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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第2章 北の森の影

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第016話 力の差

魔物が低く唸った。

洞窟全体が、重く震える。


ヴィクトルが即座に指示を飛ばした。


「エリナは後方支援! リオン、カイル、側面から回り込め!」


全員が動く。

エリナが後方へ下がり、杖を構えた。リオンとカイルが左右に散る。ヴィクトルは剣を抜き、魔物の正面に立つ。


魔物が突進してきた。

速い。


ヴィクトルが剣で受け止める。衝撃。

足が地面を滑り、岩が削れた。


ユイは短剣を握り締めたまま、動けずにいた。

前世なら、迷わず割り込めた。だが、今の体では、あの速度についていけない。


リオンが側面から斬りかかる。

刃が黒い鱗に当たり、金属音が響いた。だが、弾かれる。


「硬い!」


リオンが舌打ちする。

魔物が振り返り、前足を振るう。リオンは後ろに跳び、間一髪で避けた。


エリナが杖を掲げる。


「炎よ、奔れ」


赤い光が魔物に向かって飛ぶ。

炎が魔物を包んだ。


だが、魔物は止まらない。

炎を突き抜け、そのままエリナへ迫る。


「エリナ!」


カイルが飛び出した。

盾を構え、魔物の前に立つ。


前足が盾に激突する。轟音。


カイルの体が宙に浮き、壁に叩きつけられた。

盾が砕け、破片が飛び散る。


「カイル!」


ユイが叫ぶ。

カイルは壁際に倒れたまま、動かない。


ヴィクトルが魔物の背後へ回り込み、剣を振るった。

刃が後ろ足に食い込み、わずかに血が滲む。


魔物が悲鳴を上げた。

振り向きざまに尻尾を振るう。


ヴィクトルが剣で受け止めたが、衝撃に耐えきれず、後方へ吹き飛ばされた。


ユイの手が震えた。

動きは分かる。攻撃の予兆も、癖も、すべて読めている。


だが、体が追いつかない。

割り込めない。


リオンが再び斬りかかるが、やはり弾かれる。

エリナの氷魔法も、決定打にはならない。


ヴィクトルが立ち上がり、再び剣を構えた。

正面から斬りかかる。魔物は前足で受け止め、火花が散る。


その光景を見ながら、ユイは自分の無力さを噛みしめていた。

知識も、経験もある。だが、この体では、何もできない。


打ち合いは続く。

だが、徐々にヴィクトルが押され始めていた。互角に見えたのは、最初だけだった。


その時、カイルが立ち上がった。

盾は失われ、剣だけを握っている。


「カイルさん、無理しないで!」


ユイの叫びに、カイルは首を横に振った。


「まだ、戦えます」


カイルが前へ出る。

だが、魔物の前足が迫る。


避けきれない。


考えるより先に、ユイは動いていた。

短剣を投げる。


刃は魔物の目を狙って飛び、魔物が反射的に顔を逸らした。

その隙に、カイルが横へ転がる。


ユイは息を呑んだ。

これが、今の限界だ。


残った短剣を握るが、手の震えは止まらない。


ヴィクトルが叫んだ。


「リオン、エリナを守れ!」


リオンがエリナの前に立つ。

魔物が再び迫り、リオンが剣で受け止める。


だが、衝撃に耐えきれず、二人まとめて後方へ吹き飛ばされた。


ヴィクトルが側面から斬りかかる。

だが、魔物の尻尾が薙ぎ払う。


ヴィクトルが地面を転がった。


魔物が動きを止めた。

五人を見下ろしている。


まるで、獲物を選別しているかのように。


ユイは悟った。


このままでは、全員死ぬ。


ヴィクトルも同じ結論に至ったようだった。

立ち上がり、全員を見渡す。


「全員、撤退する!」


洞窟に、その命令が響いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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