あの日、きみが言った事
わたしの家には、私の居場所がない
わたしは音楽一家に生まれた
父や母、兄のように優れた
演奏家になりたかった
しかし、身体の小さな私には
どんな楽器も十分に扱う事ができない
優れた演奏などとんでもない
なんとか演奏するのがやっとだ
努力で出来る事には限界がある
立派な演奏家にはなれない事は
早々と自分で判ってしまった
それでも、音楽が大好きだ
私は自分の出来る事を
必死で探して、DTMで演奏する
シンセサイザー奏者になれば
自分のしたいと思うことが
出来る気がした。
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仲間が欲しくて学校の
軽音楽部に入ってみた
皆が音楽が好きなのは判ったが
何をするかの違いは明確だった
皆で楽しく音楽をする
それは大事なことだ
でも、仲間内でなれ合い
練習よりおしゃべりが優先するのは
違うと思った
1に練習
2に練習
3.4も練習
5に練習
楽器を鳴らし
やりたい曲を奏でる
繰り返し繰り返し奏でる
それが本番でみんなに聞いてもらう
最低限のマナーだ
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そんな、わたしとみんなの間には
大きな壁がある
学園祭のライブの為に
各人でバンドを組む事になった
判ってはいたが、みんなが
バンドを組んだ時
そこに、わたしの居場所はなかった
もともと、キーボードが編成にいる
バンドなんて少ないのだ
基本は、ギター・ベース・ドラムだ
ボーカルは、誰かが兼務する事が出来る
まぁ、ちゃんと演奏したいなら
ボーカルを専用にたてるほうが
演奏の失敗は少ない
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わたしは、選ばれない
出たければソロで出るしかない
もちろん、ソロでもできる
もちろん、ソロでもできる
悲しかった
泣くまいと思ったが
なみだがこぼれた
一生懸命やってる
誰にも負けないくらい頑張ってる
涙がこぼれた
ただ静かに
涙がこぼれた…
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ダンダンダン
誰かが私に近寄ってくる
わたしのすぐそばまで来て
わたしを抱きしめた
そして言われた
「俺がお前の居場所になる、だから泣くな」
かっこいいこと言いやがって
かっこいいこと言いやがって
うれしかった
すごく、うれしかった
涙は止まらない
「うん、うん」
答えた
涙は、滝のようだ
でも、悲しいからじゃない
うれしい
でも、泣いた
ありがとう
ありがとう
涙がこぼれた
そしたら、わたしの肩に
誰かの手が乗せられた
「僕も入れてくれよ」
もう一人来てくれた
ありがとう
ありがとう
涙が止まらない
私に居場所が
はじめて…
はじめて…
出来たらしい
ありがとう
明日から頑張る
でも、今は泣かせて
こんなにうれしい涙は
初めてだった
ありがとう




