罪の日々
酒・・・・正気でいられない理由になる、味はどうでもいい。
今日も昼間から飲む。
考えると、思い出すと・・溺れるモノが欲しくて堪らなくなる。
答えの出ない迷宮・・取り返しのつかない砂地獄。
迷い立ち止まり・・砂に溺れ消えていく。
迷い狂う、埋まり狂う・・狂気の仮面。
オレは蓋をする、何も見えない聞こえない。
仮面は醜い、勇者然としたオレとは違う。
仮面は体を侵食する、欲望のモノ。
酒を飲み、暴れ、食い、犯す・・オレじゃないモノ。
こんなのオレじゃない、嫌だ。違う・・オレじゃない、他のヤツだ。
オレはオレを捨てて楽になる、醜い仮面のワシになる
「メイド!ワシの肩を揉め」
「はいご主人様」
・・意外にうまいな。
「背中もな」
「失礼いたします」
ワシはうつ伏せになる、メイドが上にまたがる。
・・ホントうまいな・・いやいや。
!?首の骨をボキッと鳴らされる。
キク〜〜〜・・じゃなくて。
「さて次は仰向けじゃ」
「かしこまりました」
メイドをワシの上にまたがらせる、今度はワシの手も自由に動く。
もちろんタダのマッサージでは終わらない。
痴態・・コレこそ醜い。
無表情なのが気に触るが、ソレはソレで・・興奮する。
コレでこそ醜いワシ。
酒に女に溺れ、貪って全部忘れる。
「もういい」
「かしこまりました」
集中できない・・。
メイドの目に映る自分の姿・・
ゲヒたニヤニヤ顔をしているハズの・・してなかった。
もう醜いオッサンのフリでも逃避できない。
二重人格ゴッコも終わりだな・・
オレってホントに正気モドキだ・・まともな狂い方を忘れてしまった。
段々目が冷めてきた気分だ。
と言いながら、たまに溢れる感情が漏れて、物を破壊してしまうコトもある。
さっきのもだが、メイドの目を見てると・・本当に段々目が覚める。
虚しさが蘇る、だが目の前の罪悪感に気づく。
一瞬過去を忘れる、過去よりも今の彼女への罪が直接オレを責める。
だから正気に戻りきれた。
忘れたい心が欲を生んでいたのか
欲に逃げるのはよそう。
忘れたい心から逃げない。
忘却は罪だ。
新しい罪を作るのはもっと罪だ、踏み止まれ。
罪を連鎖せちゃいけない、断ち切らなければ。
たとえ苦しみが途切れなくなったとしても。
でも現状は変わらない、幽閉されたまま。
姉の謎も父の理由もわからない。
手は震えるし、死にたくなるし、暴れたくもなる。
きっとこの先何があっても、オレはこのまま閉じ込められたままだろう。
自殺したい、が・・
自殺すれば村民(父の領地の者達)を全員処刑するという脅しもある。
自殺で解決できるならしたい、だがそれですら罪を増やすことになる。
病死か寿命待ちなのだろうか?
・・・・死ぬのは漠然と怖い、死んでイイんだと思う反面ダラダラ生きた、殺されていく自分は楽だった。
いつか来る死を待ち続け、余計に周り(メイド)を壊し続けている。
ヤケになったフリになり、自分を見ようとせず、周りを見ていなかった。
情けない、でも怖い。
でも、生きているならこんなオレでも何かできることはないか?
何かできることを探すなんて、過去にも今までにも何回もして無駄だったけど、それでも。
オレが何か一歩踏み込めること・・オレがオレじゃなかったとしたら何かないか?
そぉぃぇば・・
最近の出来事っていうか、我に返ることができたのは、このメイドのおかげなんだろうか?
この子はどんな娘なんだろう?
こんなオレなんかに弄ばれて泣いてないだろうか?
この子の未来もどうなるのだろうか?
でも・・『人形』なんだ・・そうだった。
泣くコトも未来もない。
もし『人形』でなくなれば情報を聞けるかもしれない。
村はどうなったのか?魔界・・戦争はどうなったのか?姉や父の新情報はないのか・・オレの知らない5年間が知りたい。
『人形』を解除するコトはできないだろうか?
まずはメイドの観察日記かな。
この子を知り、『人形』の仕組みを知り・・あと眷属勇者にしないようにも気をつけないといけない。
それに正気を保つ・・堪えるコトのできる心の強さをつけなければ。
このままでは終われない・・オレは罪を知ってしまったから。
次話メイド視点です




