第1章 公安警察魔術局6
それは黒い霧のような魔力だ。噴き出した魔力は女性のような形を作る。
「先輩!あれです!」
幸也が指さした先には人間でいうと心臓の部分に、赤い宝石のようなものがあった。
「あれが核か」
玲香が宝石に標的を定め、タロットカードを構える。
「星(the star)、正位置!」
意味は希望、名声、そして、浄化。
カードから放たれた光が優しく女性を包み込む。女性は苦しむようにもがきだす。根が荒れ狂い、玲香に襲い掛かる。
「ちっ」
玲香は魔術を切り、根を回避する。
「さすがに、これでは近づけませんよ」
幸也が玲香の下へ合流する。
「幸也」
「何です、先輩?」
玲香が幸也にカードを向ける。
「棒の3、正位置」
意味は共同作業。玲香と幸也の間に魔力のパスが繋がる。
「ああ、なるほど」
幸也も石を構える。
「口よ、伝え、届けよ。アンスール!」
コミュニケーションを意味するルーン。石が女性に触れると、二人の意識がホワイトアウトした。
私は家族で唯一の魔術師だった。お父さんもお母さんも、お兄ちゃんもみんな、私に魔術の才能があるってわかって喜んでくれた。
でも、それは最初だけだった。お兄ちゃんは私だけに魔術の才能が発言したことに嫉妬し、いじめをしてくるようになった。お父さんもお母さんも見て見ぬふり。
二人共怖いんだ、魔術師が。もう魔術師が現れてから10年以上も経つのに。自分に存在しない力が怖いんだ。排除したいんだ。
家に私の居場所はなかった。だからと言っていく場所があるわけではない。私はただ、兄におびえる日々だった。
高校を卒業して私は家を出た。一人暮らしを始めてからはのびのびとした生活が出来た。大学には思った以上に魔術師が多かった。
ここなら私は自分らしくいられると思った。彼氏も出来た。うれしかった。
彼が、反魔術だと知るまでは。
彼は私が魔術師だと知ると、「魔術は悪魔の力だ」と言って、私に暴力をふるった。殴る蹴るは当たり前。火で炙られたこともあった。
殺されると思った。彼は私を殺すつもりなんじゃないかと思った。
逃げた。彼から。でもどこに逃げても彼は追いかけてきた。
彼は十字架をモチーフにした銀のナイフを持っていた。
「これで君の中から悪魔を追い出すんだ」
彼の後ろには数人の男女が同じように銀のナイフを持って立っていた。
ああ、私は死ぬんだ、と思った。でも、せめて一矢報いたかった。
私は自分の魔術を使って、彼を。
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