第1章 公安警察魔術局5
「紫陽花の色が変?ですか」
市の職員が魔術局の部署にやってきた。
「ええ、市民公園には5本の紫陽花があるのですが、1本だけ赤いんです」
詳しく話を聞くと、他の四本は青紫なのに1本だけ赤紫になっているそうだ。
「専門家に見てもらおうと思ったのですが」
「原因がわからなかったのですか?」
「いえ、実は」
玲香の質問に少し口ごもる職員。
「調べようとした人が全員、原因不明の体調不良で倒れてしまって」
「なるほど、それでうちに来たというわけですか」
「はい、何か呪いのようなものかもしれないと」
「しかし、赤ですか」
幸也が空を仰ぐ。
「自分、ちょっと嫌な予感がするのですが」
「ああ、私もだ」
とわいえ、ここにいてもしょうがないので市民公園に移動することにする。
公園は平日の昼間ということもあり、人はほとんどいなかった。
「ああ、紫陽花が緑に変わったなら楽だったんですが」
「ファイトプラズマだろ。それなら私たちのところまで来ないさ」
「ですよね」
赤い紫陽花の周りは柵で囲われ、人が近づけないようになっていた。
ざっと見てみたが、特に変わったところは見つからなかった。そもそも、幸也も玲香も生物学者ではない。見たところでわからないのはわかりきっていた。
「体調不良を起こした人たちが倒れる前に何をしていたかわかりますか?」
「確か、紫陽花に触れて、何かをしていたと思います」
玲香が紫陽花の花に触れてみる。特に何かが起こる様子はない。
葉っぱ、枝、幹と触れていく。そして、根に触れようとしたときに、空気が変わった。
重く、粘りつくような空気。周りにコールタールをぶちまかれたかのような不快な感覚。
「始まった」
「職員さん!避難していてください!」
幸也の指示に従うように職員は紫陽花から急いで離れる。
紫陽花が巨大化する。花の数が数十倍に増え、幹が大木の様に太くなる。根っこがまるで触手の様に暴れまわり、地面をえぐる。
魔力浸食だ。魔力が一所にたまり、高濃度になったとき、現実に影響を与え、さまざまな現象を引き起こす。
幸也がルーン文字の書かれた石を、玲香がタロットカードを構える。
魔力浸食の対処法は1つ、魔力浸食の核を破壊する。
「氷よ、かのものを穿て、イス!」
幸人が投げた石が氷塊に変わり、巨大紫陽花に向かって飛来する。
氷塊は幹に傷を作るが恐ろしい再生速度で傷をふさいでしまった。
「戦車(The Chsriot)、正位置!」
意味は征服、優勢。玲香の魔力があたりに満ち、紫陽花を抑え込もうとする。
対抗するように紫陽花も高濃度の魔力を放出する。
「牛よ、我に力を与えよ、ウル!」
石を握りしめると、幸也を魔力のオーラが纏う。
「はあ!」
幸也のこぶしが紫陽花の幹を震わし、大木が割れる。
「ああああああああああああ!」
女性と思われる悲鳴とともに、大木の割れ目から何かが噴き出した。
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