第1章 公安警察魔術局8
気が付くと、元の公園に戻っていた。女性の形をしていた魔力も最初のころの荒々しさはなく、静かに座り込んでいるような姿をしている。
「星(the star)、正位置!」
玲香のカードが放つ光によって、女性は徐々にその姿が薄くなっていく。
「幸也、今!」
「氷よ、かのものを穿て、イス!」
氷塊が赤い宝石に迫り、砕く。
その瞬間、巨大化していた紫陽花が小さくなっていく。
元の大きさに戻ったのを確認して職員を読んだ。
「お、終わったんですか?」
「はい、そして、あの紫陽花の下を掘り起こしてください」
職員は頷いて電話をし始めた。
紫陽花の下からは案の定女性の遺体が発見された。それは2カ月前から行方不明となっていた女子大学生だった。
「しかし、よくわかりましたね。遺体が木の下にあるって」
「紫陽花は土壌が酸性かアルカリ性かによって花の色が変わるんです。死体が土の中にあると土壌が酸性になって金属イオンが溶け出すので赤になるんですよ」
幸也の話を聞いて職員はなるほどと頷いている。
「あと、あの紫陽花、あの後枯れてしまったんですよね」
「正直、土に遺体が埋まっていたら枯れてしまうんですよ」
「では、なぜ」
「彼女の魔術は植物に関連するものでした。だからその魔術の影響で枯れずに咲いていたんだと思います。それか」
幸也は一度言葉を切って、さらに続ける。
「自分のことを見つけて欲しくて、咲かせ続けていたのかもしれませんね」
玲香が隣でずっと頷いていた。