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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第1章 還りし者の再出発

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第003話 冒険者ギルド

午後の日差しが傾き始めた頃、ユイは冒険者ギルドの前に立っていた。

石造りの大きな建物だ。入り口には剣と杖を交差させた紋章が掲げられている。前世でも何度も見た光景だが、今は感慨深い。


ここから、すべてが始まる。


扉を開けて中に入る。広いホールには、多くの冒険者たちが集まっていた。受付カウンターの前には列ができ、壁際の掲示板には依頼の張り紙が所狭しと貼られている。


喧騒が耳に入ってくる。依頼の交渉、報酬の確認、仲間の募集。前世では緊張で頭が真っ白だった。だが、今は落ち着いている。


ユイは受付カウンターへ向かった。列に並び、順番を待つ。


周囲の冒険者たちの会話が聞こえてくる。


「やっぱり初心者は街道警備からだよな」

「俺は荷物の護衛を選んだ。楽だし、報酬も悪くない」

「早く上のランクに上がりたいな」


新人冒険者たちの声だ。前世の自分も、同じようなことを言っていた。


ユイは静かに列を進む。やがて、順番が来た。


受付カウンターの向こうには、若い女性が座っていた。茶色の髪を後ろで束ね、丁寧な笑顔を浮かべている。


「いらっしゃいませ。ご用件をお伺いします」

「冒険者登録をお願いします」

「かしこまりました。こちらの用紙に必要事項をご記入ください」


受付嬢は書類を差し出す。ユイはそれを受け取り、ペンを走らせた。


名前、年齢、出身地、得意な武器、魔法の適性。前世と同じ内容を書き込んでいく。


書類を返すと、受付嬢は内容を確認した。


「ユイ・セイラスさんですね。適性検査を行いますので、少々お待ちください」

「はい」


受付嬢は奥の部屋へ消えた。しばらくして、別の職員が現れる。


「こちらへどうぞ」


案内されたのは、小さな個室だった。中央には魔法陣が描かれた床があり、壁際には測定用の魔導具が並んでいる。


「この魔法陣の上に立ってください。適性と基礎能力を測定します」


ユイは魔法陣の中央に立つ。職員が魔導具を操作すると、足元から淡い光が立ち上った。


体を包む温かい感覚。魔力が測定されている。前世でも経験したことだ。


数秒後、光が収まる。職員は魔導具の表示を確認した。


「火、水、風、土の基礎適性がありますね。光と闇は弱いですが、訓練次第で伸びるでしょう」

「ありがとうございます」

「では、次は実技です。こちらの木剣を使って、基本動作を見せてください」


職員が木剣を差し出す。ユイはそれを受け取った。


軽い。18歳の体にはちょうどいい重さだ。だが、前世では両手で持っていた大剣に比べれば、玩具のようなものだ。


「構えてください」


ユイは木剣を構える。職員が合図を出すと、ユイは前に踏み込んだ。


一閃。空気を切る音が響く。


職員の目が、わずかに見開かれた。


「もう一度、お願いします」


ユイは再び構える。今度は横薙ぎに振るった。動きは滑らかで、無駄がない。


職員は何も言わず、記録用の紙に何かを書き込んだ。


「結構です。以上で適性検査は終了です」


ユイは木剣を返し、受付へ戻る。


しばらく待つと、受付嬢が冒険者証を持って現れた。


「お待たせしました。こちらがあなたの冒険者証です」


銅色の小さなプレートだった。そこには名前と、初期ランクを示す「E」の文字が刻まれている。


「初期ランクはEです。依頼をこなして実績を積めば、ランクは上がります。頑張ってくださいね」

「ありがとうございます」


ユイは冒険者証を受け取った。手の中で、プレートが冷たい。


これで、正式に冒険者になった。前世と同じ道を、再び歩み始めた。


受付カウンターを離れ、ユイは掲示板の方へ向かう。依頼の内容を確認しておきたい。


掲示板の前には、相変わらず多くの冒険者が集まっていた。ユイはその隙間から、張り紙を眺める。


街道の魔物退治、荷物の護衛、迷子の捜索。前世と同じ依頼が並んでいる。


だが、やはり一つだけ違う張り紙があった。


「北の森における魔物異常発生の調査。推奨ランクC以上」


前世にはなかった依頼だ。北の森の異変は、本来はもっと後のはずだった。


「あれ、やめた方がいいよ」

隣にいた若い男が、仲間に言った。

「なんで?」

「最近、北の森で奇妙な魔物が目撃されてるんだ。ギルドも詳しいことは教えてくれないし」

「怖いな」

「Cランクでも危ないって噂だ。俺たちみたいな新人は、絶対に近づくなって先輩が言ってた」


男たちは別の依頼を探し始める。ユイはその場を離れた。


北の森の異変。これは前世との大きな違いだ。


何かが動き始めている。自分が過去に戻ったことで、世界の流れが変わったのか。それとも、前世で見落としていた何かがあるのか。


ユイはギルドを出た。外はもう夕方だった。街灯に火が灯り始め、通りの雰囲気が変わっていく。


宿に戻る途中、ユイは今日一日のことを振り返った。


街の様子、掲示板の依頼、冒険者たちの会話。前世と同じ部分と、違う部分。


そのすべてを、頭の中で整理していく。


明日からは、実際に依頼を受ける。まずは簡単なものから始めて、体を慣らす。そして、信頼できる仲間を探す。


焦る必要はない。一つずつ、確実に。


宿に着き、部屋に入る。ユイは冒険者証を机の上に置いた。


銅色のプレートが、ランプの光を反射している。


「始まったな」


ユイは小さく呟いて、ベッドに腰を下ろした。


窓の外から、夜の街の音が聞こえてくる。前世では聞き流していた音だ。


だが、今は違う。すべてが意味を持って聞こえる。


ユイは窓を閉め、ランプの火を落とした。暗闇の中で、目を閉じる。


明日も、長い一日になる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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