ウザイ日々
規則正しい生活を心掛けよう・・とはしている。
体が追いつかない・・その前に頭が追いつかない。
不摂生し過ぎた・・体重い。
頭も重い・・眠い、胸がムカつく・・ダルイ。
それでもメイドの前では勇者に戻りたい、接したい。
それがオレのできる最低限のコト、第一歩。
「おはよう」
「おはようございます」
メイドは黙々と朝食の準備を行っている。
・・
沈黙・・食器の音だけが響いている。
・・
何か喋らないと・・変な焦りでソワソワする。
今まで何も喋らない生活が長かったし・・気不味さもあるから、迂闊に色々話せない。
というかネタがない。
本来『人形』相手に会話は通らない、でも『人形』かどうか確かめるためにも接しなければ・・。
「今日はイイ天気・・でもないな・・曇りだね」
定番の天気話を失敗した、その上続かない。
年下・・しかも14歳の女の子相手に何話せばいいんだよ〜。
あ!そうだ!
「鈴を鳴らさなくてもご飯を食べるよ」
無視された・・鈴を鳴らされた、せめて聞いてくれ。
**
あれ?ドコ行った?
メイドを観察することにしたんだが、その姿が見えない。
探してみよう。
いないな・・この部屋の外か?
居間から出るのはかなり久しぶりだ、記憶にないな。
少し緊張しながら、久しぶりに屋敷の廊下に出る・・懐かしい風景。
扉の向こうがこんなに懐かしいなんておかしな気分だ。
昔と変わらない白い壁の廊下、柱に飾られる一輪の花。
素朴な花なんだけど・・居間に飾られる豪華な花瓶には似合わないその姿が、目に新鮮で、そのイキイキさにも惹きつけられる。
「キレイだな」
口に出した途端、正面の扉が開いた・・なんだかメイドに言ったみたいな立ち位置だ。
メイドは無表情だ・・なんか恥ずかしいぞ、でも反応がないのも寂しい。
気不味い・・なんかソレばかりだな・・。
あ!そうだ!
オレは思いつきでその花を手に取り、メイドの髪に触れ、添えてみる。
「似合うよ」
メイドは無表情のままペコリと一礼する、とそのまま歩いて行った。
途中ハラリと花が落ちた、メイドは拾い上げ去っていく。
恥ずかしさだけが残る。
きっと花よりも顔が赤いハズだ。
流された・・むしろ流してくれてよかった、これでよかったんだ。
**
恥を悔いるより目的のために、次の恥をかく・・もとい成功の糧にする。
勇者というのは諦めないもの・・のハズ。
今のところ反応の薄いメイド・・『人形』だからか?それともオレが今まで怖がらせたり・嫌なコトをしてしまったから拒絶しているのかもしれない。
優しくしてみよう。
普段食事はオレが先に一人で食べている、だから昼食を誘ってみよう。
テーブルに所狭しと並ぶ料理の数々・・メイドが一人で準備しているのかと思うと感謝だ。
「一緒に食事をしよう」
やや強引にメイドをソファーに座らせる、手には一枚のお皿・・オニギリと卵焼きがチョコンと載ってるだけ。
え・・まさかソレだけしか食べないのか?
「これ食べてみないか?これも美味しいよ」
メイドのお皿に次々並べる、食べるかな?
「栄養付けないと育たないぞ、まだまだ小さいんだから」
「ありがとうございます、いただきます」
人と食事をするのは久しぶりだ、嬉しい。
メイドの皿を山盛りにする。
「どんな料理が好き?」
メイドは答えない・・『人形』は『不必要な意思の含まれる会話』は出来ないんだっけ。
だが誘導尋問パターンで少しづつ引き出そう
「肉と魚どっちが好き?」
一瞬メイドが止まって、サッと肉を手に取る。
反応があった・・『人形』の反応かもしれないけど、彼女の意思が見えた。
嬉しくなって次々続ける。
「それじゃあ甘いのと辛いのは?」
「和風と洋風と中華風だと?」
「チョコとクリームは?」
「・・・・申し訳ありません、これ以上は無理です。」
流石に女の子には多かったかな?反応が嬉しくて食べさせ過ぎた。
**
「ごちそうさま」
いつもより食べ足りなくはあるが、メイドの食事風景に満足したからヨイか。
メイドは先に食べ終え退室していた、そういえばドコに行ったかな?
洗濯室・・ガラス張りされた、干す空間を温室にしたような部屋にいた。
メイドが椅子に座って俯いているのを発見。
動かないな・・寝てるのかな?
起こしちゃ悪いので・・気配を消しつつ、でも、もしもに備えて素早く近づく。
目の前に立つ・・動かない。
「だいじょうぶか?」
メイドはバッと立ち上がる。
「申し訳ありません、少し休んでおりました」
具合悪いのか?だいじょうぶかな?
「変な物食べたかな?」
「いえ、決してそういうわけではございません!」
小さなカゴがメイドの足元にある。
あまり量があるわけではないんだな、これくらいなら。
「休んでくれててヨイよ、オレが干すよ」
パンツーぶらじゃーブラジャ〜ぱんつ〜。
「うわっ」
思わずパンツを落とす。
慌てて拾って・・とにかく吊るす。
一度干すと言った手前・・
ブラジャーを手に取る。
握る手が震える、どう干せばヨイんだ?
紐あって不安定だな・・コレただ吊るすだけじゃダメなんじゃ?
「ご主人様・・私がいたしますので、結構でございますわよ」
「ご、ごめん」
立ち尽くす・・失敗した。
メイドは干さずにコッチをチラチラ伺っている。
「干さないの?具合悪い?」
「食べ過ぎで吐きそうなため休んでるだけですから」
あ!オレのせいか・・女子は小食なんだっけ。
「ごめんオレのせいだよね、干すの無理だから代わりに食器片付けるよ」
「いえ、お気になさらずに私の仕事でs・・」
ダッシュで居間に戻る。
テーブルに残されたお皿を次々重ねる、流し台へ向かう。
これ位ならできるさ、勇者になる前はたまに手伝ってたしね。
結構な量だが段々楽しくなってきた。
メイドもオレに任せてくれてるようだな、後ろに気配を感じつつフォークの隙間すら光らせる。
よし、完璧。
「終わったよ」
満面の笑みで振り返ると、メイドは床に這いつくばってなにやら拭いている。
ん?
点々とテーブルから流し台に跡をつけている汚れ。
「もしかしてオレのせい?」
「そのようです」
「オレも拭くよ」
「け・っ・こ・う・で・す」
黙々と拭き続けるメイド・・オレは邪魔なんだよな、手が泳ぐ。
またやってしまった・・
彼女の反応が嬉しくて、一方通行で色々してしまった・・独り善がり。
オレは彼女を本当の意味で見ていただろうか?
彼女のことを考えた行動じゃなかったな・・傍迷惑な偽善。
凹む。
ちゃんと彼女を見て何をしているか、オレに何ができるのか・・
一人でするんじゃなくて、二人でできるようにな気持ちが大切だった。
言い訳すればこの幽閉時代が長過ぎてオレの対人スキルは衰えたから・・でも人と触れて改めて思い知る。
目の前にいる相手を知るには、『してやる』んじゃなくて、相手の為と行動を考えなければならないコトを。
オレはガキのまま大人の年齢になっちまったんだな、気付いた。
**
夕食はおとなしく頂きました・・鈴の音を鳴らされて。
そして寝室に戻る。
なんだか今日一日でヘトヘトだ・・。
なんの成果もあげられなかった・・メイドはやはり『人形』なのかなぁ?
むしろオレがちょっと真人間に近づけた、だけ?
溜息の漏れる音にノックが重なる。
・・なんだろう?
「どうぞ」
「失礼します」
一糸まとわぬメイドが入室してきた。
呆気にとられる。
目が離せない・・自分の『オトコ』が情けない。
違う!オレはもう抱かないと決めたんだ。
目を逸らす。
「服を着てくれ」
メイドが退室し、しばらくして戻ってくる。
一安心・・ちゃんと服を着てきた。
「えっと、それで何の用かな?」
「もうすぐ時間ですので・・」
「時間?」
何のことだとメイドを見ると・・違和感?
無表情・・無表情過ぎる・・いつもより緊張しているのか?
その時大時計の鐘が鳴る。
「あっ!あああああああああ」
目の前が赤い文字の羅列で染まる、体中に音が響き弾ける・・。
オレの体に刻み込まれた魔法を初めて・・意識的に、目の当たりにする。
文字・・音・・が侵食してくる。
メイドに近づく・・ダメだ、止められない。
求める・・気持ちではない、肉欲が・・起きる。
主人公勇者とメイド視点がザッピング?で続きます。




