雪が降る日には
あれから、一年が経った。
季節はちょうど今ごろだったと思う。
あの日と同じ、雪が降る季節。
東京の街角にも、白い粒が舞い始めている。
会社帰り、ふと立ち寄ったコンビニの前。
喫煙所に人影はなかったけれど、俺はそこに立ち尽くしていた。
「──ここで、会ったんだよな」
みくると初めて言葉を交わしたのは、この場所だった。
白い息を吐きながら、無言で火を灯す彼女。
ピアスだらけで、目を合わせないあの子が、
まさかあんなに綺麗な笑い方をするなんて、あのときは想像もしなかった。
今でも、時々夢に見る。
喫煙所で肩を並べるあの感じ。
渋谷の夜景を見ながら指を絡めたこと。
宮城で、一緒に雪に足を取られて笑い合った日。
全部、昨日のことのように、胸の中に残ってる。
**
彼女がいなくなってから、俺は変わったと思う。
何か劇的な変化があったわけじゃない。
ただ、誰かと話すとき、
その人の沈黙の奥にある言葉を、前よりも想像するようになった。
誰かの笑顔の背後にある影とか。
誰かの怒りの理由とか。
みくるが教えてくれたのは、“痛みを抱えたまま生きる強さ”だった。
それを、俺は手放したくなかった。
彼女は最期に「もっと早く会いたかった」と言ったけど、
きっと、今だったからこそ、あんなふうに惹かれ合えたのだと思う。
人生は不完全だ。
でも、不完全なままで、誰かと分かち合えることこそが、生きるということなんだ。
**
コンビニを出て、足元に雪が積もり始めていた。
空を見上げると、ぼんやりと月が浮かんでいた。
ポケットに、一本だけ残しておいたタバコを見つけた。
あの日と同じ銘柄。
火をつけて、ゆっくりと吸い込む。
「……やっぱり、不味いな」
苦くて、苦くて、でも涙が出そうなくらい、懐かしい味だった。
煙が空に溶けていく。
彼女と過ごした時間も、痛みも、優しさも──全部が、ひとつの煙になって。
風が吹いて、背中を押す。
俺は歩き出す。雪の中を、ゆっくりと。
彼女が最後まで立っていたように、まっすぐ前を向いて。
終わりじゃない。
これはきっと、彼女から受け取った“始まり”なのだ。
心の中で、名前を呼んだ。
未来と、未来。
ふたりで重ねた、たったひとつの季節を、ずっと忘れない。
ここまで読んでいただいた方がいましたら、ありがとうございます。
人生初の中編小説でした。
どれだけ苦しい決断でも最後までやり遂げる
人生を生きる上で必要なものかと思っております。
1浪して第一志望に向かって直向きに勉強をする
大袈裟かもしれませんが、勉強が嫌いだった私にとって浪人は、このまま人生を終わらせたいと何回も思ってしまうほど苦しいものでした。
それでも長く苦しい道のりを経て、最後までやり遂げた先には今まで見えなかった景色が広がったものです。
もしこれから何か苦しい決断をすることがあれば、ぜひ最後までやり遂げてみてください。
その先に見えるものは、きっと今後の人生を豊かにしてくれるような財産になると思っています。
何かしら感想いただけたら恐縮です。
駄作かもしれませんが、少しでも何か感じたものがあれば嬉しく思います。