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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第1章 還りし者の再出発

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第007話 治療と出会い

カイルに支えられながら、ユイは治療院へ辿り着いた。

石造りの小さな建物だ。窓からは柔らかい光が漏れ、看板には「アクアセイント治療院」と書かれている。


カイルが扉をノックした。


「すみません、怪我人です」


しばらくして、扉が開いた。そこに立っていたのは、長い銀髪のエルフの女性だった。

緑の瞳が、ユイとカイルを見る。


「どうぞ、中へ」


女性は二人を招き入れた。中は清潔で、薬草の香りが漂っている。


「そこのベッドに座ってください」


ユイは言われた通り、ベッドに腰を下ろした。カイルは少し離れた場所に立つ。


女性はユイの傷を確認した。


「浅い傷ですね。すぐに治ります」


女性は水魔法を使い、ユイの傷を洗い流した。それから、光魔法で傷口を塞いでいく。


温かい光が、傷に染み込んでいく。痛みが引いていく。


数分後、傷は完全に塞がった。


「これで大丈夫です」

「ありがとうございます」


ユイは腕を確認した。傷跡すら残っていない。


女性はユイを見つめた。その視線には、何かを探るような色があった。


「他に怪我はありませんか?」

「肩を打ちました」

「見せてください」


ユイは上着をずらし、肩を見せた。青い痣ができている。


女性はそれに手を当て、再び治癒魔法を使った。痣が薄くなっていく。


だが、女性の手が止まった。


「あなた」


女性がユイを見つめる。


「ただの新人冒険者じゃないわね」


ユイの心臓が跳ねる。だが、表情は変えなかった。


「どういう意味ですか?」

「体の使い方が、普通じゃない。傷の位置も、避けようとした跡がある」


女性は静かに言った。


「あなたは、戦い慣れている」


ユイは何も答えなかった。女性は手を離し、少し距離を取った。


「私の名前は、リリア・エインセル。この治療院で働いている」


リリア・エインセル。

前世でも聞いたことのある名前だ。だが、出会ったのは数年後だった。


「ユイ・セイラスです」


「ユイさん、あなたはどこで戦い方を学んだの?」

「少しだけ、訓練を受けました」

「訓練」


リリアは繰り返した。その声には、疑念が含まれている。


「あなたの動きは、訓練だけで身につくものじゃない。実戦の経験がある」


ユイは黙っていた。リリアは溜息をついた。


「まあ、いいわ。詮索するつもりはない。ただ、一つだけ忠告しておく」


リリアはユイを真っ直ぐ見た。


「あなたのような人は、必ず誰かに狙われる。気をつけなさい」

「分かりました」


リリアは立ち上がり、棚から薬を取り出した。


「これを飲んでおいて。痛みが残っているかもしれないから」


ユイは薬を受け取った。小さな瓶に入った液体だ。


「ありがとうございます」


リリアは少し考えてから、口を開いた。


「もしよければ、話を聞いてもらえる?」

「話?」

「私の師が、あなたのような人を待っていた」


ユイの手が止まる。リリアは続けた。


「私の師は、倒せぬ存在について研究している。そして、特別な力を持つ人を探している」


倒せぬ存在。


ユイの心臓が早鐘を打つ。だが、表情は崩さなかった。


「なぜ、私がそうだと?」

「直感よ。あなたからは、普通の人とは違う何かを感じる」


リリアは窓の外を見た。


「師は言っていた。二度目を生きる者が現れると」


ユイの息が止まった。


二度目を生きる者。


それは、自分のことを指している。


「どういう意味ですか?」


ユイは平静を装って尋ねた。リリアは振り返った。


「詳しいことは、師から聞いてほしい。もしあなたが興味があるなら、明日の夜、ここに来て」

「分かりました」


ユイは立ち上がった。カイルも一緒に立つ。


「治療費は?」

「今日は結構よ。代わりに、明日必ず来てね」


リリアはそう言って、微笑んだ。


ユイとカイルは治療院を出た。外は静かで、街灯だけが通りを照らしている。


「ユイさん、大丈夫ですか?」

カイルが心配そうに尋ねる。ユイは頷いた。

「大丈夫です。ありがとうございました」


「よかった。でも、なんであんなところにいたんですか?」

「宿に帰る途中でした」

「そうですか。これからは、夜道は気をつけてくださいね」

「はい」


二人は並んで通りを歩く。カイルは時折、ユイの様子を気にしていた。


宿の前に着くと、カイルは立ち止まった。


「じゃあ、また明日」

「はい。今日は本当にありがとうございました」

「いえ、無事でよかったです」


カイルは手を振って去っていく。ユイはその背中を見送った。


それから、宿に入り、部屋へ戻る。


ベッドに座り、ユイはポケットから紙片を取り出した。


「セイラスを確認。排除は保留」


誰かが、自分を監視している。


そして、リリアの言葉。


「二度目を生きる者が現れる」


ユイの存在は、すでに誰かに知られているのかもしれない。


ユイは紙片を机の引き出しに入れた。それから、窓の外を見る。


月が雲の間から顔を出し、街を照らしていた。


明日の夜、リリアの師と会う。


そこで、何が分かるのか。


ユイは深く息を吸い込んだ。それから、ベッドに横になる。


体は疲れていたが、頭は冴えていた。


何かが、動き始めている。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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