第1章 公安警察魔術局4
「おはようござい、あー」
幸也が警察署の魔術局の部署に行くと、玲香が机に突っ伏していた。長い黒髪もぼさぼさのままだ。
「玲香、あなたの相棒が来たわよ」
背の高い女性が玲香の肩を揺する。
小鳥遊洋子だ。背が高く、出るところの出たスタイルのいい美人だ。署内にファンクラブがあるといううわさもある。
「あ、ああ。幸也。おはよう」
完全にグロッキー状態な玲香に幸也が瓶を渡す。
「はい、えきキャベです」
「ああ、ありがとう」
玲香がよろよろとえきキャベを手に取って、あおる。
「全く、なんで3人順番に相手したんですか。同時に相手すればよかったじゃないですか」
「3人順番にって、玲香それはさすがに」
「だって、私が勝つし」
まあ、そうだろう。玲香に酒で勝てるやつはいないだろう。
「それで、翌日これじゃあ意味ないでしょ」
洋子も水を渡している。
「おはようでござる!星野殿、また二日酔いでござるか?」
「あ、ああ。正直3人目の途中から記憶がない」
ござる口調の男性は鳴無君彦、がたいがよく少し強面だが気遣いができる優しい人だ。
「3人目?とは」
幸也が昨日のことを説明すると、君彦が呆れたような顔をする。
「そういえば良樹と、部長は?」
幸也の質問に洋子が答えた。
「二人は局長に呼ばれて今日は公安に行ってるわ」
公安警察魔術局所属の人間は基本的に公安の本部ではなく、それぞれの警察署に配属される。ただ、指示系統は公安警察魔術局直属となる。
そのため警察署からは上のいうことを聞かない厄介者扱いされるとこも多々ある。
「そういえば、幸也。七海が呼んでたわよ。頼まれてたものが出来たって」
「あ、わかりました。七海は工房ですか?」
洋子が頷く。幸也は玲香の髪を梳くのをやめて工房に移動する。
「お、幸也。待ってたで」
工房にいるのは芳崎七海。栗毛色の癖っ毛が特徴的な女性で錬金術師だ。
工房には錬金術用の釜、試験管やフラスコ、ビーカーなどが所狭しと並んでいる。
「ほいこれ」
七海が渡してきたのはアメジストだ。幸也がルーン文字を刻む媒体として選んだものを、七海の錬金術で強化してもらったのだ。
「これで、どのくらい威力上がるんだ?」
「そうやな、ものにもよるが1.5位やないか」
幸也は貰ったアメジストを袋に入れる。
「ただ、消費魔力も上がるから気を付けや」
「ああ、分かってる。ありがとうな」
幸也はそういって工房を後にした。
「本当に分かっとるんか」
後姿を見ながら七海は3ヶ月のことを思い出した。
「絶対、また無茶するな」
そうでなければ、ただでさえ魔力親和性の高いアメジストをさらに強化してくれなんて頼んでこないだろう。
動画orなろう小説毎日投稿中