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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第2章 北の森の影

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第012話 異常な魔物

影が、光の中に姿を現した。


全身が黒い鱗に覆われている。四足歩行で、体高は人の倍以上。頭部は獣のようだが、角が生えている。そして、目は深紅に光っていた。


ユイは即座に判断した。


勝てない。


だが、カイルはすでに前に出ていた。


「下がってください!」


カイルが叫び、盾を構える。魔物が唸り声を上げた。低く、重い声。洞窟全体が震える。


ユイは短剣を構えた。だが、手が震える。この魔物は、前世でも見たことがない。名前も、弱点も、何も分からない。


魔物がカイルに向かって突進した。カイルが盾で受け止める。衝撃。


カイルの体が大きく後ろに吹き飛ばされた。地面を転がり、壁にぶつかる。


「カイルさん!」


ユイが叫ぶ。カイルは呻きながら立ち上がろうとする。魔物は止まらない。再び、カイルに向かって走る。


ユイは飛び出した。魔物の横腹に短剣を叩き込む。刃が鱗に当たり、弾かれた。硬い。


ユイの手が痺れる。短剣が手から滑り落ちそうになる。魔物がユイに視線を向けた。赤い目が、こちらを見つめる。


ユイは後ろに跳んだ。だが、魔物の前足が迫ってくる。


避けきれない。


ユイは腕で顔を庇った。衝撃。体が宙に浮き、地面に叩きつけられた。痛みが走る。肺の空気が抜ける。視界が揺れる。


立ち上がろうとするが、体が動かない。魔物が近づいてくる。足音が、大きくなる。


カイルの声が聞こえた。


「ユイさん!」


カイルが剣を振り上げ、魔物に斬りかかる。剣が魔物の背中に当たった。だが、やはり弾かれる。


魔物が振り返り、カイルを睨んだ。カイルが盾を構える。魔物の前足が振り下ろされる。盾で受け止めたが、衝撃に耐えきれず、膝をついた。盾に亀裂が入る。


「くそ!」


カイルが歯を食いしばる。


ユイは必死で立ち上がった。短剣を拾い、魔物に向かって走る。だが、頭の中は冷静だった。


この魔物には、物理攻撃が通じない。鱗が硬すぎる。


ならば、どうする。


ユイは魔物の動きを観察した。足の運び、体の傾き、視線の向き。前世の経験で、動きの癖を読み取る。


魔物が再びカイルに向かった。


「カイルさん、右に避けて!」


カイルは迷わず右に転がった。魔物の前足が、カイルのいた場所を叩く。地面が砕ける。


その隙に、ユイは魔物の背後に回り込んだ。後ろ足の関節を狙う。短剣を振り下ろす。


刃が、関節の隙間に入った。


魔物が悲鳴を上げた。初めて、ダメージが通った。


だが、それだけだ。


魔物は振り返り、ユイを睨んだ。怒りに満ちた目。


ユイは後ろに下がる。だが、魔物の尻尾が迫ってくる。


避けられない。


ユイは腕で防いだ。衝撃。体が吹き飛ばされ、壁にぶつかった。痛みが全身を走る。視界が暗くなる。意識が遠のきそうになる。


だが、ユイは歯を食いしばった。


ここで倒れるわけにはいかない。


カイルが魔物に向かって走っている。剣を振るうが、やはり弾かれる。魔物が前足で払った。


カイルが吹き飛ばされ、地面に倒れる。盾が砕け、破片が飛び散った。


ユイは立ち上がろうとした。だが、体が言うことを聞かない。足が震える。息が苦しい。18歳の体では、限界だ。


魔物が、ゆっくりとユイに近づいてくる。まるで、獲物を楽しんでいるかのように。


ユイは短剣を握り締めた。だが、手に力が入らない。


魔物が目の前に立った。赤い目が、ユイを見下ろしている。


その時、カイルの声が聞こえた。


「ユイさん!」


カイルが立ち上がり、剣を投げた。剣が魔物の顔に当たる。魔物が顔を逸らした。


その隙に、ユイは横に転がった。魔物の前足が、ユイのいた場所を叩く。


ユイは立ち上がり、カイルの元へ走った。


「カイルさん、逃げましょう!」

「でも!」

「このままでは、二人とも死にます!」


ユイは真っ直ぐカイルを見た。カイルは一瞬迷ったが、頷いた。


「分かりました!」


二人は洞窟の出口へ向かって走る。背後から、魔物の咆哮が響いた。足音が追ってくる。


必死に走る。息が上がる。足が痛い。


止まるわけにはいかない。


カイルがユイの手を引いた。


「こっちです!」


二人は洞窟を抜け、森へ飛び出した。背後から、魔物が追ってくる。木々の間を抜け、必死で走る。


ユイの肺が悲鳴を上げる。視界が揺れる。


それでも、走り続けた。


やがて、魔物の足音が遠のいた。追ってこない。


ユイとカイルは、森の外れまで走り続けた。そして、その場に倒れ込んだ。息が荒い。


ユイは空を見上げた。青い空が広がっている。


生きている。


カイルが呻いた。


「すみません……俺が無茶を……」


ユイは首を横に振った。


「いえ。私も無理をしました」


二人は黙って空を見上げた。


しばらくして、ユイは立ち上がった。体中が痛む。だが、致命傷はない。


カイルも立ち上がる。鎧は傷だらけで、盾は失われていた。


「帰りましょう。ギルドに報告しないと」

「はい」


二人は森を後にした。


ユイは一度だけ、振り返る。北の森の奥を見つめた。


あの魔物は、何だったのか。なぜ、前世にはいなかったのか。


疑問が頭の中で渦巻く。


だが、今は答えが出ない。


ユイは前を向き、歩き出した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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