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短編まとめ

悪役令嬢になる予定でしたが急遽予定を変更しましてモブ令嬢に転身いたします

作者: よもぎ

思い……出した……!


ダイナミックに頭にインストールされる、というか、うっすらはあった記憶のピースがバチコーン!と嵌まったのは、父親から婚約の話の提案を受けた瞬間。


「煌めきの国、暁の乙女」という名前のなんていうかレトロ風な乙女ゲームの世界だわここ。

国の名前とか地名とか家の名前に既視感はあった。

というか前世のことは物心ついた時には知識にあった。

けれど頭の柔軟な幼児だったものだから、それはそれとしてこの世界のことも覚えて記憶しつつ前世の私のことも吸収して育ったのよね。

内心までは大人にバレることもないので心の中では平民丸出しなのだよ。


そして今。

私は、王子と、侯爵令息と、公爵令息の三択を選ばされようとしている。

御年八歳。

そろそろ嫁ぎ先も決まる頃なのだ。


父は私にデロデロに甘いので、三つの家からの申し込みの選択権を私にあっさり投げ渡してくれたのだ。




さて。

王子は絶対にない。乙女ゲームでは王子の婚約者なんてのいたけど、攻略する~!となったら学園のありとあらゆる令嬢に敵視されることになる。婚約者の思惑によって。

つまり私がそうするのだけど。

結果どうなるか。

悪女だのなんだのボロクソに言われて単身国外追放。

ハイ絶対嫌です。


そもそも浮気かまされた被害者なのに悪者扱いってどうよ。

それをちょっとヨヨヨと相談したら令嬢に悪評広まってハブられただけなのに物凄いイジメ受けましたみたいな泥棒猫もどうよ。

それを真に受ける王子もどうなのよ。

全方位嫌過ぎる。



侯爵令息も同じようなもんなので却下である。

浮気者はそもそも無理。



となると公爵令息一択なんだけど、お父様はその釣書を手に取った私にちょっと渋い顔をした。

まあねえ。

五つ年上だものねえ。

でも年上で貴族学園にいないってなると、それだけで安心なのよね。

しかも本来継ぐ立場じゃなかったのに急な流行り病で長男次男が亡くなったから急遽三男で家を出る予定だったこちらの人が跡継ぎにって話だから、結婚まで猶予もきちんとあるし。

勤め人になる予定だったのなら常識はあるでしょうし。



「お父様。わたくし、このお方が」

「む、むう。しかし年上だぞ」

「あら。お父様みたいに甘やかしてくれる殿方がいいわ!

 お父様とは結婚できないのだもの。

 じゃあ結婚相手はお父様みたいに賢くて強くてかっこいい年上の人じゃなきゃ!」



ファザコン丸出しな言葉が決め手となって公爵令息との婚約はとんとん拍子に決まった。

顔合わせをしたのだけど、年上だからか余裕のあるスマートなご対応。

だけど、本当に自分が……いいのだろうか……みたいな自信のなさがある。

そこを励ますのが婚約者の役目よね。

頑張る所存。


ひとまずあれこれ聞いてみて、それに大体答えてもらえる賢さを褒めてみたり。

ささやかな心遣いにきちんと感謝を示したり。

逢瀬のあと、別れる時には寂し気にしてみたり。


一人の男性として自信を持てるように、けれど不自然でないように「あなたが大事です。大好きです」みたいなアピールも欠かさずに。


実際、婚約者様はいい男なので、演技というかウソではない。

ちょっと強めにアピールしているだけなので罪悪感もない。


そうこうする内に婚約者様は堂々と振る舞うようになり、そして私を大事にしてくれるようになった。

私も婚約者をめちゃくちゃ大事にした。

お父様は複雑そうだけど、お父様聞いて聞いて!と真っ先におしゃべりしていくし、評価基準もお父様にしてあるので、完全に敵視とかはしていない。

それに、真綿でくるむように大事にされているのは事実だし。

大事にされていないなら文句は言えるけど、ちゃんと大事にしてもらってるのに文句は言えないのよねえ。




さて。そんな感じで迎えました十五歳。

入学しましたけれども、ヒロインちゃんらしき令嬢はなんとありもしない逆ハールートに突っ走っていった。

目についたイケメン全てに粉かけて回ったのよ。有り得なくない?

で、攻略対象たちはコロッと落ちちゃって。

そうして色んな人をメチャクチャ敵にした結果、か弱い男爵家は潰されて、街角でさらわれたヒロインちゃんのその後の消息も知れない……ということになっている。

中途半端に攻略されてしまった男どもはといえば、婚約の白紙撤回を叩きつけられ、王子は継承権のはく奪、跡継ぎたちも廃嫡されてしまったとか。


完全に他人事でーす。


だって実際私は関係ないし。

婚約者は家の仕事を家で勉強中なのでヒロインちゃんとは無関係。

令嬢ネットワークで知っているのだけども、ヒロインちゃんはその後場末の娼館で「お仕事」しているので、その後の人生でも関わることはない。

あの人が娼婦を抱かないとは限らないけど、公爵家の令息が場末のきったねぇ店にいってコソコソ女買うわけがない。というか、そんなとこ行かせてもらえるわけがない。

せめて高級なお店に!と従者に懇願されるのが目に見えている。


そんな感じで早々にケリがついてしまったので、人生ゆったりイージーモードである。

前世の私よありがとう。

関わるのも嫌な人たちに関わらずにゆる~りといい人生送らせてもらってるわ。

まあ公爵家の嫁となるわけだから教育はちょっぴり大変だったけど、王子妃だって大変だったろうしね。

それを思えばどんなもんじゃい!



ま、安らかに眠れヒロインちゃん。死んでないけど。

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