第015話 封印の間
洞窟の奥へ進むにつれ、魔力の濃度が増していく。
ユイは息苦しさを感じていた。前世でも、これほど濃い魔力を感じたことは少ない。
「魔力が濃いな」
ヴィクトルが呟く。エリナが静かに頷いた。
「ええ。何かがあります」
五人は慎重に進んだ。
壁には古い文字が刻まれている。ユイはその文字を見て前世の記憶を探ったが、どれにも該当しない。未知の文字だった。
通路が開ける。
広い空間に出た。
床一面に、巨大な魔法陣が描かれている。
ヴィクトルが立ち止まり、顔色を変えた。
「これは……」
「何ですか?」
カイルが尋ねる。ヴィクトルは魔法陣を見つめたまま答えた。
「古代の封印陣だ」
ユイは息を呑んだ。
封印陣。前世でも何度か目にしたことはあるが、これほど大規模なものは初めてだった。
エリナが魔法陣の周囲を歩く。杖を掲げ、魔力の流れを探る。
「ギルドマスター、これは壊れています」
「何?」
ヴィクトルが魔法陣に近づき、中心部を確認する。眉が深く寄った。
「本当だ。陣の一部が欠けている」
リオンが低く尋ねた。
「何を封じていたんですか?」
「分からない。だが――」
ヴィクトルは周囲を見回した。
「何かが、ここから解放されている」
ユイは前世の記憶を必死に探った。
北の森に封印陣が存在した記録はない。前世では、こんなものは存在しなかった。
では、なぜ今ここにあるのか。
そして、何が封じられていたのか。
カイルが壁に近づいた。
「こっちにも文字が」
全員が壁を見る。
古代文字が、びっしりと刻まれている。
ユイはその文字を凝視した。読めない。だが、嫌な予感だけが胸に広がる。
エリナが呟いた。
「警告文のようです。封印を解いてはならない、と……」
「遅かったようだな」
ヴィクトルが低く言った。
その時、奥から音が響いた。
重い足音。
全員が即座に身構える。
ヴィクトルが剣を抜き、リオンとカイルも武器を構える。エリナは杖を掲げ、ユイも短剣を抜いた。だが、手がわずかに震えているのを自覚した。
足音が近づいてくる。
ゆっくりと、確かめるように。
暗闇の奥から、巨大な影が姿を現した。
全身は黒い鱗に覆われ、四足で地を踏みしめている。体高は人の倍以上。獣のような頭部には角が生え、深紅の目が五人を見下ろしていた。
ユイは息を呑んだ。
それは――
ユイの前世の記憶に存在しない魔物だった。
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