メイドの殺意
豪華な家具が生み出す重厚な雰囲気は、物音を吸い込むように、無音を生み出していた。
この部屋はご主人様の自由が許された2つある部屋の一つ。
私は壁際に立っています。
何も目にうつさないように・・
呼吸に必要な動作以外を封じ・・
この屋敷にメイドとして来て一週間。
仕事はご主人様に食事を与え、お酒を与え、薬を与え、寝むらせ、私を抱かせること。
なお、私の初めてはご主人様でありました。
・・これが抱かれるということか・・と心に蓋をして過ごしました。
憎っくき男・・
今はテーブルの下で寝ていらっしゃいます。
イビキの具合からしてグッスリでしょう。
スキだらけ・・というか刺し放題できそう・・です。
今ならやれる?
なにしろチャンスは一度しかない。
失敗は死・・。
先程まであった強烈な殺意・・いざとなると・・躊躇します。
それは私が人を殺したことがないというだけではなく・・この男の正体が・・怖い。
ご主人様は勇者だった男。
強くて当然、強いのも知っている・・過去にたまたま見たもの、コワイ。
たとえ目の前の姿がフラフラの痩せた落ちぶれた様であっても・・。
色んな恐怖と使命感でグルグルします。
あんなに痩せて・・筋肉すら失ったあの肉体ならば・・殺れるはず?
でもどこに刺せば死ぬの?確実に死ぬ?〜〜〜心臓?刺さる?〜〜首のがいいのかな?切れる?
そもそも殺れる?
殺らないと、殺らねば〜〜〜ーーっ殺る、殺らないと。
!理由を思い出せ!
この男のせいで・・死んだ。
壊され、死んだ。
様々な場面が脳裏にバッと浮かぶ。
死んでいった人達、収容所に閉じ込められている同じ村の人達の顔。
私の代わりがいる。
私が壊れれば、次の子がご主人様のメイドとなる。
それだけは避けたい。
それに・・もう抱かれるのも嫌・・だ。
思い返さないようにしてた怒りも燃えてきます。
廃棄されるハズだった包丁の刃をコッソリ手に入れ、よく切れるように研ぎ準備しました。
念の為に釘もよく刺せるように改造し持っています。
動悸がドキドキです。
熱くてボーッとしてきました。
落ち着かないと、殺さないと
スーハースーフヒュッッ〜〜・・
深呼吸しようとしたらヘンな音がしてしまった。
ギクリとしてご主人様を見る・・、・・セーフ
なんだか違うドキドキしてきたかも
でもちょぅっとだけ落ち着けました。
平然として寝たままのご主人様を見て一安心・・?。
そしてもう一度決意!殺れる根拠をもうひとつ思い返す。
ヤツにとって私達メイドは『人形』。
なぜならこの屋敷に来るメイドは心を壊され、物言わぬ、与えられた仕事以外動かない・・反抗のできないハズのものだから。
私のことも油断しているはず!
さよなら、私いきます。
初小説です、よろしくお願いします。
10/4土、主人公の名前変更しました。