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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第2章 北の森の全

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第009話 北の森の噂

冒険者ギルドは、朝から賑わっていた。


ユイは掲示板の前に立ち、張り紙を眺めている。街道警備、荷物護衛、採取依頼。前世でも見慣れた内容が並んでいる。だが、一つだけ気になる張り紙があった。


「北の森で魔物の異常行動を確認。調査依頼」


ユイの手が止まる。北の森。前世の記憶を探る。あの森に異変が起きたのは、確か数ヶ月後のはずだった。それなのに、もう報告が上がっている。違和感が胸に広がる。


「おい、聞いたか?」


背後から声が聞こえた。ユイは振り返らず、耳を澄ませる。


「北の森だろ? 最近、戻ってこない奴が増えてるらしいぜ」

「マジかよ。何があるんだ?」

「知らねえよ。ただ、ギルドも詳しいこと言わないんだ」


若い冒険者たちの会話だ。


ユイはその場を離れ、受付カウンターへ向かった。列に並び、順番を待つ。やがて、受付嬢が顔を上げた。


「いらっしゃいませ。ご用件は?」

「北の森の依頼について、詳しく教えてもらえますか?」


受付嬢の表情が少し曇った。


「あの依頼ですか。実は、詳細はまだ公開されていないんです」

「なぜですか?」

「ギルドの上層部が調査中で。ただ、魔物の数が増えているのは確かです」


受付嬢は声を落とした。


「最近、あの森に入った冒険者の何人かが帰ってきていません」


ユイの胸が冷える。帰ってこない。前世では、こんな事態は起きなかった。


「どれくらいですか?」

「ここ一週間で、三人です」


受付嬢は書類を確認する。


「皆、Eランクの新人でした。単独で森に入ったようです」


ユイは黙って頷いた。それから、受付を離れる。


ギルドのホールを歩きながら、ユイは考えた。前世との違いが、また一つ増えた。北の森の異変は、本来はもっと後のはずだった。何かが、世界の流れを変えている。自分が過去に戻ったことが原因なのか。それとも、前世で見落としていた何かがあるのか。


「ユイさん!」


声がした。振り返ると、カイルが手を振っていた。


「おはようございます」

「おはようございます。今日も依頼ですか?」

「いえ、情報を集めていました」


カイルはユイの隣に並んだ。


「北の森のことですか?」


ユイは少し驚いて、カイルを見た。


「どうして?」

「俺も気になってたんです。最近、あの森の噂をよく聞くんで」


カイルは真面目な顔をしている。


「実は、俺の知り合いも森に入って、戻ってきてないんです」


ユイの表情が引き締まる。


「いつですか?」

「三日前です。Eランクの冒険者で、魔物退治の依頼を受けて森に入ったきり」


カイルは拳を握り締めた。


「ギルドに捜索を頼んだんですけど、まだ見つかってません」


ユイは黙って聞いていた。カイルは続ける。


「だから、俺も森に行こうと思ってるんです。一人で行くのは危ないって言われてるんで、誰か一緒に行ってくれる人を探してて」


カイルはユイを見た。


「ユイさん、一緒に行ってくれませんか?」


ユイは少し考えた。前世の知識では、北の森の異変はまだ先のはずだ。だが、現実はもう動いている。このまま放置すれば、被害は拡大する。だが、18歳の体で未知の事態に挑むのは危険だ。それでも――


ユイは頷いた。


「分かりました。一緒に行きましょう」


カイルの顔が明るくなった。


「本当ですか! ありがとうございます!」

「ただし、無理はしません。状況を見て、すぐに撤退することもあります」

「はい、分かってます」


カイルは真剣に頷く。ユイは少し安心した。


「では、明日の朝、ギルドの前で待ち合わせましょう」

「了解です!」


カイルは嬉しそうに手を振って去っていく。ユイはその背中を見送った。


それから、再び掲示板の方へ戻る。北の森の張り紙を見つめる。前世では見なかった事態。だが、ここで引くわけにはいかない。


今度こそ、途中で諦めない。今度こそ、正しく導く。


ユイは張り紙から目を離し、ギルドを出た。外は昼過ぎで、太陽が高く昇っている。


宿へ戻る途中、ユイは明日の準備を考えた。装備の確認、回復薬の購入、地図の入手。やることは多い。それから、北の森についての情報も集めなければならない。


ユイは市場へ向かった。薬屋で回復薬を買い、武器屋で短剣の手入れ用品を揃える。それから、地図屋へ立ち寄った。


「北の森の地図をください」


店主は古い地図を取り出した。


「最近、あの森に行く人が増えてるね。何かあるのかい?」

「調査です」

「そうかい。気をつけな。最近、あの森は様子がおかしいって話だ」


ユイは地図を受け取り、代金を払った。


宿に戻り、部屋で地図を広げる。北の森は、王都から北へ半日ほどの距離にある。森の規模は大きくないが、内部は入り組んでいる。前世でも、何度か訪れたことがある。だが、この時期の森は平穏だったはずだ。


何が変わったのか。


ユイは地図を畳み、窓の外を見た。北の方角を見つめる。空は晴れているが、なぜか暗く感じる。気のせいだろうか。


ユイは深く息を吸い込んだ。それから、明日の準備を続ける。装備を確認し、短剣を研ぐ。回復薬を鞄に詰め、地図をポケットに入れる。


全てが終わった頃には、もう夕方だった。


ユイはベッドに座り、今日のことを振り返った。北の森の異変。前世との違い。カイルとの約束。全てが、新しい流れを生み出している。


ユイは窓の外を見た。夜が近づき、街灯が灯り始めている。明日、何が待っているのか。分からない。だが、恐れることはない。


ユイは小さく笑って、ベッドに横になった。


明日も、長い一日になる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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