メイドの戸惑い
ゴミ虫・・もといご主人様の様子を観察しています。
なにやら様子が変わってきました。
初日から一週間の間は本当にペットの世話みたいでした。
無気力、言いなり、・・夜は単調。
殺るとしたら最大のチャンスでした、逃してしまったのかもしれません。
一週間目の朝から変化が起こりました。
今までにない朝からの行為・・しかもその内容・・。
なお・・その午後に最初の暗殺を行おうとしてできなかったのですが・・
その際の寝言と涙は悲しい夢を見たという認識でヨイのでしょうか?
暴れるケモノみたいな日が3日程続きました。
酒瓶を割る、壁に穴を向ける、私を抱く・・執拗に。
そして気のせいかもしれませんが、私に謝罪の言葉を呟いた?辺りから落ち着きを見せ始めました。
暴れた際に火事が起きて焼死するように簡単な罠を仕掛けましたが不発に終わりました。
そして昨日辺りから変な遊び・・ゴッコめいたコトをはじめました。
なぜか自分のコトを『ワシ』と言い、ゲヒヒとかウヒヒ、イヒッと笑います。
正直気持ち悪いです。
近づきたくないけど、立場的に壁際に立ちます。
ご主人様は先程からお酒を浴びるように・・もったいない、飲み方をしいます。
いっそ急性アルコール中毒で死ねばいいのに。
「メイド!ワシの肩を揉め」
ヘンなオジサンごっこをしているようです。近付きたくないけれどしょうがない。
靴に仕込んである釘で刺し殺せないかな?チャンスを伺います。
「はいご主人様」
ソファーの後ろから首を締め・・ずに肩を揉みます。
一撃で殺せない限りは、絞殺は無理そうです。
釘をどう刺そうかな?
頭は頭蓋骨が固そう・・喉?・・耳なら!
決めました!刺します!
刺して、それから首を締める。
緊張の一瞬です・・深呼吸・・吸って吐いて・・肩を揉む手も自然にイイリズムを作ります。
胸の奥にナニかを飲み込みます、やります!
肩から手を離し・・靴へと足を伸ばします・・。
一瞬で行くよ、一気に〜。
無呼吸でっ、一気に!
「背中もな」
吐魂〜〜〜口がパクパク開閉します。
ビビックと背筋が弓形になり、手に近づけるため、浮かしていた右足をダンと床に戻します。
出鼻を挫かれ、タイミング良過ぎて・・なんか出た〜。
ちょっと今無理そう・・次の機会〜
体が引きつる、ですがココで耐え・・ないと〜メイド根性?〜っっ
「失礼いたします」
ジュータンの上にうつ伏せになったご主人様(踏みたい、蹴りたい)にまたがります。
落ち着いて・・まだまだチャンス。
呼吸を落ち着けるためにも、吸って〜吐いて〜とリズムよく揉みます。
・・・・
・・
あ・・なんだか気持よさそう・・じゃない、スキだらけ!
指で肋骨をなぞります・・刺さるかな?
釘を・・
釘!?ご主人様の顔の横に、毎夜砥いで研いで殺意を込めた釘が転がってます。
何故ー!?
見られたらヤヴァイ
その時ご主人様の首がソノ向きに動こうとした。
「ふんす!」
ゴキッというイイ音が響いた・・サッと靴に仕込んだ内緒の収納ポケットに釘をしまう。
あ、危なかった・・武器が見つかるところでした。
お、思わず首を思いっきり曲げたけど・・?反撃こない?
ご主人様はというと・・どうでしょう?・・怒る様子もなく、一安心。
!首折ればよかった?
「さて次は仰向けじゃ」
「かしこまりました」
刺しやすいかも?私の暗殺は終わらない。
いきなりグイッと手を引かれご主人様の上にまたがらされる・・って靴捨てられましたー。
武器が・・目が飛んでいった靴を追います・・無理届かない。
そのままご主人様は足を撫で、スカートの中に手を入れてきました。
今回も失敗・・。
自分の失敗原因を振り返ります。
どう刺すか前もって決めておかなくちゃ、あと武器はスグに使えるように隠し持たないと・・。
着々と成功に近づいていってるハズです。
反省してたら、メイド服がだいぶはだけつつありました。
またはじまるのか・・。
歯を食いしばり無表情を保つ。
ゲヒゲヒ言いながら手を蠢かしているご主人様、這う手が・・届いた。
あ・・堕とされる・・。
「もういい」
・・・・
・・
?一瞬なんの事かわかりませんでした。
目を開けると、ご主人様は私から目を逸らしていました。
終わり・・なの?
目から一筋の涙が零れ落ちていきました。
眉根がギュッとなる位キツク目を閉じています。
よくわからないよ、ご主人様。
私はご主人様を見下ろしながら立ち上がる。
「かしこまりました」
憎いケド、憎みきれない時がある。
気持ち悪いけど・・気持ち・・イイ時もある。
自室に戻り釘を握る。
釘は私の殺意の象徴だ、唯一の武器でもあるし、全てだ。
一人でいる時、釘を持つ度殺したいと願う。
ご主人様を観察する時、釘を持っていない時の私は・・ご主人様の変化に気づく。
殺す機会がある時・・私は何故か釘に触れたことがない、今回のマッサージの時のように。
釘を持てない私は殺せるのだろうか?
釘に殺意を込め、メイドは暗殺者になりきる、なりきろうとしていました。
首をボキッとするのは危険です、プロ相手でも嫌です




