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episode1-2

 「(・・・ああ、死んじまったのかな。親にも何にも出来てないのに、幼馴染のあいつにも花をあげるって言ったのに)」

 突然の死を迎えることになって、何にもできないままに消えていく最中にふとそんなことを考えていた。しかし、途中で紫音はあることに気付く。それは、終真と名乗ったあの男に刺された衝撃や痛みや出血で意識が朦朧としていたはずなのに、今はその感覚が無い。これが死ぬということなのか・・・と考えていると、どこからか声が聞こえてくる。

 「・・・・・・、・・て・さい、起きて下さい」

と、柔らかい女性の声が聞こえてきた。紫音は言われるままに重い瞼をこじ開けるようにゆっくりと開いた。そこは・・・、何もないただの闇の中だった。

 「ここは、どこだ・・・?」

必死に頭を回転させても答えは出ない。予測で出した答えは

 「死んだ人の世界ってやつか・・・?」

 「違いますよ」

言葉と共に、目の前の何もない闇から眩い光が溢れてきた。紫音は思わず手を出して目を守る。少しの間強い光を感じていたが、やがて収まっていくのを感じたので前を見ると、そこには美しい女性が立っていた。整った顔立ちに白い肌、スタイルも女性が羨むようなものだった。頭には上品な美しさを放つティアラが乗せられていた。そしてよく見ると耳が少し尖っているように見えた。まるでゲームの登場キャラのようだった。

 「ここは、あなたのいた世界とは異なる世界、私たちは『グラスフィア』と呼んでいます。あなたは向こうの世界で死を迎えてしまい、消えてしまうところをこちらの世界に呼びよせたのです」

 「え、ええっと、話がよくわからないんだが、その前にあなたは?」

 「そうでしたね、まずは名を名乗るのが先でしたね」

そういうと、こちらに軽く頭を下げてくれた。

 「私の名前はノエルと申します。以後、お見知りおきを、暁紫音様。」

 「な、なんで俺の名前を知っているの?」

 「それは後ほど説明します。それで、わからないとおっしゃってましたが?」

 「あ、そうだ。今の話で俺は生きているの?それとも死んでいるの?」

 「答えは・・・、両方正解で両方はずれ、といった所でしょうか・・・。あなたは向こうの世界で何かがあって死を迎えているはずです。つまり、向こうでは確実に死んでいるはずです。本来なら魂の浄化が起こり、転生が行われるのですが、その魂をこちらに呼び寄せて、魂をもとに体も再構成しています。つまり、あちらの世界では死んでいますが、こちらの世界では生きていることになります。」

言われて体を見てみると、確かにどこかに異変は感じられず、自分の体だという感覚はあった。

 「じゃあ、今から向こうの世界に戻れないのか?大事な約束があるんだけど・・・」

 「残念ながら、私はこちらに呼ぶことはできても返す手段は知りません・・・」

 「そんな・・・」

自分があの通り魔に襲われて、死んだと思っていたらよくわからないけど生きているといわれ、しかし約束は果たせない。一回持ち上げて、落とされたように歯がゆい気分になる。

 「勝手な都合を押し付けるようで申し訳ありませんが、私があなたにこちらの世界に来てもらった理由は、あなたにはこのグラスフィアで新しく生きてもらいたいのです」

 「生きる?それだけか?」

正直、紫音は疑問に思った。なぜ自分なのかはわからないが、魂を呼び寄せて体を作っておいてどんな理不尽な要求をされるか分からなかったからだ。結局、理不尽な要求をされた所でどうしようもないのだが。

 「はい。今は詳しくは話せないので言いませんが、あなたがこの世界で生きていく事に意味があるのです」

 「は、はあ」

 「そして、もしかしたらこのグラスフィアで向こうの世界に帰れる方法が見つかるかもしれません」

 「本当ですか!」

 「ええ、向こうの世界とは違い、この世界には『魔法』があるからです」

 

 

 「・・・ん?まほう?」

 「魔法です」

 「MAHOU?」

 「魔法です」

 「いやいや、そんなのあるわけないじゃないですか。ここはRPGの世界なんですか?って話ですよ」

 「RPG?よく分かりませんが、魔法はあります。あなたの魂を呼び寄せたのも魔法です。まあ、これは大規模なので、私一人じゃ無理ですけど」

 「へー、じゃあ証拠として何か魔法を見せてくださいよ」

いきなり魔法がある!と言われて、はいそうですか!とは流石にならなかった。今の自分の現状とかもいまいち理解できてないけど、どうせ嘘だから見せてということにした。

 「(さて、どう言い訳してくるのか・・・)」

 「いいですよ」

思ってた答えとは違う答えで、しかも割と即答気味に応えられてしまった。

 「えっ、あー、じゃあお願いします。」

 「では、いきます」

そういうと、ノエルは両手を伸ばした。すると、右手からはバチバチッという音と共に紫電が放出されており、その紫電が次第にソフトボールほどの大きさの球体状になっていく。左手も、パキパキパキッという音と共に氷のようなものが作られ、同じく球体状となっていく。するとノエルは左手を横なぎに振るった。すると氷の球は一直線に飛んでいき。50メートルほど飛んだところで、パキィィィィン!!と鳴ったと思ったらそこには氷柱が作られていた。紫音があっけにとられているのにも気付かず、続けて右手も振るう。同じように紫電の球が一直線に飛んでいき、氷柱にぶつかる。すると、バジッッ!!と音が鳴り、そして氷柱がバラバラに破壊されていた。

 「今のは水属性魔法と雷属性魔法です。どちらも基礎的な魔法ですが、かなり攻撃力をあげてみました。どうですか?魔法を信じていただけますか?」

 「あ、そそそうっすね。信じます。信じるしかないです」

正直、今の現象を何かトリックがあったとしてもあれだけのことが出来るとは思えなかった。それに、RPGのゲームをしたことがあるせいか、今のを魔法だと認めてしまえば信じることが出来た。

 「そうですか。それはなによりです。それで、もしかしたらこのグラスフィアで向こうの世界に帰れる魔法があるかもしれません。もし見つかればあなたは帰ることが出来ます」

 「なるほど・・・」

確かに、魔法という概念が存在する世界なら確かに帰る手立てがあるかも知れない。希望がゼロよりも少しでもあるほうがいい。

 「それで、俺はどうすればいい?生きろと言われてもなー」

 「特に何かしてほしいわけではありません。ただあなたには自由に生きてください」

 「ふーん、あ、そういえば俺は魔法を使えないの?」

 「使えますよ。頭の中で『ステータス』と念じてみて下さい」

言われるままに、頭の中で念じる。すると、電子音のような音と共に目の前にRPGのステータス画面が出てきた。画面には自分の名前とレベル、そしてHPとMP、そしてアビリティには、『光魔法』、『闇魔法』と書いてあった。

 「(まじでゲームだな・・・)」

 「どのような魔法が使えるかが、書かれているはずです。私からは見えないので、何が書かれていましたか?」

 「えっと、『光魔法』と『闇魔法』とあるな」

 「光と闇ですか・・・」

 「な、なんかまずいの?」

 「いえ、そんなことは。ただ、『光魔法』と『闇魔法』のどちらかを持っているものはいますが、両方はあまり見ないもので」

あまりいないという言葉を聞いて、少しうれしくなる。画面を見ていると、ある項目に目が留まった。

 「なあ、この『SA』ってなんだ?」

 「それは向こうの世界から来た人、私たちの世界で言う『異世界人』はみな持っている特殊なスキルです。魔法もSAもレベルが上がると増えたり、強くなったりしますよ」

 「そうなんだ。もしかして、俺の名前を知っていたのも魔法か何かなの?」

 「はい、私のSAです。SAは個人によって違うものになってますよ。似ている人もいますが」

 「ふーん、そうなんだ」

突然のことで困惑したが、なんかゲームの世界の様だと思い少し楽しくなる。それに、帰る手段があるかもしれない。・・・いや、きっとあると信じよう。と紫音は心の中で思った。

 「さて、そろそろ簡単に私から言いたいことは終わりましたので、そろそろお別れです」

そう言うと今まで闇だらけだった空間に亀裂が入っていき、そこから光が溢れてくる。

 「ええ、そんないきなりなんですか!」

 「すいません、こちらにも時間があるもので・・・。最後にささやかな贈り物と共に、あなたの旅に幸福があることを願っています」

 そういい終わると、紫音の視界は眩い光に包みこまれた。

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