俺の心
アビリティー学園の正門所にて入学手続きを終えた俺は腕時計を見た。
午前9時 ー
これでやっと学園の中に入ることができる。授業はもう開始されており、このまま教室に向かえば転入初日から遅刻ということになる。しかし、そんなことはどうでもいい。
『やっとだ ー、これでやっと ー』
俺は内から湧き出るフツフツとした感情を押さえ込んで呼吸を整えた。この五年間、やつに復讐するためだけに力を求め続けた。多くの犠牲を払いながらも今の強き力を手に入れることが出来た…。ゆっくりとまぶたを閉じる。
思い浮かぶのは真っ赤な血とバラバラにされた三つの死体…そしてその隣りに全身を真っ赤に染め上げて笑っている少女 ー。少女はこの世のものではないような美貌をもっており、佇む姿は地に降り立った女神のようだった…しかし俺にはその少女が化け物のようにしか映らなかった ー。
『殺す!殺す!殺す!』
憎悪が溢れてきて止まらない。目の前が視界すべてが真っ赤に染まる ー。
『落ち着け!落ち着け、落ち着け』
必死に呼吸の乱れを整えて頭のなかをクリアな状態にする。
『ふーすうー、ふーすうー…』
どうやら落ち着きを取り戻せたようだ。
先ほど正門所で拝借してきた学園の全体地図を見る。そしてウォークマンをポケットから取り出し、呪詛の歌を聴きながら、おれは目的の場所へと向かった ー