僕の女装でメロメロにしてやるぜ! 後編
見知らぬ部屋、覚えのない人間。
リビングと思しきその一室で知らない男に土下座をされる。
僕は食卓テーブルの椅子に座っていた。
「と…とりあえず頭を上げてよ」
「もしかして承諾してくれるのか!!」
ガバっと顔を上げて男はそのように言った。
「えっ?何を?」
「俺と結婚して欲しいって話だ!!」
目の前の男がそのようなことを言った瞬間、僕は男の顔を殴っていた。
「うが…っ!」
僕は倒れた男の前に立った。
「何すんだいきなり!!痛いだろっ!」
男が僕に向かってそう言った。
「…うるせぇ!いきなり結婚しようだなんて言われて平常心を保てるかぁ!!」
「…ん?別にいきなりじゃ無いだろう?前々から言ってたんだから」
「知らんわそんなこと!覚えてないんじゃボケぇ!!」
「俺たちあんなに仲が良かったのに。俺との大事な話を忘れるとは…」
男はポンっと僕の肩に手を置いた。
「おあいにくさま、野郎と恋愛したくねぇよ!BL好きじゃないんだわ!」
「待て待て待て。お前のこと好きになる訳が無いだろ」
男は頭に手を置きそう言った。
「はぁ?なんかそれはそれでムカつく!!」
「あのな〜前にも行ったと思うが、あくまでフリだからな?結婚出来さえすれば後はどうとでもなるから、お前が女装して俺と結婚すれば問題ない」
「問題大アリだバカ。どういう経緯でそうなったんだよ」
「本当に…覚えてないんだな……」
「あ?なんだよ」
男は椅子を引き食卓テーブルの前に座る。
目の前の椅子を指差す。
「まぁ座れよ」
男の前に座る。
「どういう経緯か…端的に話していいか?全部話すのは流石に長すぎる」
「端的でいいから…とっとと話せ」
男は目を閉じてスゥーッと息を吸って吐く。
目を開けてそっとこちらを見つめる。
「うちの両親さ…心配性なんだ」
「そうか…それがどうした?」
「俺、海外留学したいんだよね」
「行けばいいだろ」
「親がさ、反対してきて、生活を支えてくれるような女と結婚したら行っても良いって行ってきたんだよ」
僕は呆れた顔で言う。
「街コンでも行ってきてもろて」
「いやいや行く必要ないぞ」
「誰か居るのか?そういう奴が」
「ああ!もちろん居るぞ!」
「じゃあ別に良いじゃねぇか。ちなみにどんな奴なんだ?」
男は無言で指を差してくる。
「あーそういうことね!なるほどなるほど」
男の指を思いっきり掴む。
「納得出来るかぁ!!」
そのまま男の頭にチョップをした。
「いてぇな!お前だって留学したいって言ってただろ!」
「知らねぇよ!大体記憶が無いんだよ!お前誰だよ!」
男は無言で見つめてくる。
「なんか言えよ!怖いわ!」
無言だった男の顔が崩れ落ちる。
「ぴえっ…!」
驚いて尻もちをついた。
床に触れた感触がなく地面に沈む。
机の脚を掴もうとするがまるでそこに無いかのように空振る。
目の前が真っ暗になった。
ーーーーーーーーーー
ハッと意識が戻る。
辺りを見回す。
隣にはタキシードに身を包んだ先ほどの男が立っている。
違和感を感じて自身の服装を見る。
「うっわ何コレ!?」
女装した上でウェディングドレスを着ていた。
「可愛いよ」
男にそのように言われる。
「うるせぇ黙れ!」
少し食い気味で言った。
「ってか、ここどこだよ」
式場の隣はビーチがあり海が綺麗だった。
「ハワイとかグアムか?」
白い砂浜を眺めながらそのようなことを言った。
「ドバイだよ」
「ふーん」
冷たく返答する。
ボケーっと遠くを見る。
遅れて気が付き男の方を振り向いて驚く。
「ドバイ!!?」
「うん」
「バカじゃねぇの!どこでやってんだテメェは!」
「お前が行きたそうだったからな」
「留学先どこだよ」
「アメリカだが?」
「だったらアメリカでやれよな」
「俺のせいで巻き込んじゃったからさ、どうせなら楽しんでほしくて」
「お前…実はいい奴なのか?」
髪をたくし上げながらロッジの手すりに手をかける。
こちらを見つめる。
「曲がりなりにも幼馴染だからな」
僕は少し照れて下を向いた。
「ん?」
「どうかしたか?」
僕は違和感を確かめるために自分の胸に触れた。
「……女体化」
「?」
「女体化しとるやないか!!」
「何言ってるんだ?お前は元々女だろ?」
「分かったよ!夢だわこれ!」
「大丈夫か?たぶん疲れてるんだな」
男がゆっくり近付いてくる。
僕は思いっきり男の顔面を殴った。
男の身体が宙を飛び空間がステンドグラスのようにひび割れた。
「あースッキリした」
ふと前を向く。
目の前の光景に絶句した。
見覚えのある体育館。
見覚えのある人間。
自分の足下に転がっているバスケットボール。
「もしかしてループしてる?」
少しして対戦相手の男たちが現れる。
「これも見たな」
後ろからこっそり体育館を抜け出す。
目の前に広がる景色を見て絶望する。
周りを崖に囲まれた孤島だった。
「はぁ…夢だし死なないだろ」
覚悟を決めて崖の上から海に飛び込む。
夢だというのに激痛が走り体が粉々になるような強い不快感を感じた。
ーーーーーーーーーー
意識が覚醒して目が覚める。
「あぁ…ようやくか」
時計を見る。
「7時30分か…」
間に合いそうなので学校へと向かう。
部室に着きメイド服に着替える。
「まぁ…色々あったけど頑張ろ」
少し欠伸をしながら教室へと向かった。




