表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第2章 北の森の影

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/44

第013話 深まる謎

王都への道を、二人は黙々と歩いた。


ユイの体は痛みを訴えていた。肩、腰、足。魔物に叩きつけられた衝撃が残っている。カイルも同じだろう。鎧は凹み、歩き方がぎこちない。だが、二人とも弱音は吐かなかった。


街道に出ると、日が傾き始めていた。


「ユイさん」


カイルが口を開いた。


「あの魔物、何だったんでしょうか」


「分かりません」


ユイは正直に答えた。


「少なくとも、私は見たことがありません」


「そうですか……」


カイルは俯いた。


「でも、あの洞窟の魔法陣。あれは何か関係があるんでしょうか」


「おそらく」


ユイは歩きながら考えた。魔法陣、呪いの痕、赤く濁った目。全てが繋がっている。誰かが、意図的に魔物を操っている。だが、誰が。そして、なぜ。


「カイルさん、あの魔法陣の文字、見たことありますか?」


「いえ、初めてです。でも、とても古い感じがしました」


「ええ。私も同じです」


ユイは記憶を辿った。前世で見た様々な文字。古代文字、魔術文字、種族固有の文字。だが、あの文字はどれにも該当しない。未知の文字だ。


「ギルドに戻ったら、詳しく報告しましょう」

「はい」


カイルは頷いた。


二人は再び黙って歩く。周囲には畑が広がり、農夫たちが働いている。平和な光景だ。だが、北の森では異常が起きている。このまま放置すれば、被害は拡大する。


ユイは拳を握り締めた。力が足りない。知識はあっても、18歳の体では限界がある。どうすればいい。


その時、前方から馬車が近づいてきた。御者が手を振っている。


「おい、そこの二人!」


ユイとカイルは立ち止まった。馬車が止まる。御者は中年の男性で、心配そうな顔をしていた。


「大丈夫か? 怪我をしてるじゃないか」

「はい、少し魔物と戦ったので」


カイルが答える。御者は眉をひそめた。


「北の森か?」

「ええ」


「そうか。最近、あの森はおかしいからな。乗っていけ。王都まで送ってやる」


「ありがとうございます」


ユイとカイルは馬車に乗り込んだ。荷台には荷物が積まれている。馬車が動き出す。揺れるが、歩くよりは楽だ。


御者が話しかけてきた。


「お前たち、冒険者か?」

「はい」


「若いのに大変だな。でも、無理はするなよ」


「気をつけます」


カイルが答える。御者は少し笑った。


「俺も若い頃、冒険者だったんだ。だから分かる。無理をすると、後悔する」


ユイは御者の背中を見た。その言葉が、胸に刺さる。前世の自分は、無理をして仲間を失った。今度は、同じ過ちを繰り返さない。


馬車は街道を進み、やがて王都の門が見えてきた。


「着いたぞ」


馬車が止まる。ユイとカイルは降りた。


「ありがとうございました」

「気をつけろよ」


御者は手を振り、馬車を走らせていった。


二人は門を抜け、王都に入る。夕暮れの街は、人で賑わっていた。


ギルドへ向かうと、受付嬢が驚いた顔をした。


「お二人とも、どうしたんですか!」


「北の森で魔物と遭遇しました。報告があります」


受付嬢はすぐに立ち上がった。


「分かりました。少々お待ちください」


奥へ消え、しばらくして一人の男性が現れた。厳しい顔つき。黒い髪、鋭い目。重装鎧を身につけている。


ヴィクトル・ハウス。前世でも会ったことのある、ギルド上層部の人物だ。


「君たちが、北の森に行ったのか」


低く、重い声。


「はい」


「詳しく聞かせてもらおう。こちらへ」


個室に案内され、向かい合って座る。


「何があった」


ユイは落ち着いて話した。赤く濁った目のウルフ、黒い痣、洞窟の魔法陣、未知の魔物。順を追って説明する。


ヴィクトルは黙って聞いていた。話が終わると、深く息を吐く。


「呪いか」

「おそらく」


「魔法陣はどんな形だった」

「複雑な文様で、古い文字が刻まれていました。ただ、読めませんでした」


ヴィクトルは少し考えた。


「その魔物の特徴をもう一度聞かせろ」


黒い鱗、四足歩行、角、赤い目。


ヴィクトルの表情が険しくなる。


「まずいな」


「何か、心当たりがあるんですか?」


「似たような報告が、過去にあった。だが、それは数十年前の話だ」


ヴィクトルは窓の外を見た。


「北の森は、当面立入禁止とする。上に報告し、正式な調査隊を編成する」


「私たちも協力できますか?」


ユイの問いに、ヴィクトルは首を振った。


「これ以上は危険だ。だが……調査が進めば、協力を頼むかもしれない」


ヴィクトルはユイを見た。


「君の報告は正確だった。観察力がある」


「ありがとうございます」


「今日は休め。治療院で傷を診てもらえ」


二人は部屋を出た。ホールでは、すでに視線が集まっている。噂は広がっているようだった。


外に出て、治療院へ向かう。


リリアが扉を開け、二人を見るなり眉をひそめた。


「随分とやられたわね。中へ」


治癒魔法の温かい光が体を包み、痛みが引いていく。


「これで大丈夫。でも、今日は無理しないで」


「ありがとうございます」


簡単に事情を話すと、リリアは静かに頷いた。


「やっぱり、始まってるのね」

「始まってる?」


「ええ。師が言ってた。世界の流れが、動き始めてるって」


リリアはユイを見た。


「あなたが戻ってきたから」


ユイの心臓が跳ねた。


「詳しい話は、また今度。今日は休んで」


治療院を出ると、街はすっかり夜だった。


「じゃあ、また明日」

「お疲れ様でした」


別れ、ユイは宿へ戻る。


部屋で一人、今日の出来事を思い返す。未知の魔物、魔法陣、呪い。前世にはなかったもの。


世界は、確実に変わり始めている。


ユイは窓の外、北の方角を見つめた。


次は、どうする。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ