episode1-3
眩い光に包まれ目が眩んでいたが、少しすると光の量が減っていき、最終的には光が消えた。そこは草原のような場所だった。あたりには色とりどりの花が咲いており、心が安らぐ場所だった。
「そーいえば・・・」
自分は確か刺されたはず。そう思い、バッっと勢いよく自分の腹あたりを見る。するとそこには血の跡どころか服に傷すら付いてなかった。というよりも、自分があの時着ていた服ではなく、やはりまたゲームの冒険者のような格好にコートを羽織っている格好になっていた。
「贈り物ってこれのことか」
そーいえば、この服の送り主であろうノエルという女性と出会ったのは本当なのだろうか・・・。あれが実は死んで天国に行くまでに見ていた夢なのではないだろうか・・・。そう思い頭の中で『ステータス』と思い浮かべる。すると、目の前にステータスの画面が現れる。
「・・・やっぱり本当か」
ここで自分のことを知るのは大事ということで、ステータスの確認をすることにした。
シオン・アカツキ LV1
HP:150 MP:200
光魔法:ライトボール
闇魔法:ダークボール
≪SA≫死累之力
1st:死線lv1
とりあえず今わかるのはこの程度らしい。HPとMPは比べる基準がないから仕方ない。そして光魔法と闇魔法は互いに一番最初に覚えてる基礎的な魔法なのだろう。両方ともMP10消費となっている。自分のLvが1なのだから仕方ない。そして気になるのはこの≪SA≫というスキルだ。今は一つ目しか解放されていないらしい。取りあえずこの『死線』の説明を見てみることにする。
死線lv1:相手の攻撃とみなす反応に対し、使用者が一定の値のダメージを受けそうになる場合、相手の 攻撃の方向とタイミングが分かる。MP100消費。
どうやら相手の一撃必殺とかそういうのを回避できる魔法のようだ。確かにこれは場合によってはかなり強さを発揮するだろう。しかし、
「MP100・・・。二回使っただけですっからかんじゃん・・・」
今はまだ使えないなー。と思いつつ、もう見るところはあまりないように感じたのでステータスの画面を閉じる。
「とりあえず町に行こう」
このままこの場にいても仕方ないので、町を目指すことにした。周りを見ると、木々の隙間から壁のようなものが見えたので取りあえず進んでみる。少し歩くと、目標にすぐ着いた。少し向こうから人のざわめきが聞こえてくるので、そちらに向かうと大きな門が開かれており、中は多くの人で賑わいを見せていた。門の入り口付近に立っていたが、取りあえず中に入ることにする。町は向こうの世界でいうとヨーロッパの美しい街並みのようだった。活気にあふれており、子供が笑って走っている。悪くない町だなっと思っていると、トントンっと誰かに肩を立たれたので振り返ると、身長150くらいの女の子が立っていた。女の子は短めの青のスカートに白のブラウスに赤のネクタイをしている。可愛らしい顔立ちをしており、綺麗な薄いオレンジの髪と目をしていた。その姿にじーっと見とれていると、
「あ、あのー?」
「あ、はっはい!なんでしょうか?」
「すいませんが、ハンターさんでいらっしゃいますか?」
「えっ、ハンター?なんですかそれ?」
てっきりじっと見ていたことに何か言われると思っていたらよく分からないことを言われてしまったため聞き返してしまう。
「えっと、ハンターをご存じでないのですか?」
「ええ、まあ、はい」
女の子は少し戸惑ったようになっていたが、少しして何か思いついたのかハッとなった。
「もしかして異世界から来た人ですか?」
「そうですけど・・・」
「そうですか。なるほどなるほど」
彼女はやっぱりという感じでうなずいている。
「異世界から来たという事なら、この世界の事を教えてあげましょう!」
「い、いいんですか?」
正直、いきなり見ず知らずの人に話しかけられてこの世界の事を教えるといわれても多少の警戒心は働く。どうするべきか迷っていると
「いいんですよー。さ、行きますよー」
と言って手をぐいぐい引っ張ってくる。迷いはするけれど、悪い子ではなさそうだし、わからないだらけのこの世界の事を知るために付いて行くことにした。
連れてこられたのは向こうの世界でいう銀行のような感じでいくつか窓口がある建物だった。シオンは窓口ではなく、建物の一角にある談話スペースのような場所のソファーに座るよう言われ、腰かける。女の子は紫音の向かいに座った。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はカリン・クラウンと言います。あなたは?」
「僕は紫音と言います。よろしく、クラウンさん」
「私の事はカリンでいいですよー」
「分かりました。カリンさん、なぜ私が異世界の人だってわかったのですか?」
「それは、この世界でハンターを知らないなんてほとんどいませんからねー」
「はぁ。それでそのハンターって何ですか?」
「ハンターって言うのはいわゆる職業の一種のようなものです。ギルドと呼ばれるハンターを統括する組織が、地域の人や国からの依頼を請け負い、それをハンターの皆さんに呼びかけ、依頼をクリアしたハンターには依頼主からの報酬を渡すという仕組みになっています。つまりハンターは何でも屋、ギルドは斡旋する組織といった感じですかね。ちなみにここもギルドなんですよ」
言われて周りを見ているとあたりには武器を装備した人たちが多くいた。
「これがみんなハンターなのか」
「そうですよー。でも、単にハンターといってもその実力や実績でクラス分けがされていますからねー」
「クラスって何なの?」
「クラスというのは、その人のレベルのようなものです。一番最初はイース、次はメルス、という感じですね。クラスが上がるにつれて、受けれる仕事の難易度も上がり、報酬もアップしますね。名誉目的の方もいますが・・・」
「そうなんだ、そういえばこの町は何て名前なの?」
「この世界には人間界のほかに、魔族が住む魔界、天霊族が住む天界があります。ここは人間界の第五の都市、カラトスです。ここは田舎のような場所なので魔物も少なく、穏やかな場所です」
「へー、確かに、外は自然が綺麗で、中も活気があっていい場所だね」
「そうなんです!このあたりに異世界の人が来るなんてあまりないので、ついお話をと思いまして引っ張ってきちゃいました。すいません」
ぺこりと頭を下げてくる。話を聞く限りとてもいい子に見えるため、最初に疑っていた自分が恥ずかしくなる。
「いやいや、こちらこそ。こんな見ず知らずの人にここまで親切に教えてもらってありがとうございます。それで、よろしければもう少し教えてもらってもいいですか?」
「もちろん!構いませんよ!」
ということでもう少しカリンさんに教えてもらうことにした。