表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

ある男の話


 男は山菜取りをしている時、一人の子どもと遭遇した。全身汚れていたが身に着けているものは上物だ。だが、それよりも男の目を引いたのは子どもの髪と目の色だった。その色の意味を男は知っている。なぜこんなところに?


『そこの男。時が来るまでこやつを守れ。よいな?』


 子どものものとも言えぬ声音とただならぬ気配を感じた男は顔を真っ青にさせその場に身を伏した。決して逆らってはいけない存在だ。


 フッと気配が消えると共にどさりと音が聞こえた。恐る恐る顔を上げると子どもが倒れていた。髪はどこにでもある色をしており、あれは見間違いだったのだろうかと思った。

 男は意識のない子どもを家に連れ帰り、自分が体験したことを家族に話した。


「守れって……大丈夫なのか?」

「時とはいつだ?」

「わからない。だが、無下にすればどんな災いが起こるか分からない。今は言われた通りにするしかない」


 子どもが着ていたものは全部燃やした。あとは高貴なお方が我々の生活を受け入れてくれるかどうかだ。


 しかしその心配は杞憂に終わった。子どもはとても素直でいい子だった。……いい子過ぎてこちらが心配するほどだ。もしかすると自分の置かれている状況に気付いているのかもしれない。


 その子どもに末っ子が懐いた。子どもがどこへ行くにも末っ子は後を追った。

 子どもは親元へ帰りたいとは言わなかったし、男とその家族も触れなかった。


 ある日のことだった。薪拾いに行っていた次男が真っ青な顔をして、顔に大怪我を負った末っ子を抱いて戻ってきた。一緒にいた筈の子どもの姿がどこにもない。

 

 末っ子の手当をしながら、男は何があったと次男に聞くと、次男は震えなら自分の見たものを話した。話を聞いた男とその家族は顔を真っ青にさせた。その子どもが男とその家族の前に再び姿を現すことはなかった。


 末っ子は三日三晩熱で魘されたが、大怪我にも関わらず生き延びることができた。末っ子は自分の傷がどうやってできたのか知らない。いや忘れてしまったのだ。………あの子どものことも。


 暫くして新たな帝が誕生したという知らせが届いた。

 帝の年齢と容姿、そして帝にまつわる恐ろしい話が村でも話題となり、男とその家族はまた顔を青褪めさせた。


 ”時”はこのことだったのだろうか。


 男とその家族は子どものことを忘れることにした。雲の上のお方だ。この先関わることも、会うこともない。


 あの子どもが末っ子に対し怖いぐらい執着を見せていたとしても、もう関係ないことだ。



ざっくり人物紹介


洋(15歳)

 異世界転生者。前世の記憶を思い出す前、黎明に文明機器を話していたが、本人もよくわかっていない状態だった。崖でつけた傷(本人はそう思っている)による高熱で前世を思い出すが、その代わりに黎明のことも黎明に話したことも全部忘れた。

 都に来た時「めっちゃ文明的ー!」と一人驚いてた。物欲があまりない。

 黎明に囲われていることも、金の卵を産む鶏とも呼ばれていることも知らない。

 最近、夜中の庭に若い男の亡霊が出てひびっている。

 後に、黎明の手綱を握る者とも呼ばれるようになる。(もちろん本人知らない)


黎明(17歳)

 竜人特有の青い髪と金色の目を持つ男。洋と再会して歓喜したのも束の間、自分のことも含め語ってくれた不思議な話も全部忘れており一人ショックを受ける。自分に懐いてくれた洋を手元に置きたくて、開かずの間となっていた宮に清掃係という名目で閉じ込めた。

 洋に思い出してほしくてあれこれ道具やお菓子を持っていくが、洋の薄い反応にちょっぴり泣きそう。洋が運命の番だと周りに誤解させたが、それもいいなと本人は思っている。

 母と共に馬車ごと落ちた場所は洋の村からかなり離れた場所で、一日二日ではたどり着けない。黎明の中に流れている竜人の血(正確には竜人の姫君)が彼だけを守り、安全場所(洋の村)まで連れて行った。殺せと黎明に言ったのは竜人の姫君。

 母を探そうとしなかった自分を薄情者だと思っているが、そもそも竜人は人間と違って家族に対する愛情が希薄なので、それに影響している。


劉伶(20歳)

 元貴族で元孤児。黎明に拾われて以来彼に絶対的忠誠を誓っており、黎明のためならなんでもする男。洋が黎明にとって大切な存在だと知り、自力で探し出し村に後宮での働き手の案内を出した。もちろん予め洋のことは調査済みで絶対来るだろうと確信していた。男の後宮で黎明と洋が偶然出会うように画策した。

 洋を見つけ出し連れ去ることもできたし、権力でものを言わすこともできが、自分が幼少期の時にそれらを体験しているのでしなかった。

 最近、洋のことを弟みたいで可愛いと思っている。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ