ですか?


 「別に急ではない。前々から下地を作ってはいたんだぞ?よい機会なだけだ。」

 遠くの次元の話が、急に目の前に現れ戸惑います。

 確かにグレイ様にも色々あったんだろうとは思います、だけど謀反なんて。

 いえ、勇者のこの扱いからすれば当然かもしれません、それに内乱も多くなっていると聞きます。


 「で!だ。シュバルツとの賭けだが…オレはエルトとの約束を賭けた、そして負けた。」

 どういうこと?ーー驚いているとグレイ様は私の肩を掴み、目をジッと見つめてきた。


 「エルトを奪還し研究者を倒す戦いに、オマエさえ良ければ参加しないか?いや、オマエこそが相応しい。」


読んで頂けてありがとうございます。

もう少しで終わりますので、頑張ります、よろしくお願いいたします。


勇者になる描写はサイヤ人?まではいかず、常人と違うってどんなかなと考えてしてみました。あとLvアップとの違いってこんなかなと。

実は誕生日が〜で勇者になるのは安易かもしれないけど、自力で最後を戦える理由にするためです。

メイの剣技はやはり勇者は羽なので、ということで考えてみました、深く考えてはいけません。

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