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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第2章 北の森の全

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第010話 準備

翌朝、ユイは早くに目を覚ました。

窓の外はまだ薄暗い。だが、準備は万全だ。


ベッドから起き上がり、装備を確認する。黒銀の軽装鎧、短剣二振り、回復薬、地図。全て揃っている。


ユイは鎧を身につけた。体に馴染む感覚。前世でも同じような装備を使っていた。だが、体は18歳だ。軽い。動きやすい。それでも、前世の38歳の時ほどの力はない。


ユイは短剣を腰に差し、鞄を背負った。それから、宿を出る。外はまだ静かだった。通りには人影が少なく、朝霧が漂っている。ギルドへ向かう道を歩く。足音だけが、石畳に響く。


ギルドの前に着くと、すでにカイルが待っていた。


「おはようございます!」


カイルは元気に手を振る。ユイは小さく笑った。


「おはようございます。早いですね」

「はい、楽しみで眠れなくて」


カイルは少し照れたように笑う。ユイは彼の装備を確認した。銀のプレートアーマー、大剣、盾。標準的な前衛の装備だ。


「準備はいいですか?」

「バッチリです!」


カイルは拳を握って見せる。ユイは頷いた。


「では、行きましょう」


二人は並んで歩き始める。街を抜け、北へ向かう街道に出る。朝日が昇り始め、霧が薄くなっていく。周囲の景色が見えてくる。畑が広がり、遠くに森の木々が見える。


カイルが話しかけてきた。


「ユイさん、北の森って行ったことあります?」

「少しだけ」


ユイは曖昧に答える。前世では何度も行った。だが、それは言えない。


「俺は初めてなんです。ちょっと緊張してます」

「無理はしないでくださいね」


ユイは静かに言った。カイルは少し驚いたように、ユイを見る。


「ユイさん、新人なのに落ち着いてますね」

「そうですか?」

「はい。俺なんて、初めての依頼の時は手が震えてました」


カイルは笑う。ユイは何も言わなかった。前世の失敗を思い出していた。初めての大きな依頼で、仲間を失った。自分の判断ミスだった。それから、何度も同じ過ちを繰り返した。


今度は違う。今度こそ、正しく導く。


二人は黙って歩き続けた。街道を進み、森が近づいてくる。空気が変わった。重い。魔力の濃度が高い。


カイルも気づいたようだ。


「なんか、空気が重いですね」

「ええ。魔力が濃いんです」

「魔力?」

「森には魔力が集まりやすい。それが魔物を引き寄せる」


ユイは説明した。カイルは真面目に聞いている。


「だから、森に入る時は警戒が必要です」

「分かりました」


カイルは剣の柄に手をかけた。ユイも短剣を確認する。


森の入口が見えてきた。巨木が立ち並び、薄暗い。二人は立ち止まった。カイルが深く息を吸い込む。


「行きましょう」


ユイが先に歩き出した。カイルがその後に続く。


森に入ると、周囲の音が変わった。鳥の声、風の音、木々の揺れる音。だが、それだけではない。何かが、こちらを見ている。


ユイは立ち止まり、周囲を警戒した。カイルも剣を構える。


「何かいますか?」

「分かりません。でも、気配がします」


ユイは短剣を抜いた。静かに森の奥を見つめる。しばらく待ったが、何も現れなかった。


「先に進みましょう。でも、警戒は怠らないでください」

「はい」


二人は慎重に進む。木々の間を抜け、森の奥へと向かう。地面には草が生い茂り、足元が見えにくい。


ユイは地図を確認した。森の中心に向かっている。前世の記憶では、森の中心に魔物が集まりやすかった。おそらく、今回もそこに何かがある。


カイルが尋ねた。


「ユイさん、どこに向かってるんですか?」

「森の中心です。魔物が集まりやすい場所です」

「なるほど。でも、大丈夫ですか?」


ユイは真っ直ぐカイルを見た。


「無理だと思ったら、すぐに引き返します」

「……」

「カイルさん、約束してください。私が撤退と言ったら、必ず従ってください」


カイルは少し驚いたが、すぐに頷いた。


「分かりました。約束します」

「ありがとうございます」


ユイは再び前を向いた。


森は静かだ。だが、その静けさが不気味だった。


しばらく進むと、開けた場所に出た。木々が途切れ、空が見える。そして、地面には何かの痕跡があった。


爪痕だ。


ユイはしゃがみ込み、痕跡を確認する。大きい。そして、新しい。


「これ、何の痕ですか?」


カイルが覗き込む。ユイは立ち上がった。


「魔物です。おそらく、ウルフ系の」

「ウルフ?」

「ええ。でも、普通のウルフより大きい」


ユイは周囲を見回した。他にも痕跡がある。複数の個体がいる。


「カイルさん、準備してください。近くにいます」


カイルは剣を構え、盾を前に出した。ユイも短剣を握り締める。


風が吹いた。木の葉が揺れる。


その時、茂みが揺れた。


ユイは即座に身構える。カイルも緊張している。


茂みから、何かが飛び出してきた。


ウルフだ。


だが、その目は赤く濁っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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