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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第1章 還りし者の再出発

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第006話 夜の襲撃

夜になった。


ユイは図書館からの帰り道、少し遠回りをして街を歩いていた。夜の王都は、昼間とは違う顔を見せる。

街灯が通りを照らし、酒場からは笑い声が漏れてくる。商店は閉まり、人通りは少ない。


ユイは静かな路地を抜けて、宿へと向かっていた。


だが、背後に気配を感じた。


足音が、自分と同じリズムで聞こえる。一人ではない。複数だ。


ユイは歩く速度を変えずに、周囲を確認した。路地は狭く、逃げ道は限られている。

前方にも、人影が見えた。


挟まれている。


ユイは足を止めた。背後を振り返ると、三人の男が立っていた。

荒くれ者の風貌だ。武器を持ち、明らかに敵意を向けている。


「おい、そこの女」


前方から声がした。振り返ると、もう一人の男が立っていた。


四人。


ユイは静かに短剣の柄に手をかけた。


「何か用ですか?」

「用があるのはこっちだ。大人しくしてれば、痛い目には遭わせない」


男たちが一歩ずつ近づいてくる。ユイは後ろに下がった。

壁に背を向ける形になる。だが、四方を囲まれるよりはマシだ。


「何が目的ですか?」

「黙って来い」


男の一人が剣を抜いた。他の三人も、武器に手をかける。


交渉の余地はない。


ユイは短剣を抜いた。


前世の戦闘経験が、頭の中で蘇る。敵の動き、間合い、攻撃のタイミング。すべて読める。


だが、問題がある。


肉体は18歳だ。力が足りない。


最初の男が斬りかかってきた。ユイは横に身を捌き、刃を避ける。

動きは読めている。だが、反撃の余裕がない。


二人目が追撃してくる。ユイは低く身を屈め、足元を狙った斬撃を避けた。


三人目が背後から迫る。


ユイは壁を蹴って跳躍し、男の頭上を越えた。着地と同時に、短剣を振るう。

刃が男の腕をかすめた。浅い。


男が怯む。その隙に、ユイは距離を取った。


だが、四人目が回り込んでくる。


囲まれた。


ユイは呼吸を整えた。心臓が早鐘を打っている。


前世なら、こんな相手は瞬時に制圧できた。だが、今は違う。

力が足りない。体が追いつかない。


男たちが再び迫ってくる。ユイは壁際に追い詰められた。


逃げ場がない。


ユイは短剣を構え直した。一人でも多く、倒す。


最初の男が剣を振り下ろす。ユイは刃を受け流し、男の懐に飛び込んだ。

短剣を横に薙ぐ。男の脇腹に刃が入る。


男が悲鳴を上げて倒れた。


だが、その隙に二人目の攻撃が来る。


ユイは避けきれなかった。剣の柄が、ユイの肩に当たる。


衝撃。


体が壁に叩きつけられた。視界が揺れる。

肺の空気が抜けた。息ができない。


三人目が剣を構えて迫ってくる。ユイは短剣を握り締め、必死で立ち上がった。

足が震える。だが、倒れるわけにはいかない。


男が剣を振り下ろす。ユイは横に転がり、刃を避けた。


地面に手をつき、立ち上がる。肩が痛い。


四人目が背後から襲ってくる。ユイは振り返り、短剣を振るった。

刃が男の手首に当たる。男が剣を落とした。


だが、その隙に三人目が蹴りを放ってくる。


ユイの腹に足が入った。


痛みが走る。体が浮き、地面に倒れた。


呼吸ができない。視界が暗くなる。


だが、意識を失うわけにはいかない。


ユイは短剣を握り締め、必死で起き上がろうとした。


男たちが近づいてくる。


「もういい。連れていけ」


男の一人が言った。


ユイは歯を食いしばり、短剣を振るった。だが、力が入らない。

刃が空を切る。


男がユイの腕を掴んだ。


その時、路地の奥から声が聞こえた。


「そこまでだ!」


男たちが振り返る。誰かが走ってくる足音がした。


「ちっ、邪魔が入ったか」


男たちは舌打ちして、ユイを放した。


「逃げるぞ」


男たちは路地の奥へと消えていく。


ユイは地面に倒れたまま、息を整えた。


足音が近づいてくる。誰かがユイの前にしゃがみ込んだ。


「大丈夫ですか?」


声は聞き覚えがあった。顔を上げると、カイルがいた。


「カイルさん」

「ユイさん! 怪我は?」


「少し、打っただけです」


ユイは立ち上がろうとした。だが、体が言うことを聞かない。


カイルがユイの腕を支えた。


「無理しないでください。治療院に行きましょう」

「大丈夫です」

「大丈夫じゃないですよ。血が出てます」


ユイは自分の腕を見た。浅い傷があり、血が滲んでいる。


「ありがとうございます」


カイルはユイを支えて立たせた。


だが、ユイが一歩踏み出した時、地面に何かが落ちているのに気づいた。


紙片だ。


倒れた男の懐から落ちたものだろう。


ユイはそれを拾い上げた。月明かりの下で文字を読む。


「セイラスを確認。排除は保留」


ユイの息が止まった。


自分の名前が書かれている。


排除は保留。つまり、殺すつもりではなかった。


では、何が目的だったのか。


「ユイさん?」


カイルが心配そうに声をかけてくる。ユイは紙片をポケットに入れた。


「何でもありません。行きましょう」

「はい」


二人は路地を抜け、治療院へと向かった。


ユイは歩きながら、紙片の内容を頭の中で反芻した。


誰かが、自分を監視している。


だが、殺すつもりはない。保留、と書かれていた。


では、何を待っているのか。


ユイは空を見上げた。月が雲に隠れ、夜はさらに暗くなっていく。


何かが、動き始めている。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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